とある中佐の悪あがき   作:銀峰

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すいません。

作業途中で間違って出してしまって、修正して投稿しなおしました。

本当にすいませんでした。


銭湯で飲む牛乳ってたまに飲みたくなるよね。(再投稿)

「・・・・・なんのつもりなんだい?」

 

艦の中にある人気の少ない休憩スペースに連れてきて、備えつきの自動販売機で買ってあげた飲み物に口をつけ、一瞬顔を顰め、膝の上におきこちらを見てきた少女の第一声がそれだった。

 

「ん?・・・さっき渡したイチゴ牛乳のことか?たしかに甘すぎるよなソレ」

 

「いやイチゴ牛乳の話じゃないんだけど・・・」

 

「それとも俺が飲んでるコーヒー牛乳のほうが良いか?」

 

「いや。だからそうじゃ・・・・うん。それじゃ少し飲ませてもらおうかな」

 

「ほれ。甘いぞ」

 

今飲んでる牛乳をトレード。

イチゴ牛乳を一口。ん。激甘い!もう一杯!・・・・・うん。やっぱいらね。

販売機に近寄ってフルーツ牛乳のボタンを押す。なんでまた牛乳だって?

ここ牛乳系しか置いてないんだよね。

 

「ん。・・・・・そうだね。甘すぎるよ、コレ」

 

「だろ?・・・・・ちなみにココ全部甘いし、コーヒー牛乳が一番マシで、次点でフルーツ牛乳。で一番甘いのがイチゴ牛乳」

 

「貴方は初対面の人間に一番不味いもの飲ませたのか・・・・・ん。確かにマシだね」

 

「だろう?」

 

「でもそんなにいらないかな・・・」と彼女は呟いて瓶を膝の上におく。

確かにそんなにガブガブ飲むもんじゃないだろう。

これ個人的には好きなんだけどなぁ。コレ。

いや、一般的に好まれるもんじゃ無いとは分かってるけどね?

たまに・・・・こう、無性に飲みたくなるんだよね。

結構広い場所なのに、人がいない理由ここにあるとおもうね。

実際俺以外にココの牛乳飲んでるの見たことないし。

 

「・・・・・なんのつもりなんだい?」か・・・・

 

 

「君が女の子だったからかな?」

 

「え・・・・どうしたんだい?やぶから棒に」

 

「いやほら最初の、「何のつもり?」あたりのくだり」

 

「?・・・ああそうそう。すっかり忘れてたよ。激甘牛乳の所為で」

 

小さく笑って、手の中の瓶を円を書くように揺らし始める。

それにあわせて、琥珀色の液体がチャプチャプと音を鳴らす。

 

「ふうぅん?・・・・・ははっじゃあ貴方は困ってる女の子が目の前にいたら、私じゃなくても助けるのかな?」

 

「うーん。そうかな?そうじゃないかもしれないし、そうかもしれない」

 

「どっちなんだい・・・・?」

 

彼の優柔不断な態度に、呆れたような目を向ける少女。

いや俺のほうを向いているようで、彼女の目はココじゃない何処か遠くをみている・・・そんな感じがする。

 

 

すこし考えてみる。

実際声を掛けた訳なんて分かんない。

 

なんかちっちゃい子が震えてるのを見て、なんとなくほおって置けないとおもって、軽いノリでした自分の勝手なお節介。そもそもただのおせっかいに理由なんてあるわけが無い。

 

 

彼女は、俺が喋りだすのを待っている。

ポンッ、と何かを誤魔化すように、少女の頭に手を置く。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「どっちだろうねぇ。自分でもわかんないや・・・」

 

 

いや。違う、嘘だ___ほんとは、きっと、分かっている。

 

・・・・・・ちゃぷ

 

「そうかい」

 

 

____ただ、なぜそんな顔をしているのか知りたかった。

 

・・・・・・ちゃぷ

 

 

「そうだよ」

 

 

____ただ、泣きそうな顔をしていたこの子を

 

・・・・・・ちゃぷ

 

 

「あなたがそういうなら。そう、なんだろうね」

 

 

____見捨て、られないと思った。助けて、やりたいと思った。

 

・・・とぷん・・・・

 

「そうさ」

 

ハハッ、と彼は軽く笑う。不思議そうに彼女は首を傾げる。

そのまま手を動かし、少し硬い彼女の髪をなでて、離す。

 

「・・・・」

 

出会って数時間も経ってない仲といえばそのとおりだ。

冷静に考えれば、民間コロニーも無い、あんなところに偶然、モビルスーツに乗っていたなんて事はありえない。何より落ち着きすぎているし、確実に場慣れしている。怪しさ満開だ。

