そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第41話

 

 

 マサラタウンへ行くという目標も決まった。あとは向かうだけなんだが……現在いる位置はセキチクシティのため、海を越えていく必要がある。クチバシティまで戻ってディグダの穴を抜けニビシティから戻る方法なら陸路だけで帰ることもできるが、どうせならまだ訪れたことのない場所を通りたい。

 

 マサラタウンに戻るには海を渡るしかない、ただし俺は泳ぐことが苦手だ。いやまぁ、もし得意だとしても泳いでいくつもりはないが。そんなわけでここはポケモンの力を借りるとしよう。

 

「ほれ、デブチュウ仕事だ」

 

 このデブチュウが『なみのり』とかいう技を覚えてくれるとは思えんがもしかしたら覚えてくれるかもしれん。ぶっちゃけるとデブチュウは弱い。アカヘルやハラマキが強すぎるってのもあると思うが、現状戦闘面でデブチュウが活躍する場面はないくらいだ。

 

「ピッカ!」

 

 うむ、今日も今日とて太ましい限りで何よりだ。元の世界でよく見たお前はもう少しスリムな感じだったが、元の世界で見たお前より今のお前の方がずっと可愛いと思うぞ。

 

 モンスターボールから出てきたデブチュウのふにふにのお腹をいつも通りつまんでやると、デブチュウは

 

「チャー」

 

 と嬉しそうな声を出した。かわいい。くすぐったいのか短い手をバタバタさせるところなどすごくポイントが高い。

 世界一有名なあの黒色のネズミには勝てんかもしれんが個人的にはお前の方が好きだよ。

 

「んでだな、デブチュウよ。どうだ? お前はこの『なみのり』とかいう技を覚えられそうか?」

「ピカピ―?」

 

 小さな望みを持っていつも通りの流れでひでんマシン03を持たせてみたが……首を傾げられた。まぁ、無理か。こういうのもアレだがこのデブチュウが上手く波に乗れるとも思わない。デブチュウったら手足短いもんな。泳ぐのは難しいだろうししゃーない。

 サーフボードとかを使えばまだ良いかもしれんが……いやまぁ、どの道デブチュウがサーフボードを華麗に操れるとは思えんか。

 

「ありがとな、デブチュウ」

「ピッカピー!」

 

 頭を軽くなでてあげてからデブチュウをモンスターボールへ戻す。

 デブチュウが『なみのり』を覚えられない予想くらいはしていた。ただ俺がデブチュウと触れ合いたかっただけだ。本命は次。流石にコイツなら覚えてくれるはず。

 

「アカヘル。出番だ」

 

 今はもうなんだかよく分からん見た目となっているが元が魚だし、もし俺が乗ったとしてもコイツの身体の大きさなら十分に余裕があるはず。

 

 そんなアカヘルだが予想通り『なみのり』を無事に習得。ただ、技が『かみつく』『たいあたり』『れいとうビーム』『ハイドロポンプ』と4つ埋まっていたため『たいあたり』を忘れさせ新しく『なみのり』を習得させた。『なみのり』が強い技……というかそもそも攻撃技とも思えんが、まぁアカヘルなら大丈夫だろう。噛み付いているだけでコイツはかなり強い。

 

 さってと、アカヘルが『なみのり』を覚えてくれたことだし、マサラタウンへ向かうとしよう。

 タウンマップを確認しつつ、19番水道とかいうものが続くセキチクシティの南の方へ移動。途中で海パン野郎×2名が勝負を仕掛けてきたが、新しいポケモンとの出会いはなかった。道中などで更衣室なんかは見当たらなかったが、アイツらはどこで着替えたりしているのだろうか……心臓麻痺の心配や水へ入る前の準備体操の重要性を俺に教えてくれたが、俺としては海パン一丁でセキチクシティを動き回るような人としての尊厳を失ってしまうような行動を彼らがしないかどうかの方が心配だ。

 あと、相変わらず海パン野郎からの賞金は嬉しくない。海パンの中に入っていたお金をもらって喜ぶ人間は少ないだろう。

 

 海パン野郎×2を倒し、いよいよマサラタウンに向け海へ。

 近くに立っていた看板曰く、この19番水道は二子島とかいう場所に繋がっているらしい。その二子島を越えればグレンタウン。そしてグレンタウンを過ぎればマサラタウンが待っている。

 道のりは長いかもしれんが、道中でどんな新しいポケモンに出会えるのか考えるだけでワクワクが止まらない。色のある世界で体験できる新しい出会い。年甲斐もなくはしゃいでしまうのも仕方の無いことだろう。

 

「おっし、それじゃあアカヘル。なみのりだ!」

 

 モンスターボールからアカヘルに出てきてもらい言葉を落とす。

 さてさて、『なみのり』ってのはどんなもの……

 

 

「……なんも起きんぞ」

 

 

