チートじゃ済まない   作:雨期

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やりたいとこまでやったら無駄に長くなったでござる。


第39話

「全員プレゼントは用意してあるな? これから病院乗り込むぞ!」

 

「「「「おー!」」」」

 

 変なノリだがこれからやるのはただのお見舞いだ。結局はやての脚は良くなっていないらしい。やはり闇の書が完成しないと治らないのだろうか。

 しかしはやてと会うとなればシグナム達と会う事にもなるだろうが、なのはとフェイトは大人しく対応してくれるか心配だ。流石に病院内で一般人の目の前となれすぐに争うなんて事にはならないはすだが、どうなろうと俺が仲介する事になるんだろうな。

 

「ちょっとはやてちゃんの病室の番号を訊いてくるね」

 

 周りを見回す限りシグナム達の姿はないな。はやての病室かな?

 

「番号分かったよ。行こう」

 

 なのはに続いてはやての病室へ向かう。エレベーターで上がり、八神はやてと書かれた表札が見えたところで全員が息を整える。入った時に言う言葉は決まっている。合わせるのはタイミングだ。

 

ーーコンコン

 

「はーい、どうぞー」

 

「「「「「メリークリスマス!!!」」」」」

 

「おおっ!? 来てくれたん!?」

 

「行くと言っただろう。約束は破らんさ」

 

「嬉しいわぁ。えと、そちらさんはなのはちゃんとフェイトちゃんとアリサちゃんやったよね。改めて初めまして、八神はやてです」

 

「よろしくねはやてちゃん」

 

「よろしく、はやて」

 

「よろしくお願いね」

 

「さあさあ挨拶が終わったならクリスマスプレゼントの時間だぞ」

 

「そこまでしてもらって。なんか悪い気がするわ」

 

「病人が遠慮するな。礼なら元気になった時に全員分の飯でも作ってくれたらいい。ほれ、受け取れ」

 

「何が出るかな~♪」

 

 はやては俺のプレゼントを早速開ける。包装されていたのは新品の鍋だ。なるべく実用的なものと考えて選んだらこれになったのだ。はやても嬉しそうな顔で鍋を眺めていたが、その表情が徐々に固くなっていく。

 

「あのー、要さん。これ福引きで当たったのちゃう?」

 

「よく気が付いたな」

 

「私も当たったから……」

 

「あっ…………」

 

「ええんやで。鍋は消耗品やから多くて損はないし」

 

「その考えはどうなんだ?」

 

 鍋をそんな風に見る奴は初めてだ。あれは長年使ってようやく壊れるようなものではないのか? 料理人の思考は分からん。

 まあ俺のプレゼントはなんか微妙な形になったが、俺以外が上手くやればいい。すずかは料理好きなはやてのために手作りミトンを用意したようだ。アリサは女の子らしく流行りの髪飾り。なのはは翠屋の特製クリスマスケーキだ。羨ましい。

 

「最後はフェイトだな」

 

「……………………」

 

「フェイト?」

 

「あっ! わ、私? ど、どんなものが良かったか分からなかったからおかしなものになったかもしれないけど、許してくれる?」

 

「許しても何も、プレゼント貰って怒る人なんておらへんよ」

 

「う、うん。これ、どうぞ!!」

 

 フェイトは何を持ってきたんだ? 包みからして瓶のようなものみたいだ。

 

「こ、これは!! マムシ酒!? 羨ましい!!」

 

「要君、お酒は二十歳になってからだよ。でもフェイトちゃん、どうしてお酒?」

 

「これを飲めば元気になるって聞いて」

 

 元気になるのは間違いないな。しかし元気になる部分があれだがな。

 

「はは、料理にでも使わせてもらうな。ありがとう」

 

ーーガチャ

 

「主、今戻り……」

 

「えっ、シグナム!?」

 

「テスタロッサ! そうか……今日だったか」

 

 また微妙なタイミングで。適当に外へ引っ張り出すしかない。

 

「悪いが少し外の空気を吸いたいんだ。どうも病院の匂いは苦手でな」

 

「ならシグナムに屋上まで案内させますわ」

 

「助かる。他にも来る奴はいるか?」

 

「私も行くの!」

 

「私も」

 

 はやては善意なんだろうが、ナイスな提案だ。なのはとフェイトも上手い具合に参加してくれた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 シグナムが召集したんだろうな。他のヴォルケンリッターも屋上に集まっていた。明らかに警戒するなのはとフェイトを尻目に俺から話し掛ける。

 

「日にちぐらい言った方が良かったか?」

 

「そうだな。主へのサプライズなのは分かるが、我々にも心の準備が必要だ」

 

「ちょっ、要君!? どうしてそんな親しげなの!?」

 

「プライベートの知り合いだからだ。わざわざプライベートを他人に報告する必要はないだろ」

 

「そうかもしれないけど、シグナムさん達は敵なんだよ」

 

「ああ、戦場では敵だ。だが日常でははやての家族だ。俺ははやての家族と知り合いになっただけだ。OK?」

 

「OKじゃないよ」

 

「バルディッシュ、セットアップ」

 

 通じるなんて思っていない言い訳を言っている間にフェイトが戦闘準備を整えていた。俺の話なんて関係ないんですか。そうですか。

 シグナム達もフェイトの様子を見てやる気を出しちまってるじゃねぇか。仲介なんて元から無理そうだ。ああ、結界も張られた。闇の書と夜天の書についても聞きたかったのに。

 

「やるしかないのか?」

 

「アタシ達だって最初からやる気はなかったよ。でもそっちがやる気あるからしょーがねぇじゃん」

 

「かったりぃ。戦いは嫌いじゃないが全く必要のない戦いはなぁ」

 

ーーズッ……

 

「ん? 体が」

 

ーードゴオォォォォン

 

「ごぁっ……………………!?」

 

 凄まじい衝突音が響くが、それは俺の体が地面へ叩きつけられた音だった。俺の周辺だけ重力があり得ないほど強くなっている。内臓がいくつか潰れたが、ほぼ無意識に力を解放してなんとか死は免れたようだ。

 全員があまりの出来事に固まっている中、シグナム達の後ろに影が見えた。警告しようにも声が出ない。喉まで潰れたか。再生まで間に合わない。

 

「闇の書よ。蒐集しろ」

 

 シグナム達のリンカーコアが闇の書に呑み込まれた。ふざけやがって。協力したと思えば裏切り? 何を考えているかさっぱりだが、これだけは分かる。あの仮面野郎は全員の敵だ!!

 

「なんのつもりだ!!」

 

「もうその重力に対応したか。化け物が。だがこちらの目的は達した」

 

「あぁっ!?」

 

「どう……して……!?」

 

「! はやてちゃん!? どうしてここに!?」

 

 はやてだと!? 病室に居るはずなのに! しかも俺でも分かってしまうほどの禍々しく強大な魔力。闇の書の魔力を集め終わったからか!?

 

「また、全てを破壊するのか……」

 

 姿が変わった……? もう意味わかんねぇ。あのはやてが変化した銀髪の姉ちゃんは破壊とか言ってやがるから敵としても、その前に殺る事があるよな。

 

ーーグチャッ

 

「グッ!? いぎぁ……アァッ!!」

 

「暫く芋虫の気持ちを味わってろ」

 

 仮面野郎の両手足を粉微塵にしてやった。作戦が終わったのにいつまでも眺めているてめぇが悪いんだぜ。

 

「はやてちゃん!!」

 

「はやて! 私達の事が分からないの!?」

 

「今主は私の中で眠っておられるのだ。お前達の声は届かない」

 

「ならてめぇは誰だ?」

 

「闇の書の管理人格」

 

「夜天の書じゃねぇんだな」

 

「! 懐かしい名だ。確かに夜天の魔導書の管理人格であった。もう戻れないがな」

 

「そうか。やるか?」

 

「当然だ。破壊こそが主の望み。それを叶えるのが私だ」

 

 破壊をはやてが望んでいるとは面白い事を言ってくれる。もしかしたらはやては本当にそれを望んだかもしれないが、どんな人間でも一時の感情で変な事を望むもんだ。それが分からないとはやっぱり機械だな。

 

「一条要よ。お前の力は面白いな。使わせてもらう」

 

「はぁ? 何を、ってうおぉ!?」

 

 眼前には数千、数万という魔力弾。それが全て針のように変化していく。

 

「ニードルマシンガンとでも名付けよう。掃射!!」

 

「勝手に人の技使うなぁ!!!」

 

 造り出されたニードルガンの全てが俺に向かって飛んでくる。なのはとフェイトは眼中にないのか。

 

「うおりゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 弾く、弾く、弾く、刺さる、弾く。あまりに多すぎるためたまに刺さってしまうが、即座に再生するため問題ない。

 そんな弾きまくっているとニードルガンの雨に紛れて管理人格が向かってくる。どういう考えか、まるで舞を踊るようにくるくると回りながらこちらへ来る。回りながら? あの動きはまさかあれか!!?

 

「破城槌!!」

 

ーーミシミシ バキッ

 

 やっぱ俺の武装拳か!! 防御した腕が一撃で逝った。こんな状況自画自賛したい威力だ。

 俺はビルへと叩きつけられ、そこへまだまだ大量のニードルガンが突き刺さる。

 

「針鼠のようだぞ」

 

「見た目はそうでもこんな攻撃効いちゃいねぇよ」

 

 力を少し込めると刺さっていたニードルガンは弾け飛ぶ。だがまだ動けない。服に刺さっているだけなら引っ張れば抜ける。だが一部のニードルガンは服に刺さっているだけではない。コの字に変形し、手足や胴をがっちりと押さえている。

 

「アンカーガンだ。返しも付けてあるからそうそう抜けない」

 

「どうして俺の技を俺より上手く使えるんだよ。クソが」

 

「では締めよう」

 

 管理人格が造り出した魔法陣は俺もよく知るディバインバスターのものだ。今思い出したが、あいつは魔法の大百科みたいなもんだっけ? だから奪った魔力に記憶されている魔法を使えるのか。だからって武装拳はどうなんだよ。

 しかし今更ディバインバスターとは舐めているな。そんなもん通じねぇのは分かりきっているはずなのに。

 

「加工開始」

 

「何?」

 

「完了。発射」

 

ーーゾッ

 

 ディバインバスターが放たれる直前。悪寒がして顔をずらしてみたら俺の耳が消し飛んでした。あのままだったら脳ミソ消えてたな。

 

「いい直感だ」

 

「見えなかったぞ。何をした?」

 

「お前の力でディバインバスターを加工した。力を一点にのみ集め光速で発射する。ディバインレーザーとでも呼ぼう」

 

 面積は小さいが、高い貫通性能、何よりも信じられないくらいの速さの魔法か。これまでの敵と比べても最強といっても過言ではないレベルの強さだ。いざという場合にはちょっとORTを解放するというのも選択肢に入れておくのもありだな。

 

「ディバイン……バスター!!!」

 

「切り裂け!!!」

 

 おっと本家が飛んできたぞ。フェイトの斬撃のおまけ付きだ。まあどっちも簡単に避けられているが、俺が抜け出すには十分な時間だ。

 

「お前達も居たな。葬ってやろう。咎人達に、滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ」

 

「これはスターライトブレイカー!?」

 

「要の技を使っていたから覚悟はしていたけど、こんなものまで」

 

「フェイトちゃん、何気にこんなもの扱いは傷付くよ」

 

 直撃を受けたフェイトにとっては思い出したくもない魔法だからこんなもの扱いは妥当だろ。これも加工してくるかもしれん。注意しよう。

 

《主、よろしいでしょうか?》

 

「なんだアリストテレス。簡潔にな」

 

《病院付近の道路ですずか様とアリサ様が歩いておられます。保護を最優先すべきかと》

 

 どうしてあいつらは結界内を歩き回っているんですかね? ええと、どこだ? おっ、発見。こっちは2人に任せて保護をしよう。

 

《管理局へは連絡を済ませました。結界侵入に時間が掛かっているようです》

 

「どれくらい掛かるって?」

 

《スターライトブレイカーが放たれる直後ですね》

 

「微妙だな。まあ何とかなるだろ。なのは! フェイト! 任せた!!」

 

「ええっ!! なんで!?」

 

 わざわざ理由を言っている余裕はないんだよ。って管理人格の奴、いつのまにかスフィアシールドを張ってなのは達の攻撃を防ぎながら溜めてやがる。自分の魔法はないのかと小一時間問いたい。

 俺がすずかとアリサの近くに行くと2人は駆け寄ってきた。

 

「要さん! どうなっているんですか!?」

 

「魔法。たぶんお前達が結界内に居るのは事故だろ。保護が来るまで待っててくれ」

 

「保護って誰がしてくれるんです?」

 

「リンディさんだ。安心だろ」

 

