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『「危険な野郎」ダイ・ルウェリン記念病棟――重篤な噛み傷』
私はドアの横に書いてある文字を読んだ。
モリーさんの話では、アーサーの病棟はここらしい。
「私たちは外で待ってるわ」
トンクスが私の肩を掴んで言った。
「大勢でいっぺんにお見舞いしたら、アーサーにもよくないしね。最初は家族だけで」
私はその言葉の意味を察する。
家族との面会の後に騎士団メンバーだけで重要な話をするということだろう。
「ええ、そうしたほうがいいわ。ムーディもそれでいいでしょう?」
「あ? ああ、そうだな。そうすべきだ」
私の言葉にムーディも同意する。
モリーさんは一度周囲を見回し、自分の子供とハリーを連れて病室へと入っていった。
「ダンブルドアからある程度の事情は聞いている。昨日は一晩ご苦労だったな」
私たちが病室の前の廊下で待っている間、ムーディがぽつりと私に呟いた。
「苦労も何も、私が一番近くにいたというだけよ。自由に動かせる騎士団員って少ないし」
「咲夜は自由に動くからね。是非私にもその不思議な術の事を教えてほしいわ」
「あら、私が思うに貴方の七変化のほうが不思議な術だと思うんだけど?」
私は適当に軽口を言ってトンクスの話をはぐらかす。
「私的には普通なんだけどね」
「そう、じゃあ私もそういうことで」
その会話を聞いてムーディが肩を竦める。
しばらくすると病室の扉が開き、子供たちが出てきた。
「行くぞ」
ムーディが先頭になって、子供たちと入れ替わるように病室へと入っていく。
アーサーは一番奥の小さな高窓のそばにあるベッドに横になっていた。
その横ではモリーさんが心配そうな顔をして座っている。
「傷はどんなだ? アーサー」
ムーディが無遠慮に聞いた。
その言い方にモリーさんが少し顔を顰めたが、アーサーは力なく笑う。
「血が止まらないだけさ。蛇の毒に少々厄介な物が含まれていたみたいでね。それさえ良くなれば家に帰れるだろう」
「そう、その蛇だけど——」
トンクスが羊皮紙を取り出しながら口を開く。
「隈なく探したんだけど、蛇は何処にも見つからなかったらしいよ。アーサー、貴方を襲った後、蛇は消えちゃったみたい」
「消えた? どういうことかしら……」
「まあ、例のあの人も蛇が中に入れるとは期待してなかったはずだよね?」
トンクスが言葉を続ける。
神秘部の奥にはハリーとヴォルデモートに関する予言が仕舞われている。
ヴォルデモートはその予言が欲しいらしいのだ。
「わしの考えでは、蛇を偵察に送り込んだのだろう」
「偵察?」
私が聞き返すとムーディはしっかりと頷いた。
「何しろこれまでは全くの不首尾に終わっているだろうが? やつは立ち向かうべきものをよりはっきり見ておこうとしたのだろう。アーサーがそこにいなければ、蛇の奴はもっと時間を掛けて見回ったはずだ」
ムーディはそこで一度言葉を切った。
「それで、ポッターは一部始終を見たと言っておるのだな?」
「ええ。……ねえ、ダンブルドアはハリーがこんなことを見るのをまるで待ち構えていたような様子なの」
モリーさんが小さな声で答えた。
「うむ。確かにあの坊主は何かおかしい。それこそそこにいる小娘のようにな」
「言われているわよ。トンクス」
「え? 今の私?」
「どっちもだわい」
そのやり取りを聞いてアーサーは苦笑いを浮かべた。
ムーディがそんな空気を振り払うように首を振る。
「なんにしても、あの坊主は例のあの人の蛇の内側から事を見ておる。それが何を意味するか、ポッターは当然気づいておらぬ。しかし、もし例のあの人がポッターに取り憑いておるのなら今まで以上に注意が必要だ」
「取り憑いているって言うのは多分ないわ。四六時中ハリーを監視しているけど、へんな行動を取ることはないもの。どちらかというと……繋がっている。こっちの方が近いんじゃない?」
私がそう言うと、ムーディが小さく唸った。
「……確かに、覗かれていたんじゃない。今回は覗いていたんだ。例のあの人は開心術の使い手だ。あんな小僧に心を覗かせるほどやわじゃないだろう」
私は頭の中で考える。
少しおかしい。
ハリーはヴォルデモートではなく、使いの蛇の中に入ったという話だ。
なぜその蛇の中に入れた?
その蛇とは繋がりがない筈なのに。
そもそも繋がりとはなんだ?
