三脚の悪魔   作:アプール

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第5話

――テロス密林にて新種のモンスター発見。

 

この情報はたまたまテロス密林で特産キノコの採取のクエストをしていた女性の新人ハンターによって 素早くカルパンドラにあるギルド支部に伝えられた。

当初ギルドはこの突如な情報によって混乱状態に陥った。

無理も無い。元々新種のモンスターが発生するにはそれ相応の予兆が発生するのだ。しかし、今回の場合は予兆が一切無かった。

すぐさまギルド内で緊急会議が行われたが、現状では新種のモンスターの形状が分かったと言うこと意外何も情報が入って来ていない。さらには沼地の方にショウグンギザミが大量発生しており、沼地の方角にハンターたちが流失してしまったのでカルパンドラ防衛に対する戦力が不足していた。

 

――カルパンドラは何もかもが不足している。

 

ギルド員たちはこの事実に頭を悩ませ、一刻も早く本部に対して応援を要請しなけらばならないという結論に至った。

それと同時に新種のモンスターに対する調査団の編成も会議で決めた。

調査団と言っても、現状では大した調査をする事が出来ない。遠くから観察するくらいだ。

テロス密林は広大なため、本来ならば周囲を広く見渡せる気球がこの任務に最も適しているのだが、テロス密林は飛竜種が多く住んでおり、動きが鈍い気球ではたちまちの内に襲われてしまうのでカルパンドラには気球は配備されていなかった。

そのため、カルパンドラギルド支部は陸路での調査を決定。広大なテロス密林を考慮して調査団は5つ編成された。

調査団の人数は7人とされ、調査に必要な物や馬車や食料などの生活必需品をかき集め、更には護衛であるハンターの募集を募り、発見から3日後の早朝にようやく先発隊である第一次調査団が派遣された。

 

「それにしてもラッキーだったな。倍率の高かった護衛クエストを受けることが出来て」

 

土で出来た簡易な道を第3調査団の馬車数量が走り、最前列を走っている馬車の中で座っている4人のハンターの1人。武器はランスで全身をディアブロスSシリーズで身を固め、体つきはいかにもモリモリという擬音語が付きそうなスキンヘッドの屈強な男――カイザーが隣に座っている細身の短髪の男――カロンに話しかけた。

 

「ああ、ギルド直々の依頼なだけに報酬も中々高い。しかも3食付で内容はただの護衛だ。こりゃ儲けもんだね」

 

微笑みながら頷くカロン。カロンの装備は防具をリオレウスSシリーズで統一し、武器は双剣と攻撃重視のスタイルだ。

 

「楽観視するな、相手は新種だぞ? 甘く見ていると後で酷い目に遭う事になるぞ」

 

カロンの発言に戒めるようにそういう長髪の女性――セシール。

セシールの装備は防具をナルガSシリーズで統一し、武器は太刀を愛用している。装備道理セシールは一撃離脱戦法を得意としている。

 

「そんなこと言ってもよセシール? エリサの情報じゃ、相手は全高数十メートルもある超大型モンスターだそうじゃないか。密林じゃ俺たちは木々で隠れて見つからないさ。ベルもそう思うだろ?」

 

「ふえ?」

 

まさか呼ばれるとは思わなかったのか、セシールの隣に座っていたツインテールの少女――ベルが驚いた声を上げる。

ベルの装備は防具をギザミUシリーズで、武器はライトボウガンと後方支援形だ。

 

「あ、はい。確かに超大型モンスターではテロス密林の木々に阻まれて私たちを見つけることは困難ですが、お姉ちゃんの言うとおり油断はしてはいけないと思います」

 

「ぬっ……それもそうか」

 

「お前、ベルの言う事はホイホイ聞くな」

 

あっさりと自分の主張を捨てたカロンにカイザーが呆れた様子で話しかける。

 

「俺は紳士だからな。ベルのような美少女の言葉は出来るだけ受け入れるようにしているんだ」

 

フフッと笑うカロンに、カイザーは「変態が入ってないぞ」と笑いながら言う。

それに対しカロンは隣にいるセシールに冷たい目で見られながらも苦笑いで受け流した。

 

「ま、冗談はこの辺にしておいて、皆は例の新種のことをどう思ってる?」

 

苦笑いから一変、カロンは真剣な顔をして回りを見渡しながらそう言った。

 

「新種か……俺としては、厄介な奴だと感じる」

 

「……やっぱりそう思うか?」

 

「ああ、確かに密林では超大型モンスターの視界は悪くなるが、俺たちも動きが阻まれるデメリットがある。それに、新種であるが故に、攻撃パターンと弱点が全く分らん」

 

