そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第31話

 

 

 さてさて、ロケット団のボスはどんなポケモンを使ってくるのかと思っていたら、まず出してきたのは、レベル25のイワークだった。

 何と言うか、もうちょっと強いと思っていたんだが……まぁ、こんなものなのかもしれない。

 

 一方、俺のアカヘルのレベルは先程また上がり、35となっている。レベル差的にもポケモン的にもまず負けることはないと思う。実際、サカキも今までは不敵な笑みを浮かべていたと言うのに、今はちょっとその顔が引き攣っている。

 そりゃあ、せっかくカッコつけたのに、明らかに勝てないと分かればそうなるのも仕方無いか。

 

「……アカヘル、“れいとうビーム”」

 

 だからと言って手なんて絶対に抜かないが。

 全力で叩き潰してやれ。

 

 

 ――効果は抜群だ!

 

 

 あら? 岩タイプにも“れいとうビーム”は効果が抜群なのか。これは良いことを覚えた。クリボーのおかげで多少は楽になったとは言え、未だ岩タイプのポケモンは苦手意識がある。うむうむ、あのタマムシデパートの少女には感謝だな。

 

 因みに、イワークはアカヘルの“れいとうビーム”で一発だった。

 

 

「くっ……! いけっ、サイホーン!」

 

 続いて出てきたサイホーンと呼ばれたポケモンは初めて見る奴だった。ただ、アレだ……すごく岩っぽいからコイツも“れいとうビーム”が良く効きそうだ。

 しかし、流石はボスだけあって、ロケット団員とは違うポケモンを使ってくるんだな。レベルも団員と比べちょっと高いし、少しはボスらしく見える。

 

「アカヘル、“れいとうビーム”」

 

 これで、ポケモンセンターの直ぐ傍での戦いだったら、グリーンの時のように、経験値を簡単に稼げたんだがなぁ。それもできなくはないが、此処まで来るのはなかなか時間がかかるから、ちょいと面倒だ。

 

 

 ――急所に当たった! 効果は抜群だ!

 

 

 ああ、やはり効果は抜群か。そして、急所は美味しい。

 

「……その強さ、まるで出鱈目だな」

 

 舌打ち混じりで言葉を落とすサカキ。

 だから、強いのは俺のポケモンであって、俺は別に強くも何ともないんだが……それにポケモンを強くしてやりたいのなら、レベルを上げれば良い。それだけで、それなりに強くなるでしょうが。

 

「……いってこい、ガルーラ」

 

 そして、3匹目も初めて見るポケモンだった。そのレベルは29と今まで一番高い。

 お腹にはカンガルーみたいな袋があり、その袋から子供と思われる小さな奴が顔を出している。見た目は……恐竜みたいな感じ。流石にコイツは岩タイプではなさそうだ。

 

 さてさて、それじゃ、これで終わりにしようか。別にお前らに恨みはないけれど、今回は勝たせてもらおう。

 俺には世界中のポケモンを捕まえるって言う、大切な使命があるんだ。あまり寄り道ばかりしているわけにもいかないだろう。

 

「薙ぎ払え、アカヘル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……君はとても大事にポケモンを育てているのだな」

 

 1発で倒すことはできなかったが、アカヘルの“れいとうビーム”2発で勝利。あと賞金として、約6グリーンもいただけた。なかなか太っ腹な男だ。

 

 大事に育てている……か。それはどうだろう。乱雑に扱っている気もないが、コイツらにはかなり苦労をさせていると思う。ハラマキやデブチュウなんかは特に。何時だって思うんだ。もっと楽をさせてやることはできたと。

 

「そんな君に私の考えはとても理解できないだろう!」

 

 別に理解しようとなんて思っちゃいない。お前らはお前らで勝手にやっててくれ。俺は他人に善悪を説けるほど出来た人間じゃあないんだ。

 

