決闘はなのはの勝利で終わったが、それで全てが終わるってのは流石に都合が良すぎるか。
アースラに転移された俺達にリンディさんが現状を教えてくれるためにやってきた。ただデバイスを構えたクロノが隣に居るのはフェイトとアルフを警戒しての事だろう。
「お疲れ様。アルフさん、だったわよね。フェイトさんは大丈夫かしら?
「敵が心配するな、とは言いたいけど今はこんな状態だしね。フェイトは気絶してるだけだよ。こっちの身柄はどうなるんだい?」
「抵抗しなければ保護という形になるわ」
「リンディさん。ジュエルシードは回収出来たんですか?」
「全ては無理だったわ。一部奪われてしまった。でも魔法の逆探知で相手の居場所は分かったから局員達を派遣したところよ」
俺達とジュエルシード全てを同時に転移させるのは難しかったかね。しかし居場所が分かれば攻めこめばいい。俺も少し休憩したら行かせてもらおう。
「ん……ぅ」
「フェイト! 目が覚めたかい!」
「アル、フ? そっか、私、負けたんだね」
「映像来ました」
アルフに背負われていたフェイトが目を覚ますとほぼ同時に敵地に乗り込んだ局員から映像が届いたようだ。なんか秘密基地みたいだな。ロボットみたいのと戦っている局員もいる。
そんな中一部のグループが一際大きな扉を開け、突き進んだ。そこには紫の髪をした女が居たが、そんなものはどうでもいいと感じるものが奥に見えた。
「なんだ、ありゃ」
「プレシア・テスタロッサ。私の母、です」
「ちげぇ!! その奥だ!!」
そこに映っていたのは培養槽の中に入っていたフェイトのような女の子だった。双子とかそういうレベルじゃない。年齢はフェイトの方が上なようだが、そうでもなければどちらがどちら分からないほどだ。
局員達もそれを見て驚き戸惑っていたが、プレシアはそんな局員達を埃でも払うかのように魔法で吹き飛ばした。
「いけない! すぐに彼らをアースラへ戻して!!」
「了解!」
リンディさんの迅速な判断で局員達は戻ってきたが、怪我人がかなり居るようだ。手当てのためにプレシアのところへ行っていた他の局員も呼び戻された。
「プレシア・テスタロッサから通信要請です」
「繋いで」
『初めまして管理局の皆さん、そして一条要』
「名指しか」
『ええ。貴方のお陰で計画が狂いに狂ったわ』
フェイトの邪魔をしたりジュエルシードを粉砕したりしたからな。ジュエルシードを狙っていた向こうからすればいい迷惑だったろう。
「プレシア・テスタロッサ。貴女の目的は何ですか? ジュエルシードという危険物を使ってまで何をするつもりです」
『貴方達も見たはずよ。よく見えなかったならもう一度見せてあげる』
改めて見てもフェイトそっくりだ。これはどういう事だ。フェイトなら何か
「フェイト、あれは?」
「…………」
フェイトは何も言わない。いや何も知らないのか。プレシアだけの秘密って事か。
『この子はアリシア。私のただ一人の愛娘よ』
「ただ一人? じゃあフェイトはなんだ」
『それが娘? 笑わせないで。いい機会だから教えてあげる。フェイト、お前はアリシアの偽物(クローン)なのよ』
クローン!? しかも人間の!? クローンなんてもんは体に異常があってもおかしくない存在だが、フェイトにはそれが見られない。どんだけ技術が発展してんだこの世界はよ!!
「私が、クローン?」
『クローンと言う事すら嫌になるくらいよ。お前はアリシアの遺伝子を持ちながら容姿以外全てが違った。出来損ないの人形のくせに生意気にも私を母と呼んだ』
「や…………て……」
『何度その面の皮を剥ごうと思った事か。無駄に魔法の才があるから仕事を与えてみればまともにこなせやしない』
「も……やめ…………」
『けどお前に苛つかされるのもこれでお仕舞い。ジュエルシードの数は足りないけど、アルハザードに向かってアリシアを生き返らせるわ。さようなら人形。周りの迷惑にならないうちにさっさと死んでしま』
「もうやめてよ!!!!」
なのはの叫びが響く。これはムカつく。娘のクローンが娘と違う? 当然だ。それはクローンであって娘ではない。だが自分の遺伝子を継いでいるのならば、自分が創った命ならば愛してやるのが親ってもんだろ?
