第58話
はやてかBランク昇格試験を見てやってくれと頼まれたが、はて今日だったかな? 最近はトレーニングルームを造ってもらったからってそこに籠りきりだったし、時間感覚も曖昧だ。
「要君、こっちだよ」
「おお、なのは。久しぶり。それとツヴァイも元気か?」
「元気ですよ!」
「久しぶりって、要君がずっとトレーニングルームに引きこもってただけだよね」
「それは言わないでくれ。それより受験者ってのはどこだ?」
「もう試験中なの。モニターに映ってるでしょ」
おお、あれはスバルとティアナじゃないか。そうか、あの時の2人がここまで来たのか。なかなか感慨深いな。
ゴーストタウンを模した試験会場のゴールまで辿り着く簡単な試験だが、この試験会場はすずかが設計したらしい。所々試験のために作れたすずか特製魔導式戦闘機械が配置されているのみたいだ。実戦経験のない2人がどうやって切り抜けてくれるやら。
「すずかちゃんのあれ鬼畜なんだよね。泣かないといいんだけど」
「まさか、子供じゃあるまいし」
「エリオとキャロは泣いたみたいだよ」
「子供じゃねぇか。というかまだBランク昇格試験受けれねぇだろ。実験台にされたか?」
あ、エリオとキャロってのはフェイトが保護した少年少女だ。まだ9歳だっけ。今度新しい部隊に参加するらしいな。まだ若いと思うが、こっちではこれが常識だ。郷に入っては郷に従え。気にしてはいけない。
「2人共頑張るね。でも次は大丈夫かな」
「あれはいけないと思います」
「次? また新作が仕掛けられているのか。すずかも好きだな」
「見てれば分かるよ」
既に残りは3分の1ってとこだが、ここから新たな仕掛けが導入されているわけだな。嫌な予感しかしない。せめてあいつらのトラウマにならないよう祈る。
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ここまで順調に進んできた2人は既に楽勝ムードを漂わせていた。
「ティア! これならいけそうだね!」
「油断するんじゃないわよ。月村技師が噂通りの人ならこの先に何を仕掛けているか分からないわ」
「ティアと私ならきっと乗り越えられるよ!」
「もう、バカなんだから。でもスバルのそういうところ、好きよ」
「私もティアの事が大好き!」
2人がどのような関係かは一先ず置いておき、これからの行動に注目してみよう。どうやら最短距離を最速で抜けていくつもりらしい。とても作戦とは言い難いものだが、奇妙奇天烈で評判のすずかが設計した試験コースだ。逆に最短ルートを安全と判断したのかもしれない。だが今回の試験に正解のルートなど存在していなかった。
「! スバル隠れるわよ!!」
「へっ?」
「早く!」
ーードガガガガガガガガガガガガガッ
ティアナがスバルの腕を引っ張り建物の瓦礫に隠れる。その後ワンテンポ遅れて大量の魔力弾がゴール方面から降り注いだ。一般的な魔導師10人分はありそうなくらいに大量だ。
2人がそーっと瓦礫から顔を出すとゴール付近のビルの屋上に銀色に輝く何かが見えた。間違いなく攻撃してきたのはその物体である。
「どうしよー」
「大丈夫だからそんな子犬みたいな顔しないの。さあ私の胸に顔を埋めなさい」
「わーい」
「……どうしたものかしら。あれも月村技師の魔導式戦闘機械だと思うけど、ここまでで破壊してきたのとはレベルが違うわ」(クンカクンカ)
「あんな高い場所に居座られたらどこに逃げても見つかっちゃうよ」
「そうね。しかも索敵能力も高いわ。幸い火力は低いみたいだけど……」(スーハースーハー)
「ごり押しする?」
「弾幕キツいわよ」
「ならこの瓦礫を盾にしながら進もう」
「重そうよ。行けるの?」
「うん! ひょいっと」
軽々と分厚い瓦礫を持ち上げるスバルの姿を見てティアナはこう思ったそうな。要さんに影響されすぎでしょ、と。
だがこれで守りながらの進行が可能となった。まあこの程度でどうにかなるほど世の中楽に出来てはいない。
ーーヒュー
「? 何の音だろ」
「何か降ってくる?」
ーードゴオォン
「「きゃあぁああっ!?」」
しっかりと確認していなかったが、降ってきたのは爆発物だったようで盾にしていた瓦礫は粉砕された。盾が消えれば当然のように雨霰のように弾幕が降り注いでくる。かもさ先程までの豆鉄砲とはレベルが違う高火力の爆弾やレーザーが放たれまくっている。
「あーもう! 近付くほど火力が上がるなんて聞いてないわよー!!」
「誰も言ってないもんねー」
「スバル! おんぶして!!」
「オッケー!! フルスピードで行くよ!!」
スバルにおんぶされたティアナはそのままの体勢で器用に射撃で爆発物を撃ち落としていく。エネルギー系の攻撃はスバルが上手く避けていく。
「射程入った! シュート!!」
ーーカキン
「……………………」
「弾かれたね」
「まさかバリアーまで用意されているなんて思わないじゃない!!」
