サファリゾーンへ入って直ぐ、とりあえず目の前に見える草むらへ行ってみることに。これだけ広いんだ、きっと俺がまだ捕まえていないポケモンだってたくさんいるはず。
なんてことを考えていると、ニドラン♂が飛び出してきた。
うーん、ニドラン♂かぁ。既に捕まえているポケモンだし、割と何処にでも現れるポケモンだから珍しくもなんともない。
ポケモンバトルは禁止されているため、今の俺にできるのは、エサ、石、サファリボールのどれかを投げるだけ。
ポケモンってのは弱らせれば弱らせるだけ捕まえやすくなる。しかし、今は弱らせることができない。
さて……どうしたものか。多分、石を投げるのが弱らせることの代わりなんだと思うが、エサの意味は分からない。
まぁ、エサと石はサファリボールと違い制限がないんだ。色々と試してみれば良い。
そう考えてから石を投げつけると、ニドラン♂が怒った。
……ああ、うん。そりゃあまぁ、怒るよな。いきなり知らんおっさんに石を投げられればそりゃあ怒るだろう。
とはいえ、怒ったから俺に攻撃してくるとかそういうことはないらしい。ただ怒っているだけだ。ポケモンバトルが禁止されているってことを考えるに、多分、他のポケモンも同じだろう。そんなんで外へ出てやっていけるのか心配だが、こういうものなんだと思おう。
その後も、ひたすら石を投げ続けてみたが、ニドラン♂は怒るだけで、特に変わった様子も見られない。しかし、5個目の石を投げたところでニドラン♂は逃げてしまった。それが石の影響かどうかは分からないが、サファリゾーンのポケモンは逃げることがあるってことだろう。
さらに草むらの中を歩いていると、またニドラン♂が飛び出てきた。またコイツかと、少々がっかりしたが、試しにエサを与えてみることに。
それでエサの効果だが……よく分からん。
美味しそうにエサを食べてくれるが、これにどんな意味があるのだろうか。いや、エサをモッシャモッシャ食べる姿は見ていて面白いが……ああ、そうか。動物園なんかでも動物のエサを売っている時もあるし、きっとそれと同じなんだろう。
なるほど、たった1グリーンでサファリボールを30個もらえ、さらに、ポケモンへエサをやることもできるのか。うむ、やはりサファリゾーンの運営が心配になるな。流石にサービスが良すぎるだろ。
それから、10個ほどニドラン♂へエサを与えてやったが、結局逃げてしまった。きっとお腹がいっぱいになり満足したんだろう。まぁ、別に捕まえようとしていたわけではないのだし、逃げられても何の問題もないが。
石の意味は未だによく分からんが、エサの意味は何となく分かった。ああ、エサといえば、俺のポケモンたちは何も食わないのだろうか? 俺もこの世界へ来てから何も食っていないが、ポケモンたちは心配だ。捕まえたばかりのメタボンなんて、図鑑に一日に400kg食べないと気が済まない。なんて書いてあるが、何かを食べさせたことはない。
まぁ、アイツはちょっと太りすぎだし、ダイエットってことにしておこう。
さてさて、制限時間もあるのだしポケモンの捕獲捕獲。
そう考え、再び草むらの中を歩いていると、今度はサイホーンが出てきた。サイホーンといえば、あのサカキが使ってきたポケモン。もしかしたらあのサカキもサファリゾーンへ来ていたのかもしれんな。
……いや、流石にないわな。
とりあえずサイホーンへサファリボールを投げてみたが、弱らせていないせいかやはり捕まらない。んじゃあ、と思い、石を投げ怒らせてからサファリボールを投げてみることに。
その考えが良かったのかは分からないが、捕まえることに成功。
うーん、まだ分からんが、やはり石を投げ怒らせると捕まえやすくなるのかもしれん。少なくとも何かの意味はあるはずだ。
ま、この調子でどんどん捕まえていこうか。
このサファリゾーン内にどれだけの種類のポケモンがいるのかは分からないが、入って直ぐの草むらだけでかなりの種類のポケモンと出会うことができた。
しかも、サイホーン、ニドリーノ、ニドリーナ、コンパン、タマタマと俺が初めて捕まえるポケモンばかり。一度だけ、セキチクシティにいたラッキーというポケモンとも出会ったが、石を投げたら逃げられた。
それにしても此処はかなり美味しいな。たった500円でこれだけの数のポケモンを捕まえられるのは本当に有り難い。
「ピンポーン! 時間が来ましたので、サファリゲームはこれで終了でーす!」
あら、もう時間なのか。最初の草むらから全く進めていないんだが……まぁ、時間なら仕様が無い。
さて、それじゃあ、受付へ戻るとしよう。なんて思っていたら、視界が暗転した。
「お疲れ様でした! ポケモンはたくさん捕まえられたかな? また来てね!」
そして、気がついたら受付まで戻って来ていた。
それはあなぬけのヒモを使ったときと同じような感じ。ふむ、わざわざ歩いて戻る必要もないし、これは便利だ。
「よし、それじゃあ、もう一度中に入らせてくれ」