 何も起きなかった。

 おかしい。あのサファリゾーンの係員は『なみのり』を使えばポケモンに乗って水の上を進むことができる、と確かに言っていたはずだ。

 んー……何となくだがこの既視感は覚えている。これはアレだ。『いあいぎり』のようにこの『なみのり』を使えるようになるにはポケモンジムのバッジが必要なのだと思う。そして、おそらくだが『そらをとぶ』も同様にどこかのバッジが必要なんじゃないかと思っている。

 現在持っているバッジはタケシからもらったグレーバッジとカスミからもらったブルーバッジの2つ。バッジかぁ……面倒くさいってのものあるが、正直なところポケモンジムには良い印象を持っていない。タケシは上半身裸の変態だったし、カスミも水着だった。

 そんなことはないと思いたいが、ポケモンジムってのはそういう場所なのかもしれん。流石にそんなことはないと思うが、いざジムに入ってみたらふんどし一丁のポケモントレーナーたちがひしめき合っている状況とかもあるかもしれん。そんな場所は遠慮したいものだ。

 

 そうとなれば仕方ない。とりあえずマサラタウンは後回しにしてまだ訪れていない場所へ行くとしよう。具体的にいうと、セキチクシティの西側にある18、17番道路。

 タウンマップを見る限りの18、17番道路を抜ければタマムシシティまで戻ることができるはずだ。んで、確かゴールとなるタマムシティの直前にはまたあのカビゴンが寝ているはず。

 この世界のことだしどうせまだあのカビゴンは寝ていることだろう。道をふさがれていたままじゃあ、皆も迷惑しているはず。面倒ではあるがついでなのだしちょいとあのカビゴンを退かしてくるとしよう。

 

 そんなわけでセキチクシティの西側にある18番道路を進むと、草むらを発見。テンション上がる。

 その草むらには、ここは自分たちの縄張りだ、とかよく分からんことを言っている奴を含め鳥使いが3人。そのうちのひとりがドードリオという初めて見るポケモンを出してきた。そのドードリオはおそらくドードーの進化形だろう。名前的にも見た目的にも。

 ふむ……ポケモン図鑑を埋めることが俺の使命なわけだが、このドードリオのように進化するポケモンというのが厄介だ。デブチュウのようにいくらレベルを上げても進化しないポケモンもいれば、ハラマキのように2回も進化するポケモンがいる。こりゃあ全てのポケモンを捕まえるのは時間がかかるだろう。

 

「ま、それくらいの方が良いんだがな」

 

 そう思っておくことにしよう。

 鳥使いがいた草むらだが、新たにオニドリルを捕獲。見た目もカッコイイし一時期は連れて行こうと思っていたが、今は伝説の鳥ポケモンの方が優先。手持ちはいっぱいなのだし、オニドリルはパソコンの中にいてもらおうか。

 伝説の鳥ポケモンとやらはどこにいるのか全く情報は得られていないが……あのグリーンだったら知っているだろうか? 最近仲間にしたサーロインのレベルも上げたいところなのだしそろそろ出てきてもらえると有り難い。

 

 オニドリルの他は新しいポケモンと出会うこともなく17番道路へ。その途中には2階建ての関所があり、その2階へ行くとシオンタウン南の関所のように展望台となっていた。例のごとく望遠鏡が2つ用意されており、一応覗いては見たが収穫はなし。ホント、何のためにこの望遠鏡は用意されているんだ……

 

 相変わらず何とも残念な展望台ではあったが、その展望台にいたひとりの男からポケモンの交換を依頼された。内容はベロリンガを渡すのでヤドランがほしい、とのこと。どちらも初めて聞くポケモンの名前。

 たぶん、ヤドランというポケモンはセキチクシティで転移されていたあのヤドンが進化したものだろう。実際のところはわからないが、ベロリンガなるポケモンは手に入れておきたい。ベロリンガという名前的にあまり強そうなポケモンではないが、ポケモン図鑑のため是非交換してもらわないとだ。

 

 さてさて、これでサーロインとヤドンのレベルを上げる必要ができた。地味な作業ではあるものの、自分のポケモンのレベルを上げるのは嫌いじゃない。納期などの制限時間は用意されていないのだし、のんびりやっていこう。

 

「こんにちは! サイクリングロードこちらからは上り坂となります」

 

 とりあえず、タマムシシティを目指そうと思ったら関所の係員にそんな声をかけられた。

 そういえば、ここから先はサイクリングロードだったか。しかしはてさて、上り坂というのはどんなものだろうか? 若返っているのだし、疲れ知らずな身体ではあるもののあんまり大変なのは遠慮したところだ。

 

 係員のセリフは気になったもののとりあえず関所を抜け自転車に乗ってサイクリングロードへ。

 んで、そのサイクリングロードの様子だが……

 

「あー……まいったねこりゃあ」

 

 すんごい上り坂だった。

 






ベロリンガですが赤緑版では野生で出現しないため、交換が必須となります
ただヤドランについては二子島では野生で出現、あとはハナダの洞窟で釣れたりも

また黄版ではセキチクシティ南に海の家見たな建物があり、波ピカを連れていくと波乗りのミニゲームができます
波ピカの準備は大変ですが割と面白いのでオススメ

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