奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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あり得ないと思いますが、スパロボに艦これが出たら雪風の能力は精神コマンドと特殊技能、エースボーナスは
精神コマンド:幸運・加速or努力・集中・閃き・魂・奇跡
特殊技能:見切り・ラッキーor強運・天才・援護攻撃
エースボーナス:幸運・奇跡の消費SP半減
とかになりそうな気がします。


第12話「二つの意味の技術」

「じゃあ、先ずは両腕部の砲撃から。

 その部分に関しては前と同じだから問題ないとは思うけれど念のためにね」

 

「わかりました」

 

 先ず、最初に指示されたのは砲撃だった。

 これに関しては彼女の言う通りだろう。

 単装砲も連装砲も見た所、変わっていない。

 

「最初に的も自分も止まっているパターン。

 その次は的だけが動いてるパターン。その次は雪風ちゃんが動くパターン。

 そして、最後に両方とも動いているパターン。最後のは前後左右で動くよ」

 

「はい」

 

 それでも改修を施したことで何かしらの差異が生まれている可能性を考慮してか、出来る限りの状況を再現するつもりらしい。

 

 ……安心できますね

 

 元から大して変わっていないのだから、別に検査をする必要もないと思う人間も中にいるとは思うが、こういった小まめな変化を無視して思わぬ大惨事を引き起こすことは少なくない。

 そういったことから始まる悪夢を知る私としては彼女や研究所の対応に安堵した。

 

「じゃあ、始めるよ」

 

「はい……!」

 

 篝火さんの掛け声と共に最初の的が現れ、私はそれを目に入れたと同時に砲撃し当然の如く命中した。

 一つ目を撃つと、二つ目が現れ、それを撃つとさらに三つ目がとその繰り返しが十回ほど続き全て命中させた。

 止まっている標的ならば余程の距離がなければ必中させるのが当然でなくてはならない。

 そうでなければ、実戦では通用しない。

 

「流石だね。

 西部劇のガンマンを見てるみたいだよ」

 

 私の砲撃を見て篝火さんは感心しているらしい。

 どうやら「打鉄」で代用してきたとはいえ、私自身の砲撃能力は鈍らずに済んだようだ。

 

「どうやら、問題なしの様だから二つ目が終わったら合図なしで三つ目、四つ目と突入するよ」

 

 今ので私の砲撃に問題なしと判断してか、元々、そのつもりであったのかはわからないが、一気に試験を続けるらしい。

 すると、今度は的が同時に三つ現れ、今度はそれらが移動し始めた。

 しばらく、それらを観察してから私は先程と打って変わって的の向かう先へと砲撃した。

 その結果、二つ目の試験も難なく終わり全ての的を撃ち落としたが

 

「……!」

 

 再び現れた的を目にして三度目の試験が始まったと理解した私はすかさず移動を開始した。

 

 少し削られましたか……!

 

 シールドエネルギーが仮想敵に削られた判定を食らってしまった。

 この移動式の訓練では一定時間以上経つとシールドエネルギーが削られていく仕様になっている。

 また、照射された光線にも当たると削られることにもなっており、どうやら、今の一瞬で幾らかの光線に当たってしまったらしい。

 当たってしまった事に少しばかりの悔しさを抱きながらも私は的に狙いを定め続けた。

 しかし、流石は実戦に限りなく近づけた訓練とも言うべきか、移動を意識した結果弾着が間に合わず、的が引っ込み二回外してしまった。

 

 やはり、攻防一致というのは難しいですね

 

 三度目の試験が終わり、砲撃戦もようやく最後の試験となった。

 と思った矢先、殆ど不意打ち同然に的が現れた。

 先程から響き渡る警告音がもたらす緊張感と戦いながら私は前後左右に動き始める的とまるで乱反射の様に照射されていく光線を掻い潜り回避運動と砲撃を開始した。

 一つでも的を当てることで被弾の可能性を下げようとするが撃っても撃っても的は新しいものに替わるとそこから照射される光線が補充された。

 どうやら、最後の的は完全にどこから現れるのかは法則性はないらしい。

 その為、幾らか外してしまった。

 

 十弾中、八弾命中で被弾率は三割ですか……

 

 結果は命中率よりも被弾率が一割上回ってしまった。

 

「とりあえず、お疲れ様。

 やっぱり、驚異的な成績だね」

 

「……実戦だったら、とても褒められる成績じゃない気が……」

 

 砲撃の試験が終わり、篝火さんが労いの言葉をかけてくれるも、被弾率が一割上回ってしまったことに私は自分への不甲斐なさをつい、零してしまった。

 

「何、言ってるの。

 そもそも、今回は殆ど三対一を想定したようなものだよ?

