チートじゃ済まない   作:雨期

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友人に誘われて東方の同人カードゲーム『VISION』を始めた今日この頃。カードゲームはデッキを考えている時が一番楽しいです。


第44話

 リインフォースの肉体が完成したとの報告を受けた。ぶっちゃけかなり不安だ。はやての要望を全て叶えたとしたらリインフォースに同情せざるおえない。上司(主)にセクハラされるとかどこのエロ本だよ。

 それと他にも重大報告があるとか。何やらフェイトに関する事のようだが、思い当たるのはプレシア関連の事しかない。でも祝い事みたいだし。あ、今回の集合は翠屋だ。ケーキとコーヒーがタダにしてもらえるとか。

 

ーーカランカラン

 

「いらっしゃい要君。一番乗りだね」

 

「なのはが一番だろ」

 

「いや、私の家だから当然だよ」

 

「やあ要君。今日はお祝い事だそうじゃないか。はいコーヒー」

 

「ありがとうございます士郎さん。ただ俺も詳しくは知らないんですよ」

 

 まずはコーヒーを一口。うーん、やっぱり士郎さんのコーヒーが一番だ。最近こうホッとする時もなかったから余計に美味しい気がする。

 

ーーカランカラン

 

「お邪魔します。本日はわざわざ貸し切りにしていただいてありがとうございます」

 

「いらっしゃいませ。ささ、席はこちらですよ」

 

 管理局組が到着したようだ。そうそう、リインフォースは月村家で調整してからすずかと一緒に来るようだ。まだその容姿はすずかとエイミィ以外は知らない。すずかは20分くらい遅れて来る

そうだから次来るのは八神一家だろうな。それまで子犬アルフで遊んでいよう。

 

「うりうり、ここがええんか? んっ?」

 

「クゥーン♪ って何するんだい!!」

 

「アルフって私以外にもこんな姿見せるんだ。ふーん」

 

「ち、違うんだよフェイト! これは」

 

「ふふ、冗談だよ」

 

ーーカランカラン

 

「こんにちは!」

 

「やあアリサちゃん、今日も元気だね」

 

「…………アリサも呼ばれてたのか」

 

「何それ、要さん酷い…………」

 

「ハハッ、冗談だ。こっち来いよ」

 

 あぶねぇ、マジで知らなかったからつい本音が出てしまった。アリサにはもっと他の場所で出番があると思うんだ。

 

ーーカランカラン

 

「お邪魔しまーす」

 

「いらっしゃい。君がはやてちゃんだね。そちらはご家族で良かったかな?」

 

「はい。今日はよろしくお願いします」

 

 おっと、八神一家のご到着のようだ。はやてはヴィータに支えられながらではあるが、しっかりと自分の足で歩いている。闇の書が消滅してからは目覚ましい回復を遂げている。

 

「なのはちゃん、こんにちは」

 

「こんにちはなの」

 

「なあ、またあの美味いケーキが食えるんだよな」

 

「みんなが集まってからだよヴィータちゃん。お母さんったら張り切ってるからあの時のクリスマスケーキより美味しいかもね」

 

 楽しそうで何よりだ。それに桃子さんが張り切ってるのも朗報だ。絶対に美味い。食わなくても分かる。そうだ。まだ時間もあるし、ちょっと気になっていた事をシグナムとシャマルに訊いてみよう。

 

「ようシグナムにシャマル。元気か?」

 

「ああ、元気だ」

 

「要君は当然元気みたいね」

 

「健康が自慢だからな。ちょっと訊きたいんだが、はやてのセクハラは日常的なのか?」

 

 オリジナルリインフォースと別れた時は寂しさを隠すつもりであんなセクハラ発言をしたのだと信じたい。決して日常的にセクハラなどと子供らしくない変態行為をするなど…………

 

「「…………」」

 

「…………無理するなよ」

 

 どうやら日常的にやっているようだ。いつか友人にも手を出すかもしれん。性癖を治せとは言わんが、ストッパーが必須だ。

 

「難しい顔してどないしたんです?」

 

「てめぇをどうするか悩んでるんだよ。セクハラ娘が」

 

