そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第12話

 

 

 新しくアカヘルが仲間となり、手持ちのポケモンの数も3匹に。捕まえたポケモンの数も増えてきているし、今のところ順調……だと思う。

 とは言え、まだ旅は始まったばかりに違いない。サクサク進んで行こうじゃないか。

 

 そんな気分で、お月見山の中へ。

 洞窟の中で、しかも明かりなどはないはずなのに、何故か明るい洞窟内。ん~……まぁ、考えていても仕方ないか。そして、ホントにトンネルっぽくないのね。中はかなり広いけれど、人間が掘ったようには思えない。こりゃあ、抜けるのも大変そうだ。

 はて、ぱっと見た感じ、草むらは見当たらないのだけど……洞窟の中はポケモンが出てこないのだろうか?

 

 なんて思っていたら、ズバットと言う蝙蝠のようなポケモンが現れた。蝙蝠か……うむ、洞窟にはよく似合っている。

 

 さてさて、せっかく仲間になったんだ。アカヘル、お前の力を見せてくれ。

 

 モンスターボールから勢い良く飛び出したアカヘルは、地面の上で元気良くペチペチと跳ねた。

 うん……なんだろうな。分かっちゃいたけれど、こう……見ていて悲しくなる。てか、何も考えずに出してしまったが、コイツ呼吸できているのか?

 アカヘルはどう見ても魚。陸地で活躍できる気がしない。これでHPが減り始めたらたまったものじゃないが……HPバーは減っていないし、一応陸地でも生きてはいけるっぽい。……たぶん。

 

 んで、技は“はねる”のみと。

 今だって跳ねているんだけど、これがもっと跳ねるのだろうか……

 

 試しにその技を使ってみた。

 

 

 

 もっと跳ねた。

 

 

 

 …………うん?

 

 え? これで終わり? 本当にただ跳ねただけなのだが……

 相手のHPバーはちっとも減っていないし、“なきごえ”とかを使ったときみたいに、相手の攻撃力が落ちたわけでもない。何のための技なのか全く分からない。

 

 もうほとんど諦めていたけれど、念の為にもう一度だけ試したが、やはりペチペチと跳ねるだけだった。う~ん、育てていけば強くなったりするのかねぇ? そんな気、全くしないのだけど……

 

 因みに、忘れずズバットは捕まえておいた。

 

 

 

 

 さて、困ったぞ。いや、ポケモン図鑑にアレだけボロクソ書かれていたのだし、強いとは思っていなかったが、まさか此処までとはねぇ。ポケモンのレベルを上げるのは好きだし、ちゃんと育ててやりたいとは思っているけれど……もしかしたら“はねる”以外の技を覚えないかもしれない。

 そんなことを考え始めると、どうにも気は重かった。

 

 その後も新しいポケモンを探しつつ、アカヘルのレベルを上げつつ洞窟の中を散策。

 攻撃技のないアカヘルの育て方だが、経験値は一度戦闘へ出すだけでもらうことはできるらしい。だから、ポケモンと出会ったらまずアカヘルを出す。そして直ぐにアカヘルをモンスターボールへ戻し、違うポケモンで相手を倒す。そんなことで経験値をもらって良いのかとも思うが、まぁ、できるものはできるのだし、良しとしよう。

 因みに、そのやり方はお得な掲示板とやらに書いてあった。

 

 また、この洞窟内にも多くのポケモントレーナーがいて、虫取り少年や、ミニスカートの少女なんかにいきなり勝負を挑まれた。

 その虫取り少年がぽそりと、ロケット団がいた。とかなんとか言っていたが……いや、ロケット団ってなんだよ。相変わらず分からないことが多い。

 しかし、捕獲の方は順調で、イシツブテとパラス。そして、ピッピとか言うポケモンを捕まえた。

 イシツブテはタケシが出してきたポケモンと同じあの石から手が生えてる奴で、パラスと言うポケモンは、蟹にキノコが生えているポケモンだった。ポケモン図鑑で確認したところ、どうやらパラスは冬虫夏草らしい。冬虫夏草と言えば、かなりの高級品で、安いものでも1kgあたり200万円ほどしたと思ったが、コイツも高く売れるのだろうか? いや、売らないけどさ。

 そして、ピッピは見た目が可愛らしく、ポケモン図鑑にもペットとして人気があると書いてあった。でも、残念ながら強くはなさそうだ。

 

 ピッピを捕まえたところで、そろそろデブチュウの体力が厳しくなったため、一度お月見山を出ることに。その時、“あなぬけのヒモ”を試しに使ってみたが、本当に一瞬で洞窟の入口にあったポケモンセンターへワープした。なにこれ、超便利。

 捕まえたポケモンたちだけど、全てパソコンへぶち込んでおいた。多分、育てることもないと思う。

 

 現在、アカヘルが11レベル。デブチュウが23レベル。そしてハラマキが31レベルと言った感じ。アカヘルのレベルを上げるのが思っていた以上に大変。しっかし、本当に新しい技を覚えないな。もう諦めた方が良いんかねぇ?

