新たなる仲間(仲魔?)であるヘリオスと紅音たちの顔合わせは
紅音は呆れたような顔で俺を見て、善くんは
なにかあったらリーダーに丸投げしよう。うん、イケるイケる!
宿も問題なく確保できたし、次はランク上げだ!みんな、クエスト行こうぜ!
『ナツル、早くしないと又やり直しだぞ』
「うるせー黙れ猫!」
今一生懸命現実逃避してんだ、邪魔すんな!
☆ ★ ☆
《クエスト:倉庫内の荷物を整理してほしい》
・荷物が入った木箱が溜まって倉庫がいっぱいになっちゃってね。動かせるものだけでいいから整理しといてくれないか?
参加人数:1人
=報酬=
1200円
消費アイテム × 2
「これパソコンゲームの倉庫番じゃん!リアル倉庫番じゃん!!」
※倉庫番:キャラクターを操作してすべての荷物をゴール地点に運ぶパズルゲーム
現実に自分がプレイすると地味にキツイ!
「てか見てないで手伝えよ!」
壁際で木箱に座り込んでいるヘリオスに向かって叫ぶ。
こっちが必死こいて汗だく(※VRだから汗は出ない。要は気分)になって働いてるのに、呑気にあくびしてんじゃねえ!!
『力仕事は苦手なのだ』
「貧弱がっ」
『頑張れ怪力人間』
挑発の罵声もなんのその。猫らしい見た目にお似合いな伸びをして、奴はその場に丸くなった。
くそう、腹立たしい。その肉球プニプニしてやろうか。
「あーもー。やめだやめ!真面目にやるの飽きた」
もうかよとか言われるかもだけど、もうこの作業十数回やってるから。さっきから間違えて何度も倉庫内出入りしてるから。
その度に変わっていく、外にいる依頼人の目が痛い…(そんな失望した顔するならオメーも手伝え)
紅音たちにはとっくの昔に見切りをつけられたみたいで、気づいたらヘリオスのみだった。
訊ねたら三回目の失敗時に去っていったらしい。パズルゲー苦手なんだよ俺は!
中身がぎっちり入ってて、それなりに重量がある木箱から手を離す。
どう考えても一人でやる作業じゃないよコレ。フォークリフト持ってこい。
「要は指定の位置にやればいいんだろ。過程は重要じゃない」
『…ナツル?なにを…』
「うぉぉぉおおおおッッ!!」
目の前の木箱をガッチリと両手で掴み直し、気合いを込めて持ち上げる!
やっぱり重てえ!でも移動できないほどじゃない!イケる!
初めからこうすりゃ良かった!
『…100kgはあるように思えるのだが』
大丈夫、イケるイケる!
☆ ★ ☆
「ラストおぉっ!!」
ドン!!と大きな音を立てて、最後の荷物を壁際の空いているスペースに降ろす。
あーキツかった。筋肉バッキバキだぜ、明日筋肉痛になるんじゃねーの?
『……………』
視線を感じたので振り返ると、ヘリオスが半眼で見つめてきてた。
「なんだよ」
『君はいつもそうなのか?信じられないことを当たり前のように行い平然としている』
二足歩行の猫らしき物体に常識を問われても…
『それともそれが普通の人間の行いなのか?』
そう、これが人間の普通だ ←
違うね。俺が特別なんだよ
…なんか唐突に二択が頭に浮かんできたんだけど。
しかもこれ、どっちを選んでも問題ある気がする。
「他がどうかなんて知らん、俺は俺だ。お前もお前だろ?」
『……深いな…』
ヘリオスは静かに俯き、なにかを思案しだした。
わりとテキトーに言ったんだが。
頭いい奴はそれっぽいこと言うと、勝手に考えを発展させて深読みし過ぎる傾向があるらしい。
一周回ってアホだろ。煩くなくて丁度いいからほっとこう。
「作業終わりましたー」
「ん?ああ」
外にいる依頼人が倉庫の内に入ってくる。
「おお、綺麗に片付いてるな」
満足げに頷いては、部屋の隅から隅まで眺め回る。
「何回もやり直すから不安に思ってたんだが、こうキッチリ整理されてるんなら文句はねえ」
持ち運んで作業してる内になんか凝り始めたから。二つの意味で。
「にいちゃん大変だったろ」
「いえ、(倉庫に出入りするたびに向けられるあんたの眼差しに比べたら)全然大丈夫です」
「謙虚だねぇ。これ、報酬だ。ちょっとおまけしとくぜ」
そう言って手渡される金とポーションと…スキルカードが二枚。
金額とアイテム二つは報酬通りだから、このスキルがおまけか。何々…
スキル:
・腕の振りに合わせて衝撃波を発生させる。射程距離:約5m。
・進化の可能性あり。
スキル:チャージ
・前方へ瞬時に突進する。移動距離:5〜10m。
「中々使えそうだな」
おまけのわりには悪くない。
怪力一掃ってのは遠距離攻撃に乏しい俺かヘリオスにインストールするか。チャージはルナかな。
ちなみに袋に使用権はない。
『ナツル、レイ達が向かってくるぞ』
「ん、そうか」
従魔として契約しているからか、それとも獣的な部分が強いからかは知らんが、ヘリオスは俺たちの大まかな位置が分かるらしい。(多分前者だな)
だからこいつだけ残しておいたんだろう…もう一人くらい付き合ってくれてもよかっただろうに。
「ああ?ノロマが倉庫から出てるな。やっと終わったのかよ」
「来るなり失礼だな
手伝ってくれりゃよかったのに。
「なんだてめえ、まだ終わってなかったのか?カスだな」
「ケンカを売ってるんですね。いいでしょう買いましょう」
今度こそ決着をつけようか。
さっきの報酬全部使ってやんよ!(1200円)
紅音が銃を取り出し、俺が拳を構え、いざファイト開始!というところで待ったがかかった。
「なんで再会した途端に争うんですか。落ち着いてくださいよ」
「水平チョップ!」
「ごブック!?なん"べっ!?」
十代だからな。
「依頼終わったから昼でも食いに行こうぜ」
「はい!わたし、お魚が食べたいです!」
そういや玲ちゃんにご馳走してやるって言ったな。
仕方ない。多少メンドイけど料理を振る舞うとしよう。
「ごぼっ"、ま"っ…ま"っ"で……!」
喉を押さえて蹲る袋を無視して、全員で移動する。
まずは魚を…いや料理出来る場所を確保するのが先か?調理器具も買わなきゃな。
仕事が終わったばかりなのにやること多くて大変だ。
実際にミニゲームでこんな動きされたら製作者が泣く。