そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第15話

 

 

 はてさて、デブチュウとアカヘルのレベルは上がったし、なんとアカヘルはギャラドスとか言う、すごく強そうなポケモンに進化してくれた。技の方はまだまだ寂しいところではあるが、これからレベルが上がっていけば、きっと新しい技を覚えてくれるはず。アカヘルのことはほとんど諦めていたこともあり、これはかなり嬉しい誤算だ。

 

 先程のグリーン曰く、この橋を進んでいけばマサキと言う有名な人物がいるらしい。ポケモンの預かりシステムは俺もお世話になっているし、グリーンが言っていたように、お礼の一つくらい言っておいた方が良いのかもしれない。

 そうと決まれば、さくっと行ってきたいところなんだが……

 

「これじゃあなぁ」

 

 そんな独り言の溢れた俺の視線の先には、橋の上に立つ5人の姿。

 あの5人が何の理由もなしに、橋の上に立っているとは思えない。俺が通ったら絶対にポケモンバトルが始まるだろう。

 別にポケモンバトルは嫌いじゃないが、レベルならグリーンのおかげで十分上がった。普通に通らせてくれれば嬉しいが、どうせダメなんだろうなぁ……なんとなくだが、俺もこの世界のことを分かってきたと思う。

 

 

 一度、ポケモンセンターへ戻りハラマキをパソコンから取り出す。これから連戦が予想されるため、ポケモンは多く持っておきたい。あのアカヘルがいきなりゴツイ姿となってしまって、ハラマキもさぞ驚いていることだろう。ちゃんと仲良くするんだぞ。

 

 回復して数分後に全滅させ帰ってくることを繰り返し過ぎたせいで、ハナダシティのポケモンセンターの女性は随分と冷たい視線を向けるようになってくれたが、俺はもう気にしない。前へ進むのだ。でも、舌打ちはやめてください。回復お願いします。

 

 そんな準備も終わり、件の橋へ。新しく見つけた草むらへはまだ行っていないから、サクサク進めていこうじゃないか。

 

「おい! ちょっと待つんだ」

 

 橋を渡り始め、最初の一人である虫取り少年の前を通り過ぎようとしたら、予想通り止められた。

 むぅ、やはりダメか。どうせ、あとの4人とも戦わないとだよなぁ。まぁ、もしかしたら珍しいポケモンを見ることも出来るかもしれないし、経験値や賞金だってもらえる。悪いことではないだろう。

 

「この橋の名前は、人呼んでゴールデンボールブリッジ!」

 

 へー、ゴールデンボールブリッジねぇ。

 

 

 ゴールデンボールブリッジ!?

 

 

「5人勝ち抜けば豪華な商品がもらえるぞ! お前に抜けられるかな?」

 

 そう言って、虫取り少年はレベル14のキャタピーを出してきた。

 良かった。トランセルじゃなくて本当に良かった。虫取り少年だし一瞬心配したんだ。トランセルで“かたくなる”されて“いとをはく”をされたらどうしようと、本当に心配したんだ。

 

 しっかし、酷い名前だな。誰だよ、この橋にそんな名前をつけた奴は……

 

 

「蹴散らせ、アカヘル」

 

 それまでは、いかにも『さあ、かかってこい!』みたいな表情だった少年の顔は、俺がアカヘルを出した瞬間――真顔になった。

 見た目の歳はまだ10もいっていないだろうに、人間頑張ればあんな悟りきったような表情だってできるものなのか。まぁ、体長30cm程度の虫が6mを越すバケモノに勝てる気はしないわな。

 

 さて、まずは一人目。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ベ、ベストは尽くしたんだ。後悔はないっ!」

 

 そうか、そうか。そりゃあ、良かったよ。まぁ、アレだ元気出せ。

 少年はキャタピーとビードルを出してきたわけだが、アカヘルの“かみつく”2発で勝負がついた。レベルはそこそこ高いが、ポケモンがポケモンだからなぁ……おい、だから泣くなって。次頑張れば大丈夫だって。

 

 

「ふ、二人目は私! ここ、此処からが本番よ!」

 

 二人目はミニスカートの少女。先程の俺と少年の戦いを見ていたせいか、その声は震えていた。確かにアカヘルの見た目は怖いが、優しい心を持っているポケモンだと思っているぞ。

 

 まぁ、だからと言って手を抜くつもりはないが。

 

 

 

 

