「……よう! レッドじゃねーか。こんなとこうろちょろしてたのかよ!」
ハナダシティの北に架かっていた橋でグリーンと遭遇。
レベル上げをしようとしていたし、これは丁度良いな。
「俺なんか、強いのとかすごいのとか捕まえちゃって絶好調だぜ!」
そしてグリーンの方も調子は良いようで何よりだ。ただ、表情が死んでいるように見えるが大丈夫か? 何か嫌なことでもあったんかねぇ。
最低でもデブチュウとアカヘルのレベルを30くらいまでにはしたい。最初からこんな調子じゃ心配だ。まぁ、そんなこと俺は気にしないが。
「レッドは何か捕まえたのか? 見せてみろよ!」
さてさて、レベル上げレベル上げ。
「いけっ! ピジョン!」
そう言ってからグリーンが最初に出したのは初めて見るポケモンだった。レベルは18となかなか高く、しかも見た目がカッコイイ。グリーンは何処でそんなポケモンを捕まえたのだろうか?
ただ、そのピジョンと呼ばれたポケモンは、ポッポと同じ鳥ポケモン。それならば、相性は悪くない。
「頼んだぞデブチュウ」
それにしても、デブチュウは進化したりしないのだろうか? レベルも上がってきていると思うんだがなぁ。
「やりー……俺って天才……クソが」
とりあえず一戦目。グリーンには無事負けることができた。
グリーンの出してきたポケモンは全部で4匹と、前回よりもかなり強くなっている。経験値は美味しいし、これは有り難い。
ちゃんとやればデブチュウ1匹でも勝つことはできそうだが、これを活用しない手はない。いつも迷惑かけてすまんなグリーン。
んじゃ、ちょっと待っててねグリーン。ポケモンセンターへ行ったらすぐ戻ってくるから。
「うん、知ってた。……よう! レッドじゃねーか。こんなとこうろちょろして――」
ポケモンセンターへ行き、ポケモンを回復。そして2戦目。どんどん行こうじゃないか。
それにしても……俺はポケモンセンターで回復させているのだが、グリーンはどうしているのだろうか? ゼニガメ以外の3匹は全員瀕死状態になっていたはずなのに、何故か回復している。俺もそれができれば、一々ポケモンセンターへ行かなくても良くなるんだがなぁ。
まぁ、現状には十分満足しているし、これ以上望むのはやめておこう。欲張ると碌なことにならないのだから。
人生なんてそんなもんだ。
「ケーシィ! テレポートだ!」
――しかし、うまく決まらなかった!
「アカヘル、はねる」
――しかし、何も起こらない!
グリーンとの戦いを始めてそろそろ20戦目くらい。デブチュウのレベルは目標の30を越し、残るはアカヘルだけ。とは言え、レベルはもうそろそろ20となるし、レベル30までもう20回も戦えば十分だろう。
「ケーシィ! テレポートだ!」
――しかし、うまく決まらなかった!
レベルは上がっている。上がっているのだけど……相変わらずアカヘルは弱い。技も“たいあたり”以外は覚えないし。そして、その“たいあたり”も弱いんだよなぁ。
「アカヘル、はねる」
――しかし、何も起こらない!
グリーンの出してくる4匹のポケモンは、ピジョン、コラッタ、ゼニガメ、そして今戦っているケーシィと言うポケモンだ。
何度も戦っていて、一番鬱陶しいと思ったのがピジョンの“すなかけ”だったりする。アレをやられると、ポケモンの攻撃が当たり難くなくなるんだ。どのくらい当たらなくなるのか分からないが、ひどい時は4回連続で外したりすることも。
「ケーシィ、テレポート」
――しかし、うまく決まらなかった!
ただ、ピジョンを倒したときはやたらとレベルが上がるから、多分ピジョンが一番経験値をくれるのだろう。
次に面倒なのがゼニガメの“しっぽをふる”だったりする。
「アカヘル、はねる」
――しかし、何も起こらない!
グリーンは必ずピジョン、ケーシィ、コラッタ、ゼニガメの順番でポケモンを出してくる。んで、俺はいつも最初の3匹まで倒し、最後のゼニガメにやられるようにしているわけだが……何を考えているのか知らんけど、このグリーンったらゼニガメに攻撃技をさせないで、ひたすら尻尾を振らせる時があるんだ。此方としては、“みずでっぽう”なり、“たいあたり”などでさっさと倒してもらいたいと言うのに。
「……ケーシィ、テレポート」
――しかし、うまく決まらなかった!
