三脚の悪魔   作:アプール

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第30話

 

 俺達が巨大都市を奇襲してから2時間が経過した。

 現在の巨大都市は海との調和がとれていたその美しい町並みは無残にも崩れ去り、今では紅一色に染まり果てている。

 街の建物の半分以上が倒壊し、そしてその倒壊した瓦礫部分から可燃性の物が出火。いたる所から火の手が上がっている。

 更には俺が光線兵器で建物を薙いだ際に飛び散った破片が人間達に当たり、道には血濡れになっている死体があちこちに散乱している。

 僅か2時間でこんな惨劇を俺達は作り出した。人間達からすると、これ以上の地獄は無いだろう。

 

 だが、その威力の反面人間達の被害は思ったほど多くは無い。

 確か街自体には大きな損害を与えているが、人間にはそれほど損害を与えていないのだ。

 何故それほど損害を与えていないのかというと、理由は人間の体格にある。

 人間の体格はトライポッドに比べ遥かに小さい。小さいという事は、それだけ光線を当て辛くなるのだ。

 そしてその小ささに加え、人間達はちょこまかと走り回る。その結果、光線を直接浴びて死んだ人間よりも飛んできた瓦礫が直撃して死んだ人間のほうが遥かに割合が高いのだ。

 

(やはり、この光線は対人攻撃には向いていないな)

 

 俺は市街地を光線兵器で攻撃しながらそう呟く。

 トライポッドは人類を殺戮する為に作り出された兵器であるが、もう1つ違う用途にも使えるよう、製造されている。

 そのもう1つの用途とは、人間を捕獲し、その生血を吸い取り火星人の食料や火星の植物の肥料にすることだ。

 つまりいくらトライポッドが人類殺戮兵器だといっても、人間を皆殺しにするのは拙いのである。皆殺しにすれば、食料調達が困難になるからだ。

 だからだろうか、ハリウッド版のトライポッドの放つ光線は火星人の科学技術力的に考えてその威力が抑えられているように感じられる。そしてその結果が今ここに出た。

 いくら建物を破壊しようと、やはりいくらかの人間は生き残る。それも広範囲に広がって。

 結局は、人間を掃討しようとするならば近づき、直接殺すしかないのであろう。それは地球でも同じだ。

 

(もっとも、それは”ハリウッド版”のトライポッドの話であるが)

 

 俺はニヤリと内心で薄く笑い、そして過去の事を思い出す。

 そう、この世界のトライポッドには三つの種類の光線兵器を保有しているのだ。三つといっても、その種類一つ一つに専用の光線兵器がある訳ではない。全て頬の部分から展開できる二丁の光線兵器から発射する事ができる。地球感覚から言えば銃や砲が違う状況に応じて種類の違う弾丸や砲弾を撃つ事が出来るのと同じだ。

 光線兵器の種類の1つは、先程から放っている人に当たれば一瞬で消滅する映画でもお馴染みの光線。2つ目は対空を目的とした光線。そして3つ目は―――

 

(殲滅を目的とした、光線……)

 

 そう、殲滅。老若男女を問わずただその惑星に住むあらゆる生き物を皆殺しにする事が目的で作られた兵器。

 その破壊力は凄まじいの一言に尽きる。

 一度光線が着弾すればその着弾地点が大爆発を起こし、周囲を根こそぎ抉り出し、吹き飛ばす。

 大地が揺れ、大黒煙柱が噴出し、そして土や破片が雨あられと降り注ぐ。

 そして大黒煙柱が晴れ去った時には、そこには深さ何十メートルの巨大なクレーターしか残らない。

 この威力の前には、人間のどんな努力も水泡に帰すであろう。

 俺達から逃げようと山に潜み、地面を掘り地下で暮らそうと無駄だ。この光線でバンカーバスターも真っ青なクレーターを作り出し、そしてそのエネルギーによって肉片すら残らず土の肥料にしてしまうからだ。

 俺達に戦おうとどんな秘策を練って実行しようと無駄だ。その秘策とやらをまとめて粉砕してしまうからだ。

 全てが無駄だと悟り、投降をしようとも無駄だ。人間は全て殺戮対象であり、食料だからだ。

 

(……そういや、まだ飯を食べていなかったな)

 

 ”食料”という単語で俺は今までの高揚感ですっかり忘れていた『食事』の事を思い出した。

 改めて振り返ってみると、俺はあの船を見つけてから現在に至るまで一度も生血を吸っていない。

 今までは謎の高揚感によって空腹感など何も感じなかったが、いざ思い出してみると空腹感がこれでもかと襲ってくる。

 

(数日間海中で歩き回っただけでなく、光線も放っているからなあ……)

 

 恐らく俺のエネルギーの残量は半分以下に減っているだろう。

 そして、それは俺に随伴しているトライポッドにも言える事だ。

 燃料となるエネルギーが底を尽いてしまえば、兵器である俺や他のトライポッドの未来など決まってしまうだろう。

 兵器は、動力を動かすための燃料が無ければ動かない。

 如何に科学技術が進んでいる火星人が作り出した兵器といえど、その点は地球と同じだ。

 考えてみれば、こうして人間達を蹂躙している暇など無かった。残っているエネルギーを使って早急に補給をせねばならない。

 

(ふむ、丁度いい所に”食料”があるな)

 

 そして、俺は目の前の巨大都市―――正確には、そこで蠢いている人間―――を見ながらそう呟く。

 一旦この巨大都市から離脱してアプトノスなどのモンスターを捕食し、再度ここに戻ってくるという案もあるが、この案は少々不安だ。

 なにせ俺を含めトライポッドは6体もいるのだ。その全てがエネルギーを満タンにさせるには少々時間がかかる。

 そして人間は賢い。逃げられないようにと全ての門を破壊したが、何か妙案を出して脱出をする可能性もゼロでは無い。

 それは出来るだけ多くの人間を殺戮しようという俺のプランからすれば避けるべき出来事だ。

 しかし、この場に留まってばかりでは何れエネルギーが尽きてしまう。

 ならどうすれば? 

 ――人間の生血を吸い取ってしまえば良い。

 

 我ながら合理的な判断だ。どうせ、この巨大都市にいる人間は全て皆殺しにするのだから。

 ならば少々人間を捕食しても問題ない、どう足掻こうが人間は死ぬ運命にあるのだ。それに、俺はモンスターだ。モンスターが人間を喰らって何が悪い。

 

 俺はそう自分で納得し、そしてトライポッド5体のうち3体に命令して巨大都市に上陸するよう命じる。

 俺を含め残りの3体は、このまま残り援護射撃をする予定だ

 この巨大都市を幾分か痛めつけたとは言え、やはりまだ相当数の人間が生き残っている。そして当然ハンターも生き残っているだろう。

 ハンターは危険だ。人間とは思えないほどの超人的な力を持ち、そして知恵が廻る。身体的に遥かに劣っているモンスター達に互角以上の立ち回りをしているのが何よりの証拠だ。

 故に、俺はハンター達との接近戦は極力避けたい。シールドがあるとはいえ、何をしでかすか分らないのがハンターだ。誤って捕獲してしまったら自爆をしでかすかもしれん。

 そのため、上陸するのは半数の3体までだ。例えその3体が敗れてしまったとしても、指揮官である俺が生き残っている限り再起はある。あの樹海の他にもトライポッドが埋まっている事は確認済みだからだ。

 所詮あのトライポッドは兵器であり、消耗品。ただ、生産できず埋まっているトライポッドしか補充できないのが困りものだが。

 そのため、俺を含め残りの3体は上陸をする3体を援護する為に引き続きこの位置で射撃を続行する。

 データリンクで上陸した3体と情報が共有できるため効果的な援護射撃ができるだろう。

 もっとも、援護射撃無しでもそう簡単にはやられないだろうが、万が一が起こるという事もあるからな。保険だ。

 

(よし、まずはあの倉庫群に立て篭もっている人間達を追っ払うか)

 

