※11/3 まだ白のケンプファーの存在を知らないってことを忘れていたので、一部会話を修正しました。
「……………」
「……………」
『……………』
デートからの帰り道〜、変なのに〜、出あった〜。
☆ ★ ☆
どうしてこうなったかを順を追って振り返ろうと思う。
まず…俺が人目を憚らず泣いた後(改めて言うと恥ずかしいな…)、電車に乗って地元に帰ってきた。
本来ならそこでさよならバイバイだったんだが、雫に「きちんと最後までエスコートしてくれるわよね?」と言われたため、仕方なく彼女を家まで送ることになった。
いや、本当は無視してもよかったんだけどさ、思いっきり泣いて叫んで乱れたところを見られた後じゃぁ…ねえ?
真面目で優しい生徒会長さまは自分の学校の生徒が街中で目から感情を溢れさせてたとか言いふらさないと思うけど、なんとなく断りずらい。
…チッ、なんで来ねえんだよクソが…!
原作なら変身ヒーローみたく登場する場面だろが幼なじみ、仕事しろ!
スパリゾートの時みたく警察犬さながらの探知能力見せろよ―――ってあれはマコトだったか。紛らわしい。
まあそんなこんなで、雫と二人で街中を歩くことになった。なったんだが…
「水族館の時みたいなのに絡まれるだろうとは予想してたんだが、流石にこれは想定外だ」
「私もよ」
冒頭でも言った通り変なのに出くわした。
"それ"は道の真ん中に仁王立ちするようにして立っていた。
大きさはパッと見、
道路の幅が約4mほどだから、完全に道を塞いでいることになる。
百歩譲ってそれだけならまだいい。路上駐車してる車みたいなもんだからな。
問題は"それ"のナリだ。
見た目のベースはテディベアっぽいが、中心を境目に左右異なるデザインをしている。
右半身はピンク地に点目の子供受けしそうな顔だが、左半身は黒地で裂けるような赤い目をしていて、口からは鋭い牙が顔を覗かせている。
なんだろう。無性にだみ声が似合いそうな出立ちだ。
しかし腹部はなんか…学校の人体模型みたいになってる。具体的に言えば腸詰め。(意味が違う)
そんな"もの"が両腕を組んで仁王立ちで立っている。
臓物関連か絶望関連か判断に迷う。
「①キャンペーンのCM②新手のドッキリ③趣味の人」
「3番はあり得るのかしら?」
「実は沙倉という可能性が…」
「…………ないわよ」
その間はなんだその間は。
しかも今も若干悩んでるし。言っといてなんだが流石に無いだろ。
…………ない…よね…?
「まぁ、どう考えてもケンプファーなのでしょうけどね」
「だろうね」
あんな内蔵見えてるイカれた外装、他にない。
最近多くない?ケンプファーとして戦う理由を知ってから一月も経ってないぞ。
「あなたといると退屈しないわ」
「いやここ、あんたの地元だろうが」俺がいなかったら一人であれと対峙してましたよきっと?
「この時間帯は人気が少ないとはいえ、いつ誰かが通るか分からないわ。さっさと済ませましょう」
「ムシか」
「瀬能君、お願いだからちゃんと変身してから戦ってね」
そう言って内側だけ銀色に輝く髪をすくうように掻き上げる雫。
あんたその仕草毎回やってない?実はルーティーンかなんかなの?
まあいいけどね。さて、変身するか。
「…らせん階段、カブト虫、廃墟の街、イチジクのタルト、カブト虫、ドロローサへの道、カブト虫、特異点、ジョット、エンジェ「瀬能君」はいはい分かったわーかったよ」
後もうちょっとだった。
隣に立つ生徒会長さまの静かなる怒気の声に、言葉を紡ぐのを止めて腕輪に力を込める。
変身自体久々だから気合い入れみたいな側面もあったんだけどな。
つーか今気づいたけど、別に戦う必要なくね?
行く道を塞がれてるっつっても、迂回すれば時間はかかるが目的地には行けるし。尾行されたら撒けばいい。
そう思いながら、ちらっとすぐ側のわき道を見る。
「っ、瀬能君!!」
「!?」
――ガガガガガガガガガッ!!
ほんの一瞬目を離しただけなのに、その隙をついてキモいクマがどこからか取り出したするドラム型弾倉付きの短機関銃を乱射してきた。
慌てて変身し、その場を飛び退く。
「武器がトミーガンたぁ洒落てるじゃねえか!!」
マフィアをイメージしてるのか、さっきまではなかった帽子とマフラーと葉巻を装備してるのがなんか腹立つ。
「なんで愛称で…」
雫がなんか呟いたが無視。文字数少なくなるからいいだろうが。
てかなんであんたも知ってんの?
いや、そんな些細なことはどうでもいい。問題は…
あのクマ、武器と小道具を腸と腸の間から出さなかったか?
四次元胃袋。鳴り止まぬ銃声に紛れてだみ声の幻聴が聞こえた。気がした。
弾丸に当たれない理由がもう一つ増えた。
触れたら溶けそうだ。胃酸的なもので。
「
段々と激しさを増してくる銃撃を見かねて、
雫は目の前にいきなり光の壁が出現してギョッとした表情をするが、俺の周りにも出現してるのを見るとすぐにいつも通りの無表情、いや疲れたような顔になる。
「…あなたの非常識な戦い方を見てると自信がなくなってくるわね」
訂正、呆れてたようだ。
便利なんだからいいじゃん。深く考えるなよ。
「私の知り合いは軌道や威力を変えるのが精一杯だったわよ…」
発想が貧困すぎるぞ。もっとマンガやゲームにのめり込めよ。
――ガガガガガガガガガッ―――!!
自分の存在を無視して雑談していることに怒ったのか、激しかった弾丸の猛攻がより一層激しくなる。(心なしか俺だけを狙っているような…)
その勢いはゲリラ豪雨のようだ…その全てが炎のバリアに弾かれ、アスファルトの地面やブロック塀に甚大な被害が出てるが。
――フゥッ グルッ、ガァッ!!
業を煮やしたのか"もの"クマは機関銃を仕舞い(
腕の先端、拳にあたる部分からは鋭いクマ爪が飛び出している。
あの着ぐるみのギミックがヤバい。なにがとは言わない(言えない?)が色々ヤバい。
「瀬能君!」クマが予想以上に素早く動けるのを見たせいか、雫が大声を上げる。
いやほんとちょっと待って、マジで速い。俺が短距離走るくらい速いんじゃない?(50m5秒8)
目前まで黒い鉤爪が迫り、そのまま俺の顔面を貫く―――
スパァンッッ!!
―――直前にフリッカージャブで弾き飛ばす。
「シッ」
腕を吹っ飛ばされ、無防備な状態を晒すクマ。
そこですかさず右で手刀を作り―――
「はい!!」
クマの口目掛けて突き刺す。
腕はズボッという音が聞こえてきそうな勢いで口内に侵入を果たす。
肘まで飲み込まれ(飲み込ませ?)た辺りで、指先になにかが触れる感触がした。
俺は迷わず一歩踏み込みその"なにか"を鷲掴みにし、思いっきり引き抜く!
ブチ、ブチブチ!!
…クマの口から真っ赤な綿が出てきた。
腹綿(違う)を引き抜かれたクマは無言で後ろ向きに倒れこみ、そのまま動かなくなる。
辺りにしばし、静寂が漂った。
「…瀬能君、なにか言いたいことはあるかしら?」
「じょうずにぬけました!」
「いい加減本気で怒るわよ」
目がマジだ…!
「いやいやいや、俺だって驚いてんだよ!」
てっきり中に人が入ってると思ってたからなぁ…だから本来なら喉の内側を突くだけの技なのに、手を広げて中身を掴んだんだ。
でも綿しか詰まってないってどういうこと?どうやって動いてんだコレ?
なんとも言えない気分のまま、握りしめた手の中の綿を見つめていると、"モノ"クマが徐々に空気中に溶けるようにして消えていく。
それに合わせて持っている綿も消えていき、数十秒後には完全に無くなった。後には毛くず一つ残っていない。
…やっぱりおかしい。
ケンプファーの武器かなんかなのは間違いないだろうが、じゃあ本体はどこにいるんだ?
「ああ!イシュタム!!」
なんだ今度は!?
さっきちらっと見た路地から声がしたと思ったら、そこから人が飛び出してきた。
そいつは肩辺りにまで伸びた白銀色の髪を、ツインテールにしている少女。
容姿は中々悪くはないと思う。少なくとも10人いれば6・7人がかわいいと答えるぐらいには。
右目にしている眼帯を除けばな!
「よくもわたしの契約獣を!許さないんだから!」
契約獣!?あんな胡散臭い&気色悪い物体のことか!?いらんだろ正直。
むしろいなくなった方が精神を汚染されなくなっていいと思うんだが。
「今度はわたしが相手!覚悟!」
少女はそう言って、拳を握った状態で腕を振り回し突っ込んできた。…やっぱり俺に。
てか攻撃方法グルグルパンチ?なめてんのか?
走ってくる少女の頭に向けて、広げた
狙い通りに額に掌がぶつかった。(避けられても追尾したけど)
「くっ、このこのこのこの!!」
進撃を止められたにも関わらず、少女は掴まれた頭を支点に斜め前のめりになりながらグルグルパンチを続ける。
…こいつほんとにケンプファーか?力なさ過ぎだぞ。
掴んでいる手に力を込める。
「…は、ぁあ……なに…これ……頭が…痛っ…まさか貴方、闇の魔力を…!」
普通のアイアンクローですけど。
「演技ではなさそうね…そんなに力を込めてるの?」
「卵割る程度にしか込めてないけど」
ダチョウのな!とか続けて言ってみたいが、残念ながら見たことも触れたこともないため言えない。卵の中で一番固いってほんとかな。
「くぅっ……うぅ…ダメよわたし…負けちゃダメっ…わたしが倒れたらこの星の未来が…」
いったいどんな設定なんだろうか。
「瀬能君、ちょっと変よこの
「見りゃ分かるよ」
「そうじゃなくて。この娘の腕輪、見たこともない色をしてるわ」
言われて確認して見ると、左の手首にケンプファー特有の腕輪が装着されていた。
左手ってところが大地と一緒でなんかやだな…まあそれは置いといて。
腕輪の色は…黒。
「黒っていうか灰色に近いな」
「こんな色今まで見たことないわ…あなた、いったい何者なの?」
雫の問い掛けに、じたばたともがいていた少女はぴたりと動きを止めて、
「わたしの名はシルバーフラワー。この世界を守るために遣わされた、愛と勇気と希望の戦士!…いたっ、いたたたたたたっ、いたいいたいいたい!お願いやめて!」
なんかイラっとしたのでさらに握る力を込めると途端に悲鳴を上げ始めるシルバーフラワー(笑)
不甲斐ない。愛と勇気と希望が泣くぞ。
「黒色の腕輪…瀬能君が対峙した二人のケンプファーと何か関係あるのかしら」
「どうかな。関係なさそうな気もするけど…こいつどうしようか?」
もう面倒だから倒していいかな?
