そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第16話

 

 

 マサキの家を後にしてまず向かったのが、ハナダシティの西にある草むら。

 さてさて、どんなポケモンが出て来てくれるのかな。と期待に胸を膨らませていたわけだが、問題……と言うか、面倒なことに気づいた。

 

「……あれ? これ、帰れなくね?」

 

 そう、お月見山を抜け、ハナダシティへ行くのは問題なかったのだが、ハナダシティからお月見山へは段差があるせいで行けないようになっていた。

 別にその段差は高いわけではないし、少し頑張れば登れそうなものなのだが、何故かそれはできない。アレだ。きっとこう言うものなのだろう。俺はもう気にしない。

 

 う~ん、ニビシティへ戻って化石を渡してきたかったのだが、これじゃあなぁ……まぁ、化石以外に戻る理由はないから別段大きな問題と言うわけではないが、帰り道を塞がれたこの状況はどうにも居心地が悪い。

 はぁ……できないものは仕様が無い。スパッと諦めることにしよう。こう言うのは引きずるよりも、スパッと諦めた方が良いのだ。

 

 しかし、そうなると俺はもうマサラタウンへ帰ることもできないのだろうか? むぅ、どうにも良い感じではないな。

 

 

 さてさて、考えていたってどうにもならない。今はまだ進める道があるだけ良いと考えよう。

 

 最近はデブチュウとアカヘルばかりを使っていたので、今回はハラマキをメインで使うことに。ハラマキのレベルは34とかなり高い。けれども最初に仲間となったポケモンでもあるためか、どうしてもハラマキは贔屓してしまう。それに一番強いのはハラマキであってほしいと思う自分がいるのかもしれない。

 とは言え、野生のポケモンを倒していてもそれほど経験値は美味しくない。まぁ、のんびり育てよう。

 

 そんなことを考えながら、新しいポケモンとの出会いを求め、4番道路の草むらへ。

 

 しかし残念ながら、その草むらでまだ捕まえたことのないポケモンはアーボだけだった。新しい街へ来て結構期待していたんだが……まぁ、まだ探索していない草むらは残っている。前向きにいこう。

 

 4番道路の草むらの次は、金玉橋を越えた先にある25番道路の草むらへ。

 その草むらでは、まだ捕まえていないポケモンとして、ケーシィとナゾノクサに会うことができた。その2匹のうち、ケーシィはグリーンが捕まえていたため俺は捕まえなくても良いはず。つまり、この草むらではナゾノクサを捕まえるだけだった。

 ……う~ん、もっとガンガン新しいポケモンを捕まえると思っていたんだがなぁ。それにアーボもナゾノクサも他のトレーナーが出してきたこともあり、捕まえる前から知っていたポケモンだ。だからなんとも消化不良な感じ。

 

 さてさて、これからどうしようか。レベルを上げなくても手持ちのポケモンは十分強いし……ああ、そうかマサキのことをすっかり忘れていた。あの時はついつい出てきてしまったが、あの姿のままでは色々と不便だろうし、助けに行こうじゃないか。

 

 そんなわけで再びマサキの家へ。お邪魔します。

 

 家の中へ入ると、やはりマサキはポケモンのままだった。どうやら誰も助けてはくれなかったらしい。

 

 

「こんにちはー!!」

 

 

 そして前回よりもやや強めな口調で挨拶された。ポケモンになっているせいで表情は分かり難いが、もしかしたら怒っているかもしれない。

 

「僕、ポケモン……ちゃうわい!!」

 

 安定のノリツッコミ。うむ、マサキも元気そうで何よりだよ。

 しかし、アレだ。そんなマサキの姿を見ていると、なんだか悲しくなってくるな。いや、まぁ、それもこれも俺が助けなかったからなんだけどさ。

 

 

「……助けてくれへん?」

 

 

 安心してくれ。そのために戻ってきたんだ。

 

 

「はい」

 

 

 うむ、たまには人助けも悪くはないだろう。

 

「それは良かった! それじゃあ、わいが転送マシンへ入るさかい、そこのパソコンで分離プログラムを頼むで! ホント頼むで! お願いだからわいを見捨てて出て行ったりしないで!」

 