「此処は一度身を引かせてもらう! 君とはまた何処かで戦いたいものだ!」

 

 俺は遠慮したいかな。ポケモンバトルに興味はないんだ。それに戦いと言っても、頑張るのはポケモンたちで俺じゃない。俺のポケモンたちがどう思っているのかは分からんが、意味もなく戦わせることもないだろう。

 

 そして、サカキは足早に部屋を出て行ってしまった。

 よくよく考えると、俺、とんでもないことをしてるよな……マフィアのアジトへ殴り込んで、其処のボスを追い出してしまったんだ。これで変に目をつけられなければ良いが。

 

 あっ、しまった。シルフスコープのことを聞くのを忘れて……

 

「うん?」

 

 一瞬、サカキを追いかけようと思ったが、サカキがいた場所に何かの機械のようなものが落ちているのに気づいた。はて、これは何だろうか?

 その機械のようなものは、頭に付けることができるようになっていて、メカメカしいメガネと言ったところ。一昔前にこんなようなゲーム機があった気もする。確か、バーチャルボーイとか言う名前だったと思う。

 

 ふむ……もしかしてこれがシルフスコープなのだろうか? それなら有り難いが、ソレを確かめる方法は特にない。ただ、これがシルフスコープだとしたら、これであの幽霊たちの正体を見破ることができるはず。試してみる価値はあるだろう。

 

「ん~……っと」

 

 とりあえず大きくひと伸び。

 身体はそれほど疲れていないが、精神的に今回はなかなか疲れた。

 

「それじゃ、また旅へ戻るとしようか」

 

 油を売っているわけにも、道草を食っているわけにもいかない。やらなければいけないことがまだまだ残っているのだから。

 

 

 

 

 その後、何故かまだ残っているロケット団員たちから冷ややかな視線をもらいつつ、アジトを脱出。

 さて、どうしようかと考え、とりあえずタマムシシティの西へ行ってみることにした。本当はさっさとポケモンタワーへ行くべきなんだろうが、今ばかりはまだ見ぬ地を目指し、フラフラと歩き回りたい気分だったんだ。

 

 そんなことで、タマムシシティの西、16番道路へ来たわけだが……

 

 

「またお前か」

 

 

 クチバシティの東にあった12番道路でもそうだったように、大きなポケモンが気持ち良さそうに寝ているせいで先へ進めない。なんなんだよ、コイツ。

 ポケモンを出し、攻撃させようとしたが俺のポケモンは紳士な性格なため、寝ているポケモンに攻撃はしないらしい。じゃあ、俺が頑張るしかないと思い、一生懸命叩いたり、体当たりしてみたりしたが起きる気配が全くない。ひたすらに邪魔臭い。

 う~ん、此処も諦めるしかないのか。この先にあるサイクリングロードを抜ければ、セキチクシティと言う街へ行けるんだがなぁ。

 

 まぁ、ダメなものは仕様が無い。ポケモンタワーへ向かうとしようか。何かをしていれば、そのうちコイツだって起きて何処かへ行くだろう。

 

 そして、ため息を一つ落としてから、ポケモンタワーへ向かおうとした時、“いあいぎり”で切れそうな木を見つけた。その木をおしょうに切り倒してもらい、先へ進んでみると、草むらを発見。

 おおー、最近新しいポケモンを全く捕まえていなかったし、此処は是非とも新しいポケモンを捕まえたいところ。

 

 その草むらでは、オニスズメやラッタ、コラッタと見たことのあるポケモンばかりだったが、ドードーと言う新しいポケモンと出会うことができた。

 ドードーと言えば、あの絶滅した飛べない鳥が直ぐに思い浮かんだが、ポケモンのドードーは頭が2つある、何と言うか……何と言えば良いんだ? 見た目はダチョウっぽいが……

 

