チートじゃ済まない   作:雨期

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ベヘモス様の『竜が辿り着いた幻想郷』とのコラボになります。コラボありがとうございました。


コラボ第3話

 ここは忘れ去られた楽園、幻想郷。人間や妖怪、はたまた神すらも存在する世界。そんな世界にある博麗神社という神社の縁側で青年、リュウは茶を飲んでいた。

 何か事件があるわけでもなく、家主の博麗霊夢は人里へ買い物へ出掛けている。ぶっちゃけリュウは暇なのだ。

 

「こんにちは。お時間はあるかしら?」

 

「時間があってもお前のために割く時間は殆どない」

 

 空間の一部が裂け、リュウの前に女性が姿を現した。幻想郷の妖怪の賢者、八雲(やくも)紫(ゆかり)その人だ。リュウが好かない人物、いや妖怪でもある。

 

「そう言わず話を聞いてもらえないかしら。大切な事なのよ」

 

「霊夢にでも話すんだな」

 

「そうはいかないわ。外に行ってもらう必要があるのだもの」

 

 紫の言う外とは現代の日本の事だ。本来幻想郷から外に向かう事は不可能。しかし紫の力でなら外へ出る事が可能となるのだ。

 

「外……? いいだろう。聞くだけ聞いてやる」

 

「ありがとう。実は大切な書物が外へ流れてしまったのよ。しかもなかなか厄介そうな子に拾われてしまったわ」

 

「それを回収しろと? 自分でやれよ」

 

「言ったでしょう。厄介そうな子に拾われたと。回収に成功したら1日中外で遊んでもいいわよ。海の近くの街よ」

 

 幻想郷に海はない。だからこそ海で自由に遊べるというのは人によってはかなりの報酬と言えるかもしれない。釣りが好きなリュウにも十分な報酬だろう。

 

「仕方ねぇ。滅多に外になんて行けないからそれで勘弁してやる」

 

「じゃあ行ってらっしゃい」

 

 溜め息をつきながらリュウは紫の展開した空間の裂け目へと入っていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「…………なんじゃこりゃ」

 

 毎度お馴染み臨海公園。そこで要はベンチに座りながら本を読んでいた。いや解読していたという方が正しいだろう。何せ書いてある言葉が読めないのだから。

 

「何語だ? アリストテレス、解析出来るか?」

 

《少なくとも現代地球上に存在する言語ではないのは確かです》

 

「だろうな」

 

 偶然拾ったものだが、魔力とは違う奇妙な力を感じるような気がする。本の表紙に使われている皮も何の皮か不明でかなり古い。ロストロギアの一種の可能性もある

 

「! 何か来る」

 

《主どうなさいました?》

 

「嫌な気配だ。警戒しろ」

 

 主に忠告され周囲を調べるが、アリストテレスのサーチには何も掛からない。ただただ静かな時間だけが流れていく。その静かな中に突如として空間の裂け目が現れた。

 

「あれは何だ?」

 

《解析不能! 魔力は一切感じられません!》

 

「ああ、魔力はな。だがこの本と同じものを感じる」

 

「どんなのが拾ったかと思えば、まだ子供じゃないか」

 

 裂け目から現れたのは青年が1人。ただの人間では無い事は一目で分かった。

 

「誰だ?」

 

「どういう意味で言っているのかは分からないが、名を訊いているのなら名乗ろう。リュウという名だ」

 

「ボケが上手だな。では質問を変えよう。何故俺の前に現れた」

 

「その本を返してもらいにな。俺のもんじゃないんだが、頼まれちまったからな」

 

「ふーん」

 

 本を返す事に関しては何も問題はない。ロストロギアだとしたら大問題と判断されるかもしれないが、要にとってはどうでもいいのだ。しかしタダで返すのは癪でならなかった。

 

「あんた、それなりに戦えそうだな。拾ってやった報酬として手合わせ願おうか!」

 

「ああ、これは確かに八雲の言う通り厄介そうだ」

 

「やるのか? やらないのか?」

 

「依頼されたからにはやる必要があるな。遊んでやる」

 

「遊ばれるのはどっちだろうな。アリストテレス、はいらねぇか。結界張ってろ」

 

《えぇっ!?》

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 本を拾ったのは戦闘狂のガキだったか。確かに厄介そうな性格だが、八雲が警戒する意味が分からない。妖怪や神々のような力も感じない。世界の色が無くなったが、結界とか言っていたがその事だろう。

 

「まずは50%解放といこうか!」

 

「む、これは……」

 

 力を抑えていたのか? だがこいつ自身の力には思えない。何かを内包している。力の源となるものを寄生させてそいつから力を取り出しているというのが妥当なところか。

 

「なんだ、ビビったか?」

 

「面白い冗談だ」

 

