ハリー・ポッターと生き残りのお嬢様   作:RussianTea

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無実の証明

  聞き慣れた少女の声と眩いばかりの金色の光を浴び、スネイプは目を覚ました。光の強さに思わず目を細める。

 

「これは……一体……」

 

  金色の天使と、夜空に散っていく吸魂鬼(ディメンター)。そして、天使の側には黒髪の少女が、肩を上下させて立っていた。

 

「セフォネ? 何故お前がここにいる?」

 

  セフォネは杖を振り、金色の天使を消滅させて振り向いた。その足元には3人の生徒と1人の男性が倒れている。

 

「目を覚ましましたか、セブルス」

「説明しろ」

 

  セフォネは語った。シリウスは冤罪であったことと、ペティグリューを捕まえたこと。叫びの屋敷から戻るとルーピンが変身し、それを退けたところで吸魂鬼の襲撃を受けたこと。そして、それを殲滅したこと。

 

「ペティグリューは何処にいるのだ?」

「瓶詰めにしてこの中に閉じ込めました」

 

  セフォネはポケットからポーチを取り出した。そのポーチに検知不可能拡大呪文が使われていることを、スネイプは知っている。瓶詰めという状態はよく分からないが、シリウスの無実を晴らす証拠は、セフォネが握っているという訳だ。

 

「なる程……君の伯父上の冤罪の証拠は揃っているということか」

 

  スネイプは小さく舌打ちする。このままシリウスが吸魂鬼の接吻を受けることを望んでいたからだ。

  かつて自分に散々辛酸を舐めさせたこの男の崩壊を、どれ程願っていたことか。その機会は1時間程前に訪れ、そして今消え去った。

 

「貴方と彼の遺恨については、ルーピン教授より伺っております。この結末は貴方にとって受け入れ難いでしょう。しかし……」

 

  セフォネは一度、倒れているシリウスに視線を向ける。そして、彼の記憶を見た時の事を思い返した。母は彼を家族として愛していた。そんな彼を、死なせる訳にはいかない。

 

「彼は私に残された最後の家族であり、母様が愛した母様の兄君。そんな彼を、冤罪で粛清させる訳には参りません。ここは私に……いや、私と母様に免じて、どうか」

 

  セフォネは真っ直ぐスネイプを見据えている。その瞳は今は亡き友と瓜二つ。その容姿も今は亡き友と瓜二つ。まるで、そこにはアレクサンダーとデメテルが立っているかのように、スネイプには感じられた。

 

『初めまして。僕はアレクサンダー、アレクでいい。君は?』

 

  純血が多数を占めるスリザリンの中で混血であり、闇の魔術に対する知識も豊富であったスネイプは、差別や嫉妬からスリザリン生の間でも異端児扱いされていた。にも関わらず、寮で同室になった彼は自分を認め、最初の友になった。

 

『スネイプ先輩ですか? アレクやルシウスさんから話は聞いています。私はデメテル・ブラック、こっちは弟のレギュラス。いつも兄がご迷惑をお掛けして、申し訳ありません』

 

  まるで仮面のような笑みを浮かべ、憎きシリウスの面影がある美少女であったデメテル。名家同士、ルシウスやアレクと親しかった彼女は、自分を優秀な先輩だと慕っていた。そして時を経て友と呼べる存在になった。

 

  その2人の子であるセフォネが、真剣な眼差しで自分を見ている。復讐か、友情か。スネイプは目を閉じて考え、答えを出した。

 

「そのような顔で頼まれたら、断りようがあるまい」

 

  やろうと思えば、まだシリウスを貶めることは出来る。ピーターは助かりたいが為、自分の無罪を主張しシリウスを再び嵌めようとするだろう。それに自分が乗ればいいだけだ。しかし……

 

「今回は諦めよう。確か、今日はハグリッドのヒッポグリフの件でファッジが来ていたはずだ。彼に引き渡せばいい」

「感謝致します、セブルス」

 

  スネイプはシリウスの横に落ちている自分の杖を拾い上げ、担架を4つ作る。セフォネがそれに4人を乗せ、2人でそれを動かして城に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  医務室は、異様な沈黙に包まれていた。

