奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第2話「懸念の追求」

「……なあ、織斑。

 どうして、お前は疲れているのだ?」

 

「気にしないでくれ……」

 

「そうか、分かった」

 

 朝にラウラにした約束を果たすために俺は今日の訓練を休んだ。

 しかし、ラウラと俺の二人が同時に休んだことで鈴とセシリアに尋問を受け、そのせいで精神的に疲れてしまった。

 本当のことを話せば楽であるが、まだのほほんさんがいじめを受けているのか確定していない上にこういったデリケートなことは仮に本当であったとしても大っぴらに話すことではないだろう。

 それに二人に心配をかけるのも忍びないことだ。

 

「しかし、天龍さんと龍驤さんにはすまないことをしたな……」

 

「そうだな……」

 

 一応、友達が悩んでいるので、そのことで探っておきたいとは説明したとは言え、二人の訓練を休んでしまったのは二人に対して申し訳ない気持ちがある。

 

「だが、二人は次の訓練をかなり強烈なものを課すと言ってきた。

 案外、気にしていないのかもしれないぞ」

 

「……ラウラ。

 世の中には気遣いってものがあるんだ。

 よく覚えておくと為になるぞ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。

 きっとだけど、あの二人は気にしていない風に装っているけど俺たちを安心させるためにあえて、そういう言い方をしてくれたんだよ。

 そういうのは千冬姉で慣れてる」

 

「教官が?

 ふむ、そういうものか……勉強になったぞ」

 

 俺はラウラが案外二人が気にしていないのかもしれないと言ったことに世の中にはあえて憎まれ口をたたくことで相手を気遣うこともあるというのを伝えた。

 俺にとってはその典型例が千冬姉だ。

 いつも厳しいけれどもそのお陰で俺は千冬姉に対して、後ろめたさを覚えずにいられる。

 親がいない代わりに一人で俺を育ててくれたとはいえ、もし千冬姉が優し過ぎて甘やかしていたら俺は絶対に罪悪感が原因でひねくれていた可能性がある。

 だから、多少の憎まれ口も時には大事なのだ。

 

「!

 織斑、布仏が動いたぞ」

 

「ああ。

 よし、行くぞ」

 

 俺たちが世間話をしているとのほほんさんが動き出した。

 

「……普段と変わらないな」

 

 一見するとのほほんさんは普段と変わらない様に見える。

 何時もの様に穏やかで周囲を和ませる。

 そんな雰囲気を漂わせている。

 今も同じ様に見える。

 

「……となると、クラスの女子が原因ではないな」

 

「ああ。それは分かる」

 

 普段から変わらないということは少なくてもこのクラスの人間関係が原因で悩んでいる訳ではなさそうだ。

 

 このクラスにいじめがなくて良かった……

 

 俺はその点に関しては安心した。

 普段から割と仲が良さそうなこのクラスで実はいじめが起きているとなれば俺は人間不信に陥りそうだ。

 けれども、それはなさそうだ。

 

「じゃあ、クラスの外の生徒か?」

 

「……だな」

 

 ラウラの指摘に俺は不安になった。

 確かにこのクラスの生徒に裏の顔がないのは良かった。

 しかし、裏を返せば他の生徒がのほほんさんをいじめている可能性は残されているのだ。

 

「とりあえず、尾行するが……

 織斑。お前は少し離れたところにいてくれ」

 

「どうしてだ?」

 

 のほほんさんが尾行しようとした矢先、ラウラは俺に一度離れる様に告げてきた。

 俺はその理由を訊ねた。

 

「……お前は目立つ」

 

「あ」

 

 ラウラの言わんとしたことが理解出来た。

 確かに俺がのほほんさんを追いかけたら目立つ。

 俺はこの学園で唯一の男子生徒だ。

 そんな俺が尾行してたら目立ってバレるだろう。

 

 それに男子が女子を尾行って絵面的にまずいなよな?

 

 それにもし俺がのほほんさんを付けているのがバレたら色々な意味でアウトだ。

 完全にストーカー男になり、社会的に俺は抹殺されかねない。

 

「……わかった。

 じゃあ、頼むぞ」

 

「ああ。連絡はする。

 いざという時は頼むぞ」

 

「了解」

 

 俺は尾行をしないが、ラウラに連絡を入れてもらうことにした。

 これでいざ変化が確認出来たら、一気に駆け付けることが出来るだろう。

 

 ま、男だから怯ませることが出来るのは無理だけど……

 

 もし本当にのほほんさんがいじめられていれば、その場に姿を現すつもりだ。

 ただ「IS」が出る前なら男の俺がその場にいるだけで相手に威圧感を感じさせることが出来るが、それは出来ないだろう。

 それでも「専用機」持ち二人がいると言うのは、割と効果はあるかもしれない。

 

 いざという時は千冬姉の名前を借りるか

 

 相手に話し合いが通用しなかった場合の最終手段としては千冬姉の名前を借りようと思う。

 「世界最強」は「世界最恐」とも捉えれるだろう。

 情けないことだが、俺は姉の名を借る弟になろうと思う。

 友達を助ける為ならば、それぐらいの汚名ぐらいは覚悟の上だ。

 

「では、行くぞ」

 

「ああ、頼む」

 

 ラウラはのほほんさんの後ろを誰にもバレない様に静かに付けている。

 

 そういや、あいつ軍人だったな……

 

 最近、雪風や他の艦娘の印象が強過ぎたせいで忘れていたが、ラウラも訓練を積んだ軍人だ。

 となると何かしらの訓練によって誰かを尾行する能力は高いかもしれない。

 

 頼むぞ……ラウラ

 

 自分から協力を申し出ておきながら今は何もしてやれないことに申し訳なさを感じながらも俺はラウラがのほほんさんの悩みの根源を見つけ出すことを祈った。

 

 

「一夏の奴~!!

 ラウラとデートでもする気!?」

 

「帰ってきたら、問い詰めませんと!!」

 

「いや、そうと決まった訳じゃ……」

 

 今日の訓練を一夏とラウラが休んだことに対して、鈴とセシリアの二人が不機嫌になっているが僕はそれを止めようと思った。

 二人の心の中にあるのはきっと、嫉妬もあるとは思うけれど、雪風が大変なのにこんな時に休むなんてという感じなのだろう。

 ただ、今は騒ぐのは止めた方がいいと思う。

 

「よし、よく言った。

 凰とオルコット。

 それだけやる気に満ちているのならば、訓練の内容を少し上げてもいいよな?」

 

「「えぇ!!?」」

 

「ほら、こうなった……」

 

 きっと、何かしらの理由が一夏とラウラにあることを察しているであろう天龍さんに訓練を厳しくする口実を作ってしまった。

 別に川神先生の影響で訓練が多少厳しくなるのはもうどうでもいいことだけど、ペナルティとして厳しくされるのは不名誉なことだと思う。

 

「えっと……」

 

「提督さんたちの様な人って何処にもいるんだね?」

 

「あ……一夏みたいな人ってそっちにもいたんだね」

 

 どうやら、雪風の世界にも異性の心を無意識に掴み続ける男性はいたらしい。

 艦娘の恋愛戦争はどんな感じなのだろう。

 


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