「ああ、特に動きが阻まれるのは辛いな。攻撃がし難くなる」

 

「自然が相手では仕方あるまい。それに、攻撃パターンと弱点は今後の調査で分ってくるだろうから少しは楽になるだろ。まあ、それでも厄介な事には変わりは無いが」

 

男二人が新種のモンスターについて話し合っているが、そこにセシールも入り込んできた。

 

「厄介なのはそれだけではない。新種は脚が非常に長いと言っていたな?」

 

「あ、ああ。確かにエリサがそう言っていたが……それがどうしたんだ? 確かに脚を攻撃する事は難しいが、不可能ではないだろ?」

 

「テロス密林には海岸がある。脚の長さを利用して海に入られたら非常に厄介な事になる」

 

セシールの言葉に3人がハッとした顔をした。

 

「……そうか。確かに、海に入られる可能性も考えられるな」

 

「海に入られれば接近職の俺たちは完全に役に立たなくなる。相手が出来るのはガンナーであるベルだけか……」

 

カロンは盲点だった、と言うような顔をし、カイザーは手を顎にあてながら眉をひそめる。それだけ厄介な事なのだ。

 

「まあ、私が言ったのはあくまで憶測だ。新種にそれだけの頭が無いことを祈ろう」

 

セシールの言葉に、3人は深く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の身体がトライポッドになってから一週間が過ぎた。

俺の寝床は相変わらず海中だ。少々肌寒い気もするが人間に見つからないようにするためには仕方が無い処置だ。

この一週間の間、俺は現状の確認などをしながら過ごしてきた。

最初に確認したのは、光線兵器が無事に稼動するかどうかだ。

結果から言えば、光線兵器は無事に稼動した。ただ、思ったよりも威力が強く木を何十本も薙ぎ倒してしまったのは誤算だった。

光線兵器には3種類もの用途があり、状況に応じて使い分けるといった感じだ。

 

まずは映画でお馴染みの生物だけを消滅させる光線。生物だけを消滅させるといっても、建物に当たればその建物は粉砕されるのは映画で確認済みだ。だが何故か地面に向けて放っても地面には傷一つ付かなかった。

この光線は性能からして主に惑星侵略に使われているのだろう。

 

次は主に対航空機用に使用する光線で、これは目標をロックすると目標にあたるまで自動追尾することが出来る。さらにその光線は光速と同等の速さを持っている上、コンピューターによって未来位置を予測しながら撃つので命中率は100%。これは例え飛行速度が一番速いであろうクシャルダオラさえまともに反応できないだろう。正直初弾で目標に命中するので自動追尾は活躍の余地は無いと思う。

最後は、有機物だろうが無機物だろうが大地だろうが見境無く破壊できる光線だ。この光線が当たれば瞬時に爆発する仕組みになっている。その威力は大地が深さ数十メートルにわたって抉り取られる程の破壊力だ。例えるのなら巨〇兵のプロ〇ンビームを弱体化したものだ。主な用途は殲滅戦に使用される事だ。

 

ついでにシールドも稼動してるか試したかったが、流石に光線兵器を自分に向かって撃つのは気が引けるので自重した。これについては実戦で確認する事になるだろう。

それと、俺がいる現在の居場所はテロス密林だということも判明した。分った理由はゲームと同じ光景の場所が何箇所も見つかったからだ。特に沖にある小島が決定的な証拠だ。

この辺にいるモンスターはゲームと変わらず海岸にはザザミとコンガ生息し、奥のほうにはケルビやランポス、そして歩く生肉のアプトノスが生息している。

見ての通り、雑魚モンスターが居るだけで現在は大型モンスターは生息していない。恐らくハンターが来ないのもこの為だろう。

そんな事を考えながら俺は朝食を吸うために陸地に上がろうと横にした身体を起こし、脚を動かそうとするが――変な音がするため動きを止めた。

 

(何だ? 海中で何かが動いているような気が……)

 

音のする方角に目を向けるが、身体を起こした際に舞い上がった土煙に視界を遮られよく見えない。

土煙をどかすため触手を振り回すが、土煙は中々晴れず、そうしている内に音はどんどんこちらに近づいてくる。

埒があかないため俺は脚を動かし土煙から脱出する。それと同時に音のする方角に目を向けると、『ソイツ』が現れた。

 

形状は魚に似ているが不釣合いな脚が生えており、胴体の横には翼のような鰭が生えている。

身体は白黒の鱗に覆われており、全長はかなりでかい。20メートルはあろうかという長さだ。

そして――俺は『ソイツ』を知っている。

 

(が、ガノトトスだとぉ!?)

 

 


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