If なんば~ず ~ Sweet Home ~   作:vangence

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ブザービーター

 長いホイッスルが鳴り響く。

第3(クォーター)終了、俺達の戦績は……ギリギリのシーソーゲームだった。

しかも、こちらは押され気味という結果である。

 

 29-31

 

「―――― ハァッ、ハァッ」

「あ゙ーきっちぃいいい!! うっぷ」

「お前……ここで吐くなよ?」

 

 みんなも体力が無限にある訳じゃない。

男女の元来持っている差も、彼女達には通用しない。

さて、どうしたもんかな……

 

「どうする? そろそろ仕掛けなければ……」

「まだ……早いな。あれ(・・)を使うには時間がありすぎる。俺達が持たないぞ」

「だが守ってばかりでも体力は削れる……難しいな」

 

 俺と阿部が頭を悩ませていると、俺達のチームの体力馬鹿が相変わらず五月蠅かった。

 

「スカリエッティ姉妹もアタッカーも化け物だよなあ、動きが並みじゃねえ」

「お前は相変わらずクソ元気だな。みんな限界だってのに」

「自分で言うのもなんだが、俺の取り柄は体力だけだからな!」

「お前らしいよ……まったく」

 

 一瞬、この馬鹿が格好良く見えてしまった。不覚。

しかし個人が奮起したところで全体の士気が上がる訳でもなく、嫌な雰囲気が場を包み込む。

 

「さて……これからどうしたもんって痛あぁ!」

「ンガアッ!」

「ブフォ!」

「ウッ!」

「あふん!」

 

 突然みんなの頭がピコンという音とともに驚きの声を上げる。

このパターンは……。

振り向くとそこには担任ことヴィータ先生の姿があった。

相棒片手に大層ご立腹な様子だった。

 

「なにうだうだやってんだよ。お前等!」

「ヴィータ先生……これは難しい戦術で」

 

 説明をしようとするが、次の先生の言葉によって言葉を続けられなかった。

 

「そんなこと知るか! あんた等はアタシの生徒だろ? なら……最初から全力でやれ!」

「……先生」

「お前達負けられないんじゃなかったのか? 負かした相手のために戦うんじゃなかったのか!」

「っ!」

 

 やべっ一瞬クラッと来た。

そうだった、決めてたじゃないか。

男子全員のために戦うって。

勝負の熱にやられてしまっていたのだろうか、そんなことすら忘れてしまっていた。

ヴィータ先生の一言一言が身に染みてくる。

 

 やるべき時には頼りになる……やっぱウチの担任(小学生)は最高だぜ!

 

 すると、後ろから声をかけられる。振り向くと、そこいるのは意外な2人だった。

 

「ヴィータ先生の言うとおりだぜ、おめぇら男だって言うんだったら出し惜しみすんじゃねえ」

「男子たるもの、誇り高く強く在るべき……今ではもう流行らんかな」

 

 声の主はなんと、俺達二年生の学年主任、ゲンヤ・ナガシマ先生とレジアス・ゲイズ教頭だった。

この二人が並んでると……濃いなぁ。

 

「が、学年主任に教頭まで……」

「なんだかんだ言っても、これは学園内の男子対女子みたいなもんだからな。俺達としても、おめぇらに勝って欲しいのさ」

 

 ゲンヤ先生っていつも厳しいからこういう風に励まされるとなんか照れるな……。

続いてレジアス教頭から激励を受ける。

 

「あまり無理はするな。だが悔いの残ることの無いように、全力で戦いいなさい。私からはそれだけだ」

「…………お三方、ありがとうございます。おかげでこの後の作戦が決まりました」

 

 そう言うと、阿部が俺に視線を送ってくる。

俺に許可を求めてきてるんだろう。

だけど、答えなんてもう決まってるようなもんだろう?

