ヘリオボーグの丘に到着した一行。
ジュードたちは
しつこく筐体を開け閉めするが、メール受信箱は相変わらず0件。ユティたちが未知との遭遇を果たすのが先か、
「! ねえ、あれ!」
レイアが上空を指さした。
その先で、2個の青いオーブが陣を形成し、中にヒトガタを作り上げる。灰色の長髪と獣耳。浅黒い肌があらわになった。
「髪の長い精霊!?」
こちらを冴え冴えと見下ろす目の虹彩は純金。瞳孔は細く、ネコ科の獣を思わせる。服装こそ白と黒のコントラスト。だがよく観察すれば、四肢にあるべき手や足が存在しない。
「ユティ、こいつ、あれだよな」
「うん。アレ。間違いない」
「二人とも、あの精霊が何か知ってるの?」
「知ってる。――時空の精霊クロノス。クルスニクに骸殻を与えた、『カナンの地』の、番人」
「時空の精霊!?」
「クロノス!?」
今までにないプレッシャーだった。大精霊ならアスカを見たが、あれはケージ越し。実際に相対した大精霊の威圧感は半端ではない。ここにいる面々は――あの人たちは、こんなモノと渡り合ってきたのか。
すると、エルが一人、丘の突端まで走っていって叫んだ。単独行動を咎める暇もない。
「『カナンの地』がどこにあるか知ってるの!?」
クロノスは答えない。代わりにエルの足元に精霊術の方陣が浮かび上がる――無慈悲な黒球がエルを襲う。
丘の突端が爆発した。
砂煙が晴れるのを待つ。
エルは無事だった。ルドガーが骸殻に変身し、クロノスの攻撃を双剣で防いだのだ。
しかし、ルドガーはその場に膝を突く。骸殻が強制解除される。
「「ルドガー!!」」
ユティは急いで駆けつける。エルがルドガーに寄り添う。ユティも反対からルドガーを支えた。
(ただの骸殻だとここまでダメージを受けてしまうの? 『鍵』持ちの能力者となしの能力者じゃ差があるとは聞いたけど、ここまでなんて聞いてない)
「クルスニクの一族。飽きもせず『鍵』を求めて分史世界を探り回っているのか」
睥睨。まさにその表現がぴしゃりと嵌る目で、クロノスはこちらを見下ろしてくる。
(かくなる上はワタシが骸殻をまとうべきか。ワタシの力をもってすればクロノスの権能を無効化して、純粋な実力勝負に持ち込める。でもそれは『鍵』が二人いるイレギュラーな事態を作り出す)
「貴様らも時空のはざまに飛ばしてやろう。人間に与する、あの女マクスウェルと同じようにな」
「マクスウェル!?」
「ジュード、落ち着いて!」
ジュードから今まで感じたことのない闘気を感じる。ジュードはすでにグローブを両手に嵌めて臨戦態勢だ。
(……やるしかない。彼らだけじゃ勝算は限りなくゼロ。時間稼ぎに徹しさえすれば、逃亡の算段は立つ)
ユティもショートスピアを取り出し、構える。
どちらにせよ一度は大精霊との実戦経験が要る。さもなくばこの先、ルドガーが生き残るなどできやしない。特に人間に容赦がないクロノスが相手では。
クロノスがユティたちと同じ足場に降り立つ。ユティはエルとルルに岩陰に隠れろと告げた。エルは反駁せずすぐにルルと走っていった。
ジュードは拳を、レイアは棍を、アルヴィンは銃と大剣を、ルドガーは双剣を、それぞれに構えた。
人間5人vs大精霊1体の死闘の火蓋が、切って落とされた。
ここはほとんど原作の流れ通りだったのでちとつまらなかったです。
オリ主ちゃんは骸殻を使うのをとてもためらっていますね。何故かってーとイレギュラーの自分がさらに二人目の「鍵」として活躍して事態をもっとイレギュラーにするのが怖いから。あらかじめ与えられた情報からずれるとシナリオをコントロールしにくいから。
改変狙いのオリ主の辛いとこですね。変えなければいけないのだけど変えすぎるとどこかが大きく食い違ってしまう。
次回はついに分史ニ・アケリア、分史ミラさん編に突入します。兄弟の関係に何かしら変化を与えたいです。ユリウスとアルヴィンの元幼なじみ組もvv