因みにだが、今アカヘルと戦っているケーシィはテレポートと言う技しかないらしい。だから、このポケモンなら流石のアカヘルでも倒すことができる。しかも、あまり強くないし経験値もそれなりにはもらえているようだ。なんでグリーンはそんなポケモンを育てているのやら……
「アカヘル。はね……「いい加減にしろよっ!」
いや、なんか楽しくてつい。
グリーンに怒られはしたものの、その戦いでアカヘルのレベルは上がり20となった。
う~ん、そろそろ新しい技を覚えて欲しいんだが、やっぱり無理なのかね? せめて水技くらい覚えても良さそうなんだけどなぁ。
そんなことを思っていた時だった。
瀕死状態だったアカヘルの身体が急に光りだしたのは。
最初は、あまりにも酷使し過ぎたせいで、終にアカヘルが天に召される時が来たのかと思ったが、この光景には見覚えがある。
そう、あのハラマキの時と同じ光景だ。つまり、これは――アカヘルが進化するってことなんだろう。
どんなポケモンになるのかわくわくしながら、光っているアカヘルを見守る。ただ、まぁ、アカヘルが進化したところで……なんて思う自分もいて、正直それほど期待はしていなかった。
けれども……
――おめでとう! アカヘルはギャラドスに進化した。
そんな俺の予想を見事に裏切り、すごく強そうなポケモンになった。
その身体は青色の鱗で覆われ、小さかった身体も5mを軽く超えているほど大きくなった。長いヒゲや凶暴そうな顔つきを何処か龍を彷彿させる。
おおぅ、まさかあのアカヘルがこんなポケモンになるとは思わなかった。しまったなぁ、アカヘルなんて名前にするんじゃなかった。カープじゃなくてドラゴンの方だったか。
そして、ギャラドスに進化したアカヘルは新たに“かみつく”と言う技も習得。う、う~ん、噛み付くか……まぁ、進化して新しい技を覚えただけでも十分なのかな。
さて、とりあえずポケモンセンターへ急ごうか。せっかく進化したのに、瀕死状態のままじゃ可哀想だ。
コイキングからギャラドスに進化したアカヘル。ギャラドスがどんなポケモンなのか知りたくて、ポケモン図鑑で調べてみたが、非常に凶暴な性格で、口からは破壊光線を出し、全てのものを焼き尽くす。と書いてあった。どうやらとんでもないポケモンになってしまったらしい。
とは言え、それが本当だとは思えないし、実際に戦わせてみないと分からない。てか、破壊光線ってなんだよ……全てを焼き尽くすと書いてあるし、炎でも吐き出すのだろうか?
色々と気になることもあるが、とりあえずグリーンで進化したアカヘルの腕試し。
はてさて、どれくらい強くなったのかね? さぁ、本当のお前の力を見せてくれ。
「なんだよー! ムキになっちゃって!」
……驚いた。まさか、あのアカヘルが此処まで強くなるとは。
手違いで、グリーンは倒してしまったが、デブチュウは目標のレベルまで上がっているし、アカヘルも此処まで強くなったのなら問題ないだろう。まさか、コラッタを一発で倒せるとは思わなかった。もしかしたら、デブチュウよりも強いかもしれない。レベルは10も差があるのにね。
「へへーん! 俺、マサキの家で珍しいポケモンを沢山見せてもらっちゃったもんね! この鬼畜野郎。ポケモン図鑑のページも増えたぜ! お前なんて大嫌いだ。マサキは有名なポケモンマニアだからな!」
なんで、グリーンはこんなに怒っているのだろうか? 勝負を仕掛けてきたのはコイツからなのになぁ。
「パソコン通信の預かりシステムもマサキが作ったんだぜ!」
おろ、そうだったのか。相変わらずどう言う仕組みか分からんが、あのシステムにはお世話になっている。
なるほど、マサキって奴はかなりすごい奴だったんだな。
「お前も使ってるんなら、お礼に行けば? じゃあな! 二度と会うか! バイビー!」
ふむ、グリーンには嫌われてしまったように見えるが、アイツ、所謂ツンデレって奴だし本心ではきっとそんなこと思っていないだろう。
それにもし、本当に嫌われていたとしても、俺は別に気にしない。またお世話になろう。だから次に会う時までにもっとレベルを上げていてもらえると助かるよ。
ぽっぽこと怒りながら去っていくグリーンも見送り終わり、これで俺も進めるように。
レベルも上がった。問題だったアカヘルも強くなった。
そんじゃ、マサキとやらに会いに行こうかね。