斑鳩達四人は、夕ご飯を食べるために商業地区の方に出向いていた。
「にしても白衣の学生が多いな」
「ん~ここはアルルカントが近いからね~」
周囲の屋台を見ながら歩いていく4人。そんな中、オーフェリアがふと足を止めた。
「ねぇ、斑鳩、あれ…」
と軽く指をさすