チートじゃ済まない   作:雨期

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デジモンワールド リ:デジタイズ デコード楽しみです。
しかし俺って前書きをちゃんと利用してない気がする…………まあいっか。


第35話

 シグナムと戦うために色々と魔法を考えてみたが、俺は使える魔法が魔力弾とシールドのみという情けないスペックだ。この2つを加工する以外に新しく魔法を造れない。結局一週間掛かって出来たのは2種類の魔法。しかも片方は新しく考えた魔法を応用したものだから実質1種類のみだ。

 

「なあアリストテレスや」

 

《何でしょう》

 

「魔法のレパートリー増やせないか?」

 

《私の容量と主の能力が足りません》

 

「だよな」

 

 アリストテレスは貫指グローブなんて特殊な形にしてあるからか他のデバイスに比べて容量が小さい。ならAIを外せとは思うんだが、デバイスの技師達が可哀想なんて意味不明な理由でそれを許してくれない。人の物に勝手に愛着持ってんじゃねぇ。

 不謹慎ではあるが、さっさとシグナム達は魔力を集めてくれねぇかな。こちとら暇してんのによ。

 

《主、管理局から連絡がありました。敵です》

 

「ナイスタイミング。行くぞ」

 

《畏まりました》

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「お待たせ。現状は?」

 

「敵は二手に分かれている。詳しくはモニターを確認してくれ」

 

 投げやりだな。時間が掛かっては逃げられるかもしれないから気にしないがな。どれ、世界はどちらも砂漠の世界か。シグナムが1人で、ヴィータとザフィーラは一緒か。シグナム側にはシャマルが隠れているかもしれないな。

 

「俺がシグナムと戦う。異論は認めない」

 

「えっ、要、なんで突然」

 

「悪いなフェイト、この戦いは1人用なんだ。転送頼む」

 

「君がそこまで言うなら考えがあるのだろう。今回は任せるぞ」

 

「流石クロノ。じゃあな」

 

 別に考えはないんだが、個人的な約束で戦うなんて言ったら怒られる気がするから絶対に言わねぇ。しかしシグナムと戦いたがってたフェイトにはちょっと悪かったかな。

 転送された先で周りを確認すると巨大なワームが無数に転がっていた。どうやらこいつらから魔力を奪っていたようだな。

 

「待っていたぞ」

 

「待たせたな。早速やるか?」

 

「その前に邪魔者を処理させてもらおう」

 

 俺達の戦いを邪魔するなんて命知らずだな。あんまりこんな事すると管理局が五月蝿いが、シグナムと共闘して片付けよう。

 

「……来る」

 

「おぉ、地面が」

 

「ギュイィィィィィィッ!!!」

 

 地面から飛び出してきたのは周りに転がっているのとは比べ物にならない大きさのワームだった。長さは分からんが、口の直径は3m以上はありそうだ。

 そんな巨大ワームは口からきったない液体を吐いてきた。当然そんなものに当たりはしなかったが、それが触れた地面は刺激臭と煙を上げながら溶けている。強酸性の体液だな。

 

「当たらなければどうという事はないとはこの事だな」

 

「カチカチカチッ」

 

「ん?」

 

ーーバチィッ

 

「~~~ッ!?」

 

「一条!?」

 

 し、痺れたぁ~。こいつ、電撃を出したぞ。ワームのくせに生意気な。

 

「こんの蟲野郎が!! 50%解放!!」

 

「油断大敵という事だ。ハァッ!!」

 

 シグナムの斬撃でワームは怯む。このまま殴り飛ばすか? いやそれだとシグナムに魔力をくれてやる事になりそうだ。共闘するとはいえそこまで付き合ってやる義理はない。

 

「武装拳・断頭台」

 

「ギッ…………」

 

 ギロチンのイメージで脚を降り下ろし、ワームの頭部と思われる部分を切り落とす。ここで暴れた時のために他の武装拳も準備していたんだが、頭が落ちたらピクリとも動かなくなった。蟲のくせに生命力が弱いな。

 

「殺してしまったか。これでは魔力が回収出来ないではないか」

 

「俺に勝てばこの数十、数百倍の魔力をやるよ」

 

「……では期待させてもらおう」

 

「おう。アリストテレス、シールドを」

 

《畏まりました》

 

 俺の両手にシールドが出現する。それに得意の加工を施してやるとまるで布のように柔らかくなった。これが新魔法『クロスシールド』だ。

 

「奇妙な魔法だな。それで戦えるのか?」

 