そう考えると、この少女が段々信用できなくなってきてしまう。

 

でもそんな推測なんてひっくり返るほど、この胸の中の感情が叫んでいる。

 

自分をどうでもいいもののように扱っている。

人の善意が無いものだと思っている。

いや悪意ばっかりに接していた所為で、そもそも分からないともいえる。

救うなんて口が裂けても言えないけれど、彼女のためにできる限りのことはしてあげたい。

 

 

 

「・・・・・なぁ」

 

 

 

 

 

 

「うちの・・・・いや・・・そうだな・・・」

 

「・・・・?」

 

「キミさえ良かったら、さ。この艦隊にこないか?」

 

「・・・・・」

 

「きみは腕はいいし」

 

 

 

戦闘機パイロットとしてではなく___

 

 

 

「俺も話し相手がほしいし」

 

 

 

ただの話し相手ではなく___

 

 

 

「俺の元に来てほしい」

 

 

 

 

ここに来てほしい___

 

 

「どうだ?」

 

 

 

手を自分の前に差し伸べられた、手に彼女は呆然としたように、しばらく固まり。

手を開いたり握ったり、俯いたりしている。

 

 

 

「私は____

 

 

 

やがて顔を上げ、そろそろと手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

そうしてあと少しで手が触れそうな距離になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビィーーーーーーー!!!!!!

 

 

だがその返事に割り込むように、なりだした警報が二人の間を遮ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時間の少し前に戻る。

 

 

「・・・・・いたい」

 

体を起こす。

ん、暗い・・・

 

「だっ大丈夫ですか?艦長」

 

「え、ああ」

 

だれだ?

一瞬誰だかわから無かったが、相手はこっちのことを知っていたみたいだったので、確認の意味で顔をよく見てみる。

ふーむ・・・・

 

「・・・・・ああ、整備長か!」

 

「それ以外の誰に見えるんです・・・?」

 

目の前の男が誰だとわかったところで周りを見渡す。「・・・・無視ですか」

私が整備長といった男をはじめ結構な数に囲まれている。

暗かったのはこの所為だったようだ。

 

「まぁいいでしょう。それで思い出しました?」

 

状況確認。

なかなか上がってこない司令官に痺れを切らして、呼びに来たんだったわね。確か。

それで・・・・入った瞬間なんか緑色の壁が飛んできて・・・・

 

「うっ!頭が・・・」

 

「思い出したのか・・・・はたまた頭が痛いのか・・・わっしの取るべき反応ははたして・・・?」

 

「両方です。・・・心配してもらっておいて悪いのですが、まずベットに連れて行くべきでは?」

 

「いやぁ艦長。元気そうで何よりですわぁ!」

 

「いま露骨に誤魔化しましたね・・・大事無いのでいいですが」

 

「ははっすいません」

 

てへぺろでっさぁ。

となんか男がやっても、誰とくぅ?なポーズをとり謝ってくる男。

ぶっちゃけ気持ち悪い。

ほら周りの奴等、後ずさってんじゃないですか・・・

 

「素直にいうと気持ち悪いですそのポーズ。・・・・・さっきも言いましたが大事無いのでいいです」

 

「ですよねー」

 

クックックと腹を押さえて笑う整備長。

そこだけ見ると、この男の外観と合わさって、なかなか絵に成っている。

いつもそんなんだったら、少しはかっこいいのに・・・・・こんなヤツだったかなぁ。

 

「はぁ。貴方もそんなことやる男じゃ無かったでしょう?・・・・昔は、もっと・・・こう・・・・頑固オヤジみたいな感じだったでしょう」

 

「まあ、自分の体より突っ込みを優先する。副指令もだいぶアレだととおもいますがね・・・・艦長だって、昔はもっと、こう・・・ピリピリしていて、傲慢勝気な感じだったじゃないですか?」

 

「むっ。そんなこと無いですよ?・・・おらおらやろうどもきりきり働かんかぁ!が口癖でレンチブン投げて部下の頭に当ててた貴方に言われたくは無いです。司令が言ってました」

 

「はは。そんなことやってませんって・・・・貴方たち!ここんとこ間違ってるわよ!こんなことも出来ないのか屑が!とかほざいてたのにねえ?・・・ち、あいつめ余計なことを」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・もうやめましょうか」

 

「・・・・そうだな。この話題を続けてもいい事はなのもんねぇな」

 

・・・そういや司令探してたんだった。

途中からの会話の流れから、いつ衝突するのではとびくびくしていた周りの整備員に一言謝って去る。

 

