「えっ?えっ?えっ?ど、どうしたのナツルくん?」
「どうでもいい」
あらためて再確認しただけだ。
世の中はいつも無情。自分がそうだとしても他人もそうだとは限らない。
ならばこそ―――俺は貫かなければならない。猫派の誇りを。
「とっとと行くぞ。時間は有限だ」
「う…うん…」
玲ちゃんがちょっと震えた声で返事をする。まるで圧倒されているかのように。
どーでもいい。
そんな事よりクエストだ。魔法があるこの世界の猫ってどんな感じなんだろう。ワクワク!
でもこの依頼書の"どうにかしてください"ってのが少し気になる。
普通捕まえるとか追っぱらうとかじゃないのか?
☆ ★ ☆
やってきました〜津軽の港、いよっ ぺんぺんっ
…コレ前にもやったな。
俺と玲ちゃんとルナは、猫が頻繁に出没して騒動を起こすという地区にやってきた。
この辺は魚屋や青果店などが多く並んでいるようだ。…いかにも猫が住み着きそうなところだな。
「さて、現場に着いた訳だが…まず聞き込みでもしようかと思うんだ」
猫をどうにかしてって、くっそ曖昧な内容で肝心の猫の特徴が全く分からんからな。
体長はどのくらいとか、どんな模様をしてるのか…それを知るのが先決だ。
やってることが探偵の迷い猫探しと大して変わらん。ていうかまんまだ。
ファンタジーものの冒険者も、物語の舞台裏でこんなことしてんのかな。
「…玲ちゃん?」
賛成も反対も、そもそも返事がない。
ただのしかばねのようだ。違う。
不審に思って振り返ると、先ほども見た黒い双眸が……
「あいす〜」
「オラァッ!!」
近くにあった青果店の果物(見た目は
「がぶーっ」
見事ジャストミート。危なかったぜ…
「すんません。あれいくらですか?」
「え?あ、ああ…」
欠食童子がひと抱えほどある果物に夢中になってる隙に、店員に代金を支払う。
うーむ、一個80円か…安いな。今後の事を考えていくつか買っとくか?
「あいす〜」(がぶっ)
「がっ、もっ・もう食ったのか!?てっ店員さん!もう一個くれ!!」
体力がまた減った。
俺のHPが満タンになる日は果たしてくるのだろうか?
☆ ★ ☆
「酷い目にあった」
それはもうホント…命の危機を感じる程に。
しかしその甲斐あって(?)手配されている猫の特徴が分かった。
対応してくれた青果店の店員が依頼主だったので、早く話がついて助かった。
でも正直、隣の魚屋の方が依頼するならふさわしいと思うんだが…
ちらっと店の前に、息を荒げた全身鎧がタワーシールド構えて立ってるのを見て、近づくのはやめといた。
瓜買うついでにその点を尋ねたら「実物を見れば理由が分かる」としか言われなかったし。
実物って猫か?どういう意味だろう。
「人ぐらいデカイ黒猫ってらしいだから、ジャガーみたいなのかもしれんな」
だとしたらもう猛獣の域だ。初心者にやらせていいのかこのクエスト?
「襲ってくる可能性があるから、念のため玲ちゃんはルナに騎乗しといた方がいいな」
「生醤油!」
誰がもろみから絞り出したままの油の話をした。まだ腹減ってんのかお前。
『うわああああああああああ!!』
「?」
醤油を付けて食べる系の料理の名前を延々とあげる少女を、無理矢理ルナの背中に押し付けると、いきなり男の悲鳴が上がった。
『猫だ!黒猫が出たぞ!』
『食べ物を隠せ、早く!』
悲鳴が悲鳴を呼び、あちこちがざわめき立つ。
遠くの方では怒号も聞こえてくる。
なにやら盛り上がってきたようで。違う、ネズミ小僧でも出現したかのような騒ぎっぷりだ。出たのは猫なのに。
「ナツルくんっ!」
「おう」
ガンガンっ!と両の鉄甲を打ち鳴らし、気合いを入れて段々近づいてくる騒動の中心部を睨みつける。
武器が装備されたってことは本格的に戦闘に入るんだろう。
オールアドリブだがな!
「来るぞ!」
俺の大声に呼応するかのように、人波から黒い影のような塊が飛び出してくる。
成人の男性ほどの大きさの
ガキィンッッッ!!
顔面への攻撃を、間一髪で防ぐ。
鉄甲で弾き飛ばされた黒い影は空中をギュルギュルと回転し――獣のように身を低くした体勢で地面に着地する。
『ほう…今日の人間は中々、やるようだな』
猫のような存在はゆっくりと立ち上がり、そんなセリフを吐いた。
……猫…でいいのかな。
ぱっと見俺と同じような身長。八頭身ほどで服とか着てんだけど。
…………人間大ってかほぼ人じゃねえか。ファンタジーマジパネェっす。
戯れにペルソナ2の攻略本とか見てみたんだけど、P3に出れずに消えていったペルソナが結構いるんですよね。その中でも『ヘリオス』というペルソナは見た目的に結構気に入ってます。猫派だから。
なので出してみました。安直〜!
…本家のヘリオスは耳の部分、ツノみたいになってるけどウチの子は普通に猫耳です。その方がカワイイからな!