 それでこの結果なら、一対一なら相手が君に一撃当てるためだけに24倍の砲撃を受ける必要があるんだよ?」

 

 そんな私の自嘲に対して篝火さんは命中率を三倍にし、被弾率を逆に三分の一にすることで励ましの言葉をかけて来た。

 

「それにね。

 そもそも「IS」の武装でも「シールドエネルギー」を大幅に削るなんて稀だよ?

 君のロケットランチャーとか、「零落白夜」とかのああいう切り札的なものならばまだしもね。

 特に後者位の必殺技じみたものでもなければ君なら余裕で勝ち。

 加えて、「IS」で一体多数なんてケースも稀だよ」

 

「……はい」

 

 彼女の叱責にも等しい言葉に私は反論できなかった。

 どうやら、私の発言は彼女の虎の尾に等しいものを踏んでしまったらしい。

 

「全く……そういう所は本当に川神さんにそっくりだね……」

 

「……え?」

 

 彼女は呆れながらそう言った。

 

「神通さんにですか……?」

 

 彼女の口から出て来た私の尊敬している人物の名に私は反応してしまった。

 どうやら似たようなことを神通さんも言ったのだろう。

 

「あの人は一発でも外れると『全弾命中じゃなければ、意味がないです』とか言って、帰った後に自主練をやってるて学園時代から今に至っても関係者から聞かされているよ……」

 

「……二つの意味で思い当る節があります」

 

 篝火さんの証言に私は納得がいってしまった。

 それは神通さんならば、必ず言うであろうし、私の心境も神通さんと同じという二つの意味で私は納得をせざるを得なかった。

 何よりも彼女は恐らく、私たち「二水戦」のことも考えていたのだろう。

 私たちの師であったことを彼女は常に考え続け、私が彼女の教え子だったことを誇りに思っていたように彼女も師であったことを誇りに感じて、それに恥じないように意識してくれていたのだろう。

 私はそこに嬉しさを感じるが

 

「……そういうところをカバーするのが私たちの仕事なんだけどね……」

 

「……え?」

 

 篝火さんは不服そうに言った。

 

「いや、確かに君と川神さんのその姿勢は整備したり、研究したり、開発したりする身としてはやりがいがあるよ?

 でもね、人間は万全じゃない時が必ずしもある。

 常に全力を出せる訳じゃないし、不調な時だってある。

 君と川神さんみたいな実力者にだって言えることなんだよ?」

 

「それは……」

 

 篝火さんのまるで私を説き伏せるかのような苦言に私は二の句を継げなかった。

 実際、私は護衛対象であり、もう一人の憧れの艦娘の一人だった金剛さんの妹である比叡さんをソロモンで守れず、相棒であった時津風や「二水戦」の同期の大切な仲間であったをダンピールで失ったことで「コロンバンガラ」に赴く際に神通さんに叱られた。

 目の前の戦いにすら集中できなかった私を神通さんは窘めたのだ。

 何よりも他ならない神通さん自身が常に私たちの精神状態に細心の注意を払っていた。

 それ程までに戦闘の際の精神状態は気を付けなくてはならないことなのだ。

 

「だから、私たちがいるんだよ」

 

「……?」

 

 彼女は続けてそう言った。

 

「君たちが十全の力を出せないなら、それをカバーする技術で君たちを支える。

 逆に君たちが十全の力を出せるなら、それをさらに上乗せ出来る様なものを造る。

 ま、君と彼女の場合、止めても無理をしそうだけどね」

 

「……篝火さん……」

 

 篝火さんの技術者としての信念に私は感嘆してしまった。

 彼女は「IS」を搭乗者との繋がりを持つ唯一の存在だと主張していたが、それは彼女の今の言葉で現実味を増した。

 彼女の「IS」に懸ける情熱は本物だった。

 

「ま、そんな君達だから支え甲斐があるのも事実なんだけどね」

 

 彼女は少し仕方なさそうに言いながらもそれを善しとした。

 私や神通さんの鍛錬が止められないと理解したうえで彼女はそれも認めた。

 

「じゃあ、次はロケットランチャーだけど。

 先ずは既存のロケットランチャーから。

 浮遊ユニットの方は後でね」

 

「わかりました」

 

 彼女の信念を感じて私は増々やる気に満ち溢れた。

 と言っても、私の場合は如何なる場合でも気は抜かないが。

 

「じゃあ、始め!」

 

 再び始まる運用試験。

 私は先ず止まっている的に向かって自らが当てに行った。

 

 行きます……!

