ハリー・ポッターと生き残りのお嬢様 作:RussianTea
一糸纏わぬ姿で、セフォネはそこに立っていた。辺りは靄に包まれ、地面は白く、温かくも冷たくもない。
いつからここに立っているのか、どれ程の時間が立ったのかも分からない。どうやってここに来たのかも、思い出せない。ただ1つ、セフォネは明確な目的があってここに来た。
何処にいくのかも分からぬまま、セフォネは歩き出した。足が勝手に行き先へと向いていくように、まるで見えない何かに誘われているかのように、自然と歩みを進めていく。
どれくらい歩いただろうか。時間感覚が曖昧なこの場所では、それを体感で測ることは難しい。1分だったかもしれないし、1時間だったかもしれない。セフォネは何かを見つけ、唐突に立ち止まった。
『母……様?』
目の前に女性が立っていた。黒い髪をたなびかせた、スラリとした長身の女性で、セフォネと同じく一糸纏わぬ姿だ。女性はゆっくりと、微笑みを讃えながら振り向き、優しげな灰色の瞳で、セフォネを見つめた。そして、セフォネを抱きしめた。
『セフォネ……!』
『ママ……!』
「……うぅん…」
苦しそうな呻き声を漏らし、セフォネは目を覚ました。最初に目に入ったのは、見覚えのない真っ白な天井。上体を起こして周囲を見渡して確認すると、どうやら自分が寝ていたこの場所は医務室であるらしく、ベッドは白いカーテンで囲まれている。
「…そうでした。あの時………」
ムーディに対する憎悪により暴走し始めた魔力を抑える為、セフォネは自分の内部で魔力を爆発させた。歓迎会が終わってからすぐに気絶してしまったが、あの後エリスかダフネ、もしくは教員の誰かが医務室に運んでくれたのだろう。
「目を覚ましましたか?」
カーテンをシャッと開けて、ホグワーツの校医マダム・ポンフリーが入ってきた。その手には薬が入っていると思われるゴブレットが握られている。
「はい。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。今何時ですか?」
窓からは日光が差し込み、既に昼過ぎであろうことは予想できた。だがしかし、正確な時間まで分かるはずはない。
「午後2時です。ちなみに水曜日の、ですが」
マダム・ポンフリーが付け加えた言葉に、セフォネは驚いた。歓迎会は月曜日だった。ということは、セフォネは2日間ほど眠っていたことになるのだ。かつて、異常な程強力な魔力の行使によってダメージを負ったことはあるが、ここまでではなかった。だがしかし、今回セフォネは怒りにより巻起こりそうになった魔力の暴走を、自らの内部に抑え込んだ。その反動は以前とは比べ物にならない程凄まじい。その証拠に、セフォネの全身はキリキリと痛み、身体の内部は不快感で満たされている。
「薬を」
セフォネは渡された薬を一息に飲み干したが、思わず顔を顰めた。苦い。とにかく苦いのだ。それが傷付いている五臓六腑に染み渡り、吐き気を催すが堪える。
と、そこに。
「目を覚ましたようじゃのう」
「……ダンブルドア校長先生…」
ダンブルドアがやって来た。相変わらず全てを見通したかのような輝きを持つブルーの瞳でセフォネに真っ直ぐな視線を送りつつ、しかし何処か迷った表情をしているのは気のせいか。
セフォネはそんなダンブルドアを、疑わしげな目で見つめていた。
「ポピーや。暫しの間、2人きりにしてくれんか」
「校長先生。彼女はまだ目を覚ましたばかりですし、それにまだ休息が必要で……」
「頼む」
マダム・ポンフリーはセフォネに視線をやってその顔色を確認し、手首に指を当てて脈をとった。
「……10分ほどですからね」
そう言い残し、マダム・ポンフリーは医務室を出ていく。
2人になり、ダンブルドアは口を開いた。
「君が倒れた後、大広間は騒然となった。君の従者、ミス・ウォレストンは大層君を心配しておったよ。それにしても、君は随分と人望があるようじゃ。医務室に大勢が詰めかけておったしのぉ。具合はどうじゃ?」