クリスマスに紅魔館に帰った時にパチュリー様にでも相談してみよう。
「まあ慎重に事を運んだ方がいいのは確かね。私は一度館に戻るわ。普段通りに帰らないとお嬢様に心配されてしまうもの」
私の言葉にムーディとアーサーが頷く。
「お大事に、アーサー。また見舞いにくるわ」
私はそう言い残すと時間を止め、ホグワーツ特急が今いるであろう付近に姿現しする。
無論何処を走っているか分からないので、上空にだが。
私はそのまま線路に沿って飛び、白煙を吐き出しながら固まっているホグワーツ特急に乗り込んだ。
通路を歩き、空いているコンパートメントを探すが、まあ見つかるはずはないか。
私はホグワーツ特急の一番後ろのドアを開け、外に出た。
そして時間停止を解除する。
「おおっと」
途端に列車は動き出し私は柵に押し付けられる。
だが、一度流れに乗ってしまえばこちらのものだ。
私はそのまま列車の外の柵に腰かけ、リドルの日記を取り出した。
『今からそちらに帰るわ。到着は今日の夕方かしら』
『わかった』
素っ気ない返事がすぐ返ってきて、そして消えていく。
研究の真っ最中なのだろうか。
私はリドルの日記を鞄の中へと仕舞い、今度は普通の本を取り出し読み始めた。
「咲夜! おじさんは大丈夫なの!?」
9と4分の3番線で私の姿を見つけたのか、ハーマイオニーがこちらに走ってくる。
どうやら朝一番にマクゴナガル先生から事情を聞いたようだ。
「命に別状はないわ。ハリーたちはクリスマスをブラック邸で過ごすみたいね。貴方はスキーだったかしら」
「そう……スキーに関しては悩んでいるわ」
ハーマイオニーは目を伏せぽつりと言う。
「悩んでいるようには見えないわね。貴方の中では既に決まっているんでしょう?」
私は適当な言葉でハーマイオニーをたきつける。
ハーマイオニーは私の言葉を聞いて目を見開いた。
「ええ……ええ! そうね。迷ってなんかないわ!」
「そう。じゃあまたそのうち」
ハーマイオニーは何かを決意したように表情を固めるとパタパタと何処かへ入っていった。
私は周囲を見回し美鈴さんを探す。
いや、よく見たら探すまでもなかった。
私は急に目線が1メートル以上も上がる。
首を捩じり後ろを見ると美鈴さんが私の脇の下に手を入れ上に持ち上げていた。
「あの、美鈴さん」
「なに?」
美鈴さんはそのまま私を肩車する。
そしてがっしりと足を掴んだ。
「それじゃあ降りられないのですが」
「降ろす気ないしね。いやぁお帰り咲夜ちゃん。今年は連絡なかったから心配してたんだよ? あ、ちょっと足太くなった?」
私は平手でペシペシと美鈴さんの頭を叩く。
だが美鈴さんには効いていないようだった。
カラカラと笑いながら駅のホームを歩いていく。
私は仕方がなしに時間を停止させ、せめて誰からも見られないようにした。
「照れ隠し?」
「いや、紅魔館で一番のアホを隠しているだけです。美鈴さんはもっと紅魔館の一員としての自覚をですね」
「わはははははは! 聞こえんぞ聞こえんぞ!!」
私がぶつくさ文句を言い始めると美鈴さんは凄い速度で駅を走り抜け、ロンドン市街を真っすぐ紅魔館のある方へと走った。
「聞こえんぞの時点で聞こえているという矛盾はどうするんです?」
「いやあ咲夜ちゃんも成長したよね。もう15だっけ?」
「話を誤魔化さない!」
私はもう一度美鈴さんの頭を叩いた。
そして足でがっちりと美鈴さんの頭をロックすると、そのまま空を飛び始める。
「あ、それちょっと苦しい。苦しい」
首を吊る形になった美鈴さんはニヤニヤと笑いながら私のふくらはぎを叩いた。
なんというか、まったく苦しそうじゃないのは気のせいではないだろう。
「あ、でも咲夜ちゃんの太もも柔らかい」
私は咄嗟に足をほどき美鈴さんを落とした。
「おっと」
美鈴さんは少し落下したがそのまま空中で反転してこちらへと戻ってくる。
いつも思うことだが、美鈴さんの動きは無駄が少ない。
自分が受けた力を上手く利用しているような気がする。
「おっさんみたいなこと言わないでください」
私はたしなめるように美鈴さんを睨む。
「押し付けてきたのは咲夜ちゃんではあーりませんか。まあいいや。取り敢えず紅魔館へ戻ろう」
美鈴さんはカラカラと笑うと紅魔館の方向へと飛び始めた。
私もその後を追ってロンドンの上空を飛ぶ。
「館の方はどう? 何か変わったことはありませんでしたか?」
「んー、そだね。パチュリーとリドルは相変わらず忙しそう。クィレルは帰ってくる頻度が多くなったわ。任務であちこち飛び回ることが増えたみたい。おぜうさまは相変わらずかな? いつも通り事務仕事をしたり講演会をしに外に出たり妹様と話したり」
美鈴さんは軽く顎に手を当てる。
「何か始めるつもりなんだろうけど、そんな風には見えないのよねぇ、これが。でも近いうちに騎士団と死喰い人がぶつかるらしいわ」