 

「分かった。この後はあれを使っていこう」

「教師が一方に肩入れするのは気が引けるが……勝ちなさい」

「勿論ですよ。男なのにそうやすやすとは負けられません」

「いらねぇ心配だったか」

「おい待てよ、2-Dのことも忘れれんな」

「勿論、2-Dの勝利のためにもやってやりますよ。先生」

 

 試合開始前のブザーが鳴り響く。

みんなも先生達の激励で気も引き締まったようだ。

コートに向かって歩き出す。

 

「よし、いくぞテメェ等。勝ちにいくぞ」

「「「「応ッ!」」」」

 

 三人の教師に見送られながら、コートに向かった。

 

 

 

 

 ホイッスルが鳴り響き第4Qの開始を告げる。

阿部からボールをチェストパスで受け取り敵陣に突っ込む。

だが、スバルに素早く反応され、あっという間に止められてしまう。

 

「行かせないよ。悠」

「相変わらず反応ばっか良いなお前は」

 

 横目で井上がフリーであることをを確認してスバルと相対する。

脇を抜こうとするがなかなか進ませてくれない。

 すると、突然後ろからボールをはじかれる。

 

「私達のこと忘れてない?」

「―――― !?」

 

 ランスター先輩がはじいたボールをスバルがキャッチ、体勢を立て直す前に俺を抜き去ってゆく。

 

「へへっ悪いねっ―――― ってうわっ!?」

「俺達のことも忘れては困る」

「カズ、ナイスだ!」

 

 阿部…カズがスバルの正面に飛び出し、スバルの進撃を止める。

……さて、そろそろ始めるとすっかな!

 

「いくぞテメェ等ッッ!!」

「「「「応ッッ!」」」」

 

 俺の一声に応じて全員が事前の打ち合わせ道理に行動を始める。

突然の行動に相手も少し動きが止まる。

 

「え、な、何なの!?」

「なんか怖いんスけど!」

 

 試合中に突然相手が叫びだしたら確かに俺でもビビるだろうな。

でも、それが目的じゃないんだけどな。

予定通り、俺は近くにいたランスター先輩の前を陣取る。

 

「良いのかな? 私なんかの相手をしていて。助けに行かないの?」

「行く必要なんかないから、貴女の相手をしているんです」

 

 俺の言葉にランスター先輩が苦笑いする。

少し皮肉込めすぎたかな?

 

「私も甘く見られわね。でも、彼一人でスバルを止められるのかしら?」

「止められますよ……俺達なら」

 

 俺達のやり取りの後ろから、スバルの苦しそうな声が聞こえてきた。

その声は困惑を含んでいた。

 

「くぅう……」

「どうしたのスバル! 早くボール回しなさい!」

 

 いや違うよ先輩。

スバルは回さないんじゃない。

回したくても回せないんだよ。

 

「そこっ!」

「っあ」

 

 カズがスバルからボールを掬い取るようにスティールし、ドリブルでゴールに向かって突き進む。

誰もカズの進行を阻むこと無く、カズのジャンプシュートがネットを揺らす。

 

 32-31

 

「このままやらせるかよ!」

 

 ノーヴェがボールを確保しフロントコートに向かう。

しかし、井ノ上に阻まれ足を止める。

 

「邪魔すんな!」

「こっちも負けられないんでな」

 

 ランスター先輩が井ノ上達の様子を見た後、周囲の様子を見たし数瞬考え込んだかと思うとハッとしたように表情を変える。

 

「なるほど……そうきたのね」

「あれ、もうバレちゃいましたか?」

 

 次の言葉は俺たちの考えた作戦名を的確に言い当てる。

俺は何となくだがそう思った。彼女は優秀な女性だ。

 

 苦しそうな笑顔でランスター先輩が予想した作戦名を答える。

 

「ゾーンプレスディフェンスって、ずいぶん大きい賭けね」

 

 説明しよう!ゾーンプレスディフェンス・ディフェンスとは!

各ブロックに分け、相手にプレッシャーを与えて相手の行動の自由を制限するディフェンスフォーメーションの一つだ。

これを行うことで、相手のボールホルダーを即時包囲しパスコースを制限しパスカットなどを誘発することができる戦術だ。

うまくいけば短時間で多くの点をもぎ取ることができる。

 

 だが、この戦術には大きな穴がある。

一つ、このディフェンスを破られた場合の速攻に対処することが難しいこと。

 

二つ、コンビネーションが良くなければ直ぐに破られてしまうこと。

 

三つ、広範囲を守ることになるため、恐ろしく体力を消費すること。

 

 以上の様にハイリスク・ハイリターンの戦術なのだ。

普通はこんなリスキーな戦術をとるチームはザラだ。

 

「負けの大きい賭けだってことは分かってるさ」

「わざわざ頑張って、無様に負ける姿をみんなに晒そうって言うの?」

 

