チートじゃ済まない   作:雨期

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今回はバカまる様の『転生?まあ、適当に生きるよ。』とのコラボになります。


コラボ第10話

 どうも、佐藤輪弥だ。何、知らない? なら『転生?まあ、適当に生きるよ。』を見てくれ。

 

 今日は趣味の人形集めのために俺が住む世界の並行世界にやってきたわけだ。並行世界だったら同じ物しか見つからないのではと思う人も居るかもしれないが、ちょっとした切欠で全く別な物がある事もある。探すまでの過程も楽しいしな。

 

「おっ、いい古物商だ。少し覗くか」

 

ーーカランカラン

 

「…………らっしゃい」

 

「見せてもらってもいいですか?」

 

「どぞ…………」

 

 店長らしき人は新聞を読んでいてこっちを全く見る気配がない。愛想悪いけど、ここで不機嫌になって帰ったら宝が見つからない。気にしない気にしない。

 

「…………何探してんの?」

 

「えっ、人形ですけど」

 

「人形…………予算は?」

 

「良い物でしたらいくらでも」

 

「ん…………」

 

 奥に引っ込んでいった。もしかして探しに行ってくれたかな。愛想以外は良い人そうだ。

 

「お待たせ…………」

 

「おお! ビスク・ドール!」

 

 ビスク・ドールは19世紀ヨーロッパのブルジョア階級で流行った陶器人形だ。コピーも多いが人形好きだから分かる。これは当時作られたオリジナルに違いない。かなりの価格になるはずだけどもこれは欲しい。

 

「いくらです?」

 

「……………………一万六千円」

 

「安くないですか?」

 

「…………昨日…………パチンコで負けた…………」

 

 しっかり売ればパチンコ分どころなんてもんじゃないのに。趣味でやっている店にしてもこの価格はない。なんか悪いから二万円出しておこう。

 

「お釣りはいりません」

 

「……………………ども」

 

 はぁー、掘り出し物見つけてホクホクだぁ。わざわざ並行世界まで来たかいがあった。気分が良いし、なのは達にも何か土産を探して帰ろうかな。

 

ーーカランカラン

 

「親父! 老酒くれ!!」

 

「うわぁっ!?」

 

ーードンッ ガシャン

 

「ん、ありゃ悪いな兄ちゃん。弁償させてもらうわ。いくら?」

 

「ふざけんなよ! これが何か分かってるのか!?」

 

「人形だろ?」

 

 なんだこの野郎!! 確かに価値が分からない奴には分からないだろうさ。でもこいつからは誠意が感じられない!! 適当に弁償しておけばいいなんて精神が気に食わない!!

 

「表に出ろ!!」

 

「うへぇ、めんどくさ。親父、老酒用意しておいてくれ」

 

「…………ああ」

 

 こっちの様子を見てもまだ酒を気にするか。並行世界だから気にする事もない。自分が何をしたのかとことん教えてやる。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 なんで老酒を買いに来て喧嘩を売られにゃならんのだ。売られたもんは買うが、こんな優男みたいのに本気になってもなぁ。適当にあしらってやるか。

 

「さあ来いよ。遊んでやる」

 

「かかってくるのはそっちだ。返り討ちにしてやる」

 

「おいおい、いいのか? 怪我しても文句は言わせないぞ」

 

「ああいいぞ。その前に……結界」

 

 ! ほう、こっちの関係者か。これならあんまり手を抜く必要もないな。

 

「お前は俺に近付けない。『パラドックス』」

 

 …………動けない? おかしいな。レアスキルか? どれ、頑張ってみるか。

 

「ふんぬっ!!!」

 

「っ!? どうやって動いているんだ!」

 

「あ゛? 筋力だよ。力こそパワーだ。小細工なんかで止められるか」

 

「脳筋も極まれば脅威だな」

 

 だが近付くほどに拘束が強くなるな。徐々に力を解放しているが、最終的には武装・ORTを使う必要がありそうだ。でもそれはそれで癪だ。久しぶりに魔法を使おう。

 

「ふぅ、シールド」

 

