チートじゃ済まない   作:雨期

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異常気象マジ勘弁


第43話

 地球に帰るのは大変だったぜ。大気圏突破はスリルがあったけどもうやる気はしないな。隕石にもぶつかったぞ。まあ全部嘘だがな。帰りも転送だったよ。

 帰ってきてからはクロノから今回の事件の裏であった事を聞いたが、あのグレアムっておっさんはやっぱり関わってたか。俺が潰した仮面はそのおっさんの使い魔だったようで、怪我の具合についてはかなり悪いらしい。

 

「相手が犯罪者といえど物事には限度がある。君のそれは常識を著しく逸脱しているんだ。リーゼロッテは下半身不随な上に眼は見えなくなった。リーゼアリアは両手足の切断だぞ。これ以降やり過ぎるような事があれば君を捕まえる事になる」

 

 こんな感じでクロノから説教を受けてしまった。やり過ぎだったのは認める。あくまで管理局とは友好的でありたいからなるべく言う事は聞こう。だがリーゼ姉妹に謝罪することはなさそうだ。俺が行ったら面会謝絶だったからな。

 そうそう、今はリインフォースに頼まれたある事をぶっ壊すためにエイミィと2人で話し合っている。

 

「でもリインフォースの中にまだ闇があるなんて信じられないよ」

 

「末期癌のようなものだろう。どんなに取り除いても取り除けず、僅かに残ったそこから再生する。更に言えばあいつはORTの因子も取り込んだ。その再生力は凄まじいものだ。って本人も言っていたからな」

 

「だから要君に自身の破壊を頼んだんだよね。なのはちゃん達にも頼んだのかな」

 

「可能性は高いな。だがそんな事をしてやるつもりはない」

 

「私だってそうだけど、どうするの? 闇は取り除けないんでしょ」

 

「別に取り除くのは闇でなくてもいいだろ」

 

「へっ?」

 

 エイミィは頭が固いな。こういう時はクロノといい勝負じゃないか。さて俺の考えを説明しようか。

 リインフォースは夜天の書の管理人格。つまりはデータだ。あいつにとって大切なものは主であるはやて。そしてはやてが大切とするものは家族。別に特別な力なんか必要ない。必要なのは人格と記憶だけ。

 

「つまりはAI部分のみを何かにコピペする感じでどうだ? 肉体面は後回しという形なら早めに造れると思うんだが」

 

「やる価値はあると思う」

 

「よし。必要な材料があれば言ってくれ。すぐに回収する」

 

「……ねぇ、要君からすればリインフォースも、その……道具みたいなものでしょ。どうしてそこまで執着するの?」

 

「そうだな。だが俺が蔑ろにするのは代用品があるものだけだ。リインフォースは代用品がないだろ」

 

「だったらアリストテレスだって」

 

「そう言われると思ってた。でも俺からすれば魔法を使う道具は他にもある。別にこいつである必要はないんだよ」

 

 魔法を使う道具は数あれど家族となるもの道具は1つだけ。リインフォースはそれであり、アリストテレスはそれではない。簡単な答えだ。あいつは別に家族でもなけりゃ思い入れがあるわけでもないってこった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 エイミィから渡された材料リストの中には地球で採れるレアメタルもいくつか含まれていた。自然界で採れるものだから自分で採りにいってもいいんだが、ここは人に任せて他の材料を採りに行くとしよう。

 

「説明した通りです。協力をお願いできますか忍さん」

 

「オッケー。この程度のレアメタルなら何万でも余裕よ」

 

「はは、そこまではいりませんよ」

 

「しかしこんなものを使うなんて魔法も結構近代的なのね」

 

「むしろ魔法の方が進んでいますよ。高度な科学技術は魔法と変わらないって誰か言っていましたし」

 

「アーサー・C・クラークの言葉よ」

 

 へぇ、そうなのか。流石忍さんは博識だな。

 

「でも魔法が科学技術に近いならすずかをそっちに送ろうか?」

 

「はっ? すずかですか。あいつって科学がそこまで得意なんですか?」

 

「趣味レベルの機械弄りだから私の足下くらいだけどね。それでも役に立つはずよ。それに要君と付き合うならそっちの技術を学んでおいて損はないでしょう」

 

「付き合うなんて決まってないですよ。すずかの意思に任せてますから」

 

「そんな事言ってるとすずかを取られちゃうわよ」

 

 それは……嫌だな。すずかは将来魅力的な女性になると思うんだ。でも約束しちまったからな。約束が全うされた上で他の男と付き合ったとしたら諦めるしかない。俺に出来る事は約束の時までに男を磨く事しかない。でもどうやって磨けばいいんだ?

