奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「え?お祝い事?」
「ちょ、え?」
照月さんの質問に俺たち全員が目をぱちくりとしてしまった。
一体、彼女は何を思ってそんな疑問を呈したのだろうか。
「……あの秋月さん。
それはどういう意味?」
彼女の言葉の意味を知ろうとシャルが勇気を振り絞って訊ねた。
すると
「だって!こんなにも沢山の量と種類の美味しいごはんを食べられるなんて!
こんな贅沢が許されるなんて……!!」
『え』
照月さんは目を輝かせ涎をたらしそうになりながら興奮状態で目の前の食事に対して、感激の言葉を漏らした。
確かに「IS学園」の食堂のメニューの量と美味しさは世界でもトップクラスだとは思うけど、そこまで感動するものだろうか。
「本当だ!
すごい!?こんな豪勢な食事が許されるの!?」
「て、阿賀野さんも!?」
「ど、どういうこと!?」
「!?」
も、もしかすると……
阿賀野さんが反応したことで俺はどうして二人がそんな風に感動を覚えているのか想像できてしまった。
「おい、鈴。セシリア。シャル。ラウラ……
ちょっと、いいか?」
「何よ?」
「何ですの?」
「え?」
「何だ?」
とりあえず、何となく予想が付いたので俺はある意味では二人の事情にあまり詳しくなさそうな海外出身の三人と念のために鈴に声をかけた。
「……あの二人はきっとあっちの戦争の影響であんまりいいものを食べられなかったんじゃないのか?」
「あ!?そういうこと!?」
「え!?」
「!?」
「うっ!?」
俺は四人に彼女たちが抱えているであろう生まれた環境について説明した。
俺の想像する戦時中と言うのはすいとん汁が主食で白い飯がご馳走で、配給制のかぼちゃやさつま芋が命綱だったというイメージがある。
日本人の俺にとっては平和教育の影響としてこういったイメージが直ぐに湧くが、日本で暮らしていた鈴は兎も角として、他の三人にとっては中々イメージしづらいことだろう。
「うぅ……」
「そう言うことですのね……」
「う、うん……」
「な、成る程……」
四人はとても苦々しい表情で納得した。
いや、俺だって納得したくない。
雪風は割とそんな様子を見せなかったが、彼女は戦前に生まれたらしく戦後も生き残っていたのでそんな一面を見せなかったが、この二人は冗談抜きで俺たちが想像する戦時中の貧しさを実際に味わっているのだ。
改めて、戦争の悲しさを感じてしまった。
よく日本の「IS至上主義者」は偉そうに戦時中の人たちを馬鹿に出来るな……
同時に俺は戦時中の人をただ男尊女卑社会だっただけで馬鹿にして『戦争するなんて馬鹿な男ばかり』と言っているのを見て、腹が立ってきた。
実際に戦争の影響で俺たちの水準とは言え、満足な食事を食べれなかった経験者を目の当たりにして改めて分かったけれども戦争は恐ろしい。
けれども、そんな平和教育を受けたのに、いや、むしろ受けたことで『戦争をする男は馬鹿だと』と考えて平和を名目にしておきながら、今いる「IS至上主義者」は当時の軍国主義者の人々と同じ様に「IS」という力に依存している。
そんな自分たちの矛盾に気付いていないで平気で他人を貶している時点で、むしろ、それ以上に歪だ。
それを目の前の二人を見て感じてしまった。
でも、今はそれよりも……
俺はある事を提案しようと思った。
「なあ、阿賀野。秋月。
何か奢ろうか?」
「え!?」
「で、でも……」
俺は少ない小遣いとは言え、何か二人に奢りたかった。
「そうですわ!
色々とあなた方にはご馳走を振る舞いたいですわ!」
「中華料理なら任せて!」
「うん!そうだね!
僕も奢るよ!」
「隊長殿も言っていた……
腹が減っては戦は出来ぬと!」
俺に続いて、鈴たちも目の前の二人にもっと美味しいものを食べて欲しくて四人も次々と名乗り出た。
「賛成!
そうだ!二人の歓迎会をやろうよ!」
「あ!それいいかも!」
「いいね!やろう!」
「やろう!やろう!」
「え!?え!?」
「えっ!?」
続けて、他の生徒たちも次々と乗ってくれて二人の歓迎会をやろうと決めた。
どうやら、二人の事情を知らなくて高校生が満足に食事を食べられないと言う環境を一種の家庭事情と解釈してくれたことで二人に色々な食事をさせたいと願ったらしい。
「よ~し!!
アンタたち、やるわよ!!」
『おぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
「「えぇええええぇええええええええええええ!!?」」
最後に鈴がまとめ役となって号令し、二人の歓迎会が開かれることが決まった。