とある中佐の悪あがき 作:銀峰
あと、ひさしぶりにリハビリをかねて
自販機の裏の少女_ハマーン・カーンと名乗った_の話を聞く。
どうもあてがわれた部屋から、シャトルへ向かう途中で道に迷い困っているところにクーディと会った。お互いに一瞬でこいつは同郷だと悟ったらしい。
それからは意気投合して、盛り上がり仲が良くなったらしい。
俺が来る頃には結構な時間がたっており流石にまずいかということで、クーディ協力のもと自販機の裏に隠れてしまったらしい。
それを聞いての俺の感想は、いやなんでだよ。である。
なんであった瞬間分かるんだとか、なぜそこから自販機に行くんだとか・・・
言いたいことはあるが口には出さない。
えらいさんの娘でもあるし、未来のアクシズの女首相でもある。機嫌を損ねてもいいことはないだろう。
いや・・・それにしてもなぁ。
「これがハマーン・カーン・・・」
「?」
呆然としてしまう。目の前には正統派ヒロイン調とした美少女が座っておられた。
ハマーンは顔に何かついていますか?と小首を傾げていた。ハマーンの桃色をしたツインテールががふわりと宙を舞う。その拍子に士官用の備え付けられたシャンプーと女の子特有のいい香りがミックスされたものが鼻をくすぐる。
・・・か、かわいい・・・これがアクシズを統括していた女首相の幼少期かぁ・・・HAHAHA
「いや・・・ぜったいにありえねえ・・・」
頬を強くつねる。パチン。普通に痛い。どうやら夢じゃない様だ。
ハマーン・カーンのことで俺が知っていることは少ない。どちらかというと悪役サイドで、ニュータイプであること、せいぜいZ、ZZで首相(?をしていたというぐらいだ。あとアッガイに乗ってたり・・・は関係ないな。
こんな事ならZZまでしっかり見とくんだった!でもぶっちゃけもうガンダムシリーズ見たの二十年くらい前だよ!もはやうろ覚えのレベル。
「む・・・」(ふりふり)
「どうした?クーディ。急に頭なんか振って」
「・・・いや、なんでも?」
「の割には怒って_」
「なんでもない・・・」
そう言って、小柄な彼女は肩をいからせ、プイッとあらぬ方向を向く。
どことなく散歩に連れてってくれなくて、拗ねてる猫っぽいなと思いつつ和んでいた。
こいつなんかまれに猫っぽいような動作をすることがある。
なぜかその姿を見るたびに駆け寄っていってぎゅっとしたくなる。
まぁそんな事より・・・
時計をちらりと見る予定していた出発時刻より遅れてき始めている。ぼちぼち世間話をしている場合ではないだろう。
「すいません。ハマーン様。そろそろ出発の時間ですのでシャトルの方へお越しください。お父様もお待ちになられてます」
「はい。すぐ行きます」
「むぅ・・・」
なんだかクーディの様子がおかしい。
いやまあクーディはさっきから拗ねてるがこの艦にはいない同年代の同性にあったことで気でも緩んでいるんだろうか?
「ほら、クーディ。お客さんの前だぞ。しゃんとしろしゃんと」
「そうだけど・・・ここはごねとけって勘がささやいているのです。勘がね」
「なんだその勘って・・・」
「さあ、書いてr_」
「それ以上はいけない」
「んごもごごごご(これはこれで)」
「なんで口抑えてるのに若干うれしそうなんだお前・・・?」
「ぷはっ、いやね。・・・前まで施設にいてあんまりこういうことしたりされたりしなかったからね?ちょっと感動して・・・引いちゃった?ごめんね?今後こういうことはしないようにす_」
「・・・ばか。な訳ないだろ?こどもがそんな心配しなくていいよ。おまえは俺の世界征服の右腕なんだしそんなこと俺がいっぱい教えてやるよ」
「・・・うん」
不安そうにしている彼女。それをぽんぽんと軽く頭を撫でてやる。
こんな事しかしてやれんしな…こんぐらいなら
「…ずいぶんと仲がよろしいんですね」
「っ!…いやいやそんな事ないですよ」
「そうそう」
放置する形となっていたハマーン様から声がかけられる。ヤバい思いっきり放置してた。
慌てて二人とも離れ、そっぽ向いて口笛をふく。まぁ俺はふけもしないのだが。唇から情けなく空気が漏れる音しかしない自分とは対照にクーディは難なく吹いていた。しかも愛戦士たちである。しかし無駄に多才だなこの娘
「ヒュー」
「フィイフィノフィ」
「クスクス。やっぱり仲いいじゃないですか」
腹を抱えて笑うハマーン。する者によっては下品すら感じてしまう行為だが目の前の娘からは感じられない。むしろ愛嬌があって可愛らしさすら感じられる。これがお姫様ってやつか…
まぁ怒ってはないっぽいかな…?