「そう急かすなよ。これは中間素材みたいなもんだ」

 

 クロスシールドだけでも相手を拘束したり、布のような特性を活かして攻撃を受け流したり出来るだろうが、俺に出来る程度の技術でどうにか出来る相手ではない。だから更に加工して使うしかないのだ。

 まずはクロスシールドを手に被せ、形を手に合わせて加工する。フィットしたら間接部以外を硬化する。これで完成だ。

 

「『シールドガントレット』だ」

 

「盾を布に、布を籠手に。自由度の高い能力だな」

 

「魔法の種類が少ないからこうするしかないんだよ」

 

 やる気がないように振る舞いながら俺はシグナムの背後に移動して殴り付けた。向こうからすれば一瞬の出来事だったはずなんだが、見事に受け止めやがった。いいね、そうじゃなくちゃ。

 

「ウラァッ!!」

 

 俺は攻撃の手を一切緩めずに殴り続ける。シールドガントレットの強度も十分なようでシグナムの剣を受け止めても傷1つ付かない。これならこれからの戦闘でも活用出来そうだ。

 とはいえ何度も斬られたら流石に壊れちまうかもしれない。だからシグナムの攻撃をなるべく受けないように動き回りながら攻撃を続ける。しかしこれだけやってもシグナムの守りは崩れない。反撃をさせないという目的は達成しているんだが、このままじゃじり貧だ。10%くらい上げるか。

 

「くぅ、シュランゲフォルム!!」

 

「! 剣が変わった……!?」

 

 顔が少し斬れたから何事かと思えば、剣の形を変えたのか。あれは蛇腹剣だな。俺の拳を受けながら剣先で顔を狙ったのか。

 

「好き勝手やってくれたものだな。ここからは私の番だ」

 

「どうぞ。こっちも60%でやるからよ」

 

 蛇腹剣に関しては詳しくないが、鞭に近いもんだろう。となると先端が重要になるわけだ。先端の重心を操ってコントロールするんだろうし。でもあれは魔法武器だし魔力で動きをコントロールする可能性もあるな。

 

「参る!!」

 

 シグナムの腕は僅かにしか動かなかったというのに剣はとんでもない軌道を描いて向かってくる。大丈夫だ。しっかりと見えている。落ち着いて対処すればなんて事はない。

 

「ここ、なぁっ!?」

 

 剣先を殴って軌道をずらすつもりだったというのに、剣は蛇のように俺の腕に巻き付きながら首筋へ飛んできた。これは……

 

ーーガギィッン

 

「残念。この程度の刃じゃ薄皮1枚斬れねぇんだ」

 

「……分かってはいたが敢えて言わせてもらう。化け物め」

 

「ありがとう。嬉しいぞ」

 

 ああいう驚いた顔を見れるだけでもこの力を手に入れた甲斐があったってもんだ。シグナムは蛇腹剣では勝てないと思ったのか普通の剣に戻した。

 

「シュランゲフォルムの攻撃力には自信があったのだが、一撃で叩き斬るのが貴様への最善策か」

 

「奥の手があるなら使ってもいいんだぞ。真正面から受けてやる」

 

「私とてそういくつも技を持ってはいないが、受け止めるというならばやってみせてもらおうか!!」

 

 カートリッジを排出するとシグナムの剣が炎を纏った。フェイトの雷みたいな魔力変換の一種と見てもいいだろう。

 

「我が剣、レヴァンテインの一撃をしかと見よ! 紫電一閃!!!」

 

 勢いとはいえ受け止めると言ってしまったからには実行せざるおえない。腕をクロスして降り下ろされる剣を受け止めてやる。シールドガントレットと60%解放。あわよくば無傷で受けられるかもな。

 

ーーパリィン

 

 あれま、あっさりとシールドガントレットが砕けちまった。強度の問題ではないな。防御破壊系の効果があったのかもしれない。

 シグナムの一撃は肉を焼き斬ったが、骨で止まった。肉を斬られるのは予想外だったが、剣術、腕力、魔法、それぞれの要素が最高級だったからこそ60%解放状態の俺に傷を付けられたのだろう。

 

「俺の勝ちかな。腕の1つや2つくらい切り落とせないようじゃ魔力はやれん」

 

「…………」

 

「負けを認めたくないのは分からんでもないが、騎士なら潔く退け」

 

「ああ。今回は私は負けだ」

 

「何?」

 

 私『は』だと? この言い種、なのはとフェイトがやられたか。今の間は仲間と連絡を取っていたのか。

 

「早く向かってやるといい」

 

「そうさせてもらう」

 

 管理局は何してんだよ。なのは達がやられそうなら管理局が即座に応援を出すべきだろう。職務怠慢か?