 スネイプは担架を運んできた後、話し中であったファッジとダンブルドアを呼び出した。そして、セフォネが瓶からペティグリューを取り出し、シリウスと共に引き渡した。2人は今、西塔の別々の部屋に監禁され、ダンブルドアが事情を聞いている。

  医務室には、吸魂鬼に襲われたハリー、ハーマイオニー、ロンの3人がベッドに寝かされており、マダム・ポンフリーはロンの足を治している真っ最中である。

  セフォネは、一応医務室にいるものの殆どダメージは無く、医務室に来て早々、ファッジに簡潔に今夜の出来事を語った。そして今はテーブルと椅子を用意して自前(例年通り信者からの贈り物)の高級チョコレートを食べ、優雅に紅茶を飲んでいる。

  スネイプはその真横で不機嫌そうに窓の外の月を眺め、ファッジはどうしてよいか分からずその場に佇んでいた。

 

「あー……それでは、スネイプ。君はミス・ブラックの話を信じるのかね?」

「我輩は今夜、何も見ておりません。故に真偽の程は分かりかねます」

「それはそうだが……シリウス・ブラックが無実であったなど、到底信じられない」

 

  ファッジは、シリウスの協力者がセフォネであると思っている。その疑いは、今夜セフォネが吸魂鬼を全滅させるというおよそ有り得ない事態によって、益々深まっており、ファッジはセフォネの証言を信じていない。それどころか、重要参考人として彼女を連行しようとまで思っていた。

 

「それに、吸魂鬼だ……」

 

  吸魂鬼は殺せない。それが魔法界での一般常識である。それをいとも簡単にたった14歳の少女が粉々に粉砕してしまった。それ故にファッジはペルセフォネ・ブラックという存在に対する恐怖感を強めていた。

 

「ともかく、今アメリアに連絡して吸魂鬼をこちらに向かわせている」

 

  ファッジはシリウスを犯罪者として処理したかった。それもそのはず、勲章まで与えた人間が生きており尚且つ真犯人でした、では冗談にもならない。

  再び医務室が沈黙に包まれる。その静寂を破ったのは、紅茶を飲み干したセフォネだった。

 

「おはようございます、ハリー、ハーマイオニー。ご気分はいかがですか?」

 

  すると、今まで寝たふりをしていた2人は少々気まずそうに身を起こした。その2人に、ロンの治療が終わったマダム・ポンフリーが駆け寄り、すぐさまチョコレートを食べさせる。

 

「ハリー、起きたのかね? 丁度良かった、今シリウス・ブラックの件で話をしていたのだが……」

「大臣、聞いてください! シリウスは無実なんです! ピーター・ペティグリューが自分は死んだと見せかけていたんです! セフォネが彼を捕まえました。大臣、吸魂鬼にあれをやらせてはダメです! シリウスは―――」

「ハリー、少し落ち着きなさい。私はピーターの生存を知っている。でも彼はシリウス・ブラックから逃げていると言ったんだ。彼を追い詰めた自分をまた殺しにきたと言って……」

「違います、違うんです大臣。ペティグリューは全ての罪をシリウスに着せていたんです。何人もの人を殺したのも、シリウスじゃなくてペティグリューなんです」

 

  ハリーが必死に訴え、ハーマイオニーがそれを補足する。その内容は先ほどセフォネが語ったものと一致していた。

 

「患者を興奮させてはいけません、大臣。2人には手当てが必要です。どうか出ていって下さい」

「興奮なんかしてません。僕たちは真実を伝えようと……そうだ、セフォネ。君も一緒だっただろう? 大臣に説明……」

「私にはシリウス・ブラック脱獄幇助並びに逃走支援の嫌疑が掛かっているようで、証言が信用されないみたいでして」

 

  何事も無いかのように言っているが、内心腸が煮えくり返っている。ファッジは未だに冤罪を認めようとせず、さらに冤罪を作り出そうとしているのだ。

  そこに、ダンブルドアが入ってきた。ダンブルドアを見たハリーは、彼が最後の砦だと思い、シリウスの無実を訴えた。

 

「先生! シリウスは―――」

「なんということでしょう! 医務室をなんだと思っているのですか? 校長先生、貴方といえど―――」

 

