チートじゃ済まない   作:雨期

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以前書いていた時にはハーレムだったけど、今回はそうしません。


第9話

 ある週末に俺は月村家に招待された。招待されたのは俺だけじゃなくてなのはとバニングスもらしい。ま、どうだっていい事か。

 

「ひゃー、でけぇ」

 

 何度見ても月村家の大きさには圧倒される。こんなのが本当にあるってのが信じられない。更に別荘まであるんだろ。金持ちってすげぇな。

 

ーーピンポーン

 

「すみません、一条です」

 

『一条さんこんにちわ。今門を開けますね』

 

 インターホンを押して来た事を伝えると門が自動的に開く。門から玄関まで距離があるのも金持ちの象徴なのだろうか。

 まあ月村家の人々は金持ちである事を微塵も感じさせないんだがな。特に長女の忍さんは節約家だ。趣味の機械弄りにかなりの金を使うからだろうな。

 

「いらっしゃいませ一条様」

 

「こんにちはノエルさん。今日もお綺麗ですね」

 

「うふふ、お上手ですね」

 

 事実なんだがな。ノエルさんは月村家でメイドをやっている人だが、モデルで食っていけるくらいに綺麗だ。ぶっちゃけるとタイプだったりする。歳が近けりゃなぁ。

 

「要君やっほ! ちょっち来て」

 

「どうしたんですか忍さん、って引っ張らないで。着いていきますから」

 

 家に入って早々に忍さんに部屋へと引っ張られる。一体なんだって言うのか。俺が何かしたのか?

 

「座って座って」

 

「はい」

 

「早速訊きたいんだけどね、すずかってどう思う?」

 

「月村ですか? いい子ですよ」

 

 1年生の頃は虐めにあっていたようだが、今ではその様子はなく、多少大人しいが元気だ。確か虐めた側がバニングスで、それを止めたのがなのはだっけか。今じゃその3人が親友だから不思議だな。

 

「あー、言い方が悪かったわ。要君はすずかを好き?」

 

「小学生にそんなの訊きますか?」

 

「だって要君ってあんまり子供らしくないし」

 

「まあ好きですよ。嫌いな奴と一緒に居るような物好きはいません」

 

「ならすずかの事を名前で呼んであげて」

 

 苗字で呼び合う事になれちまってるから今更修正するのは難しそうだ。しかし頼まれたならしょうがない。

 

「しかし何でまたこんな話を?」

 

「さっきも言ったけど要君って子供らしくないから慌てた姿を見たくて」

 

「ノエルさん呼びますよ」

 

「てへっ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 忍さんとどうでもいい話をしているうちになのはとバニングスが到着していたようだ。そういえば月村は名前で呼ぶ事になったが、バニングスはどうするか。仲間外れになりそうだし、バニングスも名前で呼ぶとしよう。

 

「要君早いね」

 

「一条さんこんにちは。お姉ちゃんと何をしていたのですか?」

 

「すずかを彼女にしてくれって話」

 

「へっ?」

 

 間違ってないよな。これで何か言われるのは俺じゃなくて忍さんだし。

 

「一条さんもボケが上手くなりましたね」

 

「悪いがアリサ。マジなんだよ。断ったがな」

 

「えー、勿体無い」

 

「アリサちゃん!!」

 

「ごめんごめん」

 

「あれ? 要君いつからアリサちゃんとすずかちゃんを名前で呼ぶようになったの?」

 

「ついさっき。忍さんにすずかを名前で呼んでくれって頼まれたから、ついでにアリサもと思ってな」

 

「私はついでですか」

 

「ついでだ」

 

 もうちょっと抵抗があるかと思ったが、意外とすんなり名前で呼べるもんだ。こういうのも悪くない。

 

「皆様、ケーキをお持ち致しました」

 

「あ、これうちのケーキだよね」

 

「翠屋なら味が確かだから、いつもケーキは翠屋のなんだ」

 

「私の家でもたまに高級なお店でケーキを買うんだけど、翠屋のは

安心感があるのよね」

 

