けんぷファーt!   作:nick

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第59話 T.B.C.

 

「えっ?えっ?えっ?ど、どうしたのナツルくん?」

「どうでもいい」

 

あらためて再確認しただけだ。

 

世の中はいつも無情。自分がそうだとしても他人もそうだとは限らない。

ならばこそ―――俺は貫かなければならない。猫派の誇りを。

 

「とっとと行くぞ。時間は有限だ」

「う…うん…」

 

玲ちゃんがちょっと震えた声で返事をする。まるで圧倒されているかのように。

 

どーでもいい。

 

そんな事よりクエストだ。魔法があるこの世界の猫ってどんな感じなんだろう。ワクワク!

 

でもこの依頼書の"どうにかしてください"ってのが少し気になる。

 

普通捕まえるとか追っぱらうとかじゃないのか?

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

やってきました〜津軽の港、いよっ ぺんぺんっ

…コレ前にもやったな。

 

俺と玲ちゃんとルナは、猫が頻繁に出没して騒動を起こすという地区にやってきた。

 

この辺は魚屋や青果店などが多く並んでいるようだ。…いかにも猫が住み着きそうなところだな。

 

「さて、現場に着いた訳だが…まず聞き込みでもしようかと思うんだ」

 

猫をどうにかしてって、くっそ曖昧な内容で肝心の猫の特徴が全く分からんからな。

体長はどのくらいとか、どんな模様をしてるのか…それを知るのが先決だ。

 

やってることが探偵の迷い猫探しと大して変わらん。ていうかまんまだ。

ファンタジーものの冒険者も、物語の舞台裏でこんなことしてんのかな。

 

「…玲ちゃん?」

 

賛成も反対も、そもそも返事がない。

ただのしかばねのようだ。違う。

 

不審に思って振り返ると、先ほども見た黒い双眸が……

 

「あいす〜」

「オラァッ!!」

 

近くにあった青果店の果物(見た目は(うり)っぽい)を大きく開かれた口めがけてぶん投げる。

 

「がぶーっ」

見事ジャストミート。危なかったぜ…

 

「すんません。あれいくらですか?」

「え?あ、ああ…」

 

欠食童子がひと抱えほどある果物に夢中になってる隙に、店員に代金を支払う。

うーむ、一個80円か…安いな。今後の事を考えていくつか買っとくか?

 

「あいす〜」(がぶっ)

「がっ、もっ・もう食ったのか!?てっ店員さん!もう一個くれ!!」

 

体力がまた減った。

 

俺のHPが満タンになる日は果たしてくるのだろうか?

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「酷い目にあった」

 

それはもうホント…命の危機を感じる程に。

 

しかしその甲斐あって(?)手配されている猫の特徴が分かった。

対応してくれた青果店の店員が依頼主だったので、早く話がついて助かった。

 

でも正直、隣の魚屋の方が依頼するならふさわしいと思うんだが…

ちらっと店の前に、息を荒げた全身鎧がタワーシールド構えて立ってるのを見て、近づくのはやめといた。

 

瓜買うついでにその点を尋ねたら「実物を見れば理由が分かる」としか言われなかったし。

 

実物って猫か?どういう意味だろう。

 

「人ぐらいデカイ黒猫ってらしいだから、ジャガーみたいなのかもしれんな」

だとしたらもう猛獣の域だ。初心者にやらせていいのかこのクエスト?

 

「襲ってくる可能性があるから、念のため玲ちゃんはルナに騎乗しといた方がいいな」

「生醤油!」

 

誰がもろみから絞り出したままの油の話をした。まだ腹減ってんのかお前。

 

 

『うわああああああああああ!!』

 

 

「?」

 

醤油を付けて食べる系の料理の名前を延々とあげる少女を、無理矢理ルナの背中に押し付けると、いきなり男の悲鳴が上がった。

 

『猫だ!黒猫が出たぞ!』

『食べ物を隠せ、早く!』

 

悲鳴が悲鳴を呼び、あちこちがざわめき立つ。

遠くの方では怒号も聞こえてくる。

 

なにやら盛り上がってきたようで。違う、ネズミ小僧でも出現したかのような騒ぎっぷりだ。出たのは猫なのに。

 

「ナツルくんっ!」

「おう」

 

ガンガンっ!と両の鉄甲を打ち鳴らし、気合いを入れて段々近づいてくる騒動の中心部を睨みつける。

 

武器が装備されたってことは本格的に戦闘に入るんだろう。

捕物(とりもの)殺陣(たて)はつきものだ。見事に演じて見せよう。

 

オールアドリブだがな!

 

「来るぞ!」

 

俺の大声に呼応するかのように、人波から黒い影のような塊が飛び出してくる。

 

成人の男性ほどの大きさのソレ(・・)は猛スピードで俺に肉迫し――勢いに任せて腕を振るう。

 

 

ガキィンッッッ!!

 

 

顔面への攻撃を、間一髪で防ぐ。

 

鉄甲で弾き飛ばされた黒い影は空中をギュルギュルと回転し――獣のように身を低くした体勢で地面に着地する。

 

『ほう…今日の人間は中々、やるようだな』

 

猫のような存在はゆっくりと立ち上がり、そんなセリフを吐いた。

 

 

……猫…でいいのかな。

ぱっと見俺と同じような身長。八頭身ほどで服とか着てんだけど。

 

…………人間大ってかほぼ人じゃねえか。ファンタジーマジパネェっす。




戯れにペルソナ2の攻略本とか見てみたんだけど、P3に出れずに消えていったペルソナが結構いるんですよね。その中でも『ヘリオス』というペルソナは見た目的に結構気に入ってます。猫派だから。

なので出してみました。安直〜!

…本家のヘリオスは耳の部分、ツノみたいになってるけどウチの子は普通に猫耳です。その方がカワイイからな!

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