 ランスター先輩が諭す様に話しかけてくる。

まあ、頭の良い先輩のことだ。

彼女だったらもっと別の方法も思い付くだろう。

 

「そうかも知れませんね、確かに無様かも知れませんね……でも」

「……でも?」

 

 

 無様な姿を晒しても良い。

 

 馬鹿にしたければ笑えばいい。

 

 でも、どれだけ周囲が俺達の勝負を馬鹿にしようとも、逃げるなんて男らしくないじゃないか。

 

 負けたって良い。それが本当に努力した結果だと言うんだったら。

 

 

「どれだけ取り繕っても、これが(俺達)なんです」

 

 俺は俺にしかなれない。

なら、俺は自分を貫き通す。

 

 それが俺達なんだ。

 

「そう、なら……こっちも全力でいかなきゃいけないわね……チンク!」

 

 先輩がチンク姉に声をかけると、チンク姉はやっとかと言わんばかりに、一言声を上げる。

 

「―――― タイムアウト!」

 

 そして、続く言葉に全俺が震え上がることになる----

始めから予想していた、俺たちを叩き潰すための奥の手。

 

「メンバーチェンジ! 私から……ディエチ・スカリエッティに!」

 

 この試合においての彼女達の切り札(ジョーカー)を場にコールする宣言であった。

 

 

 

 

 そこからは、点取り合戦が続いた。

 

 取って、取られて……そんなことが試合終了まで続いた。

 

 俺達は戦術が功を奏して、何とか点をもぎ取った。

 

 だけど、ディエチ姉の参加は俺達の心を折ってくるのには十分な働きをした。

 

 どれだけプレッシャーをかけようともぶれない体幹、シュート軌道。

 

 俺達も奮戦したが、限界でもあった。

 

 連戦に続く連戦に加え、体力を使う戦術の選択で俺達はもう立っていることもギリギリだった。

 

 それでも、俺達はコートを試合終了まで駆けずり回った。

 

 そしてホイッスルが鳴る寸前、なんとか点数を奪うことができた。

 

 取ったからと行って、勝てるという訳では無かった。

 

 しかし、最後のゴールを決めたという結果は十分な結果だったのかも知れない。

 

 

 49-61

 

 完全な敗北を喫した俺達を出迎えたのは、泣きながら俺達を囲むクラスメイトと、全校生からの拍手の嵐だった――――

 

 

 

 

「あっそこ……やめっ」

「おっと悪いな悠、痛かったか? だが少し我慢しろ。すぐ楽になる」

「うっ……はぁっ……トーレ姉にされたのくらい……イイっ」

「敏感なんだな……良いのか。俺は敏感だろうと手加減しない男だぞ?」

「いいぞ……俺は阿部のこと……信じてるからな」

「そうかい? 嬉しいこと言ってくれるじゃないか……それじゃとことん愉しませてやるからな?」

 

 

 

 

「やめええええぇぇぇぇぇぇえええいッッ!!!」

 

 井上の絶叫が人気の減った体育館中に響き渡る。

近くで叫ばれたので耳がキーンって鳴った。

 

「五月蠅いぞ井上。元気が残っているなら片付けを手伝いにでも行け」

「そーゆー問題じゃないでしょうがッ! ほれ見てみろ、俺達の周りをっ」

「はぁ? お前いったい何を言って……」

 

 井上の言うとおり周囲を見渡して見ると、息遣いを荒くした女子陣と、少数の男子によって包囲されていた。

なんか、みんな目が怖いよ?

明らかに普通じゃない禍々しい気配が俺たちの周囲を取り囲んでいた。

ほらそこの彼女なんか。何だってカメラをこっちに向けてるの?

 

「に、兄様ぁ……ハァハァ」

 

 ……なんか今、知り合いが凄い他人には見せられないぐらい蕩けた顔になってた気が……。

 

 試合の後、負けてしまった俺たちはヴィータ先生からのありがたいお言葉という名の愚痴を言われた。

ついでに言えばゲンヤ先生とレジアス教頭の二人からは優しい慰めの言葉をいただいた。

なんだかすごく惨めな気持ちになったのは言うまでもない。

 

「あ、阿部……もう良いから」

「そうか? なら終わりだな」

 