「問題ありません。ご迷惑をお掛けしました」
「君の友人、ミス・エリス・ブラッドフォードに感謝じゃな。君が倒れた直後、適切な処置を施してくれた。それに、君を医務室に送り届けてくれたのはスネイプ先生じゃ」
「本当にエリスとセブルスには感謝しなければなりませんね。ラーミアにも心配をかけてしまいました」
そう言うセフォネの表情は何処か上の空である。いや、その気持ちには偽りは無いのだろうが、心ここに在らずといった印象だ。普段とは何処か違った雰囲気のセフォネに、ダンブルドア意を決して尋ねた。
「何か聞きたいことがあるのではないかね? 相談でも何でも聞こうぞ」
「何故そのように?」
「何となくじゃ」
ダンブルドアはセフォネの横までやって来て、見舞い客用の椅子に腰を降ろす。セフォネはダンブルドアに視線を移すこともなく、淡々とした口調で返した。
「別に、何もございません」
「本当にそうかのう?」
「………」
2人の間に沈黙が流れる。そう、セフォネはダンブルドアに聞きたいことがあった。それはとても重要なことだ。
「……何故……」
「何じゃ?」
「何故あの男を教師にしたのですか?」
生徒の親を冤罪で殺害した人物を教員として採用する人間が、果たしているだろうか。
そのセフォネの問いに、ダンブルドアは飄々とした態度を崩さない。
「彼は闇の魔術に対抗するエキスパートじゃ。それ故、教師に適任と判断したのじゃよ」
「分かっているはずでしょう? 質問の意味は。
セフォネはダンブルドアを睨みつける。そして、普段の仮面をかなぐり捨てて、感情のままに言葉を続けた。
「…何故あの殺人者を、父を殺した仇を私の眼前に引きずり出したのかと聞いている……!」
「君は復讐を望んではいないのではなかったのかね?」
豹変したセフォネの様子に、ダンブルドアはまったく動じず、寧ろ冷静に切り返す。
ダンブルドアは予想していた。昨年度彼女が
「それとこれとは話が違う……! 答えろ、何故アラスター・ムーディを教師にした!」
ダンブルドアはセフォネの目をジッと見つめた。その瞳からは怒りの感情が容易に見てとれる。今の状態ならば彼女の心に入り込むことも出来なくはないかもしれない。それ程に、ムーディという存在は彼女の心を揺さぶっている。
「これは、君が……いや、君たちが乗り越えなければならない問題だからじゃ」
「乗り越える?」
「そう。13年前のあの日のことじゃ。"ブラック家の惨劇"。あれは互いが互いを誤認識して起こってしまった悲しい事件じゃった」
ムーディはアレクサンダーとデメテルを死喰い人だと思って襲撃したが、アレクサンダーとデメテルは、その襲撃を死喰い人によるものだと思ってしまったのだ。純血でありながらヴォルデモートに与しなかった自分たちに対する攻撃だと。それ故、闘いは激化してしまい、ムーディもアレクサンダーを殺害せざるをえなくなった。
「君は両親は失った。じゃが彼も、アラスターもまた心に傷を負ったのじゃ。無実の人を殺したことによって、彼は今もなお自責の念に捕らわれ、自分を責め続けている」
アラスター・ムーディという闇祓いは、確かに多くの闇の魔法使いを葬った。だがしかし、彼は殺さずにすむ時は殺さず、できるだけ生け捕りにした。その功績はアズカバンを半分埋めたとも言われるほどだ。そんな彼が、例え上からの命令だったとはいえ、無実の人間を殺して何も思わない訳がない。セフォネがこの13年間復讐心を抱いていたように、ムーディもまたこの13年間自分を責め続けていた。
ダンブルドアはそれを知っていた。知っていたからこそ、彼をホグワーツの教員として招き入れた。双方が互いに互いを理解し、過去を乗り越える必要があると思ったからだ。
「貴方が言いたいのは、故意ではないから罪ではないと、悔いているから許せと、そういうことか?」
「罪がないとは言わん。じゃが、彼が悪ではないことは確かじゃ」
