管理局と協力関係を結んでからジュエルシードの回収は飛躍的に伸びた。管理局にはそういった機材もあるし、俺達が学校に通っている時間も回収をしてくれるからな。
そんな中、俺達はアースラに呼び出された。どうやら残りのジュエルシードの場所が分かったらしい。
「おいっす」
「こんにちは」
「いきなり呼び出してごめんなさいね」
「重要な事だし気にしないで下さい。それで、ジュエルシードは?」
「それはこれを見てもらった方が早いな」
クロノが出したのは海鳴の地図だった。ジュエルシードがあるであろう位置に赤点が付いている。確かに分かりやすい。しかし全てが海にあるじゃないか。
「この街は海に隣接しているからだろうが、我々の観測では残りが海にあるであろう事が分かった。一番あってほしくない結果だったけどな」
「なんで?」
「おいなのは、少し考えれば分かるだろ。海にあるジュエルシードをどう手に入れる?」
「…………要君が潜ればいいと思うよ」
「その手があったな。要、頼むぞ」
「うぉい!? 俺でも海中呼吸は出来ないぞ!?」
『えっ』
えっ、じゃねぇよ!! しかもアースラ全体から聞こえてきやがった。どんだけノリが良いんだこの戦艦。泣くぞ。
「まあそういうのは置いておいて、潜るというのは悪くない考えよ。勿論酸素ボンベは必要よ」
「にしたって実際潜って探すのは時間が掛かりすぎませんか?」
「その通りよ。あくまで分かっている位置は大まかなもの。だから私が考えているのは」
ーービーッ ビーッ
リンディさんが考えを述べようとした時にアースラ内に警報が鳴り響いた。何が起こったのか船員達が調査をしている。
「これは……艦長! あの少女がジュエルシードを覚醒させました!!」
「あの少女ってフェイトちゃん!?」
「モニター映ります!!」
うわ、フェイトの奴海に雷を落としてやがる。魔力の雷なのは分かるが、海の生き物は無事だろうか。っておいおい、竜巻が発生したぞ。あれが今回覚醒したジュエルシードか。
「ジュエルシードの数は?」
「6です!!」
個人でどうにか出来る数には思えないんだが。あいつもよくそこまでやる気になったな。
「ユーノ君、要君行こう!! リンディさん転移を」
「認めないわ」
「!? なんで!?」
「これが私の考えだからよ。彼女が出したジュエルシードを奪うのが一番効率が良いわ」
「そんな、卑怯ですよ!!」
「ええ、卑怯よ。そうでもしないと護れないものもあるの。どんなに分かってくれなくても良いわ。ただ協力者である限りなのはさん達には命令をきいてもらいます」
あー、こりゃリンディさんが正しいな。なのはが何を言っても曲がらないだろう。
「嫌です。でしたら私は協力者を辞めます。もう協力者じゃないから海にでも投げ棄てて下さい」
「そんな理屈が通るわけないでしょう」
「……レイジングハート、set up!!」
《set up》
なのはがレイジングハートをリンディさんへと向ける。さて、これはどうするか。なのはを止めてもいいが、ここはまだ見守ろう。
「はぁ……エイミィ、彼女は離反しました。今すぐ追放して下さい」
「はーい。なのはちゃんこっちだよ」
「あ、はい」
なのはは転送によって海上へと行ってしまった。それを確認してリンディさんは大きな溜め息をついた。
「若いっていいわぁ。クロノ、要君、出撃の準備をしておいてね」
「いいんですか?」
「いいわよ。なのはさんだけだと心配でしょ? あ、要君は飛べるようになったかしら?