  ハリーが続きを言う前に、マダム・ポンフリーが癇癪を起こした。病人に余計な刺激を与える人間は、彼女の前では等しく悪なのだろう。

 

「ふふっ」

 

  ファッジとダンブルドアに出ていけと言える人間は、 そうそういない。立場関係なく接するマダム・ポンフリーを見て、セフォネは思わず笑ってしまった。

 

「おお、セフォネや。随分楽しそうじゃのぉ」

「すいません。魔法大臣とホグワーツ校長が立て続けに出ていけと怒られる様が面白くて、つい」

「ポピーは怒ると怖いからのぉ」

 

  ダンブルドアとセフォネは微笑み合った。ハリーとハーマイオニーはあまりの暢気さに言葉を失っていた。

 

「ダンブルドア。ブラックとペティグリューは何と?」

 

  これでは話が始まらない、とスネイプが幾分苛ついた口調でダンブルドアを促した。

 

「シリウス・ブラックによると、ピーター・ペティグリューが犯人で、自分に罪を着せたと。ピーター・ペティグリューによると、シリウス・ブラックが犯人であり、それを追い詰めた自分に復讐しにきたのだと。前者の証言の証人が3人、後者は0人。結果は明白じゃよ」

「ではダンブルドア……貴方は犯罪者の証言を信じるのか?」

「これは紛れもない冤罪事件じゃよ、コーネリウス」

 

  本日何度目か分からない沈黙が流れる。ファッジは顔を歪めていた。この状況では、シリウス・ブラックは無罪になってしまう。しかし、それでは魔法省が叩かれるのは明白。責任問題が発生し、自分が今の地位を追われてしまう可能性もある。

  その時、医務室のドアがノックされた。そして、白髪を短く切った片眼鏡をした女性が入ってきた。魔法法執行部長アメリア・ボーンズである。

 

「大臣、こちらにおいでと聞きましたが」

「ああ、アメリア。早かったじゃないか。吸魂鬼は………」

「吸魂鬼?」

 

  アメリアは聞き返した。何のことだか分からない、と行った様子である。

 

「そうだ。フクロウを飛ばして吸魂鬼を連れてこいと……」

「申し訳ありませんが、入れ違いになってしまったようです」

「では、何故君はここに?」

「真実薬と開心術士5名を手配し、シリウス・ブラック並びにピーター・ペティグリューの尋問に伺いました」

「何だと?」

「1時間程前、ミス・ブラックより書状が参りまして」

 

  セフォネは叫びの屋敷を出る前に、少しやることがあると言って残り、彼女宛に全ての出来事を記した手紙を書き、ホグズミードの郵便局にある速達フクロウ便で送ったのだ。

 

「その少し後から、マルフォイ氏を始めとした方々から次々に書状が」

 

  セフォネは試験の前に、自分が疑われている為、何かあったら力になって欲しいという趣旨の手紙を、自分のコネが通じる相手に送った。そして今夜、アメリアに手紙を書いたのと同時に、彼らにも同じ内容の手紙を書き、魔法省を後押ししてくれと頼んだのだ。もっとも、シリウスの冤罪を証明するというだけでは助けてくれないであろうから、自分に掛かっている嫌疑を解くためだと付け加えておいたが。

 

「ダンブルドア。彼らは何処に?」

「西塔におる。場所は覚えておるかの?」

「はい。では大臣、立ち会いを」

 

  ファッジは低く唸ると、やがて観念してアメリアの後に続いて扉へ向かう。

 

「ミスター・ファッジ。1つだけよろしいですか?」

 

  セフォネは立ち上がり、ファッジに近づいた。そして目の前まで行くと、いつも浮かべている笑みを消し、ファッジに鋭い視線を向けた。

 

「過ぎた保身は自らを滅ぼす。覚えておくといい」

 

  ファッジは僅かに後退り、何も言わぬまま扉の向こうへ消えていく。セフォネはその様子を静かに眺めていたが、またいつものように笑みを浮かべると、ダンブルドアに向き直って一礼し、寮に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  その次の日の朝刊の1面は、シリウス・ブラックの無罪放免並びにピーター・ペティグリュー逮捕で飾られた。魔法省側からのコメントは『誠に申し訳なく思っている。今後はこのような事態が起きないよう、改善に務めていきたい』とのこと。シリウスには十分な賠償金が支払われることになり、ペティグリューは厳正なる裁判を行った後にアズカバンへ収監されることになるだろう。

