そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第37話

 

「どうせレッドはまだ旅を続けるんでしょ? それじゃ、またね」

「ああ、そうだな。お前もジムリーダーやってて大変だろうが、まぁ、頑張ってくれ」

「言われなくとも」

 

 “すごいつりざお”を手に入れてから、色々な場所で釣りをしてみた。まだ捕まえていなかったポケモンも何匹か捕まえることもできたため、割と満足している。

 ただなぁ。何と言うか……うん、まぁ、深く考えることはやめておこうか。きっとそう言うものなんだ。どうせ考えたところで答えの出ないことなんていくらでもある。人生割り切ることってのはそれなりに重要だと思うんだ。

 

 さて、そんじゃ、ちょいと寄り道をしてしまったが、また旅へ戻るとしようか。

 

 

 

 

 色々と思うところもあるが、“すごいつりざお”が手に入り、俺の世界が広がったのは確か。ただ、よくよく考えてみると、釣りで捕まえられるのは水タイプっぽいポケモンばかりなはず。そして、ポケモンの種類は今までのことを考えるにそれほど多くない。つまり、釣りで捕まえることのできるポケモンは、そんなにいないんじゃないだろうか?

 とは言え、釣りでどれくらいの種類のポケモンを捕まえられるのかなんて分からん。だから、まぁ、釣れる場所があれば毎回釣るようにしてみようか。

 

 確か、イワヤマトンネル前にも川があったため、そこでも釣りを試してみようかとも考えたが、正直今は歩いて探索したい気分。“すごいつりざお”を手に入れてから、なんだかんだで200匹ほどのポケモンを釣り上げていたから、流石に疲れてきた。いくら入れ食い状態とは言え、とうぶん釣りは遠慮したい気分だ。

 そして、再び釣り親父弟の家の場所へ戻ることに。セキチクシティまでまだまだ距離はあるが、まぁ、草むらでも探しつつのんびり行こうか。

 

 釣り親父弟の家の先へ進み、まず見えてしまったのは、どう考えたって、そこじゃ釣りなんてできないだろって場所にいる釣り人。“いあいぎり”で切ることのできそうな細い木の先にいるため、関わらなくても済みそうだが、あの人は何をやっているんだろうか……いや、まぁ、釣り人だからと釣りをしなきゃいけないってわけじゃないが。

 ただ、関わらない方が良さそうだ。花摘みでもしていたら大変だし。

 

 そんなよく分からないトレーナーを横目に進んだわけだが、そこからはなかなかに大変だった。何が大変かって、トレーナーの数がすごいんだ。

 

 ボーイスカウトや、ガールスカウト、色っぽい姉ちゃんや、腕にポッポを乗せてるよく分からんトレーナー、そして……

 

「っんだよ! っせーな!」

 

 なんて、此方からまだ何も話していないのに、喚き立てる大型自動二輪に乗る兄ちゃん。なんだ、コイツ。

 因みに、今は13番道路にいるわけだが、この場所は恐ろしく狭い。嫌がらせとしか思えないように柵が置かれているせいで、これじゃあ人がすれ違うことだって難しいだろう。そんな場所によくまぁ、そんなでっかいバイクで来たものだ。頭おかしいんじゃないかって思ってしまうが、きっとコイツだってこの狭い場所へそのバイクで来るのを一生懸命頑張ったのだろう。その努力くらいは認めてあげたい。

 

「アカヘル、叩き潰せ」

 

 そんなように、この場所は非常に狭い。そうだと言うのに、何故かトレーナーがすごくいるんだ。こうやって集まるにしても、もっと良い場所がありそうだが……

 

「あーっ! っだよ! っざけんなよっ!」

 

 お疲れアカヘル。

 ふむ。トレーナーは多いが、経験値やお金はなかなか美味しい。欲を言えば珍しいポケモンとか出してくれると嬉しいんだがなぁ。

 

 さてさて、次のトレーナーと戦うとしようか。

 