そしてそんな重要な情報をさらりと言った。
「ふむ。ということは準備が必要ということね。また詳しい話をお嬢様から聞いてみます」
そう長い時間も経たずに私たちは紅魔館の門の前へと降り立った。
私は懐中時計を確認する。
時間からして、あと数時間でお嬢様は目覚めるだろう。
それまでに夕食の準備をしなければ。
私はそこで時間停止を解除すると美鈴さんと別れる。
そして紅魔館の中へと入り自室へと向かった。
「ん~……ただいま」
私は鞄を床に置きベッドに飛び込む。
やはり自分のベッドは良い。
なんというか、安心感が違うというのだろうか。
ホグワーツのベッドはどうしても借り物という感覚が拭えないのだ。
だがいつまでもそうしているわけにはいかない。
私はベッドから起き上がりいつものメイド服に着替えると厨房へと向かう。
そして夕食の準備を始めた。
「お嬢様、夕食の用意が出来ました」
私はいつもの時間にお嬢様の部屋のドアをノックする。
「入っていいわよ」
すぐに返事が戻ってくる。
「失礼いたします」
私はドアを開けて中に入った。
部屋の中はいつも通りで、夏ここを離れたときと全く変わっていない。
お嬢様は既に椅子に座っており、私の方を見ていた。
「おかえり、咲夜」
「ただいま戻りました。お嬢様」
私はにっこりと微笑むとお嬢様の前に食事を並べていく。
お嬢様は料理に手を付けながら私に話しかけた。
「そうだ。騎士団の様子はどう?」
「今現在は予言の防衛と魔法省への干渉、あとは重要人物の護衛でしょうか」
「ふうん。予言ね」
お嬢様はフォークをクルリと回す。
「トレローニーごときの予言を有り難がるなんて、ダンブルドアもヴォルデモートも地に落ちたものね。咲夜も知っているように、今騎士団が防衛している予言はトレローニーが16年前にしたものよ。しかも無意識で」
「いえ、知りませんでした」
「ん? 貴方は私の話を聞かなかったのかしら?」
「いえ、知ってました。今知りました」
私は急いで言葉を付け加えた。
「そう、じゃあ話を戻すわよ。要するにあの予言にはあまり力がないということよ」
「お嬢様は何故そこまで詳しく事情を?」
私が質問するとお嬢様は不思議そうに私の顔を見る。
「占い学の権威が神秘部の予言保管庫に入れないわけないでしょう?」
……え? そういうものなのだろうか。
「まあ、あそこは面白いところよ。愛だの死後の世界だの色々と研究しているわ。確か時間の研究もしていたはずよ」
時間の研究、私は一瞬その言葉に心惹かれた。
だがこれ以上自分の術に変な影響を与えないほうが良いだろうと思い直す。
「お詳しいのですね」
「まあね。神秘部の予言保管庫の棚の半分を埋めたのは私だし」
……流石に冗談だろう。
お嬢様はフォークでサラダを刺し、食べ始める。
「なんにしてもよ、魔法使いという人種がそこまで予言を重視するんだとしたら、多分再来年の夏にはすべて終わるわ。……サラダ美味しい」
「恐れ入ります。ですが何故終わると?」
「随分と質問が多くなったじゃない? 騎士団に入れた影響かしら」
私はハッと口を噤む。
お嬢様はその様子を見てケラケラと笑った。
「傀儡は要らないわ。……そうね。これは教えておいてもいいかしら」
お嬢様は一度フォークを置き私へと向き直る。
そしてニヤリと口元を歪めた。
「だってアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアに1997年6月に死ぬと予言を出したのは私だもの。その時のあいつの顔と来たら……あはははははは!」
ゲラゲラとお嬢様は笑い始める。
その姿は余りにも悍ましく、そして何よりも美しかった。
「というわけでダンブルドアは自分が生きている間に無理にでもヴォルデモートを殺したいというわけ。まあ、私の計画が上手くいけば嫌でも叶うことになるわけだけど。……咲夜? さーくーやー? 聞いてるの?」
「……はい、聞いております。そう言えばお嬢様、少しお耳に入れていただきたい情報が」
「何かしら」
私はいきなり伝えられた決戦の日の情報に一瞬思考停止してしまう。
だが咄嗟に我に返りお嬢様に神秘部でアーサーが襲われたということを話した。
お嬢様は夕食の続きを取りながらその話を聞いている。
「ふうん」
そして私が話し終えると同時に軽く相槌を打った。
「なるほどね。その情報はパチュリーにも伝えなさい。ヴォルデモートを殺すうえで重要な要素になり得るわ」
「やはりハリーとヴォルデモートとの間には確かな繋がりがあるということでしょうか?」
「そんな不確かなものじゃないわ。私の予想ではもっと大きく強いもの……そう、魂とかね」
お嬢様はフォークを置き、ナプキンで口を拭いた。
私はそれを見て皿を片付けていく。
そして一杯の紅茶をお嬢様へとお出しした。
「魂……殺すうえで重要な要素……分霊箱?」
