とある中佐の悪あがき   作:銀峰

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むしゃくしゃして(投稿)やった。
後悔はしていない。


中佐仲間を得てみた

「ふうむ」

 

旗艦チベ級重巡洋艦に乗る男、艦隊の司令官ユーセル中佐は思考する。

 

「どうしたものか・・・」

 

彼の視線の先には、いずれ後世に名を残すであろうジオン軍と地球連邦軍の最終決戦があった地、ア・バオア・クー宙域が広がっている。

 

「はぁ」

 

ひとつため息をつきこれからのことに思いをはせる。

ほんとどうした物か。

 

 

あの戦いの後、我が艦隊は戦闘の混乱のなか戦場を離脱した。

独立を(勝手に)決めたのはいいが、まず戦力も足りないし先だつものが必要になってくる。

始めはこの後の最大勢力のデラーズ艦隊を見つけ着いていこうとしたのだが、ミノフスキー粒子や戦場特有の誤情報などで目当ての一つを見つけることなどできず。見失った。

 

アニメでは、ギレン総帥が戦死した報を受け、図ったな・・!キシリア・・・!!などと言ってどこかにいくという情報しかない。そら見つけられるわけ無いがな。

名案とばかりに「そこらへんにデラーズ艦隊がいるはずだ。探せえぃ!!」などと某海賊王の態度で言い放った俺。

そのあと副官やオペレーターに、「何でそんなこと知ってるんですか?」とか「この混乱の中で一つの艦隊探すのは無理です。いくつあるとおもってるんですか?一瞬で何百ぐらい通信が飛び交ってるんですよ。それの履歴となると膨大すぎて分かりません。バカなんですか作業量考えてください」とか突っ込まれてそりゃそうだと納得してしまった。

ノリノリで言わなきゃ良かったと後悔した。

 

でも一応で検索させてみた。

かすかな可能性にかけてみたのだ。

見つかったら最上、見つからなくても選択肢はある方がいい。

そう考えての選択だ。

チャレンジ精神大事。すごく。

 

いや、けっしてオペレーターの言葉に苛立ったからではないゾ。

 

 

 

 

 

結論から言うと普通に逃げた。

見つかったのは見つかったが既に離脱していて行方は分からないとの事。

 

どや顔で、みつけました!と言ってきたときは素直に驚いた。

バームクーヘンか何かかと見間違えるくらいの紙の巻きものを空高く掲げて、胸を張るオペ子。

あまりに自信満々だったのでブリッチクルーみんなで拍手してしまったほどだ。

こちらを見て、にやりとでも擬音が付きそうな笑顔を向けられた。

 

ビシッ!(次こそは!次こそはぁ!くそぅくそぅ

 

ハッ!(ふっふっふ・・・艦隊の司令ともあろうお方が…

 

一瞬の交差。

 

この敗北を胸に再戦を誓う。

 

何をやっているんですと言って頭を抱える俺の副官。

すまんすまん。これからきちんとするからさ、各艦に撤退準備させい。

えっ、やりました?モビルスーツ回収信号も・・・やった。そ、そうキチンと他艦隊にばれない様に・・・

秘匿通信で・・・どったのオペレーター?私がやった?あ、そう。

俺たちがこんなことしてる間に各艦にいろいろ指示を出していたようだ。

 

もう君らが艦長でいいんじゃないかな。

でもそうなると俺の存在価値っていったい・・・?

 

そんなもん無いって?はは、黙れオペレーター。

 

と、とりあえず優秀な子達でぼかぁは嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

何も無い空間に浮いていたら攻撃されること待ったなしなので、結局は暗礁宙域に身を隠している。

いつまでもここに入れるわけでもないので落ち着ける場所、拠点を決めてしまいたい。

ジオン軍の拠点を思い浮かべる。

一番近いのが、

 

ア・バオア・クー。論外

 

グラナダ?却下終戦条約締結中で連邦軍が集まっている。なし

 

サイド3。連邦軍の占領下だが軍はいない。

 

茨の園。出来てすらない。なぜ思いついた。

 

現状維持。本末転倒。

 

並べてみると割りとあれだな。うーむ。

やっぱサイド3かな。占領されるまでにいって補給を受けておきたい。

うーん。そうだ。

 

「各艦の艦長を呼び出してくれ」

 