「ふっ…ふふっ、わたしを倒しても、必ず立ち上がる者は出てくる。わたしたちは決して負けない!」
「それが遺言だな」
「キャー!やめて、助けてー!!」
頭を片手で掴んだまま持ち上げ、もう片方の手で腰を掴み、天地逆転の状態。ブレインバスターの体勢を作ると今日一番の悲鳴を上げるシルバーフラワー。
さっき以上に激しく暴れ出すが、プレステの振動機能程度に揺れるだけで、拘束から逃れる気配はない。
「ひと思いに楽にしてやるから大人しくくたばれ」
「やだー!死にたくない!おがぁーざーん"!!」
戦士が、命乞いをするものじゃあ無いよ。
「瀬能君、ちょっと待って」
「えー?なんでさ。まだなんか戯言訊きたいの?」
「誰か来るわ」
マジで?集中してて気づかなかったわ。
仕方なく持ち上げていた少女を降ろす。
少女は地面に降ろされると、そのまま力なく座り込みぐすぐすと顔を手で覆って泣き出す。
シルバーフラワー は こころが おれてしまったようだ!
「んー?そこにいるのは…」
今まで"モノ"クマが塞いでいた道の向こうから、一人の人間がとことこと歩いてきた。
どっかで見たことある顔だ…
「やっぱり、ナツルたんだー。あ、会長もいるー」
「副委員長…さん」
一瞬素の対応をしそうになった俺を責める人は多分いないはず。
「あなたは確か、
「はーい。白銀
そんな名前だったのかお前。
今まで訊く機会も興味もなかったからまったく知らんかった。
「それで…白銀さんはどうしてここに?」
「んー?なんかすごい音がしてたから見にきたの」
俺の問い掛けにあっけらかんと答える副委員長。
銃声がしたのに近づいちゃあかんよ。
「いったいなにが…ってあー、
「ゔぅ…お"ね"ーぢゃ"ーん"…」
涙と鼻水でぐしゅぐしゅな顔のまま、副委員長に顔を向けるシルバーフラワー。
………って、
「姉妹なんですか?」
「んー?うん、そうだよ。あたしの妹の白銀一花」
「その…言動が少し…」
「ああ、厨二病を患ってるからねー。もう高校生なのに」
知ってんのかよ!つか高校生なの!?
「いつやめるかお母さんたちと賭けてるんだ。ちなみにあたしは三年に上がるあたりで卒業するんじゃないかなーって予想してる」
家族公認!?しかも賭けの対象にしとる!
実の妹・娘をそんな風に使っていいのか?
■らせん階段、カブト虫、廃墟の街、イチジクのタルト、カブト虫、ドロローサへの道、カブト虫、特異点、ジョット、エンジェ
ジョジョ第6部。プッチさん変身の呪文(←違う)
全部言ってたら戦士の非日常的日常のナツルになったりして
■竜之炎伍式・円
烈火の炎。これからどんどん出てくるかと
■戦士が、命乞いをするものじゃあ無いよ。
ブリーチ。アランカル編での吉良ユヅルのセリフ。
あの人最近出てこないけど死んでしまったんだろうか?ワンピと違ってバンバン死ぬからなぁ…
・イシュタム
マヤ神話における自殺を司る女神。死者を楽園に導く役割を担っていた。
詳しくはウィキで(←おい)
・念心流・口竜(こうりゅう)
相手の口内に手刀を突き刺す技。
ばっちいという理由で、作中ではあまり使われることはないだろう。
45話目です。原作では水琴が出てきてオチをつけてくれましたが、あえて新キャラを出して出番を食われるという酷い結果に。…すまん水琴!君メインの話を書くから許して!(多分)
新キャラについて…新キャラっていうか『戦士』ですでにいるんですけどね。匂いフェチは別世界では厨二病だったというこれまた酷い話。
苗字は変えました。どうせ公式でないからいいかなって思って。作者は割とテキトーです。
世間ではハロウィンとか…ハロウィン話で番外を書きたかったけど『t!』の世界ではまだ夏あたりなので来年かな…それまでに季節進んでるといいけど(←オイ)
雫メインの話はあと一話続きます。