「確証はないわ。でももしそうならハリー・ポッターもダンブルドアと一緒に死んでもらうことになるわね」
「いざとなったら私がこの手で殺しますわ」
お嬢様はそれを聞いて少し表情を緩めた。
「『一方が他方の手にかかって死なねばならぬ。』トレローニーの予言の一部よ。ようはヴォルデモートとハリー、どちらかがどちらかを殺さないといけないってことね。そのせいもあってダンブルドアは弱っているヴォルデモートを殺さなかったと考えられるわ。まあうかうかしている間にヴォルデモートは復活してしまったわけだけど」
お嬢様は一口紅茶を飲んだ。
「ダンブルドアがハリー・ポッターを特別視しているのはそのためよ。アレはアレがヴォルデモートと戦う運命にあると思い込んでいる。馬鹿よね。トレローニーなんかの予言を信用するなんて。ダンブルドアは占いや予言に関しての知識が低いと見えるわ。占いも予言もそうだけど、ああいう物は干渉を受けやすいの。少しでも周りを取り巻く状況が変わったり、もっと力の強い予見者が予言を上書きしてしまったりとかするとすぐに効力が無くなってしまう」
お嬢様は手元で懐中時計のゼンマイを巻くような動作をした。
「多分逆転時計の影響ね。あれは未来を確定的なものとしてそこに至る過程を変える。使用者が一度経験してしまった事を変更することはできないのよ。そういう事例から見て、予言が絶対の物であると思い込んでいる。おかしいわよね。でも重要なことなのよ。この場合」
お嬢様は紅茶を飲み干しソーサーに被せる。
そして指で弾きカップをコマのように回転させた。
「予言が本当であるという思い込みが強ければ強いほど予言と言うのは的中する。本人自身が予言と同じ行動を無意識に取ってしまうから。ようは墓穴を掘る感じ? 実際ヴォルデモートも予言を信じたばっかりに死にかけてるし」
カップは次第に回転力を失い、上手いこと表を向いてソーサーの上で静止する。
お嬢様はティーカップを持ち上げてその模様を観察した。
そして軽く頷く。
「図書館へ向かいなさい。貴方にとっていいことがあるわ」
私はお嬢様が飲み終わったティーカップを片付ける。
「では、失礼いたします」
そして部屋を出てお嬢様の指示通りに図書館へと向かった。
図書館に入った瞬間黒い影が私の方へと走ってくる。
リドルだ。
私は一瞬何事かと思ったが、リドルの顔を見て事情を察した。
リドルはそのまま私へと抱き着くと子供のようにピョンピョンとジャンプする。
そして私の肩を掴んで無理やり私を引き剥がすと満面の笑みで報告してきた。
「見つかった! 見つかったぞ! これで僕は生きたまま僕を殺すことができる。僕を殺しても僕は死なないんだ! これで僕は気兼ねなく僕を殺す計画に従事できるというもの、ああ、本当に僕が助かる方法が見つかってよかった」
「本当に!?」
私もリドルと一緒になってピョンピョンと飛び跳ねた。
そしてもう一度、今度は私からリドルにハグをした。
「でも貴方Aと貴方Bがごっちゃになってるわよ。少し冷静になりなさい」
私はリドルを引き剥がし一息つく。
リドルも冷静さを取り戻したのか、苦笑いを浮かべていた。
「それで、どうすることにしたの?」
私は冷静にリドルに聞いた。
「研究の末に僕の本体は本に記録されている記憶ではなく分霊箱としての魂のほうだということが分かったんだ。この場合分霊箱としての魂を日記から引き剥がすと僕は死ぬことになる」
私はリドルと話しながら図書館中央にあるテーブルへと歩いていく。
「それだとつまりヴォルデモートを殺すには貴方を殺さないといけないことになるわよね」
「ああ、そうだとも。それが分かってから僕は必死だった。僕自身できれば死にたくはないからね。そして今さっき、その方法を見つけたんだ」
リドルは椅子に座ると1冊の本を机の上に置いてページを捲った。
そしてあるページで手を止め、私に指し示す。
「『悪魔への転生とその工程 ~魂の変化のさせ方から悪魔としての心得まで~』 つまりは魂を全く別の物に変化させてしまえばいい。この魂そのものを人間の物ではない違うものに変化させてしまえばいいんだ」
「……悪魔に生まれ変わるということ?」
「本質的にはそうね」
少し離れた席で本を読んでいたパチュリー様が本の上から少し顔を出して答えた。
「本来なら闇に落ちるだけの深い業を背負っている必要があるのだけれど、まあそこはなんとでもなるわ」
そしてまたすぐ本の影へと姿を消した。
「……まあ先生の言った通りだ。僕はこれからその準備に取り掛かる。それが終わったら本格的に他の分霊箱の捜索を始めるよ」
私はその言葉を聞いて先ほどのお嬢様の言葉を思い出した。
「トム。それとパチュリー様も聞いてください。昨晩の事なのですが……」
私はお嬢様に言われた通りに昨晩あった神秘部前の廊下での襲撃事件の事を話す。
