ポケモンの捕まえ方を教えてくれると言った爺さんにホイホイついて行ってみる。
オーキドの爺さんのためにもポケモンの捕まえ方は知っておきたい。それに何時までもハラマキ1匹に頑張らせるわけにはいかないだろう。
そして、爺さんが草むらへ入った瞬間、ビードルとか言う、黄色イモムシのようなポケモンが現れた。ほほう、虫のポケモンもいるのか。
でも、虫か。虫かぁ……
正直、虫は好きじゃない。それこそ、ガキの頃は虫網を持って昆虫を追い掛け回したものだが、今じゃどうしてそんなことをしていたのか全くわからない。セミとか捕まえて何が楽しいんだろうか。
因みに、現れたビードルのレベルは5となかなか高い。さて、どうやって捕まえるのやら。
なんて思っていると、爺さんは懐からモンスターボールを取り出し、それをビードルへ向かって投げつけた。
投げられたモンスターボールが空中でピカっと光ったと思ったら、ビードルがその中へ吸い込まれ、地面へ落ちたモンスターボールが3回ほど揺れてから、カチっと何かが締まるような音。
「ほれ、こうやって捕まえるんじゃ」
どうやらこれで捕獲完了らしい。思っていたよりかなりあっさりと言った感じ。
よく分からんが、とりあえずポケモンへ向かってモンスターボールを投げれば良いってことは分かった。コツとかはないのだろうか?
「ポケモンを弱らせてからの方が捕まえやすいぞ」
ああ、なるほど。そうなのね。
まぁ、確かに元気な奴より弱っていた方が捕まえやすそうだ。
「どうじゃ! 少しは役に立ったじゃろう?」
「ああ、助かったよ。ありがとう」
役に立ったことは確か。此処は素直に感謝しよう。
とりあえず出会ったポケモンへ片っ端からモンスターボールを投げてみれば良いんだろ? モンスターボールの数は10個ほどしかないが、一匹くらいなら捕まえられる気がする。
爺さんから捕まえ方も教えてもらったし、どんどん先へ進んで行こうかと思っていたが、トキワシティにはトレーナースクールのようなものがあり、其処へ行けばポケモンの基礎的なことを聞けると教えてもらった。そんなわけで早速行ってみることに。
そのトレーナースクールのようなものはポケモンセンターの直ぐ北にあり、一見すると民家にしか見えない。これじゃあ、気がつかないはずだ。ただ、ポケモンの基礎的なことを聞けるのは嬉しい。
だから俺は、そっと扉を開け……
「よし、それじゃあ前回の復習をしましょうか。努力値レベルを限界まで上げるのに必要なニドラン♂の数はいくつかな?」
「はい、先生。努力値の最高値は2^16-1……つまり65535で、ニドラン♂の種族値の中で一番低いのは、防御と特殊の40だから、1639匹です!」
「ふふっ、惜しいけどちょっと違うわよ。確かに努力値の最高値の計算ならあっているけれど、今回求めなきゃいけないのは、努力レベルの最高値。つまり?」
「あっ! そっか! 努力レベルの計算は……int[{(n-1)^0.5}+1]/4だから――
そっと扉を閉めた。
……いや、アレは無理だろ。多分ポケモンの基礎的なことを話しているのだろうけれど、何一つ理解できる気がしない。俺が知りたいのはそう言うことじゃない。もっとこう……水ポケモンに強いのは何ポケモンかな? みたいな優しい感じのことが知りたかったんだ。ニドラン♂を何匹倒せば良いのかとかそう言うことは別に知らなくても良い。
しかし、あんな小さな子どもですらあの意味の分からん計算ができるのか……一見するとこの世界の科学は発展していないように思われるが、モンスターボールのことと言い、俺のいた世界より文明は進んでいるのかもしれない。
少なくとも、教育レベルは此方の世界の方が高そうだ。
てか、なんで小学校低学年くらいの子供がINT関数を知ってるんだよ……この世界へ来てからは驚きの連続だ。
トレーナースクールを後にしてから、トキワシティの北に位置する、ニビシティと言う街を目指すことにした。
そう言えば、トキワシティにポケモンジムとやらがあったけれど、近くにいた爺さん曰く、そのジムは何時来ても閉まっているらしい。ちょっと覗いてみようかとも思ったが、まぁ、別にジムには行かなくても問題ないだろう。それよりも今はポケモンを捕まえたい。
そして、トキワシティとニビシティの中間にある、トキワの森と呼ばれる場所へ着いた。
「いや、すごく虫とか出そうだな……」
大きな木が其処ら中に生えていて、草むらも沢山ある。トキワの森へ入る前にあった関所のような建物の中にいた女性は、迷路のようになっていると言っていたが……なるほど、これは大変そうだ。
どんなポケモンが出るのやら。できれば虫じゃないポケモンに出てきてもらいたいところ。
そんな願いを抱きつつ、トキワの森へ入ってから、真っ直ぐに進んでみた。木と草むらのせいで見通しは悪いし、太陽光がほとんど差し込まないためか、何処か薄暗い。どうしてもっとちゃんとした道を用意しないのか。
ガサゴソと草むらを掻き分けながら進んでいると、爺さんが捕まえたのと同じポケモンであるビードルが現れた。
ああ、やっぱりお前が出てくるのね。いや、なんとなく分かっていたけどさ。
現れたビードルのレベルは4と高くはない。多分ハラマキなら一発で倒してしまうだろう。爺さんは弱らせてからの方が捕まえやすいと言っていたが……
「行け、ハラマキ。ギリギリで倒さない程度に痛み付けるんだ」
はてさて、それができるのか。
技はひのこを選択。まぁ、耐えなかったらそれはそれで仕様が無い。
俺がひのこを選択すると、ハラマキの口から炎が放たれ、それがビードルへ直撃。
――効果は抜群だ!!