「それなら良かったです」

 

《来ますよ主。狙いはこちらのようです》

 

「い、今の誰!?」

 

「今度教える」

 

 こっちには一般人が居るのが見えないのか。まあ管理人格からすれば全てを破壊するんだから都合がいいのかもしれないけどよ。

 さてと、どうしますか。スターライトブレイカーは範囲が広い上に結界などの破壊効果もある。2人を背負って避けるとしても、俺の速さに2人の体がついてこれない可能性が高い。ならシールド。いや破壊されるか。

 

「何か来てますよ!! 逃げましょう!!!」

 

「間に合わねぇよ。オォォォォォォッ!!!!」

 

 信じるは己の肉体のみ。武装拳で強化し、スターライトブレイカーを待ち構える。俺に当たったスターライトブレイカー俺を境に左右に分かれ、後ろに居る2人には掠りもしない。やっている事は簡単。日本刀を固定してそこに銃弾を撃てば勝手に斬れるだろ。あれと同じだ。

 

「あづづづづづづづっ!!!?」

 

 問題は俺が熱いという事だ。熱量半端ねぇんだよこの魔法。

 

「終わったか。怪我はないか?」

 

「「……………………」」

 

 固まってやがる。あんなもん直撃しそうになったからな。直撃受けても友達やってるフェイトは偉いな。

 

『よく耐えたわね。流石よ』

 

「お、リンディさん。こいつらの保護を頼みます」

 

『分かったわ。気を付けなさい』

 

「お前達、大人しくしてろよ」

 

「……はい。要さんも無理しないで下さいね」

 

「あいよ」

 

 すずか達が転送されるのを見届けてから再び管理人格の前に降り立つ。

 

「なのはもフェイトも結局止められなかったな」

 

「ご、ごめん」

 

「済んだ事だから許す。さて管理人格。はやてを解放しろ。あいつが破壊を望んでいるかはそこで改めて聞いてもいいだろう」

 

「そのようなつもりはない。主はこの世界に絶望し、眠っておられるのだ。そうだな、お前達も眠ってみるか?」

 

 管理人格の腕から触手が伸び、俺達に襲い掛かる。かなり速いが、俺は逃げ切れないほどでもない。だがなのはとフェイトは別だ。

 

「ひぅっ! もう、逃げられ」

 

「なのは危ない!!」

 

「馬鹿野郎!!」

 

 捕まりそうになったなのはを突き飛ばしフェイトが代わりに捕まった。触手に引っ張られフェイトは管理人格へと近付く。助けるないと。

 

「千切れろ!!!」

 

 手刀を降り下ろしたが、柔軟性に富んだ触手には通じない。ならばと引っ張ってみるものの今度はとてつもなく硬くなる。

 

「お前も釣れるとは運がいい。さあ眠ろう」

 

 なんか体が呑み込まれていく! フェイトも同様だが、眠るってこんな事かよ!! どうなるんだこれ…………

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 …………街? かなり発展しているようだが、人の気配はない。ってそんな事はどうだっていいんだ! 俺は管理人格に呑み込まれたはず。だったら何故こんな場所に居るんだ。

 

「アリストテレス」

 

《はい、何でしょう》

 

「ここは?」

 

《分かりません》

 

「そんな事は分かってる」

 

 こいつは役に立ちそうにないな。仕方がない。歩き回ってみよう。人が見つかるかもしれないからな。とりあえずあのコンビニに入ってみよう。

 

「すみませ…………砂漠!?」

 

《入り口も無くなっています》

 

 マジだ。ワープしたのか? なんなんだこの世界。元に戻れるか心配になってきた。




アリサ「ゲリラ豪雨ぱねぇ!!!」

すずか「いつ来るか分からないから怖いよね」

アリサ「作者は面接に行ったら被害にあったそうよ。みんなも折り畳み傘を持ち歩きましょう」

すずか「並の折り畳み傘だと簡単に粉砕されるんだよね」

アリサ「さあいつも通りやりましょう。今日は何の日?」

すずか「本日7月27日は『スイカの日』。暑い季節にぴったり」

アリサ「スイカは美味しいわよね。スイカ割りで楽しめるし」

すずか「スイカ割りって隣に人を埋めるのが基本だよ。知ってた?

アリサ「そうね。ギャグ漫画ではね」

すずか「ではまた次回」

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