お嬢様と同じようにパチュリー様とリドルはハリーとその蛇の繋がりに関する部分に食いついた。
「……そもそも予言があるというだけでヴォルデモートがハリー・ポッターと繋がるはずがない。つまりもっと直接的な——」
「違うわ、リドル。逆よ」
パチュリー様がリドルの言葉を遮った。
逆とはどういうことだろうか。
「これはレミィから聞いた話なのだけど……まずトレローニーがした予言の内容ね。簡単にまとめるとヴォルデモートを打ち破る力を持った者がヴォルデモートに3度抗った者たちの間に7月に生まれる。ヴォルデモートはその者に自ら印を刻むだろう。だがその者はヴォルデモートも知らない力を持つ。そしてその者とヴォルデモート、どちらかがどちらかの手によって死ななければいけない。どちらかが生きている限り、もう1人は生きられない」
パチュリー様はそこで一度言葉を切る。
そして手を振るい私の鞄からリドルの日記を取り出した。
「さて、この予言を『こうなるもの』という曖昧なものではなく、もっと理屈付けて考えたらどうなるかしら。分霊箱、殺人、そして繋がり。リドル、貴方ならわかるでしょう? ホークラックス、分霊箱に関しては一通り勉強したわよね」
「分霊箱を作るには殺人を犯さないといけない。ということは——」
「ええ、ハリー・ポッターはヴォルデモートが意図せずに作った分霊箱の可能性があるわね。いや、その蛇との繋がりなどを考えたら、分霊箱だと断言してしまってもいいかもしれないわ。そしてその蛇も分霊箱でしょう」
パチュリー様はそう言い切った。
「これで分かっている分霊箱は3つ。日記に、ハリーに、蛇。リドル、率直に聞くわ。貴方がもし分霊箱を作るとしたらいくつ作る?」
「7だ。魔法界では7が一番強い数字だとされている」
「じゃあ分霊箱はヴォルデモート本体を除いて6つ。意図せず作ったハリーを含めて7つね。で、分霊箱にするとしたら?」
「由緒あるものにするだろう。その辺の鉄屑を分霊箱にするのが一番安全だとわかってはいるが、そのようなものに自分の魂を入れようとは思わない」
分霊箱を作った本人がいると何とも話が早い。
その後もパチュリー様とリドルは考察を繰り返し、ヴォルデモートの殺人歴を考慮に入れつつ分霊箱候補を絞っていった。
「まとめるわよ。確定的なのは日記とハリーと蛇。可能性が高いのはマールヴォロ・ゴーントの指輪とスリザリンのロケット、ハッフルパフのカップにレイブンクローの髪飾り、グリフィンドールの剣ね」
「一番可能性が低いのはグリフィンドールの剣でしょうか。あれの所在だけははっきりしていますし……」
「マールヴォロ・ゴーントの指輪は分霊箱の可能性が高い。マールヴォロ・ゴーントは僕の祖父だ」
「なら殆ど絞れたわね。可能性としてはグリフィンドールの剣が分霊箱である可能性は限りなく低いわ。ダンブルドアが所持している時点でね。もし分霊箱であった場合、とっくの昔に壊されているでしょうし」
なら、取り敢えず分霊箱7つの候補が出たことになる。
「まあ集めて調べてみればいいわ。取り敢えず地面にでも叩きつけなさい。壊れたらそれは分霊箱ではないし、傷すらつかなかったら分霊箱よ。……リドル、取り敢えず貴方を何とかしちゃいましょう。ダンブルドアより先に分霊箱を全て手に入れることなんて造作もないことだけど、念には念を入れた方がいいわ」
パチュリー様はそういうと黒板に凄い勢いで何かを書き記し始めた。
リドルはその光景を目を輝かせて見ている。
だが、私にはそこに書いてある内容はさっぱりだった。
「咲夜、レミィに伝えておきなさい。今年のクリスマスは中止にするわ。それと7歳の処女をいくつか持ってきなさい。ホムンクルスで代用してもいいんだけど、なんせ成長に時間が掛かるわ」
「どの程度必要でしょうか?」
「そうね。……3つよ。残りの魔法具やそういった物は全部こちらで用意するわ。貴方はソレだけお願いね」
「かしこまりました」
クリスマスは中止、その言葉を聞いて私は何とも言えない気分になる。
お嬢様は残念がるだろうが分霊箱の収集を優先するだろう。
私としてもクリスマスパーティーに向けて色々と準備をしなくともよいというのは気が楽なものだ。
「ほう、戻ったのか」
突然暖炉が激しく燃え上がり、中からクィレルが顔を出した。
何ともタイミングの良い男である。
私はクィレルに先ほどしていた分霊箱の話をした。
「ナギニ……そうか、ではあの時に」
クィレルは話を聞くとぽつりとそう呟いた。
「何か心当たりが?」
リドルが聞くとクィレルは無言で頷く。
「ヴォルデモートは去年の夏にバーサ・ジョーキンズを殺してナギニを分霊箱にしている」
その言葉を聞いてリドルが確信したように言った。