 それはともかく阿部からのマッサージ凄かったな。

試合の後急に体にキたからなぁ。そういうのが上手いらしい阿部に頼んだのだがこれがまた最高だった。

試しに肩を回してみると先ほどまで上がらなかった腕が嘘のように軽くなっていた。

また今度してもらおう。

 

 体のチェックをしていると人混みの中から人を探していると思しき声が聞こえてきた。

 

「お、いたいた。おーい、ゆーう!」

「ん? おう、ウェンディじゃん」

 

 声の主はウェンディだった。

後ろにはチンク姉やスバルなど、さっきの試合のメンバーが揃い踏みしている。

何となく彼女たちを眺めていると、あることに気付きとっさに目を背けてしまった。

 

「……」

「どうしたの顔真っ赤ッスよ?」

「いやっ……別に何でも……」

「怪しいッスね~正直に吐いた方が楽になれるッスよ?」

 

 ウェンディが顔を近づけてこっちの表情を伺いに来たので、つい後ろに仰け反ってしまう。

途端にウェンディが訝しげにこちらをジッと見る。

……視線痛い。

 いや、言えるわけないじゃん?

汗で体育着が体に張り付いてるなんて。

 

「何でも良いだろ。とにかくみんなお疲れさん」

「……お疲れ様ッス」

 

 一言かけると、一瞬の間を置いて返事をしてきた。

その表情は、なんだか嬉しそうな表情だった。

 

 するとランスター先輩が突然間に割り込んできた。

正面に割り込んできたので汗によって引っ付いた体育着が平均より少し大きめの胸をつい凝視してしまった。

凄いな、体の動きに追従できずに一テンポ遅れて動いていた。あれが生命の躍動ってヤツなのか?

ばれないように上手く視線を顔の方に向ける。

その顔には何か観察してくるような、正確には値踏みするような目を俺に向けていた。

綺麗な目でまっすぐ見られていたので少したじろいでしまう。

 

「どうしたんですか先輩?」

 

 ウェンディが尋ねると先輩は悪戯っぽい笑みを浮かべながら答える。

 

「気に入ったわ」

「……は? 先輩今なんて言いましたか?」 ウェンディが尋ねる。

「彼のこと、気に入ったって言ったの」

 

 ウェンディの質問に軽く答えるとランスター先輩は踵を返して出口に向かっていった。

残された俺たちは何が何だかさっぱりわからず互いに顔を見合わせることしかできなかった。

 

 

 

 

 帰り道、今回は球技大会という全学年共通の行事だったため、帰宅の面子は姉妹達が勢揃いというなかなか珍しいことになっていた。

 

「うあ~~つかれた~~」

「トロトロ歩いてないでさっさと歩きなさいよ」

 

 セイン姉がボーっとしながら歩くのをクア姉が叱咤する。

セイン姉の方はかなり疲れているらしく歩きながら眠ってしまいそうな様子だ。

聞く話によるとだいたいの試合を助っ人して回っていたらしくかなりはしゃいでようだ。

 

「あんまりトロイと置いてくわよ」

「おいてかないで~……でもつかれた」

 

 ついにセイン姉がその歩みを止めた。

こうなるとセイン姉は長い。

何が長いっていったら駄々をこねるのだ。子供みたいだな。

こういうことがあるから妹たちから姉扱いされないんじゃないのだろうか。クア姉も大分呆れている。

仕方がないのでセイン姉の説得という名のあやしを始める。

 

「悠、こうゆうのアンタの得意分野でしょ? 何とかしておいて」

「なんとかって……ほらセイン姉頑張って。家までもうすぐだからさ、ほら」

「……あるきたくない」

 

 手を繋いで引っ張っていこうと試みるがあえなく失敗。

すぐさま次の手を考える。この状態になったセイン姉は考え方も子供っぽくなるのでそれに合わせた対応をしなくてはいけない。

ディエチ姉とも同い年とは思えないお子様ぶりだ。

ついでに言うとディエチ姉はというとウェンディ達と話し込んでいてこっちの様子には気づいていないようだ。

 

「帰ったらセイン姉の好きなもの作ってあげるからさ。一緒に帰ろう?」

「…………やだ」

 

 ぷくっと頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。

どうしたもんだろう。いつもだったらこれで落ちるんだが……

でも先ほどの時よりいい感じだった。おそらく次のヤツで落ちるだろう。

次は何にしようなどと考えていると、思いついたようにセイン姉があるお願いをしてきた。

 

「――――おんぶ」

「……え、何だって?」

「おんぶして、おんぶがいい」

 

 おんぶ……おんぶっていったらあれか。背中に子供を背負ったりするあれか?