こういうときは相談するに限る。

オペ子に命じて数回コールさせる。

この艦隊は俺の乗艦のチベ級とムサイ級が三隻だ。

そのうちの一番艦の艦長が割と早く出てきてくれた。

 

「なんでしょうか」

 

モニターに出てくる中年のオヤジ。名をルドルフ。階級は大尉。本人は否定しているが戦闘キチの疑いあり。

不機嫌そうに眉を顰めている男が画面に映る。

理由は多分ジオンの最終決戦で、早々で撤退したのを根に持ってるんだろう。

 

「すまない大尉。今後の方針について話し合おうと思ってな。呼び出させてもらった」

 

「そうですか他の二人は?」

 

「いやまだだ。もうすぐだと思うが」

 

「それで中佐。なぜ撤退したのか自分はまだ納得できていません。あれ___」

 

「ごめんなさい遅くなりました」

 

「すまん遅くなった!」

 

大尉の発言をさえぎって二人の男がモニターに入り、画面が四分割される。

一人は二十歳代の外観の女。額には汗が滲み、荒い息を吐いている様はなかなか世の男たちを悩ましくさせる事だろう。名をヘルタ・フォン・グライペル。ムサイ級二番艦の艦長で、階級は少佐。俺の士官学校の同期生だ。

正式ジオン軍軍服を少し、本人曰くオシャレに改造している。

根が真面目だからだろうか、オシャレと言っても女子学生が靴下の色を変えている程度の改造であるが……

違いがよく分からんと言ったら、これだから素人はと言わんばかりに首を振られた。……今思い出してもムカつくな。こんな奴が軍の中ではモテてるんだから世の中不思議なもんである。

 

もう一人は一番艦の艦長と同じくらいの歳で、これまたオヤジだ。名をコートニーと言う。階級は少佐。

結構な歳らしいが、本人に聞いても中々教えてくれない。男は秘密があった方がモテるんだぞ。とか言われたが、歳を考えた方がいいと思う。スキンヘッドの大男が笑い皺を作りながら、一々大声で叫ぶのは正直最初は怖かった。……軍学校の嫌な思い出が蘇る。

 

ルドルフ大尉の追及を逃れるのに、この2人が来てくれたのは正直助かった。と言うか撤退するときに一応理由いったんだけど。

このまま敗北するより戦力を温存して次の機会を待つと。

敵討ちであるとか言っていくのを止めるのが大変だった。

本人曰くスペースノイドの自治確立を実現なさろうとするギレン閣下に感銘を受け、永遠の忠誠を誓っているんだとか。

 

「いやいい。それより何かあったのか?」

 

「いやこっちの方はエンジンの回転数が落ちてきていてな。それの確認にいっていた!この船もわしと同じく年代ものなんで今にも、くたばりそうじゃ!がはははは!」

 

コートニーは背を逸らし、深く刻まれた笑い皺を作った。

 

「私の方は被弾箇所の確認。……コートニーさんは後十年はいけるでしょ」

 

ヘルタが、昔絞られた仲だ。爺さんの元気さを一番知ってる。ジト目で何を言ってるんだとコートニーを見た。

 

「まったくだな」

 

激しく同意だ。

 

「いやそうか!そうだな!いや分からん!じゃあヘルタよ。ユーセル。ヘルタ。どうだ?一杯。歳をとってくると、寂しくてなぁ」

 

「無理です。その日は忙しいので」

 

「勘弁してください。俺も忙しいです」

 

「日付すら言っとらんのだが……」

 

ヘルタと断りの文言を入れるのはほぼ同時だった。あれは……地獄だ。前に一回誘われて言ったが、上を脱いで艦中を走り回るわ。酒飲んだまま、モビルスーツ乗り回そうとするわ。大変だった。まだあるが、あんまり思い出したくも無い。

 

「ヘルタも、ユーセルもつれないのぉ。まぁええか。艦のやつ誘お」

 

コートニーが呟いた瞬間、コートニーのムサイのモニターの端に写っているクルーが、一斉に目を逸らした。……どんだけ知れ渡ってんだよ。爺さんの酒癖の悪さ。

 

「あ、司令。暇だなーってぼやいてたじゃ無いですか。言ってあげたら……フゴ」

 

「ちょっと黙ろうか……!オペ子」

 

「フゴ……何す……ガブッと」

 

「いったい!噛むなよ!」

 

「失礼かみました」

 

「わざとだ」

 

「しりましぁん。しふいがわりいとおもいまふ」

 

わざとじゃ無い!?