 忍さんの言葉に悩まされているうちにすずかが来ていた。全く気付けなかった。説明も終わってるし。

 

「すずか、やる?」

 

「やる!」

 

「即答かよ」

 

「だって未知の技術に触れられるんですよ! こんな機会が来るのは一生に一度あるかないかなんです! 分かりますか!」

 

「あー、そーだな。ま、まあすずかが楽しそうで何よりだ。行くか?」

 

「ハリー! ハリーハリー! ハリーハリーハリー!」

 

「それ吸血鬼が違う…………」

 

 こんなにテンションの高いすずかは初めてだった。それだけ機械が好きだったんだろう。でもここまで興奮されるとこっちが怖かった。

 そんな経緯もありすずかが『リインフォースを助けてハッピーエンドだプロジェクト(命名:エイミィ)』に参加する事になったが、その貢献は凄まじいものであった。3日で試作品を完成させ、アリストテレスを使って実験、調整を行い、僅か5日で完成までこぎ着けた。

 その後何となくエイミィがデバイスマイスターという資格の試験問題をすずかに与えたところ、正答率5割を叩き出したらしい。これは魔法技術に触れて5日の人間としては異常みたいだ。すずか怖い。

 

「今日が決行日だ。関係者は全員外に集めてある」

 

「これが失敗したらリインフォースは…………」

 

「いけますよ! 暗い顔をしたら結果まで暗くなりますよ」

 

「ま、心配なのは全員同じだ。ただ心配してもどうしようもない事はある。俺達の造ったこいつを信じよう」

 

 俺の手には小さな黒い箱が握られている。これが俺達の造ったリインフォースの人格や記憶をコピーする機械だ。上手くいくか知っているものは誰もいない。さあ始めようじゃないか。

 

「待たせたか?」

 

「ううん、待っとらんけど…………本当にリインフォースは救えるん?」

 

「正確にはリインフォースの人格と記憶だけだ。それも上手くいくか分からん。あくまで移すのではなくコピーだから何か欠損する可能性もある。それでもいいな?」

 

「…………リインフォースは、どうなん?」

 

「私ですか?」

 

「うん。だってリインフォースの問題やもん」

 

「私は…………正直に言うと主と共に過ごしていたいです。しかし新しい私がその役目を担ってくれるなら、新しい私に全てを託します」

 

「分かった。要さん、よろしくお願いします」

 

「ああ。そうだ、なのはとフェイトはリインフォースを消す…………天国に送る準備をしろ。結果はどうあれオリジナルリインフォースは居なくならないといけない」

 

「…………それはどうしようもないの?」

 

「何か他の手段を探せば…………」

 

「どうしようもないし時間もない。覚悟を決めろ。リインフォースは決めたぞ」

 

「「……………………」」

 

 不安そうな顔しやがって。不安なのは俺も一緒なんだ。だけどやらなかったら闇の復活という結果になる。ならやらないよりかやった方がいいんだ。そう自分に言い聞かせないとやる気すら起こらない。

 

「いくぞ。起動」

 

 黒い箱から魔力のケーブルが何本も伸び、リインフォースの体へ刺さっていく。体験したアリストテレスが言うには相当の苦痛が襲うらしいが、リインフォースは一切声を上げない。はやてを心配させないためか、大した奴だ。

 

「残り30秒……………………20秒……………………10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」

 

 0。ケーブルが箱へと戻っていく。成功したかどうか判断するには箱にコピーされたAIが話してくれる事でしか分からない。

 

「…………どうだ?」

 