「フフッすいません。余りに可笑しかったものでつい。あー久しぶりに笑った気がします」
「確かにいい笑いっぷりだったよ」
「もう、からかわないでくださいクーディ」
「ふーんだ」
「まぁまぁ私はもう帰りますから」
時計を見る。確かにこれ以上は出発に間に合うまい。
「まぁ…悪い人では無さそうですし…」
「?」
「いえこちらの話です。行きましょうか」
「はい。お父様もお待ちです」
「あっ、そうそう。中佐に聞きたいことがあったのです」
「なんでしょう?」
そう言って未来の首相が問う。
「この世界は、好きですか?」
どういう意図があってこんな質問をするのかがわらかん。ここは、当たり障りのないこといってごまかして…っ、目が合う。…むぅこれは生半可なこといってごまかせないな。
「正直なところ、嫌いです。」
なにやっても、ちっとも上手く行かない-
「…そう、ですか。ありがとうございますでは…」
でもそれですませてたら世界はちっとも良くならない!
「でも、だからこそ良くなるように人は前に進みます。今日よりいい明日に、今週が駄目なら来週。今年が駄目なら、来年10年でも20年でも歩み続けます。より良い明日に向かって」
「明日…か…」
「まぁ、そううまく行かないんですけどね…」
「いえ十分参考になりました。私もがんばってみます」
別れた後。シャトル発進まで見届け、小さくなっていくアクシズ行きの便を見送る。
「何だったんだ…一体?」
素直な人だったな。まぁ大きくなりゃ俗物とか言っちゃう人に成長しちゃうんだが…本当謎である。
「それで?行き先はサイド3でよかったんですか?」
ガンダム世界の謎に唸っているとうちの艦の副官がそう問いかけてくる。
普通だったらあんな連邦軍の集まってる所に行くという副官の頭を疑う所だが、そうもできない事情があった。
「…たのまれちゃったしなぁ…」
パサリ、彼の手元で2枚の紙が舞う。その紙にはどこぞの地形が写っており、中心に赤丸がしてある。
それだけみると宝地図といったものだか、実際に見方によっては宝の地図なので始末が悪い。
しかも地形の一部分しか移っておらずどこだかも分からない。まぁ敵の手に渡った時すぐばれちゃいかんからだろうが。
「ジオンの軍事研究施設ねぇ…」
どうやらまた厄介な火種が舞い込んできたらしい。
どこぞの親父曰わく
「私の脱出が遅れたのはこの施設のデータを回収するためでね。このデータが連邦に押収されたら困るどころか連邦のモビルスーツ開発が5年はすすむだろう」
「回収もしくは、最悪破壊してもかまわん。なんとしても連邦軍の手に渡るのは阻止せねばならんのだ」
「これはギレン閣下の書斎にあった研究所の地図だ。きっと役に立つ。極秘なのでまだ連邦軍にはばれてないと思うが…長引くと分からん」
「過酷な任務かもしれないが、そちらが手に入れた物は好きにしてかまわん。すまないがよろしく頼む」
だった。
それに思わず…おれは…
「ばかじゃねぇの」
悪態の一言ぐらいでようというものだ。
それに副官が反応する。
「えっサイド3に向かわれるといったのは中佐では…」
「あ、いやそうじゃないんだ。こっちの話」
やけに遅いなと思ったらこれかよ。とか結局回収出来てないとか色々いいたいが…
「恩売るチャンスだしなぁ…」
結局の所はこれがでかい。これからの時代アクシズの支援無しではきつい所ではない。これから色々とお世話になることも多いだろう。
しかも後数年とはいえアクシズのトップからのお願いだ。下手に断って機嫌損ねても困ることの方が多かろう…
まぁ散々愚痴って結局の所は行かなきゃ行けないんだ。報酬はアクシズの支援、あるかわからんが本国の最新モビルスーツまたはそのデータ。