「俺は昔から翠屋一筋だぜ」

 

 翠屋のケーキの話題で盛り上がる中、猫が次々と近寄ってきた。月村家は豪邸としても有名だが、猫屋敷としても有名だ。その数はすずかや忍さんも知らないほど多いらしい。ノエルさんなら知っているかもな。

 

「うりうり、可愛いな」

 

「犬も良いけど、たまには猫も良いわね」

 

「アリサちゃんは犬派だもんね」

 

「なのはちゃんはどっちが好き?」

 

「うーん……………………猫、かな」

 

「かなり悩んだな」

 

 驚いたりすると猫みたいな鳴き声するんだから即答だと思ったんだが。もしくはフェレット派も考えられたな。そういえばなのははユーノを連れてきているのだろうか?

 

「なのは、ユーノは居るか?」

 

「うん居るよ。出てきて」

 

 なのはがよく持ち歩いているカバンからユーノがひょっこりと顔を出す。話題を出してなんだが猫が大量に居る中で出して大丈夫なのか。

 

「ニャーッ!!」

 

「キュッ!?」

 

「待てぃ猫」

 

 やっぱり飛び掛かっていったか。ユーノが襲われないように猫を掴む。その隙にユーノはカバンの中へ戻っていった。

 

「ったく」

 

「ニャゥ……」

 

「キューーーッ!!」

 

「あっ! ユーノ君!?」

 

 あん? なんで隠れたのにカバンから出て家の外に向かったんだ? ストレス発散に走り出したのか?

 いや、気付かなかったが僅かに魔力を感じないか? チッ、ジュエルシードがあったのか。俺もすぐに向かうとしよう。

 

「ユーノを追ってくる。なのはも来るか?」

 

「2人なら早いもんね」

 

『ユーノ、今からなのはとそっちへ向かう』

 

『待ってるよ』

 

 ユーノを追ってなのはと一緒に月村家の庭に出た。庭、でいいよな? ほとんど林だぞ。これが私有地なんだよな。さて、今回のジュエルシードはどんな事になっているのか。

 

「なのは! 要! こっちだよ!!」

 

「おっしゃ、どんなのが…………」

 

「ウニャ~」

 

「…………おっきいね」

 

 いやはや、まさか巨大猫とは思ってもみなかった。仔猫がそのまま巨大化した感じだが、動物が巨大化しただけでも人間には脅威だ。こないだの犬みたいに敵意がないだけマシか。

 

「さっさと封印しようぜ」

 

「うん。レイジングハート、セットアップ」

 

《set up》

 

 今回は楽に終わったな。毎回これならいいのにな。だがそうもいかないのが世の中。今回も実は楽ではなかったようだ。

 何かが飛んできて、それが直撃した猫は悲鳴を上げて倒れた。

 

「魔法!? 一体誰だ!?」

 

 ユーノの呼び掛けで出てきたわけじゃないだろうが、金髪の少女と犬耳を付けた女性が出てきた。少女は杖を持っているからさっきの魔法を撃ったのは彼女だろう。

 

「ジュエルシードは頂きます」

 

「なっ!? 君は誰なんだ!? ジュエルシードは危険なんだぞ!!」

 

「そんなのは百も承知だよ。あたし達がいるって言ってるんだ。寄越しな」

 

「横暴な奴らだ。なのはとユーノは金髪の相手をやってくれ。俺は犬耳をやる」

 

「生意気言うんじゃないよガキんちょ」

 

「ガキかどうかはその身で確かめな。50%解放!」

 

「!」

 

 まずは分断するために犬耳へ近付いて投げ飛ばす。これでなのは達からはなりは離れたな。

 

「何者だいあんた。突然魔力が増えたりあたしをこんなに飛ばしたり。デバイスも無しにどうやったんだい?」

 

「化け物とだけ言っておこう。そっちもデバイスは使わないのか?」

 

「あたしは使い魔。デバイスが無くても魔法ぐらい使えるんだよ!!」

 

