チートじゃ済まない   作:雨期

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最近疲れてるよ……


第29話

「ヴォルケンリッター……敵はそう名乗ったのね」

 

「はい。何かの役に立ちますか?」

 

「十分な情報よ」

 

 久しぶりのアースラでリンディさんに情報提供をしている最中だ。なのはとフェイト、それにアルフは思ったよりもヤバい状態みたいで休んでいる。レイジングハートとバルディッシュも修理が必要だったようだ。

 

「こっちで情報の整理をしておくから、要君もマリーにデバイスのメンテナンスをしてもらったらどうかしら? あ、今日はエイミィだったわね」

 

「そうします。では失礼します」

 

 特に何か酷使したわけでもないが、タダでやってもらえる事を拒否する必要もない。それにもし不調があれば不便だ。

 エイミィが居るのはこっちの部屋だったかな。まだレイジングハートとバルディッシュの修復は終わってないだろうけど、メンテナンスくらい受けてくれるよな。

 

「ちょっと、それ本気で言ってるの!?」

 

 おう? 誰かと話しているのか。エイミィがこんなに驚いているなんて相当面白い話をしているのだろう。

 

「失礼するぜ」

 

「あ、要君、どうしたの?」

 

「メンテナンスを頼みたいんだが、何を話してたんだ?」

 

「構わないけど……そうだ聞いてよ! レイジングハートとバルディッシュがカートリッジを付けてくれって言うのよ!」

 

「カートリッジ?」

 

「……説明してなかったね。カートリッジっていうのは今回の敵が使っていたデバイスに付いていた機能だよ。一時的に魔力を増幅させて魔法を強化するものなんだけど、あの赤い子も使ってなかった?」

 

 もしかしてあの回転ハンマーの時に薬莢みたいのが出ていたように見えたけどあれの事だろうか。なのはやフェイトの砲撃が強化されたりするのか。恐ろしいな。

 

「分かってもらえたなら良かった。でもカートリッジはデバイスに負担が大きいの。だから付けるのはどうかな、と思って。2機も主人の事を考えての意見だから無下にも出来ないし」

 

「まああれだ。なのは達が起きたら相談すればいいさ。主人の意見無しにはやれないだろ」

 

《あの主、私も》

 

「カートリッジが欲しいか? 言っておくぞ、不必要だ。俺の意見に従っておけばいい」

 

《何故です! 主はいつもそうです。主は私に頼ってくれない。私は主のデバイスなのです! 主の役に立ちたいと考えてはいけないのですか!?》

 

「デバイスなんだろ? つまり道具だ。主人に口答えする道具があるか。これだからAIは……。エイミィ、メンテナンスやっといてくれ。後で取りに来る」

 

 全く、突然反発してきやがったな。確かにあいつを使う事は少なかった。それは認める。だがあいつが強化される必要はないんだ。あいつは俺にとっての枷なんだから。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 要が出ていった部屋は沈黙に包まれていた。エイミィもアリストテレスも要がデバイスをどういう目で見ていたかは知っていた。しかしああもはっきり言われてしまうと言葉がでない。

 

「……アリストテレス、あのさ……辛くない?」

 

《辛いです。私もレイジングハートやバルディッシュのようにパートナーとして見られたいという気持ちはありましたので》

 

「そう、だよね。私からしっかり言っておこうか? もっとデバイスを大切にしろ、って」

 

《お心遣い感謝します。しかし主が聞く耳を持つとは思えませんので》

 

「はは、確かにそうかも。じゃあメンテナンス始めるよ」

 

 機械へアリストテレスを設置しながらエイミィは考えた。普通はデバイスをパートナーとして大切にするのが魔導師だ。しかし要はデバイスなど必要としない異常なまでの身体能力を備えている。更に魔力を制御して肉体の強化を出来る技術をどこからか手に入れたのだ。

 

「要君って、デバイスいるのかな……」

 

 要がデバイスを必要とする理由は皆が分かっている。要にとってデバイスとは空中という戦場でも戦えるようになるためのものであり、その身体能力で相手を殺さないようにするために制御するのものだ。

 しかしそれだけならばインテリジェントデバイスである必要はなかった。自分達が役に立つと考えて付けたAIが裏目に出てしまったかもしれない。エイミィは一瞬アリストテレスのAIを外してストレージデバイスに改造してしまおうかと考えたが、そんな馬鹿な事を考えてしまった自分を叩いた。

 