「確かに、彼は故意に父を殺した訳ではない。それに、人はいつか死ぬ。それが早いか遅いかだけの話。それは運命だったのかもしれない。そう思うよ……そう思いたい。でも……」
人は何の為に生きているのかと聞かれたら、死ぬ為に生きている、とセフォネは答えるだろう。
人はいずれ必ず死ぬ。死は平等に訪れる。それが早いか遅いかだけの話だ。セフォネはそう思うことで、両親の死を納得していた。
だがそれでも、セフォネの心の中には復讐の怨嗟が残っていた。
「この感情は、この憎しみは消えることはない。
怒りに染まっていたセフォネの表情が柔らぎ、口元に笑みが浮かぶ。しかしそれは、悲しげな笑みだった。
「ダンブルドア先生、先程貴方は相談でも何でも聞くと仰いましたね。では、聞かせていただきますが……」
笑みは自然と歪んでいき、何かに耐えるような、苦悶の表情となる。犬歯が剥き出しになるほど歯を食いしばり、拳を握り締めた。爪が手のひらに食い込んで血が滴り、シーツに紅い染みを作り出す。
「一体……
復讐は無意味だと、頭では理解している。しかし、心では理解していない。仇を討とうと体が勝手に反応する。しかし、セフォネの奥底に眠る魂は、殺してはならないと叫んでいる。憎しみは何も生み出さないのだと。
「…私は……私は………私はどうしたらいいの………答えてよ!」
それは、セフォネの心の叫びだった。1人で抱え続けてきた葛藤。どんな形であれ、打ち明けたのは初めてだった。
それはセフォネが、ダンブルドアという人間を認めているからこそ、頼れる存在だと認識しているからこそだったのか。
ただの感情の爆発なのか。
それとも、ダンブルドアにそれを答えられないと分かっていたからこそ、彼は自分の助けになれないと言いたかったのか。
頭も、心も、魂も。全てがぐちゃぐちゃになった今のセフォネには分からない。自分のことでさえ分からない。
身を震わせるセフォネを前に、ダンブルドアは沈黙し、やがて項垂れた。
「………すまん、すまんのぉ。わしにはその問には答えられん。否、答える権利が無い」
ダンブルドアは答えることが出来なかった。復讐は駄目だ、と彼女に口で言うのは簡単なことだ。だがしかし、それは彼女の助けには一切ならない。心ない綺麗事など誰にでも言える。そしてそれは、逆効果にしかならない。
その返答を予期していたセフォネは、自分が考えていた通りだったからか、それとも答えを得られなかった失望ゆえか、視線を上に上げて遠くを見た。
「……ふふっ……ですよね…」
「そう、わしにはその問いに答えられない。じゃから、セフォネ……わしは君たちに、機会を与えたい」
「機会?」
「明日の午後。アラスターと1対1で話すのじゃ。彼は既に承諾しておる」
腹を割って話し合って来い。そう、ダンブルドアは言っているのだ。しかし、これはある種の賭けだ。ここでセフォネが拒絶した場合、全ては変わらない。もし首を縦に振ったとしても、それから何があるか分からない。また暴走するかもしれない。だがしかし、話し合わないことには、何も解決しない。
それはセフォネも同じ考えだった。暫く逡巡した後、小さく囁いた。
「……いいでしょう…」
「そうか。感謝するぞ」
「貴方に感謝される謂れはありません。寧ろ、会合の場を設けて頂いたのはこちらの方です。感謝致します」
しかしその様子には感謝の念など微塵もない。仇を教師として連れてきたことに対する不信感や不快感が強いのだ。
(…やはり無理…か…)
セフォネは心を見せてはくれたが、しかし開いてはくれなかったようだ。本来ならば、ここで完全にムーディに対する因縁を取り除き、闇の陣営に下る要素を消さねばならない。それでもって自分の陣営に引き込めたら何も言うことはない。
しかし、果たしてこの様子で、本当に大丈夫なのだろうか。ムーディを連れてきたことは、逆効果になりはしないだろうか。
「セフォネや。最後に1つ聞きたいことがある」
