なのはとフェイトの体調が回復し、デバイスも修復出来たという事らしい。これでヴォルケンリッター共と再戦出来るな。まあ戦う前にヴォルケンリッターの情報を整理する必要があるんだがな。流石に2敗目は許されん。
という事で現地拠点にもなっているフェイトの家で作戦会議を行っている最中だ。
「今俺達が知っているのは敵が4人で、そのうち1人が補助ってくらいか。クロノ、管理局はどんな情報を集めたんだ?」
「彼女らはとあるロストロギアによって生み出されたプログラムだ。ロストロギアの名は『闇の書』。以前もこれに闇の書によって引き起こされた事件があったようだ」
「まーたロストロギアかよ。地球は呪われてんのか?」
まだ以前の事件から1年と経っていないぞ。しかもクロノの口調からするに相当な規模の事件のようだ。ジュエルシード争奪だって普通の魔導師が入り込めないレベルだったのによ、管理局は役に立つのか?
「クロノ君、どんな事件だったのか教えてくれる?」
「まずは闇の書というロストロギアの説明がいるな。闇の書は魔力を蒐集し、それが完了時に発動するロストロギアだ。その効果は願いを叶えるというものだ。守護騎士ヴォルケンリッターは魔力を集め、闇の書とその持ち主を守るためのプログラムのようだ」
「願いを叶えるなんてジュエルシードみたいだね」
「だが魔力量が桁違いだ」
ジュエルシードが21個で完全と考えるなら、1つで願いを叶える闇の書の魔力量が多いのも頷ける。しかも未発動でもあれだけ強力な戦士を生み出せるんだから面倒な代物だな。
「魔力の蒐集が完了した時発動すると言ったが、発動と同時に闇の書に封じられていた闇が解放されるそうだ」
「闇? どうせろくでもないもんなんだろ」
「ああ、そうらしい。とある管理局員の犠牲があったからこそ前回の闇の書は抑えられたと聞いている」
「だけど破壊できずに今回復活した?」
「そうではない。闇の書には破壊されても再生成される転生プログラムがあるんだ。それのせいだろう」
カーッ、ロストロギアったのはどうしてこうも面倒なんだ。昔の魔導師は何を考えてこんなもんを造ったんだ。超高度な技術を遺すのは自由だが、人に迷惑を掛からないもんにしとけ。
まあ今生きていないような輩に文句を言ってもどうしようもないな。今の問題は今を生きる俺達がなんとかしてやるしかない。もし時間移動出来るロストロギアがあるなら造った馬鹿共を即殴りに行くが。
「それでクロノ、私達はいつ戦う?」
「向こうの拠点が分からないから攻めこむのは不可能だが、呼び出すのは可能だろう。あちらの目的は分かっているんだ。餌を用意すれば食い付く
「要を使うんだね」
「俺を餌扱いすんな。せめて囮にしろ」
「囮ならいいんだ……」
囮はなんというか人間扱いされてる感じがするじゃないか。自称化け物でもそういうのは気にするんだぞ。
「やる事が決まっているなら話は早い。作戦はいつ決行する?」
「明日の夜だ。それまで体を休めてくれ」
「あいよ」
「私、ヴィータちゃんと戦うよ」
「私はシグナムを倒す」
「なら俺はザフィーラとかいう奴か」
「あたしが倒したいけど、今回は譲ってあげるよ」
ーーーーーーーーーーーー
作戦決行日、ビルの上で要は時計を見ながら指示を待っていた。アリストテレスは既に装備済みである。
「…………」
《主、なのは様やフェイト様は勝てますでしょうか?》
「勝てなけりゃ俺が潰すだけだ。それに勝つよりも魔力を取られない事が大切だろ」
《そうですね。でははやて様の事は》
「はやてがなんだって?」
《……いえ、何も》
アリストテレスが言いたい事も要は十分理解出来た。はやての事を報告すれば勝ち筋はいくらでも見えてくる。だがそれは絶対に出来ない。
はやては自分とすずかの友人だ。友人を売るなんて事をすれば自分を一生許せないだろう。そんな考えを要は持っていた。
「まあなんだ、有り得ないだろうがはやてが敵として戦場に出てきたら話は変わってくるだろうけどな」
《本当に有り得ない話ですね》
「だろ。車椅子がデバイスなんて言われたらどう反応すればいいんだ。あいつは関西のノリが好きそうだからずっこけるべきか?」
《私には理解出来ません》
「お前に期待してねぇよ」
『要、時間だ』
どうでもいい話で盛り上がり、悩んでいた要とアリストテレスであったが、クロノから連絡が来た瞬間に気が引き締まる。要は囮となるための魔力か解放をする。おおよそ80%といったところか。大盤振る舞いである。
「どっから来るかな。仮にも騎士だ。不意打ちなんてせこい事はしないよな」
《それも作戦でしょうから良いかと》
「そこはプライドだ。分からんか?」