「あいた!? セクハラは認めますけどいきなり叩かんで下さい」

 

「認めるなよ…………」

 

 そこは無駄と分かっていても否定する部分だろ。ここまで図太いとストッパーが居ても無意味だな。俺が女でなかった事に感謝しよう。いや流石のはやてでも俺みたいのが女だったら手を出せないか。

 

「士郎さん、コーヒーのおかわり貰えますか?」

 

「勿論だとも」

 

 すずかが来るまでの時間、それぞれが自由に過ごす。お喋りするのも居れば、俺のようにコーヒーを飲むものも居る。まったりとした時間が過ぎていく。

 

ーーカランカラン

 

「お待たせしました!」

 

「おお、予定より遅れたな。どうした?

 

「リインフォースさんがナンパに会っちゃいまして」

 

「いいじゃないか。つまりは容姿が最高なんだろ」

 

「期待させてもらうで」

 

 そこ、手をワキワキ動かすな。期待しているのは全員同じ気持ちだが、お前の期待は全く別方向じゃないか。

 すずかはそんな様子を笑って見てから店の外へ手招きをした。そしてやって来たのはご存知リインフォース。その姿はオリジナルとなんら遜色ない。見事な仕事だ。はやてもまるで何かに魅了されるかのようにフラフラと近付いていく。

 

ーームニュ

 

「ひゃいっ!? あ、主…………?」

 

「うぅっ…………フカフカの胸してやがるっ…………! ありがてぇ…………犯罪的だ…………」

 

 セクハラ娘まさかの大号泣。というか名言を汚すな。

 

「あれは…………衣装チェンジはあるんか?」

 

「あるけど…………一先ず胸から手を離してあげて」

 

「ええやん。なあアインス」

 

「アインス、ですか?」

 

「うん。新しく考えた名前やけどどうかな?」

 

「良い名です。ありがとうございます。しかし胸を触るのは、アァン!」

 

「聞こえんなぁ~」

 

 もうあれはどうでもいい。今日はリインフォース、いやアインス以外にも重大報告があるんだ。どんな事かは知らないが話を進めさせてもらおう。

 

「リンディさん、フェイトの事で発表があるんですよね」

 

「そうよ。みんな驚くかもしれないけど、フェイトちゃんが私の養子になりました」

 

「これからはフェイト・T・ハラウオンって名前になるけど、今まで通りフェイトでいいよ」

 

 ほう! そりゃめでたい。最近リンディさん達とフェイトが一緒に過ごしていたのはそういう手続きをしていたからか。

 だがこうなってくるとどうしても思い浮かぶのがプレシアの存在だ。あいつはフェイトなんてどうでもいいと考えているのは間違いない。しかしフェイトとしては何か言っておきたいはずだ。

 

「なぁクロノ」

 

「小声でどうした」

 

「養子になるのが決まった後、フェイトはプレシアと会ったのか?」

 

「…………いや。プレシアが面会謝絶した。どうあっても会うつもりはないらしい」

 

「そうか…………なら今度俺が会いに行ってもいいか?」

 

「どういうつもりだ?」

 

「直感だが、俺となら会うんじゃないかと思ったんだ」

 

 あいつにとって俺は全てをぶち壊しにした化け物だ。そんなのと普通は会いたいなんて思うはずがないのに、俺にはそれが出来ると思えた。それに伝えておきたい事もあるんでな。

 

「何2人でこそこそしてるの? 男の子が少ないからって僻んじゃ駄目だぞ」

 

「馬鹿言うなエイミィ。僕はそんな小さな男じゃない」

 

「背はちっせぇけどな」

 

「何だと!?」

 

「ひゃー、クロノが怒ったー」

 

 この後コンプレックスを刺激してはいけないと士郎さんの拳骨を受けてしまった。最近受けた攻撃の中で一番痛かったかも。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 祝い事から数日後、要は管理局の奥深く。最も罪の重い次元犯罪者が集まる牢獄を歩いていた。理由は言うまでもなくプレシアとの面会のためだ。

 要がプレシアの牢屋の前につくとプレシアは椅子に座って待っていた。

 