 そんなドードーもデブチュウが“でんじは”をし、少し攻撃してからモンスターボールを投げて無事捕獲。デブチュウは戦闘じゃさっぱりだが、ポケモンを捕まえるときはかなり役に立ってくれる。いつも助かってるよ。

 早速、ドードーをポケモン図鑑で確認すると、飛ぶことは苦手だが時速100km/hで走ることができるらしい。確かチーターの時速が120km/hとかだったから、このドードーもなかなかだ。まぁ、だからと言って育てることはしないが。

 

 その後も暫くの間、草むらを探索したけれど、新しいポケモンは特に見つからなかった。最近は本当に新しいポケモンを捕まえられていない。もっと違う場所へ行かなきゃダメってことなんかねぇ?

 

 それから道が西へ続いていたため、其方へ行ってみると、関所があった。

 おおー、もしかして、こっちからもセキチクシティへ行けるのか? なんて期待しながらその関所を抜けたが、残念ながらその先は民家が一軒あるだけで行き止まり。この人生、やはり上手くはいかない。

 せっかくと思い、その民家へお邪魔すると、中には見たことのないカッコイイ鳥ポケモンと少女が一人。あのポケモンは何と言うポケモンだろうか? 是非、捕まえたいところだ。

 

 

「あら……見つかっちゃったか」

 

 

 家の中へ入ってきた俺に気づくと、少女はため息とともにそんな言葉を落とした。

 見つかったも何も、別にあんたを探していたわけじゃないんだが……

 

「私が此処にいるってこと誰にも言わないでくれる?」

 

 いや、誰だよ。あんた。

 もしかしたら、有名人なのかもしれないが、俺は知らないぞ。この世界へ来てからまだそれほど時間も経っていないのだし。

 

「これ、あげるから。お願いね」

 

 そう言って、少女から秘伝マシンをもらってしまった。

 

「ちょ、ちょっと待てって。こんなものもらわなくても俺は喋ったりしないから」

 

 そんなペラペラと他人の秘密を話してしまう奴に見えたのだろうか? 性格は歪んでいる方だが、其処まで腐ってはいないつもりなんだが……

 それに、こんな他人の弱みにつけ込むようなことは好きじゃない。

 

「そう、優しいのね……でも良いの。それは君にあげる。私にはもう必要ないから」

 

 あ~……それなら、まぁ、もらうが……なんだかなぁ。

 

「その秘伝マシンの中身は“そらをとぶ”。とても便利な技なの。大事に使ってね」

「あっ、うん。ありがとう」

 

 むぅ……なんとも複雑な気分だ。

 別に悪いことはしたつもりもないのに……

 

 その少女が誰なのか、結局聞くことはしなかった。それにあの少女だって喋りたくはないだろう。全く気にならないと言えば嘘になるが、まぁ、聞かれたくないことだってあるはず。

 多分、そう言うことなんだろう。

 

 







~余談とか~

第一世代において秘伝マシン2をくれる16番道路のオニドリルを連れた少女ですが、ゲーム中でこの少女の正体が明かされることはありません(私が見逃しているだけかもしれませんが)

しかし、第二世代において、シロガネ山から東へ進み、“いあいぎり”で木を切り倒した場所に民家が一軒あります
その民家の中には、オニドリルと少女が一人
その少女からは第一世代と同じように――黙っていて欲しいと言われ、技マシン47(はがねのつばさ)をもらうことができます

公式からの情報は聞いたことがありませんが、この16番道路とシロガネ山の少女は同一人物なのかな、と
また、第二世代において、その少女は数年前までは有名なアイドルで、今でも追いかけてくる熱心なファンから隠れている的なお話を聞くことができます

そう考えると、第一世代でもあの少女はあの場所に隠れていたのかな、なんて思います

そして、第二世代は第一世代から3年後のお話ですが、あの少女がシロガネ山の近くへ移ってしまたのは、主人公があの少女を見つけてしまったから……な~んて考えてしまいます
まぁ、流石に考えすぎでしょうが



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