《はぁ、そういうものでしょうか。ともかく来ましたよ》
アリストテレスの探知機が反応し、ヴォルケンリッターの襲撃が伝えられる。ご丁寧に結界を張ってやって来たのはシャマルを除く3人だ。大方シャマルは隠れてリンカーコア略奪を狙っているのだろうと要は考えた。
「とんでもねぇ魔力が現れたと思ったらてめぇかよ!!」
「とんでもねぇ魔力とは嬉しいね。だがこれはまだ8割なんだぜ?」
「まだ余力があるというのか。早々に目的を果たすにはこいつが必要か。ヴィータ、ザフィーラ、3人で仕留めるぞ」
「こないだのお返しをしてやる!」
「俺も蹴られたのでな。あれの礼をさせてもらおう」
「おお怖い。だけど相手は俺だけじゃないんだぞ
ちょうど転送が終わり、デバイスを起動済みのなのはとフェイトが出現した。増援程度に動揺するヴォルケンリッターではないが、デバイスの変化に気が付き驚いた。
「あのデバイスに付いてるのってカートリッジじゃねぇか!」
「我々に対抗するためか。悪くはない。だが付け焼き刃でどうにかなると思ってもらっては困るな」
「確かに実戦で使うのは初めてだけど、負けないんだから! ヴィータちゃん、戦ってもらうよ!!」
「一度魔力を蒐集した奴はいらねぇんだ。さっさとぶっ飛ばしてやる!」
「シグナム、貴女に勝負を申し込みます」
「良かろう。前回は出来なかったが、今回はその魔力を頂こう」
「というわけだ。ザフィーラ、だっけ? 遊んでやるよ」
「厳しいな。だがシグナム達の戦いが終わるまで耐えきってみせよう!!」
なのは達は戦闘のために宙を舞ったのに対し、要とザフィーラは交差点へと降り立った。
「空へ逃げてもいいんだぜ」
「その時貴様は俺を狙うのか?」
「勿論。ただ流れ弾が他の奴に当たるかもな」
ザフィーラは要の眼を見て要の考えを理解していた。自分が僅かでも要との戦闘を避ける行為をとれば他の騎士へ攻撃する。なのは達は一対一という姿勢を崩さないだろう。しかし要はそんな事は絶対にしない。勝てればいいのだ。
故にザフィーラ要と同じ土俵で戦う。勝てなくとも時間を稼げばいい。ただ気になるのは要が非殺傷設定で戦うかどうかだ。
「……下らん心配か」
要の戦闘方法は前回の戦いでよく見たし、その後も全員が映像で何度も確認した。魔導師としては有り得ないデバイスを殆ど使わない肉弾戦。あれでは非殺傷も殺傷もあったものではない。
「早速やりますか」
「盾の守護獣ザフィーラ。どこからでも来るがいい!」
「盾の守護獣か。ならこんな盾をプレゼントだ。シールドスライサー!!!」
シールドを投げるというあまりに異質な攻撃方法にザフィーラは一瞬固まったものの、本能的にシールドスライサーを弾き、粉砕した。
「脆い盾だな」
「攻撃するために改良したもんだ。強度は二の次にしたんだが、ちょっと考え直す必要があるかな。まあいいや。次は魔法なんて使わずにやるぜ」
魔法を使わない。それは魔導師からすれば異常でふざけた行為でしかない。だが要からすれば本気を出すための行為であり、確実に勝つための手段だ。
要は人差し指と中指を真っ直ぐと伸ばし、ザフィーラへと向けた。ザフィーラはそこに魔力が集中しているのをはっきりと感じ取り、要の出方を窺う。
「こいつはてめぇの防御を貫く剣だ」
「それが剣?」
「そうさ。レイピアだ。力は……40%でやろう」
40%という言葉にザフィーラのこめかみがピクリと動くが、決して怒るような行為はしない。むしろ喜ぶべきなのだ。時間を稼ぐという仕事を遂行する上で相手が全力を出さないという事異常に楽な事もない。
要としてはこの戦いをさっさと終わらせてなのは達の応援をしても良かったのだが、間違いなく拒否される。だったら戦いを長引かせた方がザフィーラの実力を測れるし、暇潰しにもなるのだ。
「オラオラオラオラオラオラッ!!」
まるで機関銃のような突きがザフィーラに襲い掛かる。その一撃一撃が眼や喉、心臓といった急所を的確に狙っている。だがザフィーラの強固な魔力防御はそれらを一切通さない。
「オラオラオラオラオラオラ、あら?」
突きを続けていた要の動きが止まる。そしてジッと自分の手を見つめる要。その指はグチャグチャに潰れ、折れ曲がっていた。防御を貫けなかった剣の惨めな結末がそこにあった。ただ要が軽く手を振ったら指は治ってしまったのだが。
「これじゃあ駄目だったか。お前の硬さには感心するよ」
「全力を出していない者に褒められてもな」
「その通りだ。まあまだ試したいのがあるから付き合ってくれや 」
連打が効かないなら強力な一撃をぶちかませばいい。そんな短絡的な答えに至った要はザフィーラから少し距離を離し、一気に走り出した。40%で出せる最高速に達した要は体を丸めてザフィーラにぶつかった。
