けんぷファーt!   作:nick

70 / 103
第62話 RUSH 2

 

新たなる仲間(仲魔?)であるヘリオスと紅音たちの顔合わせは恙無(つつがな)く終わった。

 

紅音は呆れたような顔で俺を見て、善くんは無表情(いつもどおり)。袋は「こんなイベントあったっけ…」とかぶつぶつ言ってたけど、不評はなかったから大丈夫だろう。

なにかあったらリーダーに丸投げしよう。うん、イケるイケる!

 

宿も問題なく確保できたし、次はランク上げだ!みんな、クエスト行こうぜ!

 

『ナツル、早くしないと又やり直しだぞ』

「うるせー黙れ猫!」

今一生懸命現実逃避してんだ、邪魔すんな!

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

《クエスト:倉庫内の荷物を整理してほしい》

 

・荷物が入った木箱が溜まって倉庫がいっぱいになっちゃってね。動かせるものだけでいいから整理しといてくれないか?

 

参加人数:1人

 

=報酬=

1200円

消費アイテム × 2

 

 

 

「これパソコンゲームの倉庫番じゃん!リアル倉庫番じゃん!!」

 

 

※倉庫番:キャラクターを操作してすべての荷物をゴール地点に運ぶパズルゲーム

 

 

現実に自分がプレイすると地味にキツイ!

 

「てか見てないで手伝えよ!」

 

壁際で木箱に座り込んでいるヘリオスに向かって叫ぶ。

こっちが必死こいて汗だく(※VRだから汗は出ない。要は気分)になって働いてるのに、呑気にあくびしてんじゃねえ!!

 

『力仕事は苦手なのだ』

「貧弱がっ」

『頑張れ怪力人間』

 

挑発の罵声もなんのその。猫らしい見た目にお似合いな伸びをして、奴はその場に丸くなった。

 

くそう、腹立たしい。その肉球プニプニしてやろうか。

 

「あーもー。やめだやめ!真面目にやるの飽きた」

 

もうかよとか言われるかもだけど、もうこの作業十数回やってるから。さっきから間違えて何度も倉庫内出入りしてるから。

その度に変わっていく、外にいる依頼人の目が痛い…(そんな失望した顔するならオメーも手伝え)

 

紅音たちにはとっくの昔に見切りをつけられたみたいで、気づいたらヘリオスのみだった。

訊ねたら三回目の失敗時に去っていったらしい。パズルゲー苦手なんだよ俺は!

 

中身がぎっちり入ってて、それなりに重量がある木箱から手を離す。

どう考えても一人でやる作業じゃないよコレ。フォークリフト持ってこい。

 

「要は指定の位置にやればいいんだろ。過程は重要じゃない」

『…ナツル?なにを…』

 

 

「うぉぉぉおおおおッッ!!」

 

 

目の前の木箱をガッチリと両手で掴み直し、気合いを込めて持ち上げる!

やっぱり重てえ!でも移動できないほどじゃない!イケる!

 

初めからこうすりゃ良かった!

 

『…100kgはあるように思えるのだが』

 

大丈夫、イケるイケる!

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「ラストおぉっ!!」

 

ドン!!と大きな音を立てて、最後の荷物を壁際の空いているスペースに降ろす。

 

あーキツかった。筋肉バッキバキだぜ、明日筋肉痛になるんじゃねーの?

 

『……………』

 

視線を感じたので振り返ると、ヘリオスが半眼で見つめてきてた。

 

「なんだよ」

『君はいつもそうなのか?信じられないことを当たり前のように行い平然としている』

 

二足歩行の猫らしき物体に常識を問われても…

 

『それともそれが普通の人間の行いなのか?』

 

そう、これが人間の普通だ ←

違うね。俺が特別なんだよ

 

 

…なんか唐突に二択が頭に浮かんできたんだけど。

しかもこれ、どっちを選んでも問題ある気がする。

 

「他がどうかなんて知らん、俺は俺だ。お前もお前だろ?」

『……深いな…』

 

ヘリオスは静かに俯き、なにかを思案しだした。

 

わりとテキトーに言ったんだが。

頭いい奴はそれっぽいこと言うと、勝手に考えを発展させて深読みし過ぎる傾向があるらしい。

 

一周回ってアホだろ。煩くなくて丁度いいからほっとこう。

 

「作業終わりましたー」

「ん?ああ」

 

外にいる依頼人が倉庫の内に入ってくる。

 

「おお、綺麗に片付いてるな」

 

満足げに頷いては、部屋の隅から隅まで眺め回る。

 

「何回もやり直すから不安に思ってたんだが、こうキッチリ整理されてるんなら文句はねえ」

 

持ち運んで作業してる内になんか凝り始めたから。二つの意味で。

 

「にいちゃん大変だったろ」

「いえ、(倉庫に出入りするたびに向けられるあんたの眼差しに比べたら)全然大丈夫です」

「謙虚だねぇ。これ、報酬だ。ちょっとおまけしとくぜ」

 

そう言って手渡される金とポーションと…スキルカードが二枚。

金額とアイテム二つは報酬通りだから、このスキルがおまけか。何々…

 

 

 

スキル:怪力一掃(かいりきいっそう)

 

・腕の振りに合わせて衝撃波を発生させる。射程距離:約5m。

・進化の可能性あり。

 

 

スキル:チャージ

 

・前方へ瞬時に突進する。移動距離:5〜10m。

 

 

 

「中々使えそうだな」

おまけのわりには悪くない。

 

怪力一掃ってのは遠距離攻撃に乏しい俺かヘリオスにインストールするか。チャージはルナかな。

 

ちなみに袋に使用権はない。

 

『ナツル、レイ達が向かってくるぞ』

「ん、そうか」

 

従魔として契約しているからか、それとも獣的な部分が強いからかは知らんが、ヘリオスは俺たちの大まかな位置が分かるらしい。(多分前者だな)

 

だからこいつだけ残しておいたんだろう…もう一人くらい付き合ってくれてもよかっただろうに。

 

「ああ?ノロマが倉庫から出てるな。やっと終わったのかよ」

「来るなり失礼だな紅音(おまえ)

手伝ってくれりゃよかったのに。

 

「なんだてめえ、まだ終わってなかったのか?カスだな」

「ケンカを売ってるんですね。いいでしょう買いましょう」

 

今度こそ決着をつけようか。

さっきの報酬全部使ってやんよ!(1200円)

 

紅音が銃を取り出し、俺が拳を構え、いざファイト開始!というところで待ったがかかった。

 

「なんで再会した途端に争うんですか。落ち着いてくださいよ」

「水平チョップ!」

「ごブック!?なん"べっ!?」

 

十代だからな。

 

「依頼終わったから昼でも食いに行こうぜ」

「はい!わたし、お魚が食べたいです!」

 

そういや玲ちゃんにご馳走してやるって言ったな。

仕方ない。多少メンドイけど料理を振る舞うとしよう。

 

「ごぼっ"、ま"っ…ま"っ"で……!」

 

喉を押さえて蹲る袋を無視して、全員で移動する。

 

まずは魚を…いや料理出来る場所を確保するのが先か?調理器具も買わなきゃな。

仕事が終わったばかりなのにやること多くて大変だ。

 




実際にミニゲームでこんな動きされたら製作者が泣く。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。