「負けないよ! だって、風は僕の方へ吹いているから!」

 

 お、おぅ、まぁ強い逆風だろうけど頑張ってくれ。

 ハデな兄ちゃんを倒して直ぐ、今度は腕にポッポを乗せたトレーナーとの勝負。先程も似たような格好のトレーナーとバトルしたが、ソイツは鳥っぽいポケモンを出してくるトレーナーだった。

 因みにだが、別に風が吹いているとかそう言うことはない。無風で今日も良い天気だ。まぁ、きっとアレだ。追い風じゃなく向かい風の方が好きなんだろう。多分、逆境だと燃えるとかそんな感じ。俺は遠慮したいが。

 

「任せたぞ、ハラマキ」

 

 

 

 

 風向きを気にするトレーナーとの勝負は問題なく勝利。

 

「……風向きが変わったみたいだ」

 

 ああ、うん。そうなんだ。そりゃあ、大変だな。

 そんなトレーナーだったが、オニドリルと言う、ものすごくカッコイイポケモンを使ってきた。それはタマムシシティの西。細い木を切り倒し進んだ先にある家の中にいた、あの少女が連れていたポケモンと同じもの。なるほど、オニドリルと言うポケモンだったのか。名前的にオニスズメの進化系っぽいが、俺も育ててみようかなぁ。

 

 そして、そのバトルで、ハラマキのレベルが46に。これだけのトレーナーと戦えば、そりゃあレベルくらいは上がるだろう。なんて気楽に思っていたが、そのハラマキが“かえんほうしゃ”とか言う、技を覚えてくれた。

 名前から考えるにきっと炎技。しかも、名前が強そう。だって火炎放射って絶対ビームだよ。ビーム。これきっと口から炎のビームを吐き出す攻撃だよ。ビームが弱いわけない。少なくとも“ひのこ”よりは強いだろう。

 

「君の鳥ポケモンは“そらをとぶ”を覚えたかい?」

 

 そんな声をかけてきたのは、またまた鳥使いのトレーナー。んで、“そらをとぶ”なら“おしょう”が覚えているけど、特に何もできなかったぞ?

 まぁ、それは良いとして……さて、試し打ちといこうか。

 

「行ってこい、ハラマキ」

 

 鳥使いが出してきたポケモンはレベル29のオニスズメ、とやはり鳥ポケモン。まぁ、この見た目でコイキングとかキャタピーとか出してきたら驚くが。

 

「ハラマキ、“かえんほうしゃ”」

 

 はてさて、“かえんほうしゃ”はどんな技なのやら。アカヘルの“りゅうのいかり”みたいに名前負けしなければ良いが……

 

 なんて少しばかりの不安と大きな期待を持ってハラマキの様子を見守ることに。

 そして、ハラマキだが、俺の指示を聞き、すうーっと大きく息を吸い込み――口からものすごい勢いで炎を吐き出した。その見た目はまさに火炎放射。“ひのこ”なんかとは比べ物にならない火力。

 

 そんな“かえんほうしゃ”を受けた相手のオニスズメは一発で瀕死に。てか、よくアレだけの炎を受けて丸焼けにならなかったな……

 

 それにしても、これはすごいな。超カッコイイ! 今までのハラマキもカッコ良かったが、如何せんちゃんとした攻撃技が“きりさく”しかなかった。そのため、炎タイプなんて名前だけだったと言うのに、“かえんほうしゃ”のおかげでそれも過去へ置き去りに。これで、ハラマキは名実ともに炎ポケモンだ。

 一番長い付き合いであるハラマキがこうなってくれたのは本当に嬉しい。ヤバい、テンション上がってきた。

 

「あ、あ……い、いけ、オニドリル!」

 

 ああ、そう言えば、まだバトルの続きだったか。そして、そんな絶望的な顔しなくてもどうか安心してくれ。

 直ぐに終わるから。

 

 う~ん、このカッコ良くなったハラマキをグリーンに見てもらいたいんだが……アイツ、今頃何やってんだろうな?

 

「ハラマキ――焼き払え」

 

 

 

 

 

 

「……僕らはさ、鳥ポケモンが好きなんだ。だから、それしか育てたくないよ」

 

 バトルの方は問題なく勝利。てか、このハラマキ、負ける気がしない。多分、デブチュウの3倍くらいは強そうだ。まぁ、デブチュウは可愛いから別に強くならなくても良いが。

 

「そう言えば、お前さっき“そらをとぶ”がどうのこうの言っていたが、アレってどうやって使うんだ?」

 

 あの秘伝マシンをくれた少女も“そらをとぶ”は便利な技だと言っていた。多分だが、この技を使えば空を飛んで移動できるってことだと思う。しかし、前回試したときは何も起こらなかったわけで、使い方を知りたい。

 俺の移動手段のほとんどは徒歩。自転車もあるが、今の場所や釣り親父弟の家の近くみたいに、狭かったり少し踏み外せば海へ落ちそうな場所ではどうしても使い難い。変なところで使うとオーキド博士の言葉が響くし。アレ、すごく恥ずかしいんだよ。まぁ、街中くらいなら自転車も使えるんだが……

 しかし、ポケモンに乗り空を飛んで移動できるのなら非常に助かる。

 

「どう使うも何も、“そらをとぶ”を覚えたポケモンに指示を出せば、行きたいポケモンセンターまで連れて行ってくれるはずだけど……」

 

 うん? そうなのか?

 でも、おしょうに指示を出した時はただただ首を傾げられたんだが……おしょうだからダメだったとかそう言うことだろうか。

 

 う~ん、それじゃあ今度は違うポケモンで試してみるとしよう。そうなるとやはりオニドリルとかが良いかもしれない。オニスズメをまた捕まえないとだ。

 

 その時はそうやって、オニドリルに空を飛んでもらおうと思っていたが、直ぐにその考えは変わることになった。それは、柵でできた嫌がらせみたいな道を抜けた先にいた、鳥使いのトレーナーと戦ったときのこと。

 

 

「君は伝説のポケモンの話を聞いたことがあるかい?」

 

 

 ソイツはそんな言葉を落としてから、勝負を仕掛けてきた。

 

 伝説の……ポケモン?

 

「アカヘル、蹴散らしてこい」

 

 

 

 

 

「うぅ、勝てないかぁ……」

 

 何とも気になる言葉を落としたトレーナーだったが、出してきたポケモンはカモネギ一匹のみ。何と言うか……こう残念な気持ちになった。ただ、きっと鳥タイプのポケモンも少ないのだろう。今までの鳥使いだってポッポ系統か、オニスズメ系統のポケモンしか使ってこなかったし。

 

「その伝説のポケモンってなんなんだ?」

 

 そんな話は今まで聞いたことがない。

 

「なんだ、知らなかったのか。えっと……伝説のポケモンなんて呼ばれているポケモンがな、どうやら3種類いるらしいんだ。そのポケモンがどこにいるのかは知られていないけど、その3種類の伝説のポケモンは全て鳥ポケモンなんだぞ!」

 

 3種類いる伝説のポケモン。

 そして、それらは全て鳥ポケモン。

 

 ……ふむ。なるほど。これは良い情報だ。しかし、何処にいるのかは知られていないのか。そうなると探しようがない。其の辺の草むらにいるとも考えられんし、探すのは大変そうだ。

 

 けれども、決めたぞ。

 その伝説のポケモンとやらを捕まえて、俺は空を飛ぼう。伝説のポケモンなんて呼ばれているくらいだし、きっと人ひとりくらいなら軽々乗せて大空へ羽ばたいてくれるはず。

 

 そんな上手くいくとは思えないが、目標はあった方が良い。

 どうせ、この世界のポケモンを全部捕まえる予定なんだ。伝説だろうが、なんだろうが皆まとめて捕まえてやろうじゃあないか。

 

 

 


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