俺がそう言うと、受付の男性はなんとも複雑な顔をした。
まだ捕まえていないポケモンはたくさんいるはず。どんどん行こうか。
せっかくだし、次はもう少し離れた場所も探索してみるとしよう。
どうやらこのサファリゾーンはかなり広いらしく、途中に休憩小屋みたいな建物も用意されていた。その休憩小屋の中にいた奴ら曰く、エサをあげるとポケモンが逃げにくくなり、石を投げるとポケモンを捕まえやすくなるそうだ。ただし、エサをあげると捕まえにくくなり、石を投げると逃げやすくなるんだと。
ん~……つまり、エサを与えて逃げにくくしてから、石を投げろってことだろうか。ただ、逃げる奴はエサを与えても直ぐに逃げるんだよなぁ。それならもう最初からサファリボールを投げた方が良い気がする。
ただ、ポケモンがモッシャモッシャとエサを食べる姿は見ていて飽きない。
そして2回目の挑戦もラッキーにまた逃げられてしまったところで終了。
今回の収穫はパラセクトのみ。あと、ストライクというすごいカッコイイポケモンとも出会った。まぁ、逃げられたが。
制限時間となりまた受付へ戻されたが、休まず出発。
一々戻されるのも面倒だから、制限時間を延ばしてくれないかい? ああ、ダメですか。そうですか。
目標はサファリゾーンに出るポケモン全種類の捕獲。はてさて、全部で何種類のポケモンがいるんだろうな。
まだ捕まえていないポケモンを求めて歩いていると、制限時間ってのは歩数準拠となっている。なんて書いてある看板を見つけた。
どうやって数えているのか知らんがそういうことらしい。それじゃあ、と思い自転車を使ってみたが、普通に受付へ戻された。もう何も信じられない。
また、サファリゾーンの一番奥にはトレジャーハウスってものがあり、そこへ行くと秘伝マシンをもらえるらしい。何の秘伝マシンか分からんが、もらえるのならもらっておいた方が良さそうだ。
そして、3回目の挑戦の収穫はラッキーとガルーラ。まさかガルーラが出るとは思っていなかったからかなり嬉しい。そういえば、ガルーラもあのサカキが使っていたっけかな。アイツ、本当に此処へ来ていたんじゃ……
これで出会ったけれど捕まえていないポケモンはストライクだけ。ただアイツ、本当に直ぐに逃げるんだよなぁ……
「……それじゃあ、ぐっどらっく」
まだたった4回目だというのに、受付の男性のやる気のなさがすごい。あと10回は挑戦すると思うが、こんな調子で大丈夫だろうか。
まぁ、たった1グリーンでこれだけ楽しめるんだ。文句はない。それに、きっとこの男性だって安月給で頑張っているのだろう。コストカットの基本は人件費なのだし。
ストライクを探しつつ、トレジャーハウスを目指すことに。とはいえ、これでもう4回目の挑戦。サファリゾーンの中もだいたい把握できてきた。
どうやら、このサファリゾーンはスタート地点から反時計周りに進む感じとなっているらしい。んで、きっとゴールがトレジャーハウスなのだろう。
「へー、こんなポケモンも出るのか」
もう直ぐエリア2を抜けられる場所で、初めて見るポケモンと出会った。
名前はケンタロスといい、3本の尻尾が特徴の牛ポケモン。少し硬そうだが、焼いたら美味しくいただけると思う。サント・アンヌ号のコックが牛フィレ肉のステーキを作っていたが、コイツの肉かもしれない。
そんなケンタロスへ特に何も考えずにサファリボールを投げてみたが、捕獲は失敗。さらに、逃げられてしまった。
むぅ、なかなか出会わないし、できれば捕まえておきたかったんだが……先程のケンタロスといい、ストライクといい、捕まえるのは苦労しそうだ。
気を取り直し、探索再開。
そして、エリア3へ入り暫く進んでいると入れ歯が落ちていた。
……いや、どうして入れ歯がこんなところに? 今までも色々なアイテムが落ちていることはあったが、入れ歯が落ちているのは初めて見た。
誰が落としたのか知らないが、入れ歯を落とす状況が全く分からない。流石に落とした時に気づくと思うが……
本当なら、拾って受付の男性にでも預けるのが良いのだろうけれど、誰のだか知らない入れ歯に触りたくなかったため、そのままにしておくことにした。まぁ、落ちていたことくらいは伝えておくようにしよう。
入れ歯は気になるが、気にしたって仕様が無い。それにそろそろ制限時間が来てしまうはず。その前にせめてゴールの場所くらいは確認……ああ、なんかそれっぽい建物が見えたわ。多分、あれがトレジャーハウスなんだろう。
見えてきた建物は休憩小屋と比べてかなり立派で、その建物の前にはポケモンの像なんかも置かれていた。これ以上、奥へ続く道もない。此処がゴールと考えて間違いないだろう。
そんな建物の中へ入ると、ひとりの男性がいた。
そして、その男性へ声をかけようと一歩踏み出した時だった。
「ピンポーン! 時間が来ましたので、サファリゲームはこれで終了でーす!」
……ままならないものである。