まぁええや。

うちのオペレ―ターよ…くそぅ、バカにされまくっとんなぁ。まぁ、俺が無茶ぶり振りも、なんだかんだきちんと仕事してくれる。だから無茶ぶりする指令の俺としては頭あがらんのだか…、

でもやっぱムカつくのでこれからは名前で呼んでやらんぞ、オペ子で十分だ。

 

「オペ子ちゃんとかどう?」

 

「ごめんなさい」

 

秒だった。コートニーがよよよ、としなだれて目元を抑える。

 

「振られてしまったの・・・この歳になっても失恋とはつらいものよぉ」

 

「いや少佐奥さんいたのでは?あんまり、度が過ぎてたらダメですよ。話進めましょうよ」

 

ルドルフ大尉が、沈黙をやぶり、苦言を呈す。やるじゃ無いか見直したぞ。その姿勢に感動しながら見守っていたが、コートニーは眉を顰めると、人差し指を勢いよくルドルフに突きつけた。

 

「おおぅ。そんな簡単に男の秘密をばらすもんじゃないぞ。だから女にもてんのだ。大尉。このことをよ~く胸に刻んでおけ!!これは上官命令だ!!」

 

「は、はぁ。関係ない様な気がしますけど……まぁ了解です」

 

「何だと!?声が小さい!!貴様の○○はそんなにちいさいのか!あんまりにも舐めた態度を取っていると、○○○○を煮滾った○に付けて、貴様に食わせてやる!○○○をされたく無かったら全部俺の返事には勢いよく返事をしろ!分かったか!?」

 

「り、了解です。サー」

 

「声が小さいぞ!?」

 

「了解です!サー!!」

 

「うむ。よろしい」

 

「ご教授ありがとうございます!」

 

「うむ精進しろよ」

 

「イエス・サー!……ん?あれ?」

 

少佐って結婚していたのか、なんか意外だ。

ごまかされた大尉は首を捻る。

って言うか大尉・・・

 

「っていうか大尉かわいそうよ。間違ったこと言ってないのにねぇ」

 

「悪い人じゃないんだけどなぁ……純粋なのではないかと。後勢い。コートニーさん怖えもん」

 

「激しく同意」

 

ヘルタと、2人でこそこそと話す。あぁ士官学校でのトラウマが……

 

「何か言ったか!?」

 

「ノー・サー!」

 

ヘルタと息ぴったりに返事をする。あれ?俺がトップの筈だよな?

大尉が哀れすぎるのと、のろのろしてるとこっちにも被害が来そうなので、でさっさと本題に入ることにする。

パンパン。

手を叩きこちらに注目してもらう。

 

「はいはい。話が逸れてる!本題に入ります。この艦隊の事後の行動方針をどうするか。そこら辺決めたいと思います」

 

ここらへんは流石仕官クラスまで上り詰めただけのことは有る。切り替えは早い。

三人とも会話をやめ、こちらを注目してくる。

 

「司令どうとは?」

 

「これからの行動、まずはサイド3にいって補給を受けようと思う。クルーの中で降りたい人がいたら除隊させてあげたいし、戦争はもう終わった。各自自由にしてくれてかまわない。無理やりつき合わせる気はないし、追いかけもしない」

 

これは本気だ。原作改変の為の戦力はほしいが、これは自分の勝手で無理心中みたいなもんだ。

こいつらにはこいつらの人生がある。

原作では名前も出てないモブでもおれにとっての戦友だ。

そこらへんはきっちりしておきたい。

もう先にこの艦のクルーには確認を取っている。

抜けるなら俺の船の指揮経験のあるクルーを、かわりに艦長代理にすれば良い。

……痛いのは相当痛いが、代理が育つまでどのくらい掛かるのやら。

 

「とりあえずサイド3につくまでにきめてく__」

 

「別にいいですよ。帰っても他にする事ないし、水臭いわよ」

 

「わしも。帰っても仕事ないだろうしな。こっちにいた方が面白そうじゃ」

 

「べつにかまわない。ギレン総帥の敵討ちもしてないし」

 

「えっ。ほ、本当か?」

 