『良好だ。闇の気配もない。記憶もはっきりとしている。見事な仕事だ』

 

「……………………ふひぃ~」

 

 安堵から思わず地面に座り込んでしまった。少々ノイズが掛かっているが、箱からはリインフォースの声がはっきりと聞こえた。

 いつもいつも勝算のある戦いしかしてこなかった俺からすれば今回のプロジェクトはとんでもないストレスになっていたようだ。手足が少し震えている。

 

「成功なのか。自分の声を聞くのも不思議なものだな。私よ、主と騎士を頼むぞ」

 

『任せろ私。肉体がないから限界はあるが、私の役目は全うしよう』

 

「主はやて、新しい私とどうか仲良く」

 

「もちろんや。せやから…………リインフォースは、ひっく、何も……しんぱ、い……」

 

「泣かないで下さい。泣かれては心配で……離れたくなくなるではないですか」

 

「ずびっ…………心配いらんで。リインフォースはゆっくり休み。何十年後になるか分からんけど、私もいつかそっちに行くから」

 

「…………はい」

 

 はやての気持ちは分からんではない。あくまで黒い箱のリインフォースはコピーだ。そう簡単にオリジナルと決別するなんて出来るはずがない。こういう時は戦いしか出来ない自分が本当に惨めに感じる。

 そういうどうでもいい後ろめたさからか俺はみんなから少し離れた場所に座って事のなり行きを見守った。はやてがリインフォースに最後の言葉を告げたのを確認するとなのはとフェイトが魔法陣を展開する。リインフォースの姿が徐々に消えていく。まるで雪のように粒子となり、最後に何か欠片を残して完全に居なくなった。

 

「…………すまんな」

 

 俺が転生した時に他人でも救える力を望んでいれば結果は違ったのかもしれない。そう思うとつい謝罪の言葉が出てしまった。だがそれを望んでいたら今の力はない。今の力だからこそ出来た事もあった。何事も一長一短と考えるしかない。

 

「はやてちゃん、そのリインフォースさんの新しい体だけど、1週間もあれば出来ると思うけど希望なんてある?」

 

「えっ、体造れるん? っていうか希望って?」

 

「オプションだね。魔法が使えたりとかそういうの」

 

「体を造ってくれるならそれだけでええよ。ただ胸は柔らかく、尚且つ張りがあって感度良好、それにそれに」

 

「おいっ!! さっきまでのしんみりした雰囲気はどうしたんだよ!!! というかなんだそのおっさんみたいな注文は!!!」

「悲しさと切なさを性欲に変えたらいかんのですか!!?」

 

「いかんだろ!!!」

 

 全く、無理して元気に振る舞う必要なんてないのに…………

 

「胸以外にもお尻もええなぁ。こう、キュッとしまった感じの」

 

 無理して元気に…………

 

「そや! バリアジャケットの応用で服をいつでも変えれるようにしよう!! あんな服やこんな…………グフフ」

 

 無理して…………

 

「たまらんわぁ。うっ…………鼻血が…………」

 

 もうやだこのおっさん少女。




アリサ「はーい、今日もやるわよ」

シャマル「よろしくね」

アリサ「!?!?!?」

シャマル「そんなに驚く事ないじゃない。今回からは私がすずかちゃんの代わりにパートナーになったのよ」

アリサ「それならそれで番組前に挨拶に来て下さい」

シャマル「まだルールがよく分かっていないのよ」

アリサ「嘘言わない。貴女も後書きベテランでしょう」

シャマル「知らなーい」

アリサ「くっ、まあいいです。今日は何の日やりますよ」

シャマル「本日8月8日は『そろばんの日』ね。珠を弾く音からきているわ」

アリサ「パチパチって事ですね。そろばんってやった事がないわ。いつか授業でやるみたいだけど」

シャマル「でも習い事でそろばんをやる子って結構いるわよね。やっぱり計算が早くて損はないものね」

アリサ「そうですね。シャマルさん初回ですし早めに終わりますか」

シャマル「もっと遊びたいわ」

アリサ「我慢して下さい。ではまた次回」

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