「プレシア・テスタロッサ。アルハザードと言いましたね。そんなお伽噺が実在するとでも?」
『するわ。無かったとしてもあらゆる手段を使ってアリシアを生き返らせる』
「そうですか。貴女のような危険思想の持ち主を放置は出来ません! 貴女を逮捕します!!」
「艦長、僕が行きます」
「私も行きます。あの人は絶対に許せません」
「分かりました。クロノ、なのはさん、突入は任せます。要君は」
「すみません。ちょいとフェイトと一緒に居てやります」
さっきのプレシアの言葉が余程効いたのだろう。フェイトは俯いたまま動こうとしない。アルフが一緒に居るだろうが、いつも身近に居る奴以外の刺激も必要だ。
「ではフェイトさんをお願いします。エイミィ、転送準備を」
「もう出来ていますよ」
「なのは、僕を忘れないでよね」
「ユーノ君、ありがとう」
「では行くぞ!」
なのはとクロノ、そしてユーノはプレシアの元へと向かった。俺もフェイトを元気付けてから応援に行きましょうか。
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アースラ内の個室で俺とアルフはフェイトに話しかけていた。気にするなだとか、見返してやれだとか言ってみたものの、全く反応がない。仕方ないよな。親と慕っていた人間に突然偽物呼ばわりされて棄てられたんだから。
「フェイト、もうあんなババアの事気にしちゃ駄目だよ」
「…………」
「あーもう!! あんたも励ましてやってくれよ!!」
「と言われてもな。ふーむ、ならフェイト、お前はなんだ?」
「……私は、人形って……」
「そうだな。だがそれはプレシアの認識だ。んじゃアルフ、お前にとってのフェイトは何だ?」
「最高のご主人様に決まってんじゃん」
「ならバルディッシュは?」
《これ以上ないマスターです》
「どうだフェイト。お前を疎ましく感じる奴も居れば慕う奴も居る。人の評価を細かく気にしていたらキリがないぞ。本当に大切なのは自分がどうありたいかだ」
「自分が、どうありたいか……」
これは俺が前世で入社した時に先輩から言われた言葉だ。人の評価ばかり気にして自分を見失うな。自分が好きになれる自分になれ。後悔せず、失望せず、自分の道を外さない自分になれ。ちなみにこう言った先輩の業績は酷かった。ケースバイケースを忘れてはならないといういい反面教師だったよ。
「フェイト、お前はどうありたい?」
「私は…………お母さんの子でいたい。でも……」
「拒絶されるのが怖いか? 安心しろ。絶対に拒絶される」
「フォローになってないじゃないか!!」
ーーバチーン
「オウフッ!?」
いやだってもう狂ってるぞあれ。狂人に何言っても無駄に決まってる。いきなり改心するのは漫画だけで結構だ。あ、この世界はアニメベースだった。
「要、さん」
「呼び捨てでいいぞ」
「……要は拒絶されると分かっていたらどうする?」
「どうするって、どうしようもないな。これは相手の気持ちの問題だ。しかも今回の相手は謝ってどうにかなる相手じゃない。だから自分なりのけじめをつけるべきじゃないか?」
「けじめ?」
「ああ。それがどんなけじめかはお前次第だけどな」
暫く俺の言葉について考えていたフェイトだが、待機状態のバルディッシュを握り締め、立ち上がった。
「行くのか?」
「うん。お母さんを止める。それが私のけじめだと思うから」
「自分がそう思うならそれもいいんじゃないか? さて俺も行きますか」
プレシアにはちょーっとだけムカついたからな。100%の力で相手をしてやる。プレシアも俺の力は知っているだろうからジュエルシードをフル活用してくるかもしれん。場合によってはあれを使ってもいいな。
アリサ「皆さんこんにちは、こんばんは、おはようでもいいかしら」
すずか「まともに挨拶するのって初めてかな?」
アリサ「そうかもね。これがまともな挨拶かも分からないけど。じゃあ本日3月26日はどんな日?」
すずか「今日はカチューシャの歌の日だよ」
アリサ「カチューシャ?」
すずか「大正時代に流行った歌だって。ちなみにカチューシャはロシアの人の名前だよ」
アリサ「頭に着けるカチューシャじゃないんだ。ではまた次回」