「やっぱり要君を説得しよう。アリストテレスを大事にしてもらえるように」

 

 製作に関わった身として自分の子のようなアリストテレスを大事にしてもらいたい。その気持ちをしっかりと伝えようとエイミィは決めた。

 

 

 

 

 

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 アリストテレスも預けてやる事も無くなったから、なのは達の様子を見に医務室まで来たが、まだ全員寝ていた。ベッドの横にはユーノが座っている。

 

「よ、どうだ?」

 

「さっき起きたけどまた寝たよ。疲れてるんだろうね」

 

「そりゃそうだろ。あんなタイプの敵は居なかったから対処も出来なかったろうし、なのによりなのははリンカーコアを取り出されたからな」

 

「……僕が近くに居ながらあれだからね。ごめん」

 

「気にするな。あの手に穴を開けてやったから向こうも暫くは手を出せないさ。文字通りな」

 

「ははは……無断の非殺傷解除は止めた方がいいよ」

 

「正直やりすぎた」

 

 少し空気も緩んだところで今回の敵について情報共有をする事にした。俺は知らない事ばっかりだったんだが、敵が使う魔法はベルカ式というもので、近距離戦を主とする。これを使う魔導師は騎士と呼ばれるらしい。ユーノがのは達のか看病をしながら調べた情報だ。

 ミッドチルダ式しか知らなかった俺からすれば頭がこんがらがりそうな情報だが、殴り合える魔導師ってのはこれまで居なかったから新鮮だ。武装拳の練習相手としては最適と言える。

 

「ヴォルケンリッターって名前に関しての情報は無しか?」

 

「これっぽっちも。最近出現した集団かもね」

 

「あれだけの実力者の集まりだぞ。しかも珍しいベルカ式とやらだ。話題にならないとは考えにくくないか?」

 

「要が実力者なんて言うと皮肉に聞こえるね」

 

「酷いな」

 

 俺だって強い奴は強いって素直に認めるぞ。ただそれが俺より強いかは別だ。例え俺を倒せなかったとしてもなのは達をあそこまで圧倒できるなら十分強いだろ。

 

「フェイトの出所祝い出来なかったな」

 

「フェイトが元気になるまでお預けだね」

 

 色々と計画してたんだが、また考え直さないといけないか。

 

ーーバンッ

 

「見つけた!」

 

「エイミィ?」

 

 物凄い急いでいるように見えるが、アリストテレスに異常でも見つかったのだろうか。

 

「デバイスのメンテナンスはどうした?」

 

「後は自動でやってくれるから置いてきたよ。それよりも要君に言いたい事があるの

 

「聞こうか」

 

「アリストテレスを大切にしてあげて」

 

 急いでやってきたからとんでもない事でも起こったかと思っちまったじゃねぇか。アリストテレスを大切にしろか。

 

「大切にはしているはずだ。綺麗だったろ」

 

「新品と大して変わらないよ! 使わないのと大切にするのは別だよ!」

 

「確かに道具は使ってなんぼだな。これからはなるべく使うとしよう」

 

「約束だよ」

 

 こうでも言っとかないと五月蝿い。使う使わないは魔導師の自由だろう。エイミィにとっちゃアリストテレスは子供みたいなもんだし怒る気持ちも分からないわけでもないんだが……疲れる。

 

「う……ん~」

 

「おっ、フェイトおはよう」

 

「ふぁ~……要…………?」

 

「ああ」

 

 よし、フェイトも寝ぼけているが元気なのを確認出来たし、今日は一旦帰らせてもらおう。どうさヴォルケンリッターの件で暫くこっちに滞在するだろうから、いつでも会えるしな。




アリサ「遅くなってごめんね」

すずか「要さんにとってアリストテレスって何かな?」

アリサ「道具というより玩具として見ているように感じるわ。流行りの玩具を買ったけど買って満足した感じ」

すずか「へぇ~」

アリサ「聞いたのはあんたでしょ。それで今日は何の日?」

すずか「本日5月9日は『アイスクリームの日』。というわけでアイスクリームを用意しました」

アリサ「わーい! イチゴもーらい。うーん、冷たくて美味しい。暑くなってきた時期に最高ね」

すずか「本当に食べてしまったのか?」

アリサ「えっ?」

すずか「あ、これは作者の言葉なんだけど、リメイク前の要さんを出そうかな~、だって」

アリサ「それよりさっきの言葉は」

すずか「ではまた次回」

アリサ「話を聞きなさい!!」

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