そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第3話

 

 

 初めてのポケモンバトルもどうにか勝つことができ、出だしは順調と言ったところ。このままの勢いで、どんどん先へ進んで行こうじゃないか。

 目的も目標もないせいで、未来なんて何も見えやしない。それでも、この世界へ来る前と比べれば俺は今、輝いているんじゃないかなって思う。

 

 こうやって、未来にわくわくするってのは何時以来だろうか。そんなことも思い出せなくなってしまった。

 

 

 グリーンとの戦いで、ハラマキもダメージを受けてしまったはずだが、戦いが終わり確認してみたところ、HPは全回復していた。モンスターボールへ戻れば勝手に回復するってことなのかねぇ?

 

 これから本格的に旅が始まるから、もう一度母親へ挨拶をしておいた方が良いだろうか。なんて考えたけれど、なんて言葉を落とせば良いのかが分からず、自分の家へ寄って行くことはしなかった。本当は声をかけて言った方が良いとは思う。子供のいない俺には親の気持ちってのを理解することはできないけれど、親ってのは何時だって子供ことを想っていてくれるものなのだから。

 

 でも、ほら。なんか、こそばゆいだろ? どうにもそう言うのは苦手なんだ。

 

 うだうだと言い訳を重ねながらも、漸くマサラタウンの北にある例の草むらへ。草むらの背は高く、先の方がどうなっているのかは見えない。オーキドの爺さんは突然ポケモンが飛び出すと言っていたが……

 まぁ、今の俺にはハラマキがいるのだし、大丈夫か。

 

 そして、草むらを掻き分けながら進んでいた時だった。

 

 鳩だか雀だか分からんけど、鳥だと思われるポケモンが急に現れた。ソイツの名前はポッポと言い、レベルは3とそれほど高くない。

 なにこれ? どうすれば良いんだ? 放っておいたところで問題はなさそうだが……ああ、でも、戦って倒せば経験値がもらえたりするのか?

 

 色々と分からないことだらけだが、モンスターボールを投げ、とりあえずハラマキを召喚。強くは見えないし、ハラマキなら倒せるだろう。

 

「よしっ、行ってこいハラマキ。狙うは相手の翼だ!」

 

 

 

 

 相手が弱かったのか、ハラマキが強いからかは分からないが、危なげなくポッポに勝つことができた。残念ながらハラマキのレベルは上がらなかったけれど、経験値とやらもちゃんともらえたらしいし、まぁ、十分だろう。

 

「あら? HPが回復していないな」

 

 グリーンと戦ったときはちゃんと回復していたはずなんだが……う~ん、アレが特別だったんかね?

 

 その後も草むらの中を進んでいると、途中でフレンドリィショップとか言う店の店員と出会い、試供品のキズぐすりをもらった。何に使うのかと思ったが、どうやらこれはポケモンに使うらしい。また、ポケモンのHPはポケモンセンターとやらへ行けば、無料で治療してくれるらしい。更に、この道を進んだ先にはポケモンセンターもあるトキワシティがあるんだと。

 ふむ、それじゃあ、とりあえずトキワシティを目指そうか。

 

 それからまたポッポと出会い、戦うことに。負けるはずもなく、なんなく勝利。そこでハラマキのレベルが6から7となった。順調順調。

 

 そんなこんなで、何の問題もなくトキワシティへ到着。マサラタウンから近くて助かったよ。

 トキワシティはマサラタウンと比べいくらか発展している様子。外に出ている人も多いし、大きな建物もある。さてさて、とりあえずポケモンセンターへ行ってみるか。

 

 ポケモンセンターと思われる建物はトキワシティへ入って直ぐに見つかった。無料だとは聞いているけれど、初めての店に入るのはやはり緊張する。しかし、ハラマキを回復させてやるためにも勇気を振り絞り、ポケモンセンターの中へ。

 ポケモンセンターの中はそれなりに広く、何と言うか病院の受付を彷彿させる。う~ん、これからどうすれば良いんだろうか。そもそもポケモンを回復させるのはどうするんだ? 一瞬でできるものなのだろうか。

 

「こんにちは。ポケモンセンターへようこそ。ご利用は初めてでしょうか?」

「あっ、はい。初めてです。えと、ポケモンを回復させてやりたいんですが、どうすれば」

 

 入口でどうしたものか、悩んでいると、カウンターの向こうに立っていた看護師のような女性が声をかけてくれた。

 

「はい、わかりました。それでは此方へどうぞ」

 

 近づくと、モンスターボールを貸してくれと頼まれた。良く分からないが、とりあえず言われた通りに行動。

 その女性はハラマキが入っているモンスターボールを受けると、何かの機械へセットした。う~ん、何が起きているのかさっぱり分からん。

 

「お待ちどうさま! お預かりしたポケモンは元気になりました。またいつでもご利用くださいませ」

 

 ……えっ? もう回復したの?

 

 モンスターボールを受け取り、ハラマキの様子を確認してみたが、確かにHPは回復していた。いや、すごいなおい。どうなっているんだろうか。

 はぁ……この世界も良く分からんな。これを利用すれば人間だって直ぐに回復しそうだ。それともポケモンだけなのだろうか? しかし、これは有り難い。無料で利用できるそうだし、これからは沢山使わせてもらおう。

 

 元気になったハラマキにも満足しながらポケモンセンターを後に。

 そう言えば、来る途中で会った店員が、フレンドリィショップへ是非寄って行ってくれみたいなことを言っていた。所持金を確認すると、3175円ほど。なんだ、意外と持っているんだな。これなら多少の買い物はできそうだ。

 

 そんなことでフレンドィショップへ。

 

「いらっしゃいませ。フレンドリィショップへようこそ!」

 

 そんな元気の良い店員の声。

 やはりハキハキとした声での挨拶ってのは気持ちの良いものだ。

 

「酒とタバコを頼む」

 

 叩き出された。

 

 

 

 

 

 全く……酷い店もあったものだ。いきなりお客を叩き出すとはなかなかに良い根性している。やはりこの世界でも未成年の飲酒喫煙は禁止されているのだろうか? それはちょっと悲しいな。

 

 叩き出されはしたものの、どんな商品が売っているのは気になるため、もう一度フレンドリィショップの中へ。このぐらいでめげる俺ではない。社会の荒波に揉まれ続けたおっさんは意外と強いのだ。

 

 俺が入店すると、店員はものすごく嫌そうな顔をしたものの、追い出すようなことはしなかった。

 そんなフレンドリィショップの中は商品が積み上げられていることもあってか、やたらと狭く感じる。しっかし、随分と色々な商品があるんだな。全部が全部、見たこともない物だから何を売っているのかさっぱりわからんが。

 

「ああ、もしかして君ってマサラタウンから来たのかい?」

 

 積み上げられた商品を眺めていると店員の声が聞こえた。どうやら俺に向かって話しかけているらしい。しかし、よく俺がマサラタウンから来たとわかったな。

 

「まぁ、そうだけど」

「それなら丁度良い。オーキド博士から頼まれている物を届けてもらいたいんだけど、お願いできるかな?」

 

 これは驚いた。まさかお使いを頼まれるとは……いや、そりゃあマサラタウンから来たわけだけど、マサラタウンに戻る予定はなかったし、そもそもお客にお使いを頼むはどうなのだろうか? なるほど、流石はフレンドリィショップと言うだけあるな。そんなフレンドリィさなんて求めちゃいないんだがなぁ……

 正直に言えば、やりたくはない。とは言え、他にやることもないし……まぁ、オーキドの爺さんには恩もある。此処は引き受けるとしよう。

 

 そして了解の旨を伝えると、店員から“おとどけもの”を受け取った。しゃーない。社会を回す歯車として働くとしようじゃないか。

 

 

 お届け物を爺さんへ届けるためマサラタウンを目指す。

 トキワシティからマサラタウンへ行く場合は、段差のような場所を飛び降りていけば、ポケモンの飛び出してくる草むらを通らなくても済むため、拍子抜けするほど直ぐに着くことができた。

 てか、道くらい整備してくれれば良いのにな。これじゃあ、行き来するのが大変だ。それほどに人が通らないってことなのかねぇ?

 

 そうしてポケモンと出会すこともなくマサラタウンへ戻ってきたわけだが……アレだな。こんなに早く戻って来るとは思っていなかったせいで、何も感じない。まぁ、マサラタウンでの思い出なんて何もないし、何かを感じることもおかしいが。

 

 研究所へ行き、爺さんへお届け物を渡す。今度からは自分で取りに行ってもらいたい。運動すればボケ予防にだってなるだろう。

 

「おお、これはわしが注文していた特製のモンスターボールじゃ。すまんなレッドよ」

 

 特製のモンスターボールねぇ。つまり、モンスターボールにも色々な種類があるってことだろうか?

 

「よー、爺さん。俺に用事があるって聞いたけど、どうしたんだ?」

 

 そんななんともやかましい声が聞こえた。あら、グリーンじゃないか。調子の方はどうだい?

 

「うむ、丁度グリーンも来てくれたか。実はお前さんたちに頼みがあるんじゃ」

「頼み?」

 

 そう言うことは最初に言ってもらいたかった。オーキドの爺さんとの連絡なんて取れないし、俺が帰って来なかったらどうするつもりだったんだ。

 

「これはポケモン図鑑と言ってな。出会ったポケモンを自動的に登録してくれるハイテクな図鑑じゃ」

 

 そう言ってから、俺とグリーンは赤色の機械を受け取った。

 元の世界じゃ時代の波へ逆らうようにガラケーを使い続けていた俺。機械なんかは苦手なんだけどなぁ。スマホとか扱える気がしない。

 

「わしはな。この世界にいる全てのポケモンのデータを集めるのが夢じゃった。しかし、わしももう歳じゃ」

 

 俺だって若いわけじゃないんだが……まぁ、此処は黙っておこう。俺だって見た目だけはただの少年なのだから。

 

「そこでわしの夢をお前さんたち二人に託したい。どうかわしの夢を叶えてくれい」

 

 そう言った爺さんの顔は諦めたような、期待するような……そんななんとも複雑な顔だった。

 俺からしてみれば、爺さんくらいの歳になっても夢があるってだけで、充分偉いものだと思う。夢とか希望とか、そう言う奴らを皆忘れてきたしまった俺なんかが爺さんの夢を託される権利があるのだろうか?

 

「これはポケモンの歴史に残る偉大な仕事じゃ。どうか頼んだぞ!」

 

 そんな大事な仕事を子供に任せるなよ。なんて思いはしたけれど、そんなことくらい爺さんだって分かっているだろう。それでも、この爺さんは俺たちに託してくれたんだ。それなら俺もできるだけ頑張るってもの。

 それにせっかくこの世界へ来たんだ。目標はあった方が面白い。

 

 これで漸く、未来が見えてきた

 

 


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