ーープルルルプルルル ガチャッ
「はいもしもし、一条です。あ、士郎さんどうも。えっ、マジっすか。分かりました。はい」
ーーガチャッ
「アリストテレス、出掛けるぞ」
《どちらまで?》
「ミッドの病院。なのはが怪我したとさ」
《……はい?》
「怪我だよ、怪我。どうせだしすずかとアリサも連れていくか」
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いきなり過ぎて驚けなかったが、あのなのはが怪我して入院か。大方かなりの無茶をやらかしたんだろう。全く、一度ガツンと言ってやらないとな。
《この病室のようですね》
「なのは! 無事!?」
おっと、押され切れずにアリサが飛び込んでしまった。病院では静かにしないと…………
「ハフハフッ! ムグッ、ゴックン。おかわり!!」
「はいよ! 蕎麦やで!!」
「ズルズルッ! あ、要君にアリサちゃんにすずかちゃん、どうかし」
ーーガツンッ
「にゃあっ!!?」
人が心配して見舞いに来てやったのにこいつはなんでガッツリと飯を食ってんだ。本当に怪我人か? というか病室にキッチンと料理人(はやて)を持ち込むんじゃねぇ。
「い、痛い……斬られたのよりよっぽど痛い」
「これはなのはちゃんが悪いと思うよ。って斬られたんだ」
「うん、これ」
なのはが服を捲って腹を見せてくる。確かに腹に縫い目がある。怪我をしたのは本当か。しかし腹を斬られてよくこんなに飯を食えるな。
「なのは、いくら病院食が美味しくないからってはやてを使うのはいけないと思うわ」
「にゃはは……実は入院した切欠は怪我なんだけど、怪我した理由が疲労と栄養不足で上手く避けられなかったからで、お医者さんにとにかくしっかり休んで食べろって言われてるの。怪我自体は大した事ないんだよ。痕も残らないって」
「……あんた馬鹿ね」
「うにゃ、心配かけてごめんね」
「はやて! 食材買い足して来たよ! あ、要達もお見舞い?」
「ようフェイト。まあ、見舞いだな」
もう呆れて帰ろうかと思ったが、一応見舞いだし、なのはを怪我させたのが何なのか気になる。そこら辺は話をしておかないとな。
「おい、怪我した経緯を話せ」
「えっと、ヴィータちゃんと仕事帰りに透明化していた機械に襲われたの。要君との訓練をしてなかったら気付く事なくやられてたかもしれないけど、何とか避けてこの程度の怪我で済んだの」
「機械は?」
「ヴィータちゃんが倒すと同時に木っ端微塵に爆発しちゃったよ」
「ヴィータも最初は自分のせいでなのはちゃんに怪我させてもうた思ってたみたいやけど、お医者さんに話を聞いたら怒って帰ってもうたわ」
「それは仕方ないな」
謎の機械ね。ステルス機能付きでなのはクラスのバリアジャケットを容易に切り裂いて怪我を負わせるレベルのものと考えると一般魔導師には恐ろしいが、はっきり言って俺には関係ない敵だな。今後同じ事が起こらないよう周りの奴らの訓練に付き合うか。
「はー、安心したらお腹減ったわ。はやて、私にも何か作って」
「肉まんなら数があるから蒸し上がるまで待ってぇな。要さんとすずかちゃんはどないする?」
「ミッドに来たら行く場所があるんだ。そこにすずかと行ってくる」
「あそこですね。行きましょう」
「デート? デートなんか? えぇなぁ、若くて」
「はやても若いよ?」
「そういう意味じゃないと思うよフェイトちゃん。じゃあね要君、また来てね」
「おう」
病室を出る時に誰かが『早く付き合えばいいのに』と言ったのが聞こえた。俺だって付き合いてぇよ。でもすずかから切り出してくれない限り俺からは何も言えない。そういう約束なんだから。
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ここは管理局の技術部。ここで俺とすずかはとある武器の開発の協力、いや責任者的な位置に居る。
「失礼します。やってますか?」
「やあ要君にすずか君、よく来てくれた。ささ、お茶を用意するからそこに座っていてくれたまえ」
俺達を丁寧に出迎えてくれたのは技術部の室長さん。22歳という若き天才で、俺達の提案した武器にいち早く興味を示してくれた人だ。結構なイケメンなのに彼女は居ないらしい。
「お待たせ。日本茶で良かったかな?」
「はい」
「あの、武器はどうなってます?」
「君達の最終チェックが欲しかったところだ。おーい、誰かあれを持ってきてくれ」
「分かりました」
職員が急いで持ってきた箱を開けると、そこにあったのは質量兵器としてミッドでは禁止されている拳銃だった。見た目は俺達の提案通りの仕上がりだ。さて、使い心地はどうかな?