「何でしょうか」
口調は元に戻ったが、その瞳の温度までは戻らない。初めて合った時と同じような、絶対零度の瞳が、ダンブルドアの青い瞳を反射している。
「君は何故あの時、アラスターを殺さなかった?」
「おかしな質問ですね。殺していたほうが良かったですか?」
「そうしたら、わしが全力で君を止めていたよ」
セフォネがどれ程才能ある魔女であろうが、まだまだ幼く若い。老練の偉大な魔法使いたるダンブルドア相手に、まだ勝ち目はあるまい。
「……正面切って堂々と殺人を犯すには、私は余りにも失いたくないものを持ち過ぎてしまった……ただ、それだけです」
倫理観の問題ではなく、殺した上でのリスクで殺人を踏みとどまったとは。何とも狡猾さを売りにするスリザリンらしいことだ、とダンブルドアは諦めとも納得とも言えない感情を抱いた。
そして、彼女の言葉"失いたくないもの"に、一筋の希望の光を見出した。
(…わしでは駄目じゃった。この少女の心は開けなかった。しかし友ならば、閉じきった彼女の心を開けるかもしれん………結局、わしは他力本願なのか……)
ヴォルデモートを打ち倒すにしても、結局のところダンブルドアはハリーを使うしかない。そしてハリーを守る為に、スネイプを動かしている。では自分はどうだ。全ての責任から逃げ、全てを人に押し付け、それでも偉大と呼ばれる権利はあるのか。眼前の少女の心1つ開けず、教育者として正しき方向へ導くことすら出来ないのだ。
それ以前の問題に、セフォネの魔力の暴発に気付けなかったことを悔いていた。いや、気付いてはいた。だがしかし、あれ程までとは思っていなかったのだ。
(…アリアナ……)
自分の妹アリアナは魔力を溜め込み、時にそれを爆発させた。それは彼女が魔力をコントロール出来なかったからだ。
しかしセフォネは違う。彼女はかなりの練度で魔力を行使することが出来る。それ故、自分自身の内部に暴走した魔力を押さえ込むという荒業をやってのけたのだろう。だが、いかに感情が高ぶっていたとはいえ、魔力の暴走であそこまでのダメージを追うことは無い。普通の魔女魔法使いであれば、魔力を己の中に溜め込むことはないからだ。
では、セフォネの場合はどうか。推測に過ぎないが、彼女は先天的に無尽蔵とも言える程の膨大な魔力を持っているのだろう。最早それは、特殊能力と言ってもいい程の異常なレベルだ。それが感情により爆発すれば、今回のような事態になってしまうのかもしれない。
「お大事にな」
「ご足労感謝致します」
ダンブルドアは椅子から立ち上がると、医務室から立ち去っていく。そして校長室に戻る道すがら、ダンブルドアはトレローニーがハリーに齎らした予言を思い出す。
『"闇の帝王の復活と時を同じくして、
敵か味方か。
自分やトム・リドルの再来とも思える程の才能を持つ彼女の進む先とは。
(…変革……か)
1年生の時の彼女の言葉が蘇る。
『私の願いは"世界の変革"。ただそれだけですわ』
『帝王に仕えるのも一興、対抗するのも一興、全てを傍観するのもまた一興』
もし神という存在がいるとすれば、ダンブルドアは願う。
どうか、ペルセフォネ・ブラックという少女が闇の道に落ちぬことを。
ダンブルドアが去った後、セフォネは自分の手の平を眺めながら、今しがた取り決めたことを考えていた。
何を今更、と思わずにはいられない。故意でなかろうが13年間自責の念に囚われていようが、彼はアレクサンダー・ブラックを殺害した。その事実が変わるわけではない。
しかし、分かっている。全てが彼の責任ではなく、父にも、魔法省にも責任があることくらい。
分かってはいるのだ。彼を殺しても何も変わらないことくらい。
それでも彼が憎い。憎くてたまらない。どうしようもないくらいに憎くて、心の内の怨嗟の炎は巨大に燃え上がり、理性が闇に支配されていく。
セフォネは拳を握り締めた。既に傷付いている部分に爪が食い込み、その痛みは、セフォネを現実へと引き戻す。