 その後も、苦戦することなく勝ち進み、終に最後の5人目も倒すことができた。

 レベルの差もあるだろうが、アカヘル超強い。アカヘル無双が止まらない。ハラマキの強さも異常だが、もしかしたらアカヘルはそれ以上かもしれない。ただ、アカヘルが強すぎるせいでデブチュウは全く活躍できていない。鳥ポケモンが相手なら、まだデブチュウも強いんだがなぁ。

 そして、残念ながら新しいポケモンは最後の5人目が出してきたマンキーとか言う猿だけで、あとはどれも見たことのあるポケモンだった。

 う~ん、もう少し新しいポケモンを見たかったんだがなぁ。

 

 

「5人抜きお見事っ! 賞品としてこれをプレゼントしよう!」

 

 5人に勝ち、橋を渡り終えると男がいてそんな言葉をかけられた。

 ああ、そう言えば、最初に戦った少年が、勝ち抜けば豪華な賞品がーとか言っていた気がするな。橋の名前が強烈過ぎて、すっかり頭から離れていたようだ。

 

「あ~……えと、これは?」

 

 んで、その賞品だけど……

 

「金の玉だよ!」

 

 ……ああ、そうですか。金の玉ですか。わー嬉しいなー。

 なるほど、それでこの橋はあんな名前だったのか。どうしよう、どう反応して良いのか分からない。そもそもこのアイテムって何に使うのだろうか……

 

「ところでだけどさ」

「うん? どうした?」

 

 すごく微妙な気分になりながら頂いた金玉をバックへ入れていると、男は更に言葉を続けた。

 

「ここだけの話、ロケット団に入ってみないか?」

 

 ……こりゃあ、また随分といきなりな勧誘だな。

 

「俺たちはポケモンを悪いことに使おうって言うグループなんだ!」

 

 そんな勧誘の仕方で“はい”と言うとでも思っているのだろうか? 必死さは伝わってくるが、それだけじゃあ相手は納得しない。

 とは言え、ふむ。きっとコイツもノルマがあって大変なんだろう。上司からはネチネチと小言を言われ、組織内での立場も厳しいものに……営業も大変だな。うん、頑張れ。

 

「入りなよ」

「手取りは?」

「入らないの?」

「離職率どんくらいよ」

「入ってよ!」

「完全土日祝休?」

「入れよ!」

「福利厚生の詳しい説明を頼む」

 

 ああ、これはダメだ。話にならん。

 こちとら若返って未来には大きな希望があるんだ。そんなわけの分からん団へ入って一生を潰すわけにはいかない。履歴書に傷がついたらどうしてくれる。

 

「むぅ……入らないって顔してるな。それなら! 無理矢理入れてやる!」

 

 初めからそうしてくれ。

 話の通じない相手ではあるけれど、こっちの方が話は早い。

 

 

「手加減はいらん。アカヘルお前の力を見せつけてやれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……お、お前ホントつええな!」

 

 ロケット団員が出してきたポケモンはレベル15のアーボとズバットだった。特に問題なくアカヘルの“かみつく”で勝利。

 

「別に俺が強いわけじゃない。コイツらが強いんだよ」

 

 俺はただ指示を出しているだけ。頑張っているのは全部コイツらだ。

 それにそもそも、ポケモンバトルにはそれほど興味がない。俺の目的はあくまで多くのポケモンを捕まえること。レベル上げは俺の趣味みたいなものだ。たまには息抜きだって必要なんだよ。

 

「それだけの実力があれば、ロケット団でも偉くなれると言うのに……もったいねえぜ!」

 

 偉くなりたいわけでもないからなぁ。

 それに黒い会社はお断りだよ。せっかく色のある世界へ来たというのに、黒色になってたんじゃあ、それこそもったいない。

 

 んじゃあな、お前も頑張れよ。

 

 

 

 

 まさかまたロケット団と出会うとは思っていなかったが、世間は狭いと言うし、こう言うこともあるのだろう。この先も会うことがあるんかねぇ? それは面倒くさいなぁ。どうしてアイツらはもっとこう、穏やかになれないのだろうか。

 

 それから暫く進むと、また新たな草むらを発見した。おお、これは嬉しいな。これで探索していない草むらの数は2つ。きっと新しいポケモンも沢山いることだろう。

 まぁ、探索するのはマサキと会ってからにしようか。目の前のモノに釣られているようじゃあダメなのだし。

 