笑顔で、3人とも即答してくれた。

よかった。

だって一年間ほぼ一緒にここまできて絆みたいなものを感じてるのは、俺だけじゃないかって不安があって嫌われて無いかって・・・

絆と言う糸が向こうとつながっているような気がした。

でも付いてきてくれるって事は俺のことを好意的に見てくれてるってことだろ。

流石に嫌いなやつの下についてくるって事無いだろう。

っやっばい。素直に嬉しい。

だってそれって俺を慕ってってことだよな。

 

「あれぇ泣いてるの?ユーセル」

 

「なっ泣いてねえしヘルタ。う、嬉しいだけだし」

 

「どうしよう。からかうつもりで言ったら、思ったよりドストレートの返事が返ってきた。……困るなぁ」

 

ヘルタが口では困ると言いながら、ニヤニヤと揶揄ってくる。

困るのはこっちだ。流石にこの歳で泣くのは恥ずかしいのでぐっと我慢。正直泣きそうだが。

ほかの2人のほほえましい物でも見たとでも言うような目線が辛い。

 

「じゃあからかう出ないわ。ばか者」

 

「そうだな。少佐の言うとおりだ」

 

「え、私が悪いんですか!?」

 

今度はヘルタが揶揄われる番だった。突然男2人組から、集中攻撃を受け心外だとでもいう様に声を出す。

 

「うむ」

 

「そうだな。少佐の言うとおりだ」

 

「いや、これは違うでしょ。ええぇ」

 

「お、困っとる。困っとる。そういうところは変わってないの」

 

「そうだな。少佐の言うとおりだ」

 

「えっと…えっと…」

 

「うろたえてる姿も可愛いの。孫を見とる気分じゃ」

 

「そうだな。少佐の言うとおりだ」

 

なんか知らん内に男二人が、あたふたとしているヘルタを追い詰めてる。

なんかヘルタ。ごめん。

後ルドルフ大尉。それ言えばいいってもんでもないですから。縛ってる?結構便利そうですね。

でも、後ろの二回性癖のカミングアウトになってますから。

 

「いやいいよ」

 

「おっ復活したか。あんまりにも遅いからヘルタが、泣いてしまったじゃないか」

 

「そうだな。少佐の言うとおりだ」

 

「いや俺の所為ですか」

 

げんなりとしながら、すっかりいじめっ子なっている2人に返事をする。

 

「……違うかもなぁ。じゃあ悪いのはルドルフって事で」

 

「そうだな。少佐の言うとおりだ……ってあれ?」

 

「そうだ!・・・とでもいうと思って繰り返したけど外しちゃった感じですね」

 

なんか急に矛先を変えられたルドルフ大尉が、困惑した様な声を上げた。急にコートニーは劇画タッチの顔になり、腕を組む。

 

「ふはは!!引っかかったな!アホォが。それだからおまえは大尉止まりなのだー!!」

 

「くっ流石師匠。不覚をとりました」

 

くっ、殺せ。とかの吹き出しが似合いそうな顔になりながら、ルドルフ大尉が膝を突く。

 

「ふっ。精進せいよ。弟子よ」

 

「はっ!師匠!」

 

東方の不敗の方ですか?

そんな会話を交わしながら時間が過ぎていく。

 

まぁ。いいや。仲間の絆を再確認できた。それを確認できただけで今日は良い日だったと思う。

 

「じゃあ、これからの話を…」

 

いやその前に。これ聞いておかなければ。

 

「ふと…気になったんだけどさ。みんな俺のどこが良くて付いてきてくれたの?」

 

「へっ?そうねー…。うーん。うーーーーん」

 

「……ゴクリ」

 

「あ、顔は悪くないと思う。スルメ顔っていうか。味がある感じ。美人は3日で云々ってやつ」

 

「え?散々唸って結論それ?ディスられてる?」

 

ヘルタは地味に酷かった。ちょっと涙目になりながら、ルドルフ大尉に尋ねる。

 

「大尉は?どうして?」

 

「そうだなぁ。……暴れられそうだから?」

 

「……ん?」

 

まさかの感想だった。俺関係なくない?いや、コートニー少佐に希望をたくそう。恩師と言えば恩師だし、きっとなんかある筈、

 

「まあ。他のとこでも良かったが……探すのめんどくさい」

 

「そんな、定年後の再就職先探すの怠いから身内のとかでいいや。みたいなノリ」

 

「まぁ、気にするな。がはははは」

 

「あ、誤魔化された」

 

その日俺は自室で、人知れず泣いた。

 

 




ユーセル:結局話できてないなぁ

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