「1発いいですか?」
「あそこの的に向かって頼むよ」
「はい」
ーーパンッ
軽い音と腕に響く衝撃。撃ち心地は問題ない。そして撃ち出されたのは実弾ではなく魔力弾。そう、これは一応は魔法武器なのだ。
「要さん、私も撃っていいですか?」
「ああ、やってみろよ」
ーーパンッ パンッ
すずかも数発撃ってその出来を確認している。いやはやここまで完璧な代物が完成するとはな。魔力弾も実弾のように回転しながら飛んでいったし、速度も実弾に勝るとも劣らない。穴の空いた的を見るに威力も申し分ないだろう。
「完璧ですね。弾数はどうなってます?」
「大気中の魔力を集めて自動生成されるから実質無制限だ。しかし1発生成するのに通常8分、魔力が多い場所でも3分は掛かるかな」
「無駄に連射出来たら犯罪者に渡った時に危険ですし、そのくらいがいいと思います」
「その対策を私がしていないとでも? この武器は今は誰でも使えるように設定してあるが、掌の血管や皮膚で本人認証が可能となっている。もし盗まれても安心さ」
「そこまでやるとは、流石です」
俺は犯罪者に渡った時の事なんて一切考えていなかったが、管理局の人だもんな、考えるよな。何にせよこれで完成には違いない。
「これで魔法が使えずに劣等感に苛まれていた局員を少しでも救えるといいのだがね」
「俺としてはそんな大層な事は考えてませんよ。ただすずかの護身用の武器を作ってやりたかっただけですから」
「いやいい仕事をしたよ。さて、この武器になんと名を付けようか」
「元が拳銃ですし、魔法拳銃、マジックガン、なんか違うな。魔導師から取って魔導式拳銃、いや拳銃は英語で魔導式ハンドガンはどうか。待てよ、もっといい名前が」
「要さん、私は魔導式ハンドガンでいいですよ。これから新しい武器を作る時に魔導式シリーズなんて統一出来ますし」
「そうか? なら魔導式ハンドガンだな。室長さん、ありがとうございました」
「こちらこそ礼を言うよ。さて、早速量産するぞ!!」
室長さんやる気満々だな。ま、俺達の個人的なお願いが今後他のものに活用出来るなら存分に使ってくれればいいさ。さて、またなのはの病室にでも行くか。どうせ見舞いのために今日は色んな用事をキャンセルして1日中暇だし、あそこに入り浸ろう。
アリサ「なのはが怪我をしたのはオマケみたいよ」
シャマル「本来なら大事なのにこの作品だと微妙な事件になっちゃったわね」
アリサ「まあシリアスが苦手な作者のやる事ですから」
シャマル「それと魔導式ハンドガンなんてものが登場ね」
アリサ「あれはリメイク前からこの作品にあった地味アイテムですね。魔導式の後に武器の名前を付けるだけで何でも魔導式シリーズです。じゃあ今日は何の日やりますか」
シャマル「本日11月26日は『ペンの日』よ」
アリサ「ペンが作られた日ですかね?」
シャマル「ペンはPENって書いて、Pは詩人・劇作家、Eは随筆家・編集者、Nは小説家を意味しているそうよ」
アリサ「書く人を示していたんですね。こんな駄作者にも一応関係ある日なんですね」
シャマル「こんな作者を小説家なんて言ったら駄目じゃない」
アリサ「それもそうですね。ではまた次回」