  大広間の生徒たちはその事件で賑わっていたが、さらに驚くべき事実が判明してしまった。

  スネイプがスリザリン生に、ルーピンが狼人間であるということを、()()()()暴露してしまったのだ。ルーピンはその日の内に辞職し、ホグワーツを去っていった。これにはドラコ等の一部のスリザリン生を除く多くの生徒が残念がった。

 

  そして、毎年恒例の学年パーティー。スリザリンテーブルは歓声に包まれていた。グリフィンドールから寮杯を奪還したからだ。これには、グリフィンドール生は大層悔しがり、来年こそはと敵意を剥き出しにしていた。

 

「それにしても、今年は色々あったわね」

「去年一昨年も色々ありましたけれどね」

 

  寮杯に大きく貢献したクィディッチチームは今、皆から囲まれて賞賛の声を浴びており、隅のほうで騒ぎに疲れたダフネと、それを微笑ましげに眺めるセフォネが料理に手をつけていた。セフォネは教員テーブルから呼び寄せたワインをゴブレットに注ぎ、酔わない程度に堪能している。

 

「あんた、何でワインなんて飲んでんのよ」

「職員テーブルから呼び寄せまして。貴方もどうですか?」

「折角だから頂くわ」

「そこ頂いちゃだめでしょ」

 

  やっとのことで開放されたエリスが、へとへとになって2人の隣にやってきた。

 

「何? 魔法界にはマグルみたいに未成年者は飲酒しちゃ駄目みたいな法律はないじゃない」

「倫理的にアウトよ」

 

  そういうエリスに構わず、ダフネもワインに口をつける。どこか常識が抜けている人間がもう1人増え、エリスは溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  今年も学校が終わり、生徒たちは皆紅の汽車に乗り込んでいた。コンパートメントの面子は行きと一緒である。ラーミアは今年1年でアステリアとかなり仲良くなったらしく、また学生生活も満喫していたようでセフォネは嬉しかった。それはアステリアも同じのようで、ダフネもホグワーツを寂しがりつつ家に帰るのを楽しみにしている妹に微笑んでいた。

 そんなコンパートメント内で1人孤独を感じたのか、エリスが一言呟いた。

 

「セフォネにはラーミア、ダフネにはアステリア……私も妹欲しいなぁ」

「私は従者です!」

 

  最早恒例となりつつあるやり取りをしている間に、汽車はロンドン、キングズ・クロス駅に到着した。

 

「じゃあね」

「じゃ、また9月に」

「良い夏休みを」

「バイバーイ!」

「て、手紙送るから!」

 

  5人はホームで別れ、グリーングラス姉妹とエリスは親と合流し、セフォネとラーミアは改札口へと向かう。途中、ラーミアがちらりと駅の売店に視線を向けたのを見て、セフォネは尋ねた。

 

「何か気になりましたか?」

「え? ああ、いえ、ちょっと懐かしくなって」

「懐かしい?」

「あれです」

 

  売店は当然ながらマグル向け、というかマグルが経営しており、商品もマグル用品しか置いていない。ラーミアが指差したのは、飲み物売り場に積み上げられた赤い缶だった。

 

「あれは何ですか?」

「コーラというマグル界の炭酸飲料です。昔よく飲んだなって思って」

「そうですか……ちょっと飲んでみたいですね。マグルの紙幣は確か何枚か……」

 

  セフォネはポーチの中を探し、何枚かの20と書かれた紙幣を取り出した。そして、売店で2缶それを買う。何故か紙幣を出した時に驚いた顔をされ、足りないのかと思ったらどうやら十分過ぎたらしい。

 

「なぜマグル界は銀貨よりも紙のほうが値打ちが高いのでしょうか」

 

  マグルの貨幣制度に首を傾げつつ、1つをラーミアに差し出す。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

  なんだかねだってしまったようで申し訳なかったが、ラーミアはそれでも久しいコーラに口をつけた。

 

「………」

 

  セフォネも飲もうとしたが、開け方が分からない。魔法界にも缶という概念はあるし、容れ物としても使わている。しかし、イージーオープンエンド、即ちプルタブ方式の缶は普及しておらず、セフォネは開け方が分からないのだ。暫し考えていた後、ラーミアに救いを求めた。

