そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第29話

 

 

 階段を下りて見えてきた景色は随分と無機質な感じがした。

 更に下へと続く階段もあり、どうやらなかなかに広いらしい。まぁ、ロケット団だってけっして小さな組織ではないだろうし、広くてもおかしくはないと思うが。

 

 さて、勢いとノリだけでロケット団のアジトへ来てしまったわけだが……これからどうするかね? 流石に俺一人でロケット団をどうにかできるとは思っていない。

 ただまぁ、せっかくだし適当にフラフラと探索でもしてみようか。何か面白いものがあるとは思わないが、このまま帰っても仕方ない。

 それにこれが俺の物語だってんなら、少しは頑張らなきゃいけないんだろう。平凡でありふれたような物語のまま終わらせる気もない。

 

 まぁ、俺みたいなおっさんが主人公な物語が華やかになるとは思わない。それなら俺らしくきったねぇ物語でも書き進めようか。

 

 そんなことでとりあえず、地下1階の探索から始めることに。

 しかし、普通に入ってしまったが、警備員的な人間はいないのだろうか? 俺が言うのもおかしいが、もう少し頑張ってほしい。

 

 

「おい、そこの子供。どうやって此処へ入って来た?」

 

 

 アジトへ入って真っ直ぐ進んでみると、ロケット団員に見つかった。

 ああ、良かった。一応、人はいるんだな。

 

 さて、これからどうなるのだろうか。彼方側からしたら、俺は侵入者なわけだから、やはりつまみ出されたり……ああ、はいはい。ポケモン勝負ね。分かった、分かったよ。

 

 それで良いのかなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、くそう! お前、ロケット団をなめてるな!」

 

 アカヘルで問題なく勝利。うむ、今回もアカヘルのレベルを上げさせてもらおう。正直、ロケット団員は強くないし、レベル上げには丁度良い。

 

 別にロケット団をなめているわけじゃ……いや、ちょっとは……てか、かなりバカにしているが、うん、頑張っているんじゃないかと思うよ。

 

 倒したロケット団員の先はゲートのようなものがあり、進めなくなっていた。一応、侵入者を先へ進ませないような仕掛けはあるらしい。

 

 それから、アカヘルがもう一人のロケット団員を伸し、そう言えばと思い、タマムシデパートの屋上で少女からもらった技マシンをアカヘルへ使ってみることに。使う技マシンは技マシン13。あの少女曰く、“れいとうビーム”が中に入っているはず。アカヘルも弱いわけじゃないが、現状だと攻撃技が“かみつく”だけなため、少し寂しい。これで強くなってくれれば良いが……

 

 なんてことを考えつつ、技マシンをアカヘルへ近づけると、すーっと手に持っていた技マシンが消え、無事アカヘルが“れいとうビーム”を覚えた。

 ただ、技枠がいっぱいだったため、代わりに“はねる”は忘れさせることに。アカヘルの巨体が跳ねる姿はなかなか見応えある。けれども……まぁ、“はねる”はいらんだろ。

 

 よしよし、これでまたアカヘルは強くなっただろう。“れいとうビーム”がどんな技か知らんが、ビームが弱いわけない。絶対強い。

 本当はデブチュウに覚えてもらいたかったんだけどなぁ。

 

 

 地下1階はそれ以上先へ進むことができなかったため、地下2階へ行くことに。

 

 

「シルフスコープを使うと、幽霊が見えるようになるってボスが言ってたぞ!」

 

 

 早速、経験値……じゃなくてロケット団員を発見。

 てか、俺はまだ何も喋っていないのに、コイツは何を一人で騒いでいるのだろうか。しかし、シルフスコープと言うと、ポケモンタワーで祈祷師の人が言っていたやつだよな。

 あのガラガラのためにもいただきたいところだが……

 

 あっ、せっかくだし“れいとうビーム”を試してみるか。頼んだぞ、アカヘル。

 

 

 

 

 

 

 

「負けた……バカな!」

 

 ロケット団員には問題なく勝利。

 そして“れいとうビーム”だけど、これがかなり強い。口からこう……なんか冷たそうなブレスを吐く技なわけだけど、流石ビームと名がつくだけはある。“りゅうのいかり”とか言う、名前負けしている技とは大違いだ。

 

「フフフッ! ロケット団の本部は地下4階まである! お前みたいな子供にたどり着けるかな!」

 

 だから、そう言うこと喋っちゃダメでしょうが。何を考えているんだお前は。分かった分かったから、とりあえず落ち着けって。

 あと、別に威張るつもりもないが、俺の方がお前より年上だぞ?