 

「少し待て」

 

「行けって言ったかと思えば待てか。どうしたんだ?」

 

「テスタロッサの魔力を奪ったのは仮面の男だそうだ。あれは信用ならん。気を付けろ」

 

「……いい情報だ。またな」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 今回の戦いも終わった。結果はほぼ敗北。要に重傷を負わされたはずの仮面の男の介入という想定外の事態がなければフェイトが魔力を奪われるという事はなかったのかもしれないが、もしを考えてもどうしようもないのだ。

 クロノは戦いが終わり、フェイトが軽傷である事を確認するとすぐに管理局本部のある場所へと向かった。

 

ーーコンコン

 

「グレアム提督、居られますか?」

 

「クロノ君か。入りたまえ」

 

「失礼します」

 

 クロノがやってきたのはグレアムの部屋だった。重役の部屋にしては比較的簡素な造りになっているそこに入ったクロノはソファーに座るよう促され、断る事なく座った。

 

「先程闇の書の騎士が現れたと聞いたが、こんな場所に居て良いのかね?」

 

「終わりましたので。残念ですが1人魔力を奪われるという結果になりました」

 

「それは残念だ。その報告に来たのかね?」

 

「いいえ。グレアム提督、貴方に訊きたい事があります」

 

「言ってみたまえ」

 

「先日の戦いで一条要が倒した仮面の男の血液とリーゼロッテの血液を照合した結果、同一のものという判定が出ました」

 

 これはクロノも信じたくない事実であった。自分の師匠であり、尊敬する提督の使い魔が敵に力を貸していたのだ。理由は分からない。だがグレアムならば何かしら知っているはず。いや知っていなくてはおかしいのだ。

 

「私の予想が正しければ今回フェイトの魔力を奪ったのはリーゼアリアですよね。違いますか?」

 

「……やれやれ、保守的な管理局ならば身内は調べないと高を括っていたのだが。しかもロッテとアリアの弟子である君だ。そんな予想に到っても信じないと考えていたが」

 

「身内であろうと師匠であろうと、悪は悪です。教えて下さい。何故……」

 

ーーゴッ

 

 背後からの衝撃にクロノは言葉を紡ぐ事なく気絶した。そこには悲しそうな顔をしたリーゼアリアが立っていた。

 

「……クロすけ、ごめんね」

 

「アリア、彼を暫く軟禁しておきなさい。リンディ君には疲労で倒れたため私が少し預かると伝えておく」

 

「分かりました父様」

 

 リーゼアリアがクロノを連れていったのを確認するとグレアムは1枚の写真を懐から取り出して眺めた。そこには若いグレアムとリンディ、そしてクロノによく似た男性が写っている。

 

「クライド、君の息子は実に優秀な正義の男だ。故に今回軟禁しなくてはならない事を許してほしい。ここまで来てしまってはもう止められないのだよ。全てが終わればあらゆる罰を受けよう。だから今は……」

 

ーーこの復讐を完遂する。




アリサ「クロノ捕まっちゃったわよ」

すずか「どうしてこうなったんだろうね」

アリサ「不人気だから出番を減らすためじゃない?」

すずか「そういえばアンケートだとアインスさんが大人気だね」

アリサ「時点だとフェイトやシュテルかしら。アインスさんって殺す気満々だって作者が言ってたけど殺せないわね」

すずか「ちなみに私は2票あったよ」

アリサ「ヒロインだしね。では今日は何の日?」

すずか「本日6月26日は『雷記念日』。という事でフェイトちゃんを連れてきました」

フェイト「今回はよろしく」

アリサ「よろしく。しかし雷の日なら分かるけど記念日なのね」

フェイト「平安京に雷が落ちて大納言の人がなくなったのを菅原道真の祟りとして、鎮めるために記念日にしたとか」

アリサ「かなり歴史のある記念日なのね」

すずか「菅原道真さんがおこだったんだね」

フェイト「おこなの?」

すずか「激おこかも」

アリサ「人を呪い殺すレベルだから激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームでしょ」

すずか「よく間違えずに言えるね」

フェイト「アリサ凄いね」

アリサ「それほどでもないわ」

すずか「最後はフェイトちゃんが締めてね」

フェイト「ええと、次回もよろしくお願いします」

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