 まぁ、のんびり育てるとしよう。

 

 そして、再びお月見山の中へ。

 

 どうしてなのか分からないが、お月見山の中にはやたらと落し物がある。とは言え、誰の物か分からないし、態々持ち主を探すのは面倒臭い。キズぐすりだの技マシンだの色々落ちていたが、それらは全て見なかったことにしておいた。

 

 

 最初のうちは洞窟が広すぎるせいで、何度も迷子になったし、迷っているうちにデブチュウが何度も力尽きた。洞窟の中にはいくつか下へ続くハシゴがあり、そのせいで余計に迷っていたんだと思う。

 因みに、下へ続くハシゴは3つもあり、そのうち2つは行き止まりだった。何のためにハシゴをかけたんだよ。嫌がらせか。

 

 新しいポケモンは見つからず、やることはアカヘルのレベル上げだけ。そのシワ寄せは全てデブチュウが引き受け、そのせいでデブチュウが力尽きる。

 自らの身体を張ってまでアカヘルのレベル上げるデブチュウは、ポケモンの中のポケモンだと思う。

 

 そんなデブチュウの頑張りもあり、ついにアカヘルが“たいあたり”を覚えた。

 

 ピッピを捕まえたときなんかよりもよっぽど嬉しい。やったなアカヘル! これでお前も一人で活躍できるようになるじゃないか!

 

 デビュー戦こそ散々なものだったが、今度こそ輝けるはず。さあ、本当のお前の力を見せてくれ! と、現れたレベル10のズバットへアカヘルに攻撃させてみたが……まぁ、アカヘルさんったら弱いのね。せっかく攻撃技を覚えたのに、全然ダメージがないし、“ちょうおんぱ”で混乱するし、“きゅうけつ”で体力吸われるしと、結局レベル5も勝っている相手に負けてしまった。接戦なんかじゃなく、一方的に。

 流石は世界で一番弱くて情けないポケモンだけある。

 もう育てるの諦めようかな……

 

 そんなことはあったが、もしかしたら超強いビームとか出せるようになるかもしれないし、一応レベル上げは続けることに。ただ、アカヘルだけじゃ勝てないため、戦闘には参加させない。

 すまんな、デブチュウ、また頑張ってくれ。

 

 主にアカヘルのせいで色々と想定外のこともあったが、お月見山も漸く終盤。今は3つ目の下へ続くハシゴを降りているところ。もし、この先が行き止まりだったら、もうどうすれば良いのか分からない。道が続いていることを願うばかりだ。

 

 そして、ハシゴを降り終えた時だった。

 

 

「ん~? 子供がこんな場所へ何の用だ!」

 

 

 だなんて言葉。

 其方を見ると、全身黒色の服に黒色の帽子。そして胸にはRの文字が書かれていた。すごい格好だな、おい。とてもじゃないが、俺には真似できなそうだ。コイツはそんな格好をしていて恥ずかしくないのだろうか。

 

「何の用と聞かれても……俺はただハナダシティへ向けて歩いているだけなんだが」

「ポケモンマフィアロケット団は怖くて強いのだ!」

 

 いや、巫山戯んな。話聞けよ。お前から話しかけてきたんでしょうが。

 あと、今ロケット団って言ったか? ロケット団と言えば、あの虫取り少年が話していた奴らのことだよな。ん~……何と言うか、間の抜けてそうな団だな。ロケット団って。

 

「子供だからと容赦しないぞ。ロケット団の力を見せてやる!」

 

 さてさてレベル上げ、レベル上げ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ! こんなことして仲間が黙っちゃねーぞ!」

「いや、お前から突っかかってきたんだろうが」

 

 何の問題もなく勝利。

 トレーナーとの戦いは経験値が美味しい。

 

 それにしても、このロケット団の男は何をしにこんな場所にいるのだろうか? ははーん、さてはコイツ迷子だな? きっと道に迷ってイラついていたのだろう。まぁ、人生長いんだ。そう言う時だってあるさ。

 

 

 そんななんとも緩い感じとなってしまったけれど――それが俺のロケット団と関わった最初の出来事だった。

 どう考えたって良い奴らではなく悪い奴らなのだが……どこか憎めない奴ら。そんな印象。

 

 そんな奴らが俺の物語に深く登場するのは、もう少しだけ先のお話。

 

 


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