「きっとビルに入れば攻撃はこないよ!」
「そうね。ビルの屋上からの攻撃だか……ら…………」
「…………ビルから触手が出てるね……」
普段から前向きで何事もポジティブに捉えるスバルですらドン引きする光景がそこには広がっていた。どのようなルートを進むにもあのビルの側を通らなくてはならない。どう足掻いても大量の触手の中を潜り抜けなくてはいけないのだ。
「ヤバいよ。流石にあれには近寄りたくない」
「でも行かなきゃBランクにはなれないわ。それに私は触手に絡まれたスバルも見てみたい。だから気にせず突撃よ!!」
「気にするよぉ!!」
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後ですずかにはお仕置きだな。固定砲台までは良かった。だが流石にあの触手ビルはアウトだ。今回の試験は中止にしてまた別の機会にしてもらった方が
「見て要君! あの2人突破したよ!!」
「やりましたぁ!」
「なぬ?」
おぉ、スバルが死に物狂いで走っている。ティアナも触手を寄せ付けないよう撃っているな。うんうん、いい連携だ。
「ゴールに迎えに行ってくる」
「私も行くよ。何かあるといけないもん」
「んじゃお願いしようか」
「リインはここで見てるです」
管理されているから問題なんて起こらないとは思うが、何事も注意しておいて損はない。ま、今回何か起こったらなのはに任せるがな。
ゴール付近にやってきたが、ここからでも触手や弾幕に襲われる2人の様子がよく見える。トップスピードで突っ込んでくるな。ブレーキかける気配がないな。止まりそうにないな。
「スバルーーーー!!! ストーーーーーーップ!!!!」
「むーーーーーりーーーーーー!!!!」
「あー、なのは」
「にゃはは」
なのはが魔法で網を作って待ち構える。一切スピードが衰える事なく網に絡まった。
「もう2人共、あんまり無茶したら駄目だよ」
「えっ、あ……な、なのはさん……?」
「久しぶりだね」
「俺も居るぞ。スバルもティアナも元気そうでなによりだ」
「要さんまで!?」
「あ、私の事覚えていてくれたのですね」
「俺に意見してくれた数少ない人間だからな」
「うっ……もしかして恨んでます?」
「むしろ感謝してるさ。さてと2人にはすぐに来てもらう場所がある。いいな?
「「はい!」」
確か2人をはやての居る部屋へ連れていけばいいんだな。結果発表はそこでやるんだろうが、他に何をやるかは詳しくは知らないんだよな。なのはは知らされているっぽい。悲しいな。
「お疲れ様です」
「わぁ可愛い!」
「小さい……」
「むぅ、リインは曹長なんですよ!」
「ははは、まあ見た目がそれだからな。我慢するこった。っと着いたぞ。はやて、入るぞ」
「ええよー」
この部屋に入るといつも思うんだが、立派な部屋だよな。一応はやては誰でも自由に使っていいと言っているが、誰がいつ使うんだよ。
「今日はお疲れ様。あ、試験は合格な」
「へっ、ありがとうございますってええっ!?」
「大切なのは試験やないからね。なあ2人共、私が結成する部隊に入らへん?」
「い、いいんですか!?」
「でも私達Bランクになったばかりだし」
「ええんやで。見込みがあるからこうやって誘っとるんやから。別に返事はすぐでなくても」
「「是非入れさせて下さい!!」」
「ならここにサインしてな」
ふーん、新しい部隊を作るつもりだったのか。そりゃ俺に知らされるわけがないな。
「じゃあ要さんもこれから協力してな」
「ああ」
「協力? 同じ部隊じゃないんですか?」
「言ってなかったな。俺は他の部隊に留まるのを禁止されているんだ。何か要請があれば動くのが俺だ。でも俺を動かす権利を持っているのが一部の局員だから殆ど働かないんだよ」
「それでいつもトレーニングルームに籠ってるもんね」
「うっせぇ。まあはやての部隊に入るなら付き合いは長くなると思うからよろしくな」
「「よろしくお願いします!」」
アリサ「ティアナってレズなの?」
シャマル「ガチ両刀よ」
アリサ「どこのポケ○ンですか。まあ男性にも興味があるようで安心ね」
シャマル「ティアナのキャラが薄くなりそうって言われたから突発的にやったとか」
アリサ「計画性ないわね。そういえば要さんはどこかに所属したりはしないんですね」
シャマル「秘密兵器(笑)はみんなで共有するものだもの」
アリサ「秘密兵器(笑)ならしょうがないですね。では今日は何の日やりますよ」
シャマル「新年初ね。本日1月3日は『箱根駅伝復路』よ」
アリサ「それ記念日とかじゃないですよね」
シャマル「楽しいからいいじゃない。毎年どんな選手が活躍するか楽しみなのよ
アリサ「1位や2位より10位のシード権争いが盛り上がりますよね。あれで次が決まっちゃいますもん」
シャマル「そういう楽しみ方も箱根駅伝の楽しみ方の1つね。人それぞれの箱根駅伝と言ったところかしら」
アリサ「ではまた次回」