「魔導師だったのか!」

 

「驚け驚け。シールドスライサー!」

 

「シールドを投げるなんて非常識な。だが『サスペンドリフレクション』!」

 

「チッ、反射か。もういっちょシールドスライサー!」

 

 飛び道具の反射技のようでシールドスライサーが返されてしまった。同じシールドスライサーで相殺したが、ここからどう攻めるか。近付けない。飛び道具は無意味。ふーむ……………………あ、よく考えたらあいつと俺は繋がってんじゃん。足を振り上げて……

 

「よーい、しょっ!!!」

 

 ちょっとした技を使いながら一気に降り下ろす!!

 

ーーズンッ

 

「おわぁっ!?」

 

 ははっ、飛んだ飛んだ。見よう見まねの震脚成功だ。予想外の攻撃に集中が途切れたみたいで自由に動ける。よし追撃だ。

 宙を舞う男の上に移動して、両手を組んだダブルハンマーをぶちかます。当たれば重体は免れないぞ。

 

「『デスクトップ』!」

 

「今度は消えたか」

 

 どこかな。お、発見。あんまり遠くには移動していないな。逃げるつもりはないようだ。 

 

「お前は一体何者だ?」

 

「名前は一条要だが、そんな事じゃないよな」

 

「当然だ。ただの魔導師があんなふざけた動きするか。転生者か?」

 

「よく分かったな。そんな事言うなんてお前も転生者? それとも憑依者? もしくはその他?」

 

「転生者だ」

 

「名前は?」

 

「佐藤輪弥。もういいな」

 

 人形1つでここまで怒るとは。流石に悪い事しちまったな。謝罪しようにも頭を冷やしてもらわないと話にならない。どうしたもんか。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 転生者なのは驚いたが、パラドックスで動きが封じられるなら怖い敵でもない。注意するのはあの馬鹿力と転生者としての能力だ。もしかしたらあの筋力が能力かもな。それならいいんだが…………ピンチになれば使うだろ。その時に俺の力で捩じ伏せて絶望させてやる。人形の痛みを思い知れ。

 

「双ね鐘楼!」

 

 低い姿勢になり転生者へ突進し、通り過ぎる瞬間に作った刀で横凪ぎに切り裂く。だが斬った手応えがない。動けるはずがないのにどうして。

 

「両儀式の技か。速さはあっても威力がないな。俺の腹筋はそれじゃあ無理だ」

 

「刃が、欠けている…………脳筋なんてレベルじゃねぇぞ」

 

「自慢の筋肉だからな。なあ、冷静になろうぜ。俺が全面的に悪かったって」

 

「その態度が気に入らないんだ!! 『過剰過ぎる演算(バグコンピューター)』! 『メモリーズブック』より抜粋!」

 

動けなくする能力【理不尽な静止】

 

操作能力を阻害する能力【スキルジャミング】

 

魔力操作を止める能力【マジックストップ】

 

魔法を分解する能力【キャンセラー】

 

筋力を操作する能力【コンロール】

 

思考を操作する能力【メンタリティー】

 

防御無効の能力【ディフェンドグッバイ】

 

攻撃出来ない能力【アタックグッバイ】

 

繰り返す能力【リピート】

 

終了させる能力【ジ・エンド】

 

止まる能力【ストッパー】

 

運を無くす能力【ラックドロップ】

 

絶対必中の能力【パーフェクトアタック】

 

気づいたら終わっている能力【後の祭り】

 

巨大砲撃の能力【ロストエデン】

 

魔道砲の能力【アルカンシェル】

 

何をされたか分からない能力【秘密主義】

 

悪夢を見せる能力【その目誰の目】

 

全て思い通りになる能力【エデンの園】

 

 スキルで演算能力を極限まで高めた俺の背後に19の能力を映したモニターが浮かぶ。以前ある模擬戦ではこれらに加え相手の無事を確保するため『終われば元通りの能力【悪い夢だったのさ】』という能力も入れていたが、こいつには必要ない。

 

「『プログラム』起動!!」

 