「よし、全て繋がった。分霊箱は日記、指輪、ロケット、カップ、髪飾り、ポッター、ナギニの順番で作られた。僕は本来ならばホグワーツの創始者全ての所縁の品で分霊箱を作りたかったがグリフィンドールの剣だけは守りが固くて中々手に入れられなかったに違いない。もたもたとしている間に予言の事を知りハリー・ポッターを殺しに行くが、あえなく失敗。その後力を失くした為に剣を手に入れることを諦めナギニで妥協したんだろう」
リドルは自分が助かる方法が見つかり、更にはそれにパチュリー様も全面協力してくれるということもあって物凄く上機嫌だった。
私だったら自分を殺すという話をここまで喜々として話すことはできないだろう。
取り敢えず先が見えたと、私たちは4人で頷き合う。
「私は魔法具を集めるわ」
「僕は術式を構成しよう」
「私は他の分霊箱の所在地を調べて参ります」
「適当にその辺にいる処女を3つ持ってきますね」
それぞれが行うことを確認し合い、私たちは別々の方向へと分かれる。
私は取りあえず街に向かうことにした。
クリスマス・イブの夜。
図書館にある本棚や机は全て隅に押しやられ、中央に大きなスペースができている。
その中心には半径2メートルほどの大きな魔法陣が描かれ、様々な模様や文字が刻まれていた。
そしてその中心の魔法陣を囲うように正三角形の配置に小さな魔法陣が描かれており、その上には怯えて動くこともままならない7歳の処女3つが置かれていた。
私は懐中時計を取り出し時間を確認する。
現在の時刻は1995年12月24日午後11時59分。
私は最終確認をするために一度周囲を見渡した。
魔法陣の中心にはリドル。
その前にはパチュリー様が立っている。
そして儀式に影響を与えないように少し離れた位置にお嬢様と美鈴さんとクィレルがいる。
「10秒前よ。ミリ秒単位でキッチリお願いね」
パチュリー様が私に合図を出した。
私は懐中時計を取り出し時間を確認する。
そして徐々に時間を遅くしていき、指定された時間ぴったりに止めた。
1995年12月25日0時00分00秒。
……取り敢えず第1段階は終了だ。
私はそのまま部屋にいる全員に触れ、時間停止を解除させる。
「これで時間の固定は無事完了。リドル」
「はい」
リドルはふらりと杖を上げる。
その動きに合わせて処女3つも浮かび上がった。
「鳴け。クルーシオ!」
「「「きゃあああああぁぁぁぁぁあああああああああっつ!!!」」」
リドルの磔の呪文の効果で処女が合唱を始める。
その声は不協和音となり、図書館中に響き渡った。
「裂けろ」
次の瞬間処女の胴体から四肢と頭が離れ、6つの物体に分かれる。
頭、胴、右腕、左腕、右脚、左脚は正六角形の頂点となるような配置で小さな魔法陣の上に落ちた。
666、処女たちの体で魔法陣上にそれが刻まれた。
「自然界をつかさどる素数、魔法界で一番強いとされる数字は7。7つの素数は下から2、3、5、7、11、13、17。それら全てを2乗し足し合わせると666。それらが全て7歳の処女の体にて刻まれた」
パチュリー様が歌うように唱えていく。
もっと小難しい言葉を使う物かと思ったが、意味が同じなら別に何でもいいらしい。
「さあ考えなさい。獣の数字を解きなさい。その数字とは人間を指すものである。そして、その数字は666である」
次の瞬間分かれた肉体から血が溢れ出し、リドルの体を覆っていく。
その血液はまだ新しい為か、真紅の色を失っていない。
「ここに生まれし悪魔が1人。分かれた魂とは別の記録を刻む。その者の罪により魂を変化させるべし」
ビシャッとリドルの体が消え去り、浮いていた血液は魔法陣の上に落ち血だまりを作った。
一瞬失敗したかと思ったが、パチュリー様やお嬢様の表情を見る限りこれでいいらしい。
「堕ちた人間の行く末は、果たして天国か地獄か。否、現世に縛られ、形をなす」
魔法陣の上に落ちた血は形を成していく。
そして私よりも少し背の高い人型を形成した。
「ここに悪魔が生まれた」
パチュリー様がそう締めくくった瞬間、人型だった血が地面に落ちた。
いや、表面に纏っていた血だけが落ちただけで人型自体は魔法陣の上に立っている。
私は時間停止を解除し、その人型を観察する。
透き通るような白い肌、腰まで届く真紅の髪、紅い瞳。
そして悪魔である象徴かのように、背中と頭に蝙蝠のような羽が生えていた。
「気分はどうかしら」
パチュリー様は魔法陣の中心にいる者に話しかける。
お嬢様も不敵な笑みを浮かべてその様子を見ていたが、私は言葉が出なかった。
腕や足は男の物とは思えないほど細く、しなやかだ。
そして、何故か胸がある。
いや、違う。
リドルが女の子になっちゃった。
「そうですね。やはりちゃんとした肉体があるというのはいい。そして、非力でもないです」
リドルは確かめるように手を握ったり開いたりしている。
そして手を一振りし白いシャツに黒いジャケット、赤いネクタイ、そして膝下まであるスカートを魔法で身につけた。