 

 動かない的を目視して私はそのまま直進した。

 いつも通り、魚雷を撃つのならばただ突撃あるのみという意思で。

 そして、想定する射程に入ると両脇部と右脚部にある魚雷を展開し、そのまま三発放った。

 相手が動かない的であったこともあり、三発とも当然ながら命中し、爆音と爆炎、硝煙を生じ私はそこを突き抜けた。

 どうやら、一度に発射できる弾数が三発になっただけで以前とそこまで変わらないらしい。

 

「どう?何か違和感とかある?」

 

 一連の動作を見て念のために篝火さんが感想を求めてきた。

 

「いえ。一斉雷撃の際に数が少なくなっただけで左側に多少の隙が生まれていますが、これぐらいならば問題はありませんよ」

 

 左側の魚雷発射装置が取り外されたことで、今まで更識さんとの戦い以外では経験したことはないものの、魚雷を一斉発射可能な本数が四発から三本に減少し瞬間的な火力が下がったことや隙が生まれるなどの問題は生じたが、なくなったのが元々予備に等しいものであったことからこのことに関しては大した問題ではないだろう。

 

「後は技量で補うということかな?」

 

「そういうことになりますね」

 

 篝火さんの茶化した様な言い方に対して私はあえて肯定した。

 そもそも魚雷は必殺の一撃だ。

 外れたり仕損じたりすれば敗北に向かう。

 それを少しでも必中に近づけるのが「逆落とし」だ。

 我ながら精神論染みているが、これぐらいはいつものことだ。

 

「本当に骨の髄まで川神さんの教え子だね……うん」

 

 篝火さんは呆れた様に納得しだした。

 

「まあ、とりあえず。

 次は新しく追加された肩の方の魚雷を頼むね」

 

「はい」

 

 もう突っ込むのも疲れたのか、次の雷撃に移ることを催促された。

 

 先ずは正面から……!

 

 最初に私は通常通りの雷撃を行おうとした。

 とその時だった。

 

「……!?」

 

 いざ、魚雷を発射しようとした時に違和感を感じてしまい、私は撃つのを躊躇ってしまった。

 そして、そのまま的とすれ違ってしまった。

 

 これは……

 

 今の一瞬の違和感に私は不安を感じてしまったのだ。

 

「……?どうしたの?

 何か、不具合でもあった?」

 

 私の異変を見て篝火さんが声をかけて来た。

 今の彼女は落ち着いているが、その声には技術者・開発者としての責任感が見受けられた。

 

「いえ……多分、装備自体には何も支障はありません……」

 

 私は彼女を安心させようと魚雷の発射までの過程には異常がないことだけは伝えた。

 少なくとも、この研究所の整備員の腕は本物だ。

 それだけは事実であったので、なるべく否定したくなかったのだ。

 

「え?じゃあ、どうしたの?」

 

 それを聞いても篝火さんは私が雷撃を中断したことの理由を求めて来た。

 その姿勢に関しては彼女の技術者としての矜持が感じられた。

 その為、今回の件を言うのを躊躇いそうになったが

 

「……今までと魚雷の発射角度が違っていたので……

 「逆落とし」を急遽躊躇ってしまいました……」

 

「……え?あ……」

 

 それでも言わねばならないと思って魚雷を撃つのを止めた理由を告げた。

 それは新しく追加された魚雷の位置が横に広がって今までと勝手が違ったのが理由だった。

 今までは私の身体の側面部に密接していたことで突撃の要領で雷撃ができていたが、今回追加された魚雷は肩幅まで広がってしまった事で間隔が広がり、照準が「逆落とし」をする際にずれてしまったのだ。

 

「そうだった……

 そういえば、()()()()()()()()同じことを言われたのを忘れてた……」

 

「へ?()()()()()()()ですか?」

 

 篝火さんの動揺して漏れたことで出たその過去の失敗が私は気になってしまった。

 

「うん……

 あの時も浮遊ユニットに追加したら、「逆落とし」の時にやり辛くなっちゃってね……

 火力を増やした機体全体のバランスとかも一応、データ上では問題なかったから考慮するのを忘れてた……

 やっぱり、スペックよりも搭乗者との相性を考えなきゃいけないのに……

 はあ~……」

 

「篝火さん……」

 

 在りし日の失敗を繰り返したことに篝火さんは落ち込んでしまった。

 人間は誰しも同じ様な失敗をしてしまうと悲しむものだ。

 それは私も痛感させられている。

 私もここ最近、相手を上から目線で説教臭くなってしまっていたり、他人に心配をかけるような事ばかりで自己嫌悪に駆られる時がある。

 

 なんとかしないと……

 

 「初霜」が多少形状が変えられたといっても、彼女は最低限の変更だけで済ませてくれたうえに、私の意思を尊重してくれてもいる。

 それに私は違う世界から来たうえに、「初霜」を動かしたということから研究資料として非人道的に扱われてもおかしくもないのに彼女は私を一人の人間として見なしてくれている。

 その恩義に報いたくなっているのも事実だ。

 だから、今回のこの改修を失敗等と思い込んで欲しくなくて、解決策を模索した。

 

 ……!そうです!

 

 その時、私の頭にとある光景が浮かんだ。


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