 

「ラーミア」

「はい」

「開け方が分かりません」

 

  ラーミアは暫し口を開けたまま固まっていたが、不覚にも吹き出してしまった。

 

「ぷふっ……」

「馬鹿にしてます? まったく、主が困っているというのに、酷い従者ですこと」

「す、すみませ……ふふ」

「もう」

 

  何でも知っていて何でも出来るように見えるセフォネだからこそ、このような事に困っているギャップが面白かった。それをセフォネも理解しているのか、僅かに頬を赤らめている。

 

「どうぞ」

 

  ラーミアに開けてもらい、セフォネは初めてのコーラに舌鼓を打った。

  2人はコーラを飲みつつ改札を出て、出口へと向かう。そして駅を出たところで、声をかけられた。

 

「セフォネ」

 

  声がしたほうを向くと、そこにはシリウスが立っていた。開放されて1週間が経つが、まともな物を食べることが出来るようになって血色はよく、痩けていた頬も少し膨らんでいる。髪を切り髭も剃ったため、見た目は写真で見た若い頃に近づき、セフォネと顔立ちが似ているのがよく分かる。セフォネを男性にしたらこんな感じだろう、とラーミアは思っていた。

 

「シリウス。ハリーに会いにきたのですか?」

「ああ。それと、彼の叔父さんとも少し話をしに。ハリーとは夏休みの半分は一緒に暮らすことになったからね」

「良かったではないですか。住居のほうは?」

「心配いらないよ。ロンドン郊外に一軒家を買った。誰かさんが圧力を掛けてくれたおかげで、魔法省からはたんまりと金を貰ってね。昔叔父のアルファードから引き継いだ遺産並みだよ」

 

  魔法省はシリウスに、魔法界の平均年収の10年分と同額を賠償金として支払おうとしたが、慰謝料は何処に消えたのだとセフォネが進言し、賠償金の額はさらに膨れ上がった。きっと魔法省の経理は頭を抱えているだろうが、セフォネからしてみればちょっとした仕返しである。

 

「祖母が言っていた溝に捨てられた金とは、そのことでしたか」

「そのおかげで彼の名もタペストリーから消えていることだろう。まあ、何にせよ、君にはお礼を言いたかった。本当にありがとう。君のおかげで冤罪を晴らすことが出来た」

「私は何もしていませんよ」

 

  セフォネはそう惚けながら、残ったコーラを飲み干した。

 

「それに、結局ペティグリューには逃げられてしまったようですし」

 

  魔法省は、ペティグリューを逮捕してから僅か3日で裁判の準備を整え、アズカバンに勾留していたペティグリューを魔法省まで移送した。だが、魔法省についた途端隙をついたペティグリューが護衛の杖を奪い、変身して逃走してしまった。魔法省は地下にあるという都合上、換気口が多数あり、鼠になったペティグリューはそこに逃げ込み、姿をくらました。

  魔法省は即座に指名手配したが、未だに見つかっていない。魔法省の相次ぐ不祥事に、マスコミは嬉々として連日記事を書いている。

 

「あの野郎、いつかこの手で息の根を………さっきから気になっていたんだが、そこのお嬢さんは?」

「お初にお目にかかります、シリウス様。ブラック家の使用人、ラーミア・ウォレストンと申します」

「使用人だって? クリーチャーはどうした?」

「まだ現役ですよ。それでは、ここら辺で我々はお暇させて頂きます。近いうちに私物を引き取りに来て下さいね」

「ああ、そうするよ」

「では、ご機嫌よう」

 

  シリウスと別れ、2人はグリモールド・プレイス12番地へと帰宅した。

 




セフォネの手回し………ファッジの保守的な性格を知っているからこそ、事前に手を回しておきました。セフォネのコネって案外凄い。

シリウス無罪放免………やったね!

ランナウェイピーター………予言で逃げることは確定していました。彼がいないとヴォル様が蘇らないから。

セフォネ初コーラ………缶の開け方が分からない。最近書いてなかった可愛いセフォネを書きたかったんです。



アズカバン編終了です。結構字数が掛かった気がします。

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