「ミス・ブラック。入りますよ」
再び、今度は別の薬を持ってマダム・ポンフリーがセフォネの脇へやって来た。薬が入ったゴブレットを渡そうとするが、その前にセフォネの手の傷に気付いたようだ。
「その傷は……」
「すいません。少々……」
セフォネは言葉を濁し、自分の杖をサイドテーブルから取り、治癒魔法を用いて癒やす。
「では、これを」
「…………」
色がおかしい。真っ先に浮かんだセフォネの感想はそれだ。暗緑色の薬など、どう考えても毒薬にしか見えない。心ここに在らずのセフォネでも、はいそうですかと飲みたくはない代物だ。
「飲みなさい」
「………あの、これ砂糖か何か…」
「駄目です」
有無を言わさぬ物腰で言われ、セフォネはしぶしぶそれを飲み干す。去年のルーピンの気持ちがよく分かる。良薬は口に苦しとはよく言ったものだ。苦過ぎる。
と、またしても薬を飲み終えたタイミングだった。誰かの足音が聞こえた。その速度から、駆けているいることが分かる。扉が勢い良く開かれ、そしてマダム・ポンフリーを押しのけ現れたのは、 ボブカットの銀髪に黒いリボン。ブルーグレーの瞳を持つ、何処か儚げな印象を与える少女。それはまさしく、セフォネの愛すべき従者の姿だ。
「…ラーミア……」
彼女は相当自分のことを心配してくれていたらしい。礼と謝罪を言う為口を開こうとした、その時。
「…な…!?」
ラーミアがもの凄い勢いで飛びついてきた。セフォネに強く抱きつき、真っ赤になった目でセフォネを見上げる。
「お嬢様………ホントに……ホントに心配したんだからぁ!」
最早敬語も何処かに飛び去り、ラーミアはセフォネの胸にすがって泣き出してしまった。
2年前、ラーミアは大事な人を失い、生きることを諦めていた。そんな時に現れた、自分にとっては恩人であり、仕えるべき主君であり、そして帰る場所であるセフォネ。彼女が倒れた時、ラーミアはパニックに陥った。
――死んでしまうのではないだろうか
そんな考えがラーミアの脳裏をよぎり、医務室から強制的に寮に帰らされた一昨日昨日と、セフォネが心配で寝付くことさえ出来なかった。
「心配をかけてごめんなさい……私が未熟なばかりに…」
泣きじゃくるラーミアを抱き締め、頭をそっと撫でる。こんな、感情の制御すら出来ない自分を、自身が疲弊するまで心配してくれる。まったく、自分には過ぎた従者だ。
「そしてありがとう。こんな私を心配してくれて」
「…うぅ………」
ラーミアが、セフォネに回した手に力を込め、ギュッと抱きしめる。まるで、大切なものをもう二度と失わないように。
そしてセフォネは思う。
やはり、失いたくないものを背負い過ぎた、と。
「はぁ……目を覚ましたっていうから来てみれば、何よあれ。滅茶苦茶入りづらいじゃない」
医務室の外では、エリスとダフネがやや呆れ気味に、それでもって温かい目で2人を見ていた。
「まあまあ。ラーミアだって、ずっと心配してたんだし……」
「ま、それもそうね」
あの歳でブラック家の使用人になるだなんて、一体どんな事情があったのか、エリスもダフネも知らないし、聞いていない。だがしかし、あの2人はきっと強い絆で結ばれているのだろう。主従という関係では表せないような何か、特別な。
「やっぱ姉妹じゃない……」
「そうよね」
漆黒の女神に白銀の天使。見た目も中身も違うけれど、案外、というかかなりいいコンビである。
そう、エリスもダフネも思った。
ダンブルドアのセフォネに関する考察………要するに、生まれつきMP∞、魔力EXということです。
どうも、一ヶ月ぶりです。ゴールデンウィークの連休中だったので更新出来ました。来月は期待しないで下さい。
今回、前半が殆どシリアスだったんで、後半は少しほのぼのさせたくて、こういう構成になりました。
感想返しは忙しくて中々出来ませんが、きちんと時間をかけて返させて頂きたいと思っているので、お待ちしております。