 巨大都市に近づく3体のトライポッドを横目に、俺は港の近くに立ち並んでいる倉庫を見つめる。

 そこには、人間の熱反応が複数確認できる。

 民間人ならば即座に逃げているだろうし、この熱反応はハンターと見て良い。大方身を隠して接近戦を仕掛けるつもりなんだろう。

 ただ、ハンター達に災いなのは俺に熱探知機なんて物が備わっているという事であり、それを知らないことだ。あちこちで火災が発生しているため見辛いが、50mの高さにいるとそれなりに見える。

 つまり、丸見えだ。しかも相手は動いている3体に集中してこちらにはさほど意識を向けていないだろう。

 今がチャンスだ。

 

 俺はそう考え、残りの2体にも命令してあの倉庫群を薙ぎ払うよう命令する。

 既に充電は完了しているため、照準を合わせて撃てば良い。簡単なお仕事だ。

 楽な仕事だ、と思いながら俺と2体のトライポッドは光線兵器の照準を倉庫群に合わせ、そして―――

  

 

 

 

 

 ―――再び、巨大都市の空が煌いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カロン達が気付いたのは、必然であった。

 第一回目の調査の時、カロン達はトライポッドに見つかったと感じた。

 密林に隠れていたのに、一体何故見つかったのか?

 それは未だに分らない。だが、トライポッドには視覚に頼らず相手を察知できる能力を持っているのではないか?

 カロン達は己の経験談を踏まえてそう判断し、こちらに向かってくるトライポッドだけではなく沖合いに留まっているトライポッドにも注意していた。

 そして、その判断は正しかったと直ぐに悟る事となった。

 

「―――全員倉庫から離れろっ!!」

 

 カイザーの叫び声と同時に、全員が地を蹴り勢い良く倉庫の出入り口に向かい、そして転げ回るかのように外へと出た。

 それと同時に、光線が倉庫へ着弾した。

 

 轟っ,という轟音と共に倉庫の屋根部分が弾け飛ぶ。破片や瓦礫が凶器と化し、倉庫内へ飛び散り回った。

 もしあのままあそこに居れば、着弾の衝撃で尻餅を付いたところに凶器と化した瓦礫が襲い掛かってきたであろう。

 

「あ、危なかった……」

 

 着弾の衝撃によって吹き飛ばされ再び床にキスをしたカロンは立ち上がると同時に呟いた。

 そしてこの惨状を引き起こした張本人を睨み、ギョっとする。

 

「また来るぞ! 避けろ!?」

 

 無意識の内に叫び、そしてカロンは右に飛び退く。

 そして飛び退いた5秒後にカロンの居た場所に光線が着弾した。

 無事に攻撃を躱せたとカロンは薄く笑いながら着弾地点を見て、またまたギョっとした。

 

「いいっ!?」

 

 カロンが驚きの声を上げる。

 地面に着弾した光線は消滅せず、薙いでカロンの方角に迫ってきていたのだ。

 カロンは慌てて身体を捻り、そして間一髪でその光線を回避する。

 

「クソッ!」

 

 悪態を付きながらカロンは身体を捻った状態から立ち直り、そして光線のある方角に目を向ける。

 そこには、既に光線は存在しなかった。

 

「カロン無事か!」

 

 周囲を見渡し、自分には光線が襲って来ない事を確認したカイザーが立ち直ったカロンに話しかける。

 それに対し、カロンは「ああっ!」と声だけで返事をして沖合いにいるトライポッドを見つめる。

 こちらからは攻撃する事が出来ない、一方的な攻撃。本来ならばすぐに逃げ出す事が最善の策であろう。

 だが、動けない。完全にマークされている。また例え逃げれたとしても、あの光線は建物などを砂のように粉砕してこちらに貫通してくる。役割分担をするほどの知能を持っているのならば、逃げ道を潰す事など、造作も無い事だろう。

 

 ―――何時だ、何時放ってくるっ!