あまりの突拍子もないお願いに面食らってしまった。

この年にもなっておんぶはないだろう、おんぶは。

その他のことなら無理のない範疇でなんとかするんだが…

 

「おんぶがだめならだっこ」

「抱っこってあんた……」

 

 ぷんぷんと擬音がつきそうな感じで怒っている。

公衆の面前での抱っこってもはや犯罪のレベルじゃないだろうか?

というかそれだけ元気があるのだったら歩いて帰って欲しい。

だがこのままでは拗ねてしまって全く動かないだろう。

そう考えると答えは自ずともう片方の方に揺れ動いてしまう。

 

「わーったよ。おんぶすりゃいいんだろ?」

「やった」

 

 背負っていた荷物を体の前に回し屈んで背中を向ける。

すかさず背中にセイン姉が引っ付いてきた。俺は紳士なので背中に当たってくる胸など気にしない。

……嘘ですごめんなさい。本当はすっげえ気になります。

胸の感触に戸惑いつつ首に手を掛けてもらい落ちないようにし、足を抱えて立ち上がる。

前に井上のヤツを保健室に連れて行ったことがあったが、ヤツに比べればかなり軽かった。

 

「楽ちんだね」

「俺は全然楽じゃないけどな」

 

 耳元からセイン姉の声が聞こえる。なんだかさり気なく興奮した。

少しすると急に背中の重みが増した。

眠ってしまったらしい。規則的な息づかいが聞こえる。

 

「ねえ悠、ちょっといい?」

「何だよセッテ、セイン姉今寝たから五月蠅くないようにな」

 

 セッテができるだけ小さい声で話そうとするためか顔を近づけてきた。

心なしか怒っている気がするのは気のせいだろうか。

綺麗な瞳がなんだか怒りを感じさせる。

 

「さっき……見てたでしょ」

「は? なんだよ藪から棒に見てたって何を「汗で張り付いた体育着」……ナンノコトカナ?」

「白々しい……エッチ」

「ぐふっ」

 

 綺麗な瞳からおかしな光線でも出ているんじゃないだろうか。

何故だか視線が刺さるように痛いんだが。

セッテが呆れた顔をして続けてくる。

 

「ランスター先輩のも見てた」

「あれは、その、不可抗力だな。別に凝視してた訳じゃ「視線が揺れてた」……してました」

 

 凄く揺れてました。

 

「悠はおっきいのが好き?」

「別に好きとかそういうことじゃないんだ、ただ有るか無いかだったらあったほうがいいかなぁ……とは」

「そう……」

 

 いったい俺は何を言っているんだろうか。

幼なじみ相手に性癖を暴露するなんて正気とは思えない。そいつの顔が見てみたいもんだな。

……俺でした。

さり気なく自分のしたことに後悔しているとセッテに「悠」と呼ばれた。

 

「私……またカップ数が上がった」

「…………なに?」

 

 一瞬、今セッテが言ったことが理解できなかった。

セッテはただでさえ世間一般には大きい方と認知されていたはずだ。

井上だってこの間「セッテちゃんのはかなり大きい方だな、揉みしだきたい」といっていた。

その後、しっかりと顔面に拳を叩き込んだのだが、今はそっちは重要ではない。

ただでさえ大きいあれ(・・)が未だに成長を続けているというのか。

「私も負けてない」そう言ってセッテは前を歩くみんなの所に駆けていった。

残された俺は先ほどよりも強く背中のセイン姉の膨らみを感じている気がした。女の子って凄い。

 

 

 こうして俺たちの球技大会は幕を閉じたのだった

 

 

 

 

「……」ジー

「な、何ですか兄様?」

「いや、なんでもない」ジー

「……どうしたの悠?」

「いやディエチ姉、なんでもないよ」ジー

「「うざい」」ブシュッ

「ぐぁあああぁぁぁああ、め、目があぁあああ!!」

「人のことじろじろ見てんじゃねえよ」

「キモいからやめてよね~」

「……自業自得」

 




すみません。PCの故障で更新ができませんでした。
久しぶりに書こうと思って書いてみたら……あれ? バスケ成分が全部乳に……

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