「あっそうだ」

 

「ん?なんだ」

 

「司令知りません?探しにきたんですけど」

 

「ああ、司令ならほれ、あそこのゲルググのコクピットに居たんだが、・・・・・そういやいないな。どっか行っちまったよ」

 

弱った・・・・

やっぱり船が停止中だからって持ち場を離れないで、放送で呼べばよかったかなぁ。

でも司令、専用機のドム眺めてる時は放送ごときじゃあ反応しないから・・・

多分入れ違いにでもなったんだろう。・・・・私が気絶してる間に。

戻るか。

 

「それじゃあ戻ります。ありがとうございました」

 

「おう!じゃあな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来てない?」

 

「ええ司令ならまだ帰って来てないけど?呼びに行ったんじゃないの?」

 

「はぁはぁ・・・居なかったから、入れ違いになったかと思って急いで戻ってきたの」

 

焦って急ぎ戻ってきた私の問いに、司令にオペ子って呼ばれてる子に聞いてみるが、返ってきたのはそんな返事だった。

外にはサラミス級の残骸と救難信号を出してきた輸送艦がとまっている。

追われてた時に受けた被害が甚大で自力航行出来ない状況にあの艦は陥っており、今はチベ級でワイヤーをくっ付け引っ張ろうとしている。

もう直ぐ作業完了の予定だ。

被害が悪すぎるため、乗務員だけでもこちらの艦に移動してもらおうと提案したのだが、拒否されてしまった。

 

 

「はぁまったくあの司令は・・・艦内放送で呼びかけてみる?」

 

「ええお願い」

 

 

ん、お疲れ様、とを私をねぎらいながらモニターに向き合う彼女、時折きついことを言うがこういうところは素直にいい人だと思う。

ちなみに息が切れていたのは格納庫から全力疾走したからであって、私が貧弱だからではない。

走るのは鍛えていても、別の苦しさがあるよね。・・・・鍛えなおさなきゃなあ・・・

放送ボタンを押し込んで呼ぼうとした瞬間、電文が届けられたことを知らせる緑ランプが光る。

少し迷ったようだったが、電文のほうを優先したようだ。

彼女がカタカタとモニターを操作する音が響く。

こういう操作は私にはわからないから、その操作を後ろから黙って見つめる。

 

「・・・・・」

 

電子音が鳴り、小さな紙が印刷され出てくる。

それに目を通したとたん、ピタッと彼女の体が唐突に止まる。

 

「どうしたの?他の三艦長から?」

 

「・・・嘘」

 

「え?」

 

「・・・・」

 

「へ?なに」

 

ぐいっと紙を私に押し付けて、彼女は艦内に緊急時第一級警報を知らせる黒いボタンを押そうとする。

それを見た私はあわてて彼女の腕を掴む。

 

「なにしてるの!?それは艦長の私か、司令しか押せないやつよ!?」

 

「・・・・・・」

 

「ほんとどうしたの?三艦長からの伝言に何かあった?」

 

何処か様子かおかしい。

多分この紙の所為だろう、強い力で握られたからだろう手の中にあるしわくちゃになっている紙に目を通す。

それを見た私は___

 

「・・・・・嘘」

 

黒いボタンをそっと押し込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにがあった!?」

 

警報を聞いて司令が艦橋に乗り込んでくる。

なぜか傍らに小さな中学生ぐらいの女の子をつれている。

 

「その女の子は誰です?」

 

「帰還するときに回収した。さっきの船に乗ってた子だろう・・・・たぶん」

 

「そうですか。これを・・・」

 

最後のほうは聞こえなかったがそういうのならそうなんだろう。いまは時間が無い。

しわくちゃになった例の紙を差し出す。

紙を受け取り、読み始めた。

この人はいつもは少し駄目人間でも、重要な知らせが来た時(最近で言うとギレン総帥が戦死なされたときとか)でもいつも冷静に対処をしていた。

 

「ふむ・・・この空域周辺に多数のスラスターの光」

 

だから今回もこの状況を冷静に分析し、打開する一手を考え付くに違いない・・・!

この人は伊達に二十代という若さで出世したわけでは無いのだ。

 

「戦艦、巡洋艦クラスのものと推定。その数・・・」

 

ごくりと唾を飲み干し、続ける。

 

 

 

「_____約三十隻以上・・・・」

 

 

 

ほーうとうなずき、流れるような動作でオペレーター席に歩いていって、ボタンをおす。

艦内に警報が流れ始める。

 

「もう押しました」

 

「・・・・そうか」

 

 

あっ、もう駄目かも知れない・・・・

 


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