 

 予備動作も無く放ってくる光線はタイミングが全く分からず、カロンは目を皿のようにしてトライポッドを睨み続ける。

 手にはいつの間にか汗がベットリと湿り、そして全身にも冷や汗が吹き出てくる。

 モンスターとの戦いに慣れているカロンは予備動作が無い光線に、すっかり翻弄されていた。

 

「っ!!」

 

 そしてトライポッド達の光線兵器の末端部分が光り輝いたと同時に、カロンは後ろへ飛び退き、そして左へと駆け出す。

 こうして不規則に移動をして、できるだけ狙いを逸らすのだ。

 

 だが、肝心の光線が一向に襲ってこない。

 空は確かに光り輝いている。光線が放たれたのは確実だ。

 ”まさか別の誰かに放たれたのか”そう思ったカロンは走りながら周りを見渡す。すると。

 

「―――ぁっ」

 

 小さな声が漏れた。

 カロンの目に映ったのは、カルパンドラに向かっていた3体のトライポッドが港に上陸した光景。

 そしてそのトライポッドを追撃しようと生き残っていた別のハンターが上陸したトライポッドに駆け寄ろうとしたその時、ハンターが光線を浴びて着ていた装備が粉々になりながらこの世から消え去っていく光景。

 そしてそのハンターとは、顔馴染みであった光景。 

 

「ジャックッ!!?」

 

 カロンがその顔馴染みのハンターの名前を上げ、絶叫する。

 目の前の光景が信じられなかった。

 あのハンター、『ジャック』とは数年前に知り合った友であった。

 共に狩りに出かける事もあり、そして私生活の中でも良くカイザーと一緒につるんで遊んでいた。

 その友が、目の前で死んだ。遺骨すら残さず、呆気なく。

 

 そしてその光景を見てしまったカロンは、胸にポッカリと何かが開いてしまった喪失感を感じた。

 ”もう二度とアイツには会えない”そんな言葉が頭の中から出てくる。

 だが、そんな喪失感は数秒後に湧き上がってきた赤黒い怒りによって塗りつぶされていった。

 

 

「―――アアアアアァァッ!!!!」

 

 

 突如に、カロンが怒りの雄叫びを上げる。

 その目は血走っており、怒りと憎しみの二色に染まり上がっていた。

 そしてジャックの敵討たんとばかりに、地を蹴り全速力で上陸したトライポッドの元へと駆けて行く。

 そんなカロンの状態に、カイザー達は慌ててその後を追う。

 

「あの馬鹿っ! 全然分かってないじゃねえか!」

 

 仲間を殺された反動か、感情によって身体を突き動かしているカロンの姿にカイザーが何度目かの愚痴を叫んだ。

 ――前の誓いは何だったんだ。帰還したらまた殴ってやる。

 カイザーはカロンを追いながら、そう心の中で決めた。

 

「拙いぞ! 沖合いのトライポッドがまたブレスを放ってくる!」

 

 セシールの叫びに、カイザーはハッとして沖合いを見る。

 そこには、光線兵器の先端部分を煌かせながら照準を付けているトライポッドの姿が。

 そしてその照準が、カロンに定められている事がおぼろげながらも確認できる。

 その事実に、カイザーは血の気が引いた。

 

「カローンッ!! 避けろおおおおぉぉっ!!」

 

 頭に血が上り完全に我を忘れているカロンに向かってカイザーが叫ぶ。

 だが、その声は他のトライポッドが放っている光線による破壊音や、上陸したトライポッドによる駆動音によって遮られ、届かない。

 セシールとベルも続けて注意を促そうと叫ぶが、やはり届かない。

 カロンは上陸したトライポッドに向かって疾走し、その目は沖合いのトライポッドなど眼中に無い。

 そしてトライポッド達はそんな事など知った事ではないとばかりに上陸したトライポッドに近づくハンターを排除しようと光線兵器の照準を合わせ、そして光線を発射した。

 

「―――っ」

 

 3人が、息を飲む。

 発射された光線は一瞬にしてカロンの下に着弾した。

 そう、カロンの”下”に。

 光線は、カロンに当たってはいなかった。

 火事場の馬鹿力か、それとも過去の経験からか。カロンは光線が着弾するほんの僅かの時間で己の危機を察知し、着弾地点から避けたのだ。

 

 ”カロンが間一髪で避けた”これだけなら、カイザーら3人は安堵をしただけであろう。

 しかし、見てしまった。光線を放ったトライポッドに向かって向けた顔を。

 涙を流しながら、激しい怒りに満ちているその顔を。

 

 