なるほど。虫だもんな、よく燃えるよね。
耐えませんでした。一発でした。
申し訳なさそうな顔で俺を見つめるハラマキ。いや、良いんだハラマキ。お前は悪くないから。
どうやら、ハラマキは戦闘において一切手を抜かない性格らしい。
その後も、何度かビードルと戦ったが、ハラマキは全て一発で倒していった。試しにと思い“ひっかく”を選択してみたけれど、それでもビードルは一発で沈む。ハラマキのレベルを少々上げすぎたのかもしれない。
……ふむ。ハラマキの攻撃で弱らせるのは無理か。
仕方無い。弱らせるのは諦め、いきなりモンスターボールを投げてみよう。あの爺さんにはできたんだ。それなら俺だってできるはず。
そして、ガサゴソと草むらを掻き分けながら進むと、今度はキャタピーなんて言うポケモンが現れた。初めて見るポケモンではあるけれど――
「また虫かぁ……」
また虫だった。しかもビードルよりも色が鮮やかで、虫々さが増している。コイツはあんまり好きじゃないな……ハラマキの方が数十段ほど可愛いしカッコイイ。
さてさて、どうするか。ビードルはダメだったが、もしかしたらコイツはビードルよりも強いかもしれない。それにモンスターボールの数だって無限ではないのだ。此処は慎重にいこう。
よしっ、頼んだぞハラマキ。お前のひのこを見せてやれ。
――効果は抜群だ!!
……ダメか。コイツでもダメか。まだ分からないが、虫ポケモンは皆よく燃えるのかもしれない。
そして申し訳なさそうなハラマキの顔。別にいいって、このくらい気にすんな。
ヤバいな。もしかしたらハラマキってものすごく強いんじゃないだろうか? それは嬉しいことであるけれど、此処まで圧倒的だと少し引く。
う~ん、グリーンと戦いすぎたな。でも、何故かグリーンのポケモンはいくらハラマキを倒してもレベルが上がらなかったんだよなぁ。むぅ、相変わらず分からないことだらけだ。
悩んでいても仕方無いため、またポケモンを探す。
そう言えば瀕死となった野生のポケモンってどうするんだろう。いつの間にか消えているが、アイツらじゃポケモンセンターへ行けないよな。それに野生のポケモンがポケモンセンターにいるところは見たことがない。
なんてことを考えていると、またビードルが現れた。そのレベルは5。
よしっ、今度こそモンスターボールを投げてみよう。別に失敗したって良いさ。それくらいの気持ちでいかねば。
とりあえずハラマキを登場させてから、バックの中よりモンスターボールを一つ取り出す。
捕まえ方を教えてくれた爺さんの動きを思い出しつつ、ソレをビードルへ向かって投げつけた。
あの時と同じように空中で光るモンスターボール。それがビードルを吸い込んでから地面へ。そして3回ほど揺れてから――カチっと心地良い音が。
……せ、成功ってことで良いのか?
おっかなびっくりといった具合で、動かなくなったモンスターボールへ近づき、ソレを手に取ってみた。中には確かに先ほどのビードルの姿がある。
つまり、捕獲は成功らしい。
「……おお、おおー! スゲー! 捕まえた!」
ヤバい。超嬉しい。
こんな達成感のようなものを覚えるのは何時以来だろうか? 随分と久しい感覚だけども……うむ。悪いものじゃあない。
そんじゃ、次、いってみようか。
~補足とか~
捕獲が成功するかどうかですが、作品ごとに計算方法が変わったりします
細かい計算式は省きますが、捕獲が成功するかどうかは、モンスターボールなどを投げたときの乱数、モンスターボールなどのボール係数、捕まえるポケモンの被捕獲度(レア度とも)、最大HP、現在のHP、状態異常などが関係してきます
因みに、私が計算を間違えていなければ、第一世代においてレベル5、HPマックスのビードルをモンスターボールで捕まえられる可能性は30~40%くらいです
また、レッド版のトキワの森でビードルが出現する確率は50%です
一方、キャタピーが出現する確率は約5%とピカチュウの出現する確率よりも低いそうです
間違いなどあった場合、教えていただけるとうれしいです