 使い魔というのもあるのか。さっきの投げで無傷なのを見るにバリアジャケットも装備しているのか。なら手加減はいらないよな。

 

「食らいなッ!!」

 

 顔面に犬耳のパンチが入る。だがこっちの肉体が強いからか全くダメージがない。50%でこれか。

 

「効いてない!?」

 

「次はこっちだな。さっさと終わらせてなのはを助けに行くか」

 

「そんな余裕あるとでも」

 

「あるさ」

 

ーーズドン

 

「かっ……うぇ……!?」

 

 追撃をしようとした犬耳の腹を殴り付ける。どうやら単純な腕力でもバリアジャケットを貫通出来るようで犬耳は膝をついて吐き始めた。これで終わったか。なのはの応援に向かおう。

 

「いか、せな」

 

「まだ動けるか。おら」

 

 脚を掴んで俺を止めに来た犬耳を俺は木へ叩き付ける。木々は次々と折れ、犬耳はピクリとも動かなくなった。

 俺って、こんなに当たり前のように人を傷付けられたのか。もしかしたら中のORTの影響があるのか? いやそんなものは言い訳か。傷付けているのは俺の意思でやった事なんだから。

 

「むっ?」

 

 身体中に橙色の輪が巻き付く。相手を拘束する魔法か。軽く力を入れた程度では身動きが取れない。

 

「随分と邪魔したいようだな。あの金髪がそれだけ大切か」

 

 ほとんど動けないようなダメージを受けておいて足止めをする精神は見事としか言えない。だが俺にもやるべき事がある。突き進ませてもらおう。

 

「はぁ~、フンッ!!!」

 

 俺を拘束していた輪を引き千切る。さて、まだ邪魔をしてこないかな? 一応意識の有無は確認するか。

 

「魔法もデバイスも使わない人間に無様に負けた気分はどうだ?」

 

「ふ…………ざけ」

 

 驚いた。まだ意識を保てていたか。放っておいたら後ろからやられた可能性もあったな。解放状態なら不意討ちも無効化する自信はあるとはいえ、足止めにはなったろうな。しかしここまで根性を見せられるとジュエルシードを必要とする理由が気になるな。

 

「ジュエルシードはそうまでして必要なのか? そうまでしてジュエルシードで何をしたい?」

 

「あたしが…………知る、か……ただ、あの子の……ために…………」

 

「今死にかけているんだぞ。そこまでする価値があるのか?」

 

「だ、まれ!! あんた…………何が、わか…………」

 

「分からんから訊くんだよ。だがてめぇが命を掛けるだけの理由があるのは理解した。それでも俺はやる事があるんでな。じゃあな」

 

「ま…………て……」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 なのは達の所に着いた時には遅かったようだ。金髪がジュエルシードを封印し終えていた。なのはとユーノは倒れている。

 

「貴方は、アルフはどうしたのです?」

 

「向こうで半殺しにしてきた。ほっとけば死ぬんじゃないか?」

 

「ッ!!」

 

 俺を睨み付けてから飛んでいきやがった。動きが速いな。これじゃあなのはじゃ相手にならなかったろう。

 

「なのは、意識は?」

 

「……ごめん。ジュエルシード守れなかった」

 

「なのはは悪くないよ。なのはが僕を守るために盾にならなかったら」

 

「てめぇらが後悔しても結果は変わらんよ。第一レベルが違いすぎる。次は勝てるようにならないとな。立てるな?」

 

「うん。普通に動くだけなら」

 

「結構。すずか達を心配はさせれんからな。一応肩を貸してやる」

 

「ありがとう」

 

 ここにきてジュエルシードを奪いに来る奴らが現れるとはな。俺だけなら戦う事には困らない。しかしジュエルシードや空中戦はどうしようもない。なのはに強くなってもらう必要性が出てきたな。全く。魔法が使えない自分が歯痒くてしかたねぇ。




要君が能力解放するほど回復力も上がっていきます。これからよく使うであろう50%で骨が折れてもすぐに再生完了するレベル。

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