チートじゃ済まない   作:雨期

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やっとだ……


第51話

 今から6年前、私、月村すずかと要さんの初デートの日、要さんは私に告白をしてくれた。そして恋人を作ってもいいと思える時期になったら気にしてくれとも言ってくれた。今日は聖祥の小中高合わせた卒業式。私は中学、要さんは高校の卒業。告白へ返答するには今日しかない、と思う。

 

「すずか、みんなで写真撮るんだって。参加しましょうよ」

 

「うん、すぐに行くよ」

 

 高校の卒業式はまだ後だから、今は中学のみんなと楽しまないと。大抵の人は聖祥の高校にそのまま行くけど、中には他の高校に行く人も居る。そうじゃなくても中学最後の日なんだからそれをしっかりと胸に刻もう。

 

「そういえばさっき要さん見たけど、凄い人気だったわよ」

 

「へっ? 人気って……まさか」

 

「うん。大学のあらゆる運動部から勧誘されていたわ」

 

 あ、うん、そっちか。もし要さんがスポーツ選手になったら大変だろうなぁ。あらゆる世界記録が一瞬で塗り替えられて、未来永劫抜かれないのは確定的だし。

 

「それと女の子にもボタンねだられたりしてたわよ。すずか、悠長に構えていたら取られちゃうわよ」

 

「へ、変な事言わないでよ!!」

 

「ごめんごめん」

 

 そっか、女の子にも人気なんだ。でも悔しくはないかな。他の子に要さんに関しては負ける気がしないからかな。もし私が負けるとしたらノエルくらいだもん。要さんったら昔からノエルの前だとデレデレして…………ちょっとイラっとしちゃった。

 

「す、すずか、なんか黒いオーラが見えるわよ」

 

「オーラなんてものあるわけないじゃない。アリサちゃんは面白い事言うね」

 

「魔法があるからオーラくらいあってもおかしくないわよ」

 

 一理あるね。魔力以外の力の調査なんて面白いかも。今度あの室長さんと話し合ってみよう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 高校の卒業式は終わったはずなのに要さんが全く見当たらない。携帯に連絡しても返事がない。なのはちゃんにお願いして念話してもらったら『今は忙しい』って言われたみたい。絶対に何かおかしい。

 

「全く、どこほっつき歩いてるのかしら」

 

「要君に限って何か事件に巻き込まれるなんて事はないはずだけど」

 

「むしろ巻き込まれやすいと思う。でも要なら簡単に切り抜けるからおかしいね」

 

「要さんは人気やから第2ボタン強奪されとるんとちゃう?」

 

「大正解」

 

「「「「「ひゃあっ!?」」」」」

 

 き、気が付かなかった。要さんにそんなつもりがなくても気配もなく後ろに立つのは止めてほしい。心臓に悪いよ。

 それにしても凄い格好。制服が欠片しか残ってない。下半身は死守したみたいだけど、上半身は所々肌が露出してる。

 

「悪意のない弱者の暴力ってこえーな。抵抗できねぇ」

 

「凄い人気、ですね」

 

「大抵が俺に恩がある奴みたいでな。なんでも俺が覗き魔ぶっ飛ばしたり、ストーカーぶっ飛ばしたり、痴漢ぶっ飛ばしたり、カツアゲぶっ飛ばしたりした時に助けてもらったとか」

 

「助けた中には男の人も居たんでしょう。その人達も制服欲しがったの?」

 

「ああ。キモいったらありゃしねぇ。あ、すずかにこれやるよ。いらなかったら捨ててくれ」

 

「これ、もしかして第2ボタンですか?」

 

「一応取っといた」

 

 卒業式の想い出の1つとして貰えるなら貰おう。

 

「じゃあみんな揃ったし、記念撮影だね」

 

「おう。カメラの準備は任せな」

 

 要さんが三脚にカメラを設置してタイマーを起動させた。そして一瞬にして私の隣に移動した。ここでそのスペックを活かさなくてもいいのに。

 

「そろそろだね。みんな、ポーズとって……」

 

ーーパシャッ

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 帰りは私と要さんの2人きり。写真が撮れるとすぐにみんなは帰ってしまった。

 

「あの……」

 

「どうした?」

 

「……少し冷えますね」

 

「春が近づいたとはいえ、まだ3月だしな」

 

 あの話題を切り出そうとしてもいざとなると怖じ気付いてしまって変な話に切り替わってしまう。要さんから話してくれたら楽なのにそれをしようとしてくれない。本当に待ってるだけなんてズルいなぁ。

 

「すずか? おーいすずかさーん?」

 

「ふぇっ? な、なんですか?」

 

「もう家だぞ」

 

「…………あ」

 

 もう、着いちゃったんだ。結局話せなかった。もう今日は無理かな。こうなったら何も言えそうにない。

 

「じゃあ要さん、また、会いましょう」

 

「またな………………なぁ、少しいいか?」

 

「はい?」

 

「もしかしたらまだ早いかもしれんし、ここまで気にしている俺が自意識過剰なのかもしれんが、俺はお眼鏡に叶わなかったか?」

 

「…………えっ?」

 

「今日珍しくアピールさせてもらったのに何の反応もねぇからかなり心配になったんだよ」

 

「アピール?」

 

「気付いてなかったのかよ。いや、それならそれでいい」

 

「…………クスッ」

 

 なんだ。要さんも同じような気持ちだったんだ。私だけだと思って緊張していたに、そんなし心配の必要は最初からなかったんだ。

 

「要さん」

 

「おう」

 

「私と付き合ってもらえますか?」

 

「よろこんで」




アリサ「私達は月村家に先回りして監視カメラで見てました」

シャマル「あの後すぐに要君は帰っちゃったわね。どうしてそこで攻めないのかしら」

アリサ「本当ですよね。あのまますずかの部屋に突撃すれば《ヤーン》な事になったかもしれないのに」

要「アホか」

すずか「健全なお付き合いは大切なんだよ」

アリサ・シャマル「「!?」」

要「そうビビるな。ただ顔出しただけだ。仕事頑張れよ」

すずか「またね」

アリサ「え、またね」

シャマル「本当に顔出しただけだったわね」

アリサ「えっと、今日は何の日やりますか」

シャマル「今日12月1日は『映画の日』ね」

アリサ「映画かぁ。映画なんて最近テレビの○曜ロードショーでしか観てないなぁ」

シャマル「映画館に行って観る映画は格別なのに」

アリサ「ちなみに作者が忘れられない映画は『ぼくらのウォーゲーム』ですって。同時上映のワンピースの映画は欠片にも残ってないとか」

シャマル「ではまた次回ね」

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