「よう、無理しないで寝ていてもいいんだぜ」

 

「計画を台無しにしたガキの顔はしっかり見ておきたいのよ。死んでも呪うために」

 

 要はここに来る直前、看守からはプレシアの余命はほぼないと聞いていた。本来なら呼吸すら激痛であろう身で要を睨むのは執念としか言えない。

 

「朗報だ。フェイトが養子に取られたぞ。これでお前との関わりもより薄くなったわけだ」

 

「人形がどうなろうと知らないわ。そんな事のために面会に来たのかしら?」

 

「これでもメインの話なんだがな。まあ他にも言いたい事があってな。アルハザードが存在する可能性のある世界に行ってきた」

 

「なっ!? どこなの!?」

 

「次元の狭間とかいう世界だ」

 

「行き方を教えな、ゴホゴホッ…………」

 

「落ち着けよ。なんでも何らかの理由で世界から弾かれたり消されたりしたものが集まる場所らしいぜ」

 

「…………意味が分からないわ」

 

 俺だって意味が分からん。偶然あそこへ飛んだんだからな。アルハザードだって未来の俺がある『かも』って言っていただけだしな。

 

「何故そんな事を今話したのよ。意味が分からない」

 

「あっ、そっちね。意味は簡単だ。人に恨まれ続ける人生も嫌なんで少しは希望を振り撒いておこうと思っただけ。もしかしたら死後に霊魂が次元の狭間へ飛ぶかもしれないぞ」

 

「科学者は死後の世界や霊魂なんて非科学的なものは信じないわ。覚えておきなさい」

 

「そんな非科学的なものにもすがりたいくせによく言うぜ。じゃあ俺はもう行く。フェイトには無駄口叩けるくらいに元気だったと報告しといてやる」

 

「勝手になさい」

 

 そんな言葉に対し要は笑みを浮かべ立ち去った。要の姿が見えなくなったのと同時にプレシアの口から血がこぼれ落ちた。あんな奴の前で弱味は見せられないという小さな意地で耐えたが、病魔に蝕まれた身であれだけの会話は流石に厳しいものがあったようだ。

 そんな死に体な自分の様子をまるで他人事のようにプレシアは感じていた。おそらく残り数時間の命。最早思考以外の機能はなくなり始めている。ならばこれまでの人生を振り返り、欠片も信じていない死後の世界を想像してみようと考えた。

 

ーードス

 

 だがそれらの思考は胸を貫いた何かによって遮られた。眼球をゆっくりと動かし何が起こったのかを把握する。胸辺りには子供らしき腕が飛び出しており、自身のリンカーコアを掴んでいる。

 

「良い知識、良い欲望、良い執念じゃ。儂の糧となれ」

 

 背後で誰かが呟いた。しかしその呟きはプレシアには届かない。自身に起こった出来事を把握したと同時に彼女の意識は飛んでいたのだ。

 リンカーコアを抜き出した存在は魔力を奪いきったところで腕を抜いた。それにとって重要なのは魔力とそこに記録されたデータであって彼女がどうなろうと知った事ではなかった。

 翌日プレシアは遺体で発見された。医師の診断では病死とされ、小さな葬儀が行われた後にアリシアと同じ墓に眠った。




アリサ「本編で作者が急に思い出したので参加したアリサです

シャマル「近いうちに出番が無くなるシャマルです」

アリサ「でもこうやって後書きで出られるだけ幸福者ですよ。毎回出られるんですから」

シャマル「だったら私達のように本編で出番が無い人を喚ぶ?」

アリサ「それは私達の出番が少なくなるから駄目です」

シャマル「意外と心が狭いのね」

アリサ「そんな事より今日は何の日ですか?」

シャマル「ええと、本日8月16日は『女子大生の日』よ」

アリサ「確かシャマルさんはINNOCENTで医大生でしたね」

シャマル「知っていたのね。この作品では取り扱わないからスルーされると思ったわ」

アリサ「流石にそこまで冷たくないですよ。大学って楽しそうですよね」

シャマル「やる事をやれば基本自由だもの。人生の夏休みは堪能しないと」

アリサ「ではまた次回」

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