 そんな言葉を落としてからぽてぽてと転送マシンへ入っていくマサキ。

 さてさて、これで分離プログラムとやらを起動させれば良いんだな。

 

 そして、その分離プログラムを起動させるためのパソコンの前まできたわけだが……

 

「う~ん、これからどうすれば良いんだろうか」

 

 何をすれば良いのかがわからなかった。そもそも俺はパソコンとかそう言うのが苦手なんだ。XP以外は碌に使ったことがないし。

 これは困ったな。此処で下手なことをしたら二次災害の危険性がある。マサキだってもっと丁寧に教えてくれても良かっただろうに。自分で言うのもアレだが、おっさんは何をしだすか分からんから危険だぞ。

 

 また家を出ようかとも考えたが、そろそろマサキがキレそうだからそれはやめておく。

 

 

「おい、マサキ。何をすれば良いのかわからんぞ」

 

 仕方ないため、マサキが入っていった転送マシンの扉をバシバシ叩いて、聞いてみる。

 

「あっ、こら! ちょっ、そんな叩くな! 画面に出ている分離プログラムを起動しますか? ってボタンをクリックするだけや!」

 

 ああ、そうだったのか。いや、俺もそれが怪しいな。とは思っていたんだ。ただちょっと確認しただけだぞ。

 ともかく、これで安心してマサキを助けることができる。待ってろ、マサキ。今、助けてやるからな。

 

 そして、マサキに言われた通りに画面をクリッ……

 

 

「おい、マサキ! 右と左、どっちのボタンでクリックすれば良いんだ!」

「だから叩くな! 左! 左や!」

 

 なるほど左か。いや、俺だって左なんじゃないかなぁ。とは思っていたんだ。

 

 よしっ、今助けてやるぞ!

 

 随分と時間はかかってしまったが、これでマサキを助けることができる。ふむ、人助けってのも……

 

 

「おい、マサキ! 本当に起動しますか? って出てきたぞ!」

「はよ、起動せーや!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあー、おおきに、おおきに。ホント助かったわ! まさかわいを見捨てて家を出ていくとは思わんかったし、こんなに時間がかかるとも思わんかったけど、とにかく助かったわ!」

 

 せっかく助けてあげたと言うのに、ネチネチと小言を落とすマサキ。

 

「んで、あんさんは何をしに?」

「いや、ただいつもパソコンの預かりシステムを利用しているから、そのお礼に来ただけだよ」

 

 まぁ、とりあえず助けることはできたのだし、良しとしよう。

 

「ほー、そかそか、そりゃあ随分と面白い奴やなー。ああ、そや! お礼っちゅうのもなんだけど、これやるわ」

 

 マサキはそう言ってから、何かのチケットのような物を俺にくれた。

 

「これは?」

「今、クチバの港に来ているサント・アンヌ号のチケットやで。チケットもろたのはええんやけど、パーティとか好きやないからな。代わりに行って遊んでえな。世界中のトレーナーがぎょうさん来とるらしいし、あんさんには丁度ええんちゃう?」

 

 船のチケットねぇ。

 正直なところ、俺もパーティーは好きじゃないんだが……まぁ、もらっておいて損はないのだし、有り難くいただこう。それに世界中のトレーナーがいると言うのは気になる。きっと俺がまだ出会っていないポケモンにも沢山会えるだろう。

 それは楽しみだ。

 

「おお、ありがとう」

「どういたしまして。それにしても、あれやな。あんさんはもうちょっと他人に優しくした方がええと思うで?」

 

 んなこと、俺が一番分かっているよ。

 

 ただ、分かっているからと言って、できるとは限らないってのが問題なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 マサキから船のチケットをもらい、またやることが増えてしまった。

 ん~……とりあえず、クチバシティへ行けば良いと言うことだろうか? でも、確かハナダシティからクチバシティって遠かったよな。クチバシティはハナダシティの南に位置するわけだが、その間にはヤマブキシティがあったはず。

 とは言え、何時までもサント・アンヌ号とやらがクチバシティにいるとは思えないし……これは急いだ方が良さそうだ。きっとこんな機会は滅多にないだろう。

 

 さてさて、これで次の目標は決まった。ハナダシティのジムへは行っていないが、其方には興味がない。そうなると、もうハナダシティには用事がないし、サクサク進んで行こうか。

 

 

 


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