 ガキに向かって剣を構える。そういえばこいつの名前を訊いていなかったな。

 

「斬る前に名を訊こう」

 

「一条要だ。行くぞ!!」

 

ーーガキャァッ

 

 剣で手刀を受け止めたのに金属音が鳴った!? しかも速くて重い。これほどの動きが出来るのは幻想郷でどれだけ居る。想像以上に楽しめる手合わせになりそうだ。

 

「ワンツー、スリー!!」

 

 要は一撃一撃を確実に急所狙いで攻撃してくる。当たれば致命傷を免れない。それよりも厄介なのはその硬さ。最初の攻撃で予想出来た事だが、こいつは肉体の硬化が出来る。硬気功の一種には違いないだろうが、剣と同等の硬度なのは流石にふざけているとしか思えない。

 しかし動きには無駄があり隙が見当たる。おそらくこの硬気功を使った戦いは慣れていないのだ。俺を実験台にするとはいい度胸だ。

 

「そこ! 『クロスバイパー』!!」

 

 要は殴る瞬間に拳を硬くするためか一瞬の溜めがある。その瞬間を見逃さず、姿勢を低くし突進しながら十字に要を斬り裂いた。だがこの感覚、浅い。致命傷には程遠い。

 

「いいね。手合わせだろうとある程度は殺す気で来てもらわないとやる気がでない」

 

「もう治ったのか!? まるで満月の夜の吸血鬼だ」

 

「吸血鬼か、惜しいな。まあこれで気兼ねなく攻撃出来るだろ」

 

「そうだな。『散烈掌』!!」

 

「なんだ? 花火か?」

 

 牽制として光の玉をいくつか作り出し要へ飛ばす。僅かにでも回避行動を取るかと思ったのだが、微動だにせず全てを耐えきった。斬撃はほぼ効かず、軽い射撃は完全に無視か。

 

「ならば『炎(エン)』!!」

 

「あっつ!?」

 

 魔法によって生まれた燃え盛る炎が要を包み込んだ。どうやらどんなに強靭な肉体でも熱さはしっかりと感じてくれたようだ。

 

「更に『羅風(ラフ)』!!」

 

 炎を巻き上げるように追加で風の魔法も使う。まさに炎の渦。その中心に居る要に俺を捉える手段はない。

 

「決める。『シャドウウォーク』」

 

 渦の外から一気に攻撃しても良かったが、念には念を入れて姿も気配も完全に消失させる動きで要へと近付く。おそらく要は不意打ちに備えて体を硬くしているはず。ならば内部から破壊する。

 

「しゃらくせぇ!!!」

 

 回し蹴りだろうか。ともかく炎の渦を吹き飛ばした要は俺を探した。だがもう遅い。俺は懐に入っている。

 

「神滅」

 

「! ちか」

 

「『テラ=ブレイク』!!!」

 

ーードゴオォッ

 

「うっ……ぶっ」

 

 剣に力を込め、斬り抜けると同時に要の体内へとそれを叩き込んだ。内臓をいくつか破壊したな。普通なら絶命だ。

 

「や……るぅ」

 

「タフさだけは」

 

ーーブシュウゥゥッ

 

 褒めてやる。そう続けようとしたが、突如脚に走った痛みに言葉が途切れた。両膝が裂けて血が噴き出している。テラ=ブレイクを叩き込んだ時にカウンターを入れられていたのか。

 

「骨を断た、せて…………肉を切る、って結果に……なったな…………ふぅ、落ち着いてきた」

 

「再生したか?」

 

「大体な。楽しかったよ。本は返す」

 

 忘れていた。この手合わせをした理由は本を返してもらうためだったな。割りに合わない仕事だ。この後思う存分遊ばせてもらうからな。

 

「ほら」

 

「確かに」

 

「また機会があったらやろうぜ。じゃあな」

 

 機会があったら、か。要が居るのは外。俺が居るのは幻想郷。その機会が訪れるのはもう一生無いかもしれない。だがもし本当に、次の機会があったなら少しなら付き合ってやってもいいかもしれない。

 

「あ、魚がよく釣れる場所知らないか?」

 

「そこを真っ直ぐ行ったところにある防波堤は人気の釣りスポットらしいぞ」

 

 この後言われた場所で釣りをしてみたら入れ食い状態だった。霊夢へいい手土産が出来た。今晩は船盛だ。




脳内の要君が武装拳を使いたくてウズウズしていたのでリュウには練習相手になってもらっちゃいました。まあ手合わせですしいいよね。最終的には引き分け(?)っぽかったし。

この2人が本気で殺し合ったら地球がもたないので、もし次に戦う機会があったとしても今回のような手合わせになるでしょうね。仕方ないね。

さあ次回はA's編。どのキャラをどう動かそうかな。

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