そのデータさえあればどのようなものであれ役に立つだろう。
「うーん。でも全滅しちゃ世話ないしなぁ。そもそも場所すら解らんし」
「さっきから五月蝿いんですけどなんですか。人の顔の前にサイド3の地図なんか広げて、邪魔なんですけど」
「おぉう。どうしたオペ子ここは艦長席やぞ、自分の席に戻れよ」
「はぁ?ここ通信主の席なんですけど、あと人の頭の上に顎乗っけないでください。痛い」
「ん?」
確かに視界にはモニターが複数配置されており、少なくとも艦長席から見える景色ではない。
どうやら悩みすぎて何か移動してたらしい。
「すまんすまん」
「まったくですよ…というかなんです。官邸前の地図なんか取り出して」
「ちょっとな。とある軍事施設の地図何だが…場所がわからんでな。…ん?ちょいまて今なんて?」
「ここ官邸前の地図ですよ。ほら地図端から反対側に繋がっているこの道路が、ほら一年戦争前であった官邸前のパレードで爆発テロがあった場所に酷似して…」
「お前天才かよ…」
確かに手元にある地図とオペ子がモニターに出した地形は一致している。赤丸は亡くなったサスロ・ザビ様の事故現場を丁度示しており、事件自体は当時政敵だったランバ・ラルの父親のジンバ・ラルが犯人とされ、解決している。が、未だに一般車は立ち入り禁止になっている地域だ。もうちょっと特定に時間がかかると思っていたが、あっさり解決したな。
「ど、どうしたんですか急に…ま、まぁ私はてんさいですから?」
「うん?」
「こんな事お茶の子さいさいなわけです」
「うん」
「というわけで給料の倍額をですね」
「せやなー」
「雑」
止めたら?この仕事。
まぁほんとに止められたらこの艦隊回んなくなるのでそんな事言わんが、正直なところオペ子が残ってくれなかったら相当ヤバかった。こいつ通信意外にも財布事情とか知ってるからな…
えっ通信主に財布預けんなよって?知らんこいつが優秀なのが悪い。
「うっせーテロリストがまともな給料貰えると思うな」
「横暴。でも納得しちゃう。私。流石に正規軍にいたころよりか些細な額でも、貰えてるのが謎なんですけどねー?この給料誰が出してるんでしょうねー?まぁどこぞのちょろい司令がポケットマネーで賄ってるとかじゃないですもんねー?謎だなー?」
「…白々しいぞ」
指先を顎に当てながらとぼけた顔でそんなことを言ってくるオペ子。こ、こいつ金周りは艦橋のメンツで決めてんだから知ってる癖に…
「なんのことだか分かりませんねぇ…まぁこんだけあれば個人としては贅沢しなきゃ暮らせますけど…全体となると膨大な額だし私は止めといた方がいいんじゃな―
「…まぁ付いてきてくれてるぶんだけ有り難いからな、それとポケットマネーじゃねぇ元は上からの金だよ。まぁ基本給は無理でもって危険手当ぐらいは…」
「まぁ、子供のおこずかい程度の額で満足してるかはともかく」
「うぉい」
「あっ見えてきまし、ぼちぼちサイド3ですよ。どうせ出発されるんでしょう?早くいってください」
「ちょおすなって」
「ほら早くいった!」
ドンと背を押されて艦橋から追い出される。
扱い雑すぎねぇ…?
ま、まぁ結局は地位の高い人間がいたほうが指示もとうしやすいだろうしな。出るつもりでは合ったんだが。
今回は隠密作戦のためモビルスーツは持って行けない。あんな目立つもん持ってけるか。チベ級の横に付けたランチにガンダム世界特有のビーム銃(?)をもって乗り込む。
「出るぞ。ほかのものは準備出来ているな」
「はい!あとは司令の作戦開始の合図を待つのみです!」
よぉし!
「作戦開始!目標はサイド3のモビルスーツ研究施設のデータ。もしくはモビルスーツの回収!諸君等の健闘に期待する!」