 

 それから更に、地下2階を探索していると、その上通れば回転しながら無理矢理進まされる床のある場所へ着いた。何故回転させる必要があるかは知らんし、どう言う仕組みかも分からん。ホント、なんなんだよ。

 なんでこんな無駄に手の込んだ仕組みを作ったのやら。もっとやらなきゃいけないことはあっただろうに。

 

 回る床の先へ進むのはどうにもやる気が起きず、其方は後へ回すことに。ロケット団員の奴らは毎回この床を通っているのだろうか……

 

 そして、地下3階へ。さっきのロケット団員の言葉が正しければ全部で地下4階までしかないそうだが……明らかに人が少ない。最初は侵入した瞬間、大人数に囲まれるんじゃないかと思っていた。今日たまたま人が少ないのだろうか?

 

「お前が侵入者か。上から連絡が来ているぜ!」

 

 さてさて、経験値経験値。

 

 

 

 

 

 

「く、くそっ! 行くなら行ってみろ! だが、エレベータはカギがないと使えないぜ!」

 

 だからなんで、そんなヒントみたいなことを言っちゃうんだよ! お前らは何がしたいんだ。

 元々、おかしな奴らだとは思っていたが、今回は輪を掛けて酷いぞ。ツッコミが追いつかん。

 

 その後、それ以上行ける場所もなくなってしまい、仕方無しに地下3階の回転床の先へ行くことに。ホント、これ何のためにあるんだろうか……侵入者への嫌がらせだとしてもやることが小さすぎると思うんだ。

 

 クルクルと回りながら進んだ先にはまたロケット団員がいて、其方も問題なく勝利。

 

 

「シルフスコープだと?」

 

 いやいや、何も聞いてないから。

 

「ああ、ボスがシルフカンパニーから盗んできたやつのことか! 俺は何処にあるのか知らないが」

 

 だから、そのポンポン喋っちゃう癖を治せって。そんなんだから、その辺の定食屋にいたお客にアジトの存在がバレるんだよ。

 どんな奴がロケット団のボスをしているのか知らんが、これは苦労していそうだ。ただ、このロケット団員の様子を見るに、そのボスだってどうせ禄な奴じゃないんだろうなぁ……会いたくないなぁ……

 

 回転床の先には下へ続く階段があり、進んでみることに。

 なんだかんだで、最深部まで来てしまったが、なんだかなぁ。正直もうちょっと、こう……何か熱い展開的なものを望んでいた。だってこれじゃあ、本当にただ経験値を稼ぎに来ただけじゃないか。

 お前ら、一応マフィアだろ? そんな近所のコンビニへ行くような気分で攻略されて悔しくないのか。プライドはないのか、プライドは。

 

 今までの階もそれほど人はいなかったが、地下4階はロケット団員が一人いるだけだった。どうやらロケット団は事務仕事よりも、現場で動き回ることの多い組織らしい。此処ではどんな仕事をやっているのだろうか……

 

 

「はははーっ! エレベータが使えないって?」

 

 だから、まだ何も言ってないって。

 頼む、頼むから落ち着いてくれ。どうして良いのか分からん。

 

「誰がエレベータのカギを持っているんだろうなーっ!」

 

 ……うん。誰が持っているんだろうね。すごく気になるね。

 

「一応、聞いておくけど、カギを持っているのお前じゃないよな?」

「……だ、誰が持っているんだろうなーっ!」

 

 ああ、そうですか……

 

 アカヘル、蹴散らせ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はいはい、問題なく勝利。経験値美味しいです。

 

「し、しまった! 隠しておいたカギが……!」

 

 そんな言葉をロケット団員が言い、ポロリと何かのカードのような物を落とした。

 

「……おい、カギ、落としたぞ」

「しまった! せっかく隠しておいたカギが……!」

 

 いや、いいから拾えよ。

 

 何これ。俺が拾わないといけないの? 乗れと? これを使ってエレベータに乗れと?

 

「く、くそっ! そのカギを使われたら、エレベータに乗ることができ、ボスのところまで行かれてしまう……っ!」

 

 じゃあ拾えよ。

 お前がどれほどの信念を持ってロケット団に所属しているのか知らんが、其処は拾っておけって。

 

 それから、なんとも複雑な気分でロケット団員が落としたエレベータのカギを拾ったわけだが……止められる気配は全くなかった。

 いや、もうね……なんか、疲れたわ。

 

 

 さてさて、これでどうやらロケット団のボスとやらに会えるようになったわけだが……一周回って会いたくなってきた。ほら、怖いもの見たさ的な。どんな奴かは知らんが、期待しているぞ。

 

 しかし、まさかこんなにポンポン進めるとはなぁ……それもこれもポケモンバトルで全てを解決できる世界だからってことだけど、なんとも危険な世界だ。強いポケモンを持っていれば、それこそ世界征服だってできそうじゃないか。

 たまたまロケット団がバカだったから良かったものの、そんなバカなロケット団にすらこの世界は苦労している。

 

 もし……もし、俺がロケット団のような組織に入れば――

 

 

 ……いや、やらないことを考えたって仕様が無いか。

 

 とりあえず今はロケット団のボスとやらに会ってみるとしようか。

 

 

 


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