とある中佐の悪あがき   作:銀峰

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もう前回の投稿から1年以上・・・これはひどい。内容も…

あとほんと遅れてすいません・・・




よろしく!

___大きらい、なんだ。

 

今でこそ気にしないで、というかむしろ使っている。

自分の中から浮かび上がってきた、誰とも知れないこの記憶

に自分の今まで生きてきた人生を、生き方を否定するかのように出てきたこの記憶。

誰かが俺の意識をのっとって繰るような感覚。

今まで踏んできた道が突然消えていくような表現しがたい感覚

 

ああ。やっとわかった。熱くなった原因。

そうだ。やっぱり、似ている。

幼少期の俺に・・・

今まで踏んできた道が突然消えていくような表現しがたい感覚。

自分の今まで生きてきた人生を、生き方を否定するかのように出てきた、記憶が顕現して来た頃。

 

 

「待ってくれ」

 

懐から離れ、格納庫から出て行こうとするクーディに、声を掛ける。

 

 

 

「すまない。さっきの言葉はたしかに俺が、悪かった」

 

「・・・・」

 

「・・・確かにお前は本当のクーディ・アルミストじゃないのかもしれない」

 

「・・・・」

 

彼女は黙って俺の言葉に耳を傾けている。

そんな彼女に対して俺は言ってやった。

 

 

 

 

 

 

 

「でも!そんなこと関係ねぇ!」

 

「えっ?」

 

 

戸惑いの声が目の前の彼女から漏れる。

責められるとでも思っていたのだろうか、勢い良く顔を上げて驚く。

気にせず続ける。

 

 

「お前は自分が気に入らないんだろう!?なら気にするのを止めろ!」

 

「えっ?」

 

自分でもむちゃくちゃなことを言ってると、自覚しているが続ける。

気になってるから、ここまで悩んでるとでも言いたげだな。

まったく昔の俺そっくりだ。この記憶が発症する

前の、親に捨てられて暗い路地裏で途方に暮れていたあの頃の俺に。

 

「お前は前の人格に負い目があるのだろう?なら逆にその体で人生を楽しめ!」

 

「彼女のことを差し置いて私だけ楽しむなんて・・・・」

 

「要は、嫌な事があって引きこもってる箱入り娘クーディちゃんを部屋から出せばいいんだろう?」

 

「・・・は、箱入り娘って」

 

俺の言葉に、口の辺りがひくひくなっているクーディ。

むうちょっと面白い。それを見て少し口元が緩みそうになるが、きっと引き締める。

 

「アマテラスって知っているか?大昔の太陽の神様でな。なにか嫌な事があって、一度引きこもったんだ」

 

「・・・それに何の関係があるんだい?」

 

「まあ黙って聞け。それで太陽の神がいなくなったからみんな困ってな。そりゃ作物とか作れないし。で、困った周りの神様たちが一計を案じたんだ」

 

「・・・それで?」

 

話を黙って聞けといわれたからか素直に聞いている。

どうして急にこんな話をし始めたのか、少しが気になっているようだった。

 

「そのアマテラスの周りでお祭りをしてな。そのアマテラスよりすごいやつがきた!って言ってな」

 

「・・・で、実際にそのすごい神様を呼んだのが、周りの神様たちが一計を案じた結果なの?というか太陽よりすごい神様っているのかい?もしかしてそのアマノウズメが私で、そのすごい神様が元のクーディ・アルミストのことで、私が引きこもれば解決だといいたいの?」

 

「そうだな。まあ、俺の言い方ではそう言われればそう聞こえるかもしれないが、ちg・・・って待て待て待て!」

 

少しそういう解釈の仕方ができるなんてどれだけ自分が嫌いなんだよ・・・

すこし俺が考え込んでしまった瞬間、彼女はエルメスに乗り込もうとするのを、慌てて止める。

当時を再現して、廃人になる気か!?それだけ大事と言うことなのだろうが。

不満げに、なんだとこちらを見てくる彼女をなだめながら、慌てて話を続ける。

 

「すまん俺が悪かった。続きはその自分よりえらい神と言うのが気になって、すこし出てきたアマテラスを掴んでみんなで引きずり出したんだ。えらい神と言うのは鏡に映った自分自身のことだったんだよ」

 

「ひどいやつらだな」

 

「俺もそう思う。で、要はお前も気にしないで人生を謳歌して、前の人格が出てきたくなるようにするんだ!」

 

「いやそれは・・・」

 

しかめっ面をしながら、腕を組み考えこむクーディ。

やはり納得できないとでも言いたげだ。

そこを考えるようになったら、あともう少しだ

 

「でもそんなこと、私には、できない。普通の女の子として生きることもできない。」

 

「そうだろうな。だが誰がそんな生き方をしろといった」

 

「え?でもそんなふうに・・・?」

 

彼女はニュータイプだ。もしそんな生き方ができたとしても、すぐに戦争に巻き込まれることだろう。

運が良くて、次のデラーズ紛争は逃げ切れるかもしれない。だがZ時代になってくるとダメだ。

研究所やらやなんやらに見つかり、すぐMSに乗せられ戦争に駆り出されるのが落ちだ。

 

・・・それじゃあ、ダメなんだ。

 

どうせこの後の世界は100年の争いが、戦いの連鎖が止まることはない。

それがこの世界だ。嗚呼そんなくそったれな世界だ。

スペースノイドの自治確立を目指し、ジオンの怨念は戦いをやめることは、消えることはない。

言い換えれば、ガンダムとは

 

ジオン軍が負け続けてきた物語、なのだ。それをジオンが勝ったら…?