「邪魔を―――するなあああぁぁぁアアァッ!!!!」

 

 

 沖合いのトライポッドに向かって、カロンは激しい怒号で咆える。

 そして、再び駆け出し上陸しているトライポッドに向かって突貫する。

 作戦も何も無い、ただ我武者羅に狂ったように走る。走り続ける。

 沖合いのトライポッドはこのカロンの姿に脅威と見たのか、立て続けに光線を放つ。

 しかし、その何れも限界を超えたカロンの身体能力によって移動速度を緩めない最低限度の動きで避ける。

 

 ついに、上陸したトライポッドから100mの近さまでに接近した。

 ―――後は接近戦に持ち込み、アイツらの脚をこの双剣で切り刻んでやる。

 カロンは死んだジャックの顔を思い浮かべながら、友の敵をとれることを心から歓喜した。

 

「オオオォォォオオッッ!!!」

 

 雄叫びを上げながら腕を横に大きく広げ、接近戦に備える。

 上陸したトライポッドはカロンの事に気付いていないのか、それとも脅威と見ていないのか。どちらにせよ、無反応であった。

 だが、それがなによりもカロンにとって好都合。その慢心が後悔へと変わるのだ。

 

「お前の呻きを聞かせてみろおおおぉッ!!!」

 

 残り50m。ラストスパートとばかりにカロンは更に走る速度を上げる。

 その速度は、ランポスに匹敵すると言われても信じてしまうほどの速度だ。

 

(あと、少し……っ!)

 

 残り30m。あと数秒もすれば手の届く距離まで近づくだろう。

 カロンは腕を振り上げ、己の得物である双剣を叩き切る体制を整える。

 そして、走りぬき―――

 

「―――アガァッ!?」

 

 ゴン、という鈍い音と共に衝撃が加わり、カロンは吹き飛ばされ後ろに倒れこんだ。

 

(……え?)

 

 カロンは呆然とし、間の抜けた声を上げた。

 何故自分は倒れているのか? あの衝撃はなんだ?

 カロンは思考し、そして目の前の光景を見る。

 

 そこには、緑色の”何か”が存在していた。

 カロンの脳内では、その”何か”を表現できるような名詞が浮かび上がってこない。

 あえて表現をするならば、緑色をした板のような物が前を塞ぎ、トライポッドへの道を封鎖している。

 こんな奇怪な物体、生涯一度も見た事が無い。これは一体なんだ――?

 

 火星人が生み出した科学技術の結晶とはいざ知らず、カロンは攻撃が無理矢理中断させられた事に混乱した。

 そしてその混乱が、命取りとなった。

 

 空が輝く。

 カロンはその輝きに半ば反射的に振り向いた。

 沖合いのトライポッドから放たれた一筋の光線が迫ってきていた。

 着弾まで、あと数秒。

 カロンは未だに地面に倒れこんでおり、また勢い良く倒れこんだ衝撃で軽い昏倒症状が出ており、足に力が入らない。機敏な移動が不可能となった。

 そして全てを理解した時、カロンは薄く笑った。

 

(なんだ……結局俺は子供のままか)

 

 カイザーの言う通りだ。カロンはそう考えながら、それでも足掻こうと足に力を入れる。

 プルプルと足が震え、崩れ落ちそうになる。それでも、カロンは全身全霊で力を足に集中し、立ち上がる。

 が、そこまでであった。

 既に光線は目の鼻の先。例え機敏な動きができたとしても、避ける事は困難であろう。

 無駄と分かっていても立ち上がったのは、カロンの精一杯の抵抗だ。

 

(すまねえ、カイザー、セシール、ベル。俺は大馬鹿者だ)

 

 カロンは顔を3人の方角に向け、そしてニッコリと笑いかけ――

 

 

 ―――光線を浴び、この世から消え去った。

 

 

 




進撃のトライポッドのテスト版を書いてしまった……
文字数約2000文字と少ないですが、活動報告に一応上げておきます

追記 進撃のトライポッドの事は活動報告の所で話してください。感想の一割以上が進撃のトライポッドの事ってどういう事なの……?
 皆! 今の作品を見てくだされ!

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