「ぐおぉっ!!?」
凄まじい衝撃に魔力防御が軋み、ザフィーラの体が浮き上がって吹き飛ばされた。しかしダメージはほぼ無い。またも要の攻撃は失敗したのだ。
「くそぉ、砲弾も耐えるか。もう思い付く手は……結構あるな。しかし40%じゃキツいかもな」
要はどうやって防御を突破するか考えながらチラリとなのは達の戦いを見た。大分拮抗しているようだが、いずれ実力差で負けるだろう。
ロストロギアのプログラムという事はかなり昔から戦ってきたはずだ。その膨大な戦闘経験を覆すには要のような圧倒的な力か、信じられない速度で成長する才能しかあるまい。なのはもフェイトも十分才能があるが、まだヴォルケンリッターを倒せるほどには伸びていない。
しかし魔力を奪われ敗北したとしても限界まで戦いを続ければ、なのはとフェイトは一気に伸びるはず。すぐにザフィーラを倒し、なのは達を助けるか。魔力を奪われてでも成長に期待するか。
「…………ま、ほっとこう」
どうせ自分が手を出さなくともヤバくなったら管理局が入ってくるだろうとして要は考えるのを止めた。
「ハァッ!!」
ーーパシッ
「おっと、びっくり。不意打ちか?」
「敵前で考え事をするからだろう。俺が攻撃をしないと思っていたのか?」
「まさか。こうしてくれなかったらどうしようかと思ってたところだ。嘘だがな」
「貴様のような奴は本心が知れんから恐ろしい」
「そりゃどうも。んじゃ」
ーードゴッ
元々警戒していたのか、要はザフィーラの不意打ちも軽く受け止めた。お返しとばかりに殴り返そうかとした時、全く予期していなかった方向から攻撃を受け要は飛ばされた。
要を飛ばしたのは仮面を付けた男だった。ザフィーラもまさか戦いに水を刺されるとは考えておらず動揺していたが、仮面の男はザフィーラには敵意を向けなかった。
「何者だ!?」
「少なくともお前の敵ではない。魔力蒐集に手を貸してやる。一条要の魔力を奪うぞ」
「……それを信じろと? 第一あの男があの程度でやられるはずがないだろう」
「信じたくないならばそれでいい。こちらが勝手に手を貸す。一条要は確かにあの程度でどうにか出来るものではないが、あいつは遊ぶ。我々が協力すれば遊んでいる隙に」
「100だ」
その光景はザフィーラにはどう見えただろうか。要の声が聞こえてきた次の瞬間には轟音が響き、目の前にクレーターが出来ていたのだ。その中心には立っている要と頭から血の華を咲かせた仮面の男が倒れていた。そこでザフィーラはようやく要が仮面の男の頭を掴み、地面に叩き付けたのだと理解した。
「俺が遊ぶのを分かってんなら遊びの邪魔すんなよ」
要は片足を上げ、止めと言わんばかりに仮面の男の頭を踏み潰そうとした。意識のない男に避ける手段はない。待つのは絶対的な死のみ。だというのに男の姿は消失し、要の足は地面を踏みつけるという結果になった。
「転移か? 他に仲間が居たようだな。おいザフィーラ、さっきのはなんだ?」
「知らん。俺達の敵ではないと言っていたが、実際はどうだか」
「そうかい。チッ、めんどくせぇ。今回はお開きにしようぜ。やる気が失せた」
「ではそうしよう」
「話が早くて助かる」
明らかに機嫌が悪い要とこのまま戦いを続ければどうなるかは目に見えている。先程仮面の男を倒した時のようにヴォルケンリッターも全滅させられかねない。
「しかし俺はいいとして、貴様は管理局側だろう。勝手に決めても良かったのか?」
「逆に聞くが、管理局が俺を制御出来ると思っているのか?」
「ふっ、聞いた俺が馬鹿だったようだ」
第三者の介入により戦いは終了した。この時双方の女性陣からの反発が凄まじかったのは言うまでもない。
アリサ「作者の投稿速度の低下をどうにかするために会議を開く必要がありそうね」
すずか「脳内会議だね。分かるよ」
アリサ「そういう事は言わないの。でもどうすればいいのかしら?」
すずか「就活なんて止めてニートになればいいよ」
アリサ「流石に人間的に駄目よ。他の趣味を封印するとかは?」
すずか「ストレスで暴走しそうだね」
アリサ「じゃあどうするのよ」
すずか「諦めていつも通りのコーナーやろう」
アリサ「そうしましょう。今日は何の日?」
すずか「本日6月8日は『大鳴門橋開通記念日』だよ」
アリサ「渦潮が有名なあの橋ね。作者も行った事があるんだっけ?」
すずか「自然教室で校長先生がクジに負けて四国まで飛ばされたらしいよ。あんまり聞かない話だよね」
アリサ「ああいうのの宿泊施設ってクジなのね。だからって四国なんて凄いわね」
すずか「ではまた次回」