 

ああ、そうだ。

 

「俺は世界に名を残す男!ユーセル中佐だ!その懐刀としてお前の名前も残そう!そこらへんの一般人では到底できない!その偉業を!それって最高の人生だと思わないか?」

 

「・・・いったいなにを言って・・・」

 

「俺は地球連邦政府を転覆させる!大革命だ!これまでだれも成し遂げてきたことがないことをする!」

 

戦いの連鎖を止めるためには、どうしたらいいか?

とても単純なことだ、勝てばいい。

 

あの、地球連邦政府に。

 

俺の言葉がすぐには理解できなかったのか、少しの間彼女は呆然とする。

そしてすぐに小さく首を振って、小さく

 

「・・・無理だ」

確かに、地球連邦政府を倒せたらそれは名が残る。とてつもないことだ。

だが、無理だ。偉業というものは誰にもできないことだから偉業というのだ。

それほどまでに大きいのだ。地球連邦政府というものは、確かに彼らは強いのだろう。それこそ30隻もの大艦隊を前にしてたった一隻の船で敵中突破して生き残れるぐらいには・・・

だが勝てはしない。あれだけの艦隊ですら地球連邦の一軍。氷山の一角。

それだけの軍隊を相手に一艦隊程度で勝てるはずはない・・・

それでも彼は続ける。

 

「そうだな、無理だ」

 

「・・・おぃ」

 

「・・・だがそれは今の状態で、だ」

 

まさかのうなずきながら肯定する言葉に一瞬ゆるみそうになるが、後に続く言葉でハッとする。

彼はこちらを見て発言する。

 

「あと数年は動けない。だがその後とてつもなく大きな波が来る、とても大きな波だ。連邦が、いや地球が沈むほどの大きな」

「それまでに戦力を整える。いや、揃えてみせる」

 

なおも続ける彼の眼は少女を見ている。

いや彼女を通じてどこか、遠い場所を見つめているような・・・

ふと思う。

なぜそんなことがわかる。

先ほどから戦力を整えるなど言っているが、別に無理をして戦わなくてもいい。戦争は終わったのだ。

もし、本当に連邦に勝つというのなら、別に連邦を戦争で倒さなくてもいい。

戦争というものは、あくまで国家間での交渉の一種なのだ。

スペースノイドの最終目的は、サイドの独立だ。

たとえば、難しいだろうがサイドの国会議員などになって交渉で独立を勝ち取るのも、一種の手だ。

もちろん、国家間戦争で敗れた国が独立するにはとてつもない苦労があるだろうが。なくはない

戦争するより、話し合いで行ったほうが断然いいだろう。

 

「・・・」

 

もしや彼はただ戦争がしたいだけ・・・?戦争に取りつかれた人間だったのだろうか・・・

彼を知る人間だったらそんなことはない!と言ってくれるのだろうが、今は数時間前に知り合ったばかりの少女にそれを求めるのは酷というものだろう。

 

「・・・っ」

 

「・・・どうした?」

 

「・・・いや」

 

「いや?・・・ああうんそうか」

 

少しおびえた顔をして、半歩引く彼女に気づき、少し自分を振り返る。

ああ、しまった。ひかせちゃったな。

自分の胸あたりまでしかない子供を怖がらせて、何したい。

ちがう。いいたいことはこうじゃないのだ。

 

「くっそ・・・あー!」

 

「・・・っ」

 

急に奇声を上げた男に、びっくっと揺れるのを見ながら乱雑に頭をかく。

 

「そうだな、結局何が言いたいかと云うとお前を幸せにしてやるってことだ」

 

「・・・っ!はぁっ!?」

 

いきなり何を言い出すのだろうか、この男は・・・

でも不意にこれまでのことが思い出される。不器用だがこちらの事を気遣ってくれている。今も底に沈んでいた自分を引っ張り上げてくれた。少なくとも悪意を持って言っているのではないだろう。

戦争しろとか言ってるのはともかく・・・

 

「あ、おい・・・」

 

どうすればいいかと悩んでいる彼を見ていると、不意にくすくすと笑い声が漏れる。

 

「・・・?」

 

あの時話を聞いてしまった時点で私の負けだったのかもしれない。

これからすることもない。彼についていくのも魅力的だと思える。

・・・よし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くすくすと急に笑い出した彼女に対してどうしたらいいのかと悩んでる間に、彼女は笑うのをやめくるっと回り背中をむける。

やっぱり幸せ云々は言い過ぎたかと思いつつ手を伸ばす。背中に触れるか触れないかのところで彼女が声を上げる。

 

「ねえ!ほんとーに彼女は出てくると思う?」

 

こんな彼女の言葉に俺は、手を伸ばすのをやめ背筋を伸ばして答える。

 

「そうだな、絶対に・・・とはいえないな」

 

「でも!」

 

そんな俺の言葉に、ビクッと小さい体を震わせるクーディ、肩を怒らせ話が違うとばかりに振り向いてくるところで言葉を続ける。

 

「出て来るまで付き合うよ、ずっーとずぅーーと、な」

 

そういうと彼女は少しうつむいた後、やがて顔を上げ彼女らしい晴れやかな笑みで

 

「そこまで言うなら付き合って、彼女が出て来るまでずーっとずぅーっとね!」


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