そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

34 / 46
第33話

 

 

 ガラガラの幽霊をどうにかすることはできたものの、やはり良い気分にはなれない。

 どうすれば良かったのかなんて分からないが、多分もっとやりようはあったんだろう。ホント、難しいものだ。

 

 沈んでしまった気分。そんな気分を少しでも上げようと思い、あのガラガラが塞いでいた階段を上ることにした。このポケモンタワーはかなり高いし、きっと景色だってそれなりのものだろう。それで、少しはこの気分が晴れてくれれば良いのだが……

 

 そして、階段を上り7階へ。

 

 その7階へ着き、まず目についたのは――

 

「……いや、なんで此処にロケット団がいるんだよ」

 

 またお前たちか。ホントいい加減にしろ。こんなところで何をやってるんだ。

 7階は今までの階とは構造が違い、墓石はなくそれなりに開けた作りとなっていた。そんな場所にロケット団員が3人。コイツらはあのガラガラが塞いでいた階段をどうやって通って来たのだろうか……

 

「むむ! なんだお前は!」

 

 早速ロケット団員に見つかってしまった。

 てか、そんなこと俺が聞きたいわ。なんなんだよ、お前らは。

 

 そして、有無を言わさずポケモンバトルへ。俺って何をしに此処へ来たのだろうな……

 

「任せたぞ、アカヘル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、覚えてやがれ!」

 

 いつも経験値とお金助かるよ。しかし、できればもう会いたくはないな。どうせまた会うことになるのだろうけど……

 ポケモンバトルで俺が勝つと、負けたロケット団員は帰っていった。

 なんだってんだよ。ホント、アイツは何をしに来たんだ。もしかして、最上階まで来たのは良いが、あのガラガラが邪魔で帰れなかったとかそう言うことか? まぁ、どの道どうして此処にいたのか分からんが。

 

 残るロケット団員は2人。しかし、よく見てみると一番奥に老人がいた。

 まぁた、新しいキャラか。この状況を考えるにどうせロケット団の会長とかそう言う存在だろう。先手必勝だ。ハラマキ、構わん。先に焼き払っておけ。

 

 なんて考えてみたが、俺のポケモンたちは優しい性格なため、人間には攻撃してくれない。ポケモンバトルだって、相手のポケモンを攻撃するより、トレーナーを倒してしまった方が楽だと思うのだが……

 

「子供がどうしてこんな場所にいる? 俺たちはあそこの爺さんと大人の話し合いをしていたんだ!」

 

 そして、2人目のロケット団員。次から次へと鬱陶しい。

 話し合うならもっと良い場所があるだろ。お前たちは何のためにあの立派なアジトを作ったんだ。使ってない部屋だって沢山あるだろうに。

 

 

 

 

 そのロケット団員も倒し、また直ぐに挑んできた3人目のロケット団員にも勝利。

 

「くそっ、ロケット団に歯向かうとは! このままじゃすまないぞ!」

 

 歯向かうも何も、お前らのボスにもう喧嘩を売っちまったからなぁ。もう色々と引き下がれないところまで来てしまっている。ただ、できれば俺と関わらないでもらいたいと思うところ。お前らと関わるとすごく疲れるんだ。

 倒したロケット団員は他の奴らと同じように、帰っていった。そして、勘違いしていたが、どうやらこのロケット団員たちは、俺がロケット団の会長だと思っていた奥にいる老人を此処で、捕まえていたらしい。その理由はよく分からんが。

 しかし、ハラマキが焼き払わなくて本当に良かったと思う。そうなっていたら、どう謝れば良いのか分からん。踏みとどまってくれてありがとうハラマキ。

 

 さて、結果として俺はあの老人を助けてしまったわけだが……まぁ、人助けをして悪いことじゃないだろう。

 最初はちょっと中の様子を見てみるか。なんて思っていただけなのに、随分と大きなことになってしまった。出会ったガラガラの幽霊をどうにかするためにマフィアのアジトへ殴り込み、そのボスへ喧嘩を売り、最終的に捕われた老人を助けることになるとは……改めて振り返るととんでもないことをしている。人生分からないものだ。

 

「大丈夫か? 爺さん」

 

 とりあえず老人の安否を確認。ご老体にこのエレベータすらないポケモンタワーを上るのは大変だっただろう。下りる時も気をつけてくれ。下りる時の方が膝に来るもんな。

 

「私を助けに来てくれたのですか?」

 

 そうじゃないんだが……これは結果的にそうなっただけで……

 いや、なんかすまんな。

 

「ありがとう。私はカラカラのお母さんであるガラガラの魂を慰めるため此処まで来たのです」

 

 あら、そうだったのか。じゃあ、此処へ来た理由は俺とあまり変わらないんだな。道中に現れる野生のポケモンやあの階段は大変だったろうに、ご苦労なことで。

 

「ああ……どうやらガラガラも天国へ無事、向かったようですね」

「……そうなのか?」

 

 上を見上げ、目を閉じながら言葉を落とす老人に尋ねた。

 正直、そんなこと分かるわけがないと思う。しかし……そう言ってもらえれば俺の気持ちも楽になるかな。

 

「ええ、そのようです。……もしかして、君が?」

「……さあ? どうだろうな。アイツに俺は何もしてあげられなかったよ」

 

 むしろ、アカヘルが“れいとうビーム”で倒し経験値までもらってしまった。そんなこと流石に言えない。

 

 そうだと言うのに、俺の言葉を聞いた老人はその目を細め、静かに笑った。

 

 ……無事、天国へ向かってくれたのなら良いんだけどな。

 

「そうでしたか。うん、良かったです。……さて、君の名前は?」

「レッドだよ」

 

 本当は違う。けれども、このポケモンの世界で俺はレッドと言う名前なのだから、本当の名前を言ったところで仕様が無いだろう。今はまだ、この名前に違和感がある。けれども、いつの日かこの名前が当たり前になる日が来るのかね?