「そして作りが違う為か杖無しで魔法を行使できる。これはいいですね。煩わしさがない」
「悪魔というのは全身に強い魔力を持っているからね。魔族とはそういうものよ」
パチュリー様もお嬢様も、それが普通の事だと言わんばかりにリドルに向かって歩いていく。
こういうものなのだろうか。
中々動き出すことができない私の表情を見て察したのか、パチュリー様が説明をしてくれた。
「女の子を生贄にして作ったんだから女になるに決まってるでしょう? リドル本人、男の肉体があればもう少し違う結果になったかもしれないけど、リドルは記憶だけの存在だし」
「そうですよ、咲夜。それに容姿が変わった方が動きやすいですし」
声は透き通るような儚さを持っているが、力強い。
そして喋り方も中性的になっていた。
取り敢えず儀式は成功したようだ。
パチュリー様が手を振るうと処女の死骸、搾りカスと魔法陣が消え去り、机と棚が元の位置に戻る。
そして何事もなかったかのようにリドルは椅子へと座り白紙の本に結果を書き込んだ。
「儀式は成功。健康状態、最悪。悪魔だから。っと」
そのジョークにお嬢様がケラケラと笑う。
私としては笑えるような心境じゃなかった。
「ふむ、興味深いな」
クィレルも数秒固まっていたようだが、すぐに平静を取り戻した。
「ヴォルデモートが復活した時、見るも無残な姿になったことを考えれば、大成功と言えるかもしれない」
もしかして大きなショックを受けているのは私だけなのだろうか。
だったら、もうそういうものとして割り切るしかない。
私は鞄からティーセットを取り出すと、人数分紅茶を用意し机に並べた。
「さて! 命名式よ!」
お嬢様は紅茶を一口飲むと机をバンと叩いた。
次の瞬間空中に黒板が浮かび上がる。
「いぇーい! 咲夜ちゃん以来じゃない?」
美鈴さんが楽しそうにそう叫んだ。
その様子にリドルは少し困惑したような表情を見せる。
「いや、私には既にトム・リドルという名前が……」
「名前は大事よ。折角元の存在と別れを告げたのだからね」
リドルの文句はお嬢様に一蹴されてしまった。
「はい!」
美鈴さんがハーマイオニーのように天高く手を上げ叫んだ。
「キングサタンバージョン18!」
「絶対嫌です」
「魔王」
「ダメです」
「マイファーザ! マイファーザ!」
「それはゲーテの魔王って、美鈴真面目に考える気無いですよね?」
リドルがぴしゃりと言うと、美鈴さんはつまらなさそうに机に突っ伏した。
「そうね、悪魔でリドルだからリトルデビルでどうかしら」
お嬢様がそう提案したが、リドルはまだ少し不安そうだった。
「露骨に私の元の名前が入っていないほうが良いのでは?」
私はその瞬間ピンとくる。
「じゃあ小悪魔ね」
「もう既に人の名前じゃないだろう?」
リドルはそう言うが、途端に気がついたように顔を上げた。
「貴方もう人間じゃないでしょうに」
リドルが気がついたことであろうことをパチュリー様が冷静に突っ込む。
「じゃあ決まりね。咲夜の命名にちなんで表記は漢字にしましょうか。丁度美鈴と同じ赤毛だし」
お嬢様がバンと黒板を叩くと漢字で大きく『小悪魔』と浮かび上がった。
リドル、いや小悪魔は取り敢えず納得したかのように頷く。
「さて、それじゃあ指示を出すからよく聞きなさい」
その様子を見てお嬢様は手早く黒板を消し、クィレルを指さした。
「クィレル、引き続き死喰い人としてヴォルデモートに接近し、情報を探りなさい」
次に私を指さす。
「咲夜、不死鳥の騎士団としてダンブルドアの信用を勝ち取りなさい」
最後に小悪魔を指さした。
「小悪魔、分霊箱を収集しなさい。日記は既に分霊箱としての機能を失っているから残るは6つよ。以上解散!」
「おぜうさま? 私は?」
何も指示が与えられなかった美鈴さんがお嬢様にぽつりと聞いた。
「いや、お前に仕事任せるわけないじゃん」
「ひでぇ」
まあ冗談半分だろう。
お嬢様が真に信頼しているのは美鈴さんのように感じるときがある。
美鈴さんにそういった仕事を任せないのはできるだけ自分の手元に置いておきたいからだと思う。
「さて……。以上解散。じゃあ私はこれで」
お嬢様はいち早く話を切り上げると図書館から出ていった。
私は皆が飲んだあとのティーカップを片付けながら周囲の様子を観察する。
美鈴さんは小悪魔を抱きかかえクルクルと回っていた。
「うひょー! 可愛いのが増えた!」
「ちょ、やめてください美鈴!」
小悪魔は必死に抵抗しているが、美鈴さんは小悪魔の攻撃を全て受け流している。
やがて諦めたのか小悪魔がぐったりと力を抜いた。
こうやって見ると小悪魔は羽の生えた美鈴さんのようにも見える。
「美鈴さん、小悪魔死んじゃいますって……あ、もう死んでるのか?」
「悪魔って生死の概念あるのかね? その辺どう思うよこあちゃん」
こあちゃん。
なんとも可愛らしい響きだ。