 これで終わった。プログラムが起動した瞬間に全ての能力があの転生者へと襲い掛かる。もし耐えていたらそれは人ではなく

 

「Guooooooooooooo!!!!」

 

「……ばけ…………もの…………」

 

「Giiiiii」

 

 ああ、知っている。こいつは星から生まれし存在。水星の究極の一。通称『ORT』。こんなの予想出来るかよ。今まで戦っていたのが星の意志だなんて。あれに勝てる手段はなんだ。考えろ考えろ考えろ。既存のスキルが通用するとは思えない。ならば新しいスキルを創るか? いや、とても

ではないが間に合わない。ならば……

 

「おーい、おーーーい?」

 

「五月蝿い! 今考え……戻ってる? 時間切れ?」

 

「いや話すならこっちだろ。さて……本当にすまなかった」

 

 土下座されてしまった。さっき態度が気に入らないって言ったからだろうか。改めて考えると俺って何やってんだ。確かにあのビスク・ドールは貴重品だったし、こいつの態度も気に入らなかった。だからって何をさせれば満足とか考えてなかった。駄目だな俺。

 

「人形の代金は弁償する。それだけじゃ足りないだろうし、俺が出来る限りの事はなんだってやる。」

 

「顔を上げてくれ。俺も頭に血が上っておかしくなってた。今回は互いに悪かったって事で…………いってぇ!」

 

「どうした?」

 

「いつつ、いや…………能力の代償……いてぇ」

 

 『過剰過ぎる演算(バグコンピューター)』の代償ですげぇ頭痛がする。

 

「大丈夫か? 酒飲むか?」

 

「そ、そこは……水だろ」

 

「悪い、水分は酒か血しか持ってない」

 

「うわ、ばみ、めぇ…………」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 一先ず輪弥の頭痛が落ち着くまで古物商の裏で休む事になった。要は酒を飲みながら輪弥の様子を見ている。

 

「男にそんなに見られても困るんだが」

 

「俺が悪いし」

 

「いや俺も悪いし」

 

「……さっき店長に頼んだら他の人形を3体用意してくれたぞ」

 

「マジか!!」

 

「おぉう!?」

 

 輪弥にとってはとてつもない朗報だったのか寝転がっていたベットから飛び起きた。それに驚いた要は椅子から崩れ落ちそうになったものの、なんとか踏み止まった。

 

「ありがとう要!」

 

「お、おお、喜んでもらえて嬉しいぞ」

 

「いやぁ、本当に嬉しいよ」

 

「それと気になったんだが、輪弥って色んな能力あるよな。それで壊れた人形を元に戻せないのか?」

 

「…………しかし要の能力はスゴイナァ」

 

「こっち向け」

 

「ははは……でもよくあんなの飼っていられるよな。喰われないのか?」

 

「比較的気に入られているみたいだから大丈夫だ。時々話し掛けてきたりもするぞ。でも最近はORT以外に居候が増えて五月蝿いんだ」

 

「それって大丈夫なのか?」

 

「言いにくいんだが、その居候ってのが俺の女性人格なんだ。だから問題はないんだよ」

 

 それを聞いた輪弥は信じられないものを見たように固まってから呟いた。

 

「…………お前も女性人格が居るのか」

 

「お前『も』って…………少し話そうぜ」

 

「ああ」

 

 まさかの共通点に2人の話は盛り上がる。これまで話す事がなかった女性人格が居る事による苦労や彼女達が話し掛けてきて面倒な事を楽しげに話していく。途中女性人格達が抗議をしてきたが2人は完全無視をする。

 

「よっしゃ飲みに行くぞー!!!」

 

「おっしゃー!!! その前に人形貰ってくる」

 

 古物商を飛び出していった2人の姿は夜の闇へと消えていった。翌日自分の世界に帰った輪弥は二日酔いどころか一週間ほど酔いに苦しめられ、その間女性人格にいびられ続けるのであった。




どんなコラボでも依頼してもらえればすぐに検討しますし、気分が乗っていればすぐにやるかも?

でも次回はsts本編に入ります。

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