「飛べはしませんが、シールドを足場にする程度なら
「十分よ。さ、行ってらっしゃい」
「了解!」
「行ってきます」
ーーーーーーーーーーーー
俺達が転移した時にはなのはとフェイトは共闘すると決めたところだった。
「なのは、どうだ?」
「フェイトちゃんと一緒に戦うよ」
「いいんじゃないか? クロノが五月蝿そうだけど」
「こんな状況だ。僕も反対はしない」
「……質問があるのですが、貴方はあれをどうにか出来ないのですか?」
フェイトが俺に対してそんな事を言ってきた。ふむ、竜巻を殴るという事はやった事がないが、やる価値はあるな。
「んじゃやってみるか。80%解放!!!」
こないだのジュエルシード粉砕で理解したが、全力でやる必要は一切ない。複数のジュエルシードがあっても80%もあればお釣りが来る。
「シャァッ!!」
竜巻をどうこうする方法なんて知らないから、とりあえず跳びながら回し蹴りをしてみた。回し蹴りの衝撃波は竜巻を上下に引き裂いたものの、あまり意味がなかったようで復元してしまった。
「より強く、一気に破壊しないと駄目か」
「やはり君は非常識だな」
「非常識を体現した男とでも呼んでくれ。まだやるから下がってろ」
「いや、いつまでも君にいいところは譲れないさ。行くぞ!!」
上空に多数の魔力の剣が出現した。確かクロノのスティンガーブレイドって魔法ってはずだが、数が俺の知る魔法の中でも桁違いだ。
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!!」
「うおぉっ!!」
数え切れないほどの剣が降り注ぐ様は圧巻の一言だ。英雄王のバビロンやエミヤのソードバレルもこんな感じなんだろうか。ロマンだねぇ。
俺が見とれている間も剣は竜巻を貫いていく。穴の開く竜巻へ追撃が叩き込まれた。
「貫いて! ディバインバスター!!」
「サンダースマッシャー!!」
脆くなった竜巻への追撃としては十分すぎたそれはジュエルシードすら粉砕したのではないかと思えるほどの勢いだった。
「やったね。今回は数が多いから半分こだよ」
「約束ですから」
「こら、それは管理局として」
『強力な魔力反応確認!!! みんな逃げて!!!!』
仲良くジュエルシードを分け合っていたなのはとフェイトにクロノが口出ししようとした瞬間、敵味方関係なくエイミィからの念話が飛んできた。突然だったために全員が固まった。
「フェイト!!」
その中でも一番に動いたのはアルフだった。フェイトを庇うように覆い被さる。そこで気付いたのだが、上空で紫の雷が帯電していた。あれが魔力の正体か。確かにとんでもない魔力量だが、ここに居た全員が気付けなかったのは異常だ。
「来るぞ!!」
紫の雷が降ってきた。なのはにはユーノが既に付いているから守りに不安は少ない。フェイトもアルフと一緒だ。クロノは経験で何とかするだろう。俺は自慢のシールドで耐え凌ごう。
「はぇっ!? 」
だが思わず変な声が出てしまうような事態が発生した。それぞれに向かっていた雷が一斉に俺にのみ向かってきたのだ。シールドは足場を除いて1枚だけ。防げねぇ。いやまあ防ぐ必要はないんだが、防がなかったら服が燃えて困る。
どうにか1枚で上と左右の雷を防ぐには…………駄目だ。どう考えても無理だ。せめて形をどうにか出来れば……
「ん?」
待てよ。魔法は元々形のない魔力を型に押し込めて創っているものだ。だったら形なんて自由に変えれておかしくはない。
全方位防ぐなら球体が好ましいな。上に展開しているシールドと足場にしているシールド、それぞれを半球にして1つの球体にしてやる。名付けて
「スフィアシールド!!」
球体となった2枚のシールドは雷を弾き、受け流していった。魔力をかなり注ぎ込んだ甲斐もあり、雷を全て凌げたようだ。
「要……その魔法は?」
「やってみたら出来た」
人間その気になればやれるもんだな。服が無事で良かった。しかしなんだか焦げ臭いような。雷が近かったからか?
ーープスプスッ
「…………」
借り物のデバイスが煙を上げているんですがね。どうして、なんで、俺が悪いの?
「なっ!? シールド消えた!? 誰かーーーっ!!!」
「か、要君!?」
ふぅ、ギリギリなのはに助けてもらえた。折角服を守ったのに海に落ちたら台無しだ。
それとこの後聞いたんだが、どうやらオーバーヒートしてデバイスが使い物にならなくなっていたらしい。あんな強力なもんを受け止めたんだから仕方ないか。よくやってくれた。
以前はなかったスフィアシールド。以前あったルーフシールよりこっちの方がいいなと思って作りました。以前のチー済まを知らない読者様は気にしなくてもいいですよ。