 そんなことで、草むらを後にしたわけだが……もうね、すごいのよ。草むらを横目に東の方へ進むと林のような場所となっていて、其処には大量のトレーナーの姿。なんだこれは。その数驚きの9人。あの金玉橋のトレーナーの数も含めれば、16人にもなる。

 どうしてこんなにトレーナーが集まっているのかは知らんが、きっとハナダシティはポケモンバトルが盛んな地域なんだろう。あののんびりとし、何処か懐かしい香りのしたマサラタウンとは大違いだ。

 

 さて、有り難く経験値いただきますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、あなた、強すぎない?」

 

 最後のトレーナーである、ミニスカートの少女にも無事勝つことができ、どうにか全員倒すことができた。山男の出すイワークとイシツブテには俺の使うポケモンの相性が悪いせいか、苦戦したが其処はレベルの差でどうにかゴリ押し。

 さらに、アカヘルのレベルも順調に上がってもう26だ。25レベルになった時、“りゅうのいかり”なんて言う、カッコイイ技を覚えてくれたけれど……“かみつく”の方が強く、正直微妙だ。技の見た目もカッコイイんだがなぁ。

 

 また、短パン少年が出してきたヤドンと、ミニスカートの少女が出してきたナゾノクサは初めて見るポケモンだった。ヤドンは何と言うか……ピンクの……なんだろうね、アレ。んで、ナゾノクサの方は……えと、動く雑草? みたいな感じだった。

 多分、俺が捕まえても育てることはしないと思う。

 

 そして、漸くマサキの家と思われる建物へ到着。

 う~ん、予想以上に時間がかかってしまった。ちょっとトレーナーの数が多すぎたな。

 

 さてさて、それじゃあ、ちょっとマサキへ挨拶でもしてこようか。

 扉を開け、家の中へ。お邪魔します。

 

 しかし、中に人はおらず、1匹のポケモンがいるだけだった。

 あら、留守だったか。どうやらタイミングが悪かったらしい。てか、留守にするなら鍵くらいかけておいた方が良いと思う。

 

 

「こんにちは!」

 

 

 ふむ、仕方無い。此処は出直そうか。なんて思っていると家の中にいたポケモンが声をかけてきた。

 まさかポケモンが喋るとは思っていなかったから、これは驚いた。へー、ポケモンの中には喋ることが出来る奴もいるのか。

 

 

「僕、ポケモン!」

 

 

 ああ、見れば分かるよ。

 

 

「……ちゃうわい!」

 

 

 マジか。すっかり騙されたわ。

 

 はて、どう見ても何かのポケモンなんだが……ん~、もしかしてこれがマサキなんだろうか? 俺はてっきり人間だと思い込んでいたが、どうやらマサキはポケモンでも人間でもないらしい。

 

「わいはマサキ。周りの連中からはポケモンマニアなんて呼ばれてる」

 

 ふむ、やはり、これがマサキだったか。

 しかし、困ったな。こんな得体の知れない生物とコミュニケーションを取ったことなどないから、どう接して良いのかが分からない。

 

「そんでな、困ったことに、実験に失敗してポケモンとくっついてもうたんや……なっ! どうか助けてくれへん?」

 

 なるほど、そう言うことだったのか。

 しかし、ポケモンとくっつくって……随分とすごい状況だな。どうしたらそんなことになるんだよ。そして、マサキはやはり人間ってことで良いのだろうか?

 

 

「いいえ」

 

 

 状況の整理ができないため、とりあえず断っておく。

 

「そ、そんなこと言わんといて! よっ、この色男! にくいねーっ。大統領! よし、これでオッケーやな! わいが転送マシンへ入るさかい、そこのパソコンで分離プログラムを頼むで!」

 

 そう言ってマサキはなんとも複雑そうな機械の中へ入っていった。

 

 これは酷い。まぁ、今までの奴らみたく、全く話を聞かないってわけではなかったし、良い方なのかな?

 

 

 そして、マサキが転送マシンと呼ばれた機械の中へ完全に入ったことを確認して、俺はそっとマサキの家を後にした。

 

「さて、新しいポケモンを捕まえに行くか」

 

 その日の天気は晴れでした。

 

 

 







~補足とか~

:ヤドン

まぬけポケモン

いつもボーッとしていて、なにを考えているか分からない。尻尾でエサを釣るのが得意。

:ナゾノクサ

ざっそうポケモン

別名アルキメンデス。夜になると2本の根っこで300メートルも歩くという。


あのカップ麺と関係があるのかは分かりません


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