「こあちゃんはやめてください……。魂を変化させて作った命なので案外死ねるかもしれませんね。さあ、美鈴降ろしてください。これでも私はやることが山のよう——わっ! だから回さ——」
「あははははは!」
私はその様子に肩を竦める。
クィレルも私と同意見のようだった。
「なんというか、緊張感の欠片もないな。ここは」
「死喰い人の陣営はどんな雰囲気なの?」
「そうだな。基本失敗したら死ぬ世界だ」
クィレルはそう言うと、ローブから本を取り出し読み始める。
私はそういえばクィレルに伝える情報があるのだったと思い立ち、机を挟んで向かい側に腰かけた。
「そういえば、魔法省は貴方が死喰い人であるということを認識していないわ」
「……なるほど。魔法省としてはヴォルデモートの存在は死んだものとしたいわけだ。だから4年前私がヴォルデモートに寄生されていたら都合が悪いというわけだな」
「ええ。そしてこの情報は魔法省大臣の上級次官から仕入れたものだから、信憑性の高いものよ」
「確かアンブリッジと言ったか」
クィレルはわずかに微笑んだ。
「確かに使える情報だ。ありがとう。となると準備が必要だな」
クィレルは言うが早いか立ち上がり、暖炉の中へと姿を消した。
何かの準備を始めるようだが、何にしても面白いことになりそうである。
私はようやく美鈴さんから解放された小悪魔に近づいた。
「これでようやく自由に外に出れるというわけね」
声を掛けると小悪魔は呼吸を整え、私に向かい合う。
こうして改めて向き合っても、やはり別人だ。
「とはいっても、マグルの街を歩くときは多少の変装が必要ですけどね。……目くらましの呪文で大丈夫かな?」
私は小悪魔の顔や手に触れる。
そこには確かに体温を感じられた。
「……やっぱり感覚があるというのは良いものです」
小悪魔はしみじみと言う。
そして頭に生えた羽を隠すようにシルクハットをかぶった。
「うん、まあ羽ぐらいならあまり目立たないでしょう。ハロウィーンの季節なら案外このまま街を歩いても大丈夫かもしれません」
「あら、警察に捕まるわよ?」
「そんなに悪人面だと?」
「自覚があったのね」
「悪魔ですので」
あ、リドルだ。
やはり会話をしてみるとその本質は全く変化していないと気づかされる。
「さっきはさらりと流してしまったけど、これでリドルの日記は分霊箱としての力を失ったのよね。日記帳としての力はどうなの?」
私が小悪魔にそう質問すると、小悪魔は日記帳を手元に呼び寄せた。
「今は完全にただの白紙の本。この本に入っていた魂と記憶は形を変え私の体となったので、媒介だった本は元に戻ったというわけです」
私は日記帳を受け取り、万年筆で文字を書く。
その文字が消えることはなかった。
それを見て、ようやく私はリドルが悪魔になったのだという実感が沸いてくる。
小悪魔はその様子を見ておかしなものでも見たかのようにケタケタと笑った。
「この本、私が貰っていいかしら。記念というか……自由帳として」
「いいですよ。装飾に賢者の石が使われている何とも豪華な自由帳ですが」
小悪魔の了承を得てから私は自由帳を鞄へと仕舞い込んだ。
……宝物にしよう。
なんというか、友達からの貰い物は捨てられない。
「それでは、私はこの辺で。分霊箱の位置をさっさと特定しないといけないのでね」
小悪魔はそう言い残して本棚の陰へと消えていく。
なんだが、普段のクリスマスよりも疲れたような気がする。
私は案外自分を取り巻く環境が変化することに弱いのかもしれない。
時間を止め大きく伸びをすると、私は館の掃除に取り掛かった。
用語解説
高い高い
年取ってからやられると何故か怖いです。そして脇が痛いです。
予言
物語の重要な要素になっているので色々な解釈ができますよね。
ダンブルドアの死
お嬢様は学生時代のダンブルドアに死の予言を言い渡しています。ダンブルドアが死の秘宝を欲したのは……
咲夜にとっていいこと
リドルからのハグ。別に咲夜ちゃんは友達がいらないわけでも恋愛をしたくないわけでもないです。ただその対象が人間というのはあり得ないだけで。
分霊箱予想
多分ダンブルドアもヴォルデモートの殺人歴から分霊箱を推測したと思うんですよね。
7歳の処女3つ
夜寝ない子は連れていかれてしまいます。
小悪魔
リドルどうしようか悩んだ結果がこれです。
リドル→リトル→小悪魔
なんと安直な! まあでもこの作品には一度も小悪魔出てきてなかったので、こういうことにしといてください。
固まるクィレル
儀式が終わった瞬間の小悪魔は素っ裸。あとは分か(ry
キングサタンバージョン18
6+6+6=18
ゲーテの魔王
作者は結構好きです。
可愛かったら何でもいい美鈴
取り敢えず抱き上げて回します。
宝物
オークシャフト79
自由帳
懐中時計
追記
文章を修正しました。
2018/12/04 加筆修正