 

「ああ、君がレッド君でしたか」

「うん? 俺のことを知ってるのか?」

 

 この名前を知っている人物はかなり少ないのだが、誰から聞いていたのだろうか。

 

「ええ、昔からの友人が君のことを教えてくれました」

 

 昔からの友人ねぇ……パッと思い当たるのはオーキドの爺さんくらいだ。まぁ、別にそんなことはどうでも良いが。

 

「それじゃあ、私も家に帰るとします。君にはお礼をしたいから、是非私の家に寄ってほしい。それでは、また」

 

 そう言ってから老人は帰っていってしまった。

 お礼がほしくて助けたわけでもないし、そもそも助けようと思っていたわけでもない。それでも、まぁ、もらえるのならもらっておこう。あちらにも面子ってものがあるのだし。

 

 しかし、家に寄ってくれと言われたが、あの老人は何処に住んでいるのだろうか? 老人は俺のことを知っていたらしいが、俺は老人のことを……ああ、もしかしたら、あの老人が捨てられたポケモンの世話をしているフジ老人かもしれない。俺がフジ老人の家を訪ねたときは丁度留守だった。そして、今の老人がフジ老人だとしたら色々と話が繫がる。

 フジ老人とは話をしてみたいと思っていたし丁度良い。ふむ、世間ってのも狭いものだな。

 

 一度大きく伸びをしてみる。

 最初はちょろっと立ち寄るだけのはずが、随分とまぁ長い時間を使ってしまった。別に焦る必要はないと思うが、流石に寄り道しすぎた気もする。グリーンの奴だってきっと俺よりもかなり多くのポケモンを捕まえていることだろう。アイツもアイツで色々と残念だが、腕だけは確かなものだと思う。前回だって俺よりもかなり多くの種類のポケモンを捕まえていたし。

 

 ……まぁ、競争をしているわけじゃないんだ。俺は俺のペースでゆっくりと行こうか。せっかくこの世界へ来たんだ。急いでしまったんじゃあもったいない。

 

 さて、それじゃ俺もフジ老人の家へ向かうとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し遅れたとは言え、相手は老人なのだし、ポケモンタワーを降りている時にまた出会うのではないかと思っていたが、どうやらあの老人の足腰はしっかりしているらしく、ポケモンタワーの中で会うことはなかった。

 野生のポケモンだってまだたくさん出てくると言うのに、いやはや元気なことだ。

 

 そんなことを考えつつ、フジ老人の家へ。

 あの老人がフジ老人なのでは? と言う俺の予想は当たり、フジ老人の家にちゃんといてくれた。

 

「やぁ、ようこそレッド君」

 

 家の中にはフジ老人も合わせて人間が3人とコダック、ニドリーノの姿。話を聞くに、そのポケモンは捨てられたポケモンと言うことだと思うが、野生に帰すのではダメなのだろか? それとも、野生に帰すまで一時的に育てているのかねぇ?

 

「さて、君はポケモン図鑑を作っていると聞いています。それはポケモンに深い愛情がないと大変難しいこと」

 

 そうなのか? そんなことオーキドの爺さんから何も言われてないんだが。

 それに深い愛情とはまた曖昧なものじゃないか。そりゃあ、今のパーティーのポケモンは大切に思ってはいるけど。

 

「その助けになるかは分かりませんが、これを君に差し上げます」

 

 そう言って、フジ老人はモンスターボールの飾りが付いた縦笛を俺にくれた。

 いや、笛をもらっても困るのだが……縦笛なんぞ小学生の時から全く触ってないぞ。そんなの何十年前だと思っているんだ。

 

「それはポケモンの笛と言って、寝ているポケモンを起こすことのできる笛です。もし、居眠りしているポケモンがいて困ったら、使ってみてはどうでしょうか?」

 

 寝ていて邪魔なポケモン、か。それに思い当たる奴はいる。

 随分と都合の良いタイミングだが……まぁ、気にするだけ無駄ってものだろう。

 

「ありがとう。有り難く使わせてもらうよ」

「ええ、是非使ってやってください。そして、もしオーキド博士会う機会があればよろしく、と」

「了解、伝えておく」

 

 ふむ、知り合いってのはやはりオーキド博士だったか。オーキドの爺さんだって顔は広そうだし、色々と繋がりがあるのかもな。

 

「それと、グレン島にいる……ああ、いや、私が伝えれば良いことですね」

 

 うん? グレン島? 確か、タウンマップにその名前は載っていたと思うが。

 

「それでは、君の旅が良いものとなるよう願っています」

 

 ん~……よく分からんが、まぁ、貴方が良いのならそれ以上は聞かないさ。

 

「ああ、そうしてもらえると俺も嬉しいよ」

 

 

 さて、そんじゃ、居眠りポケモンを起こしに行くとしようか。これでようやっと新しい場所へ向かうことができる。

 次に目指すはセキチクシティと言ったところだ。

 

 






~余談~

フジ老人についてですが、ポケットモンスター THE ORIGINからフジ博士=フジ老人は公式の設定かと
また、FRLGのボイスチェッカーを使えばカツラさんと仲が良いことや、シオンタウン出身ではないこともわかります

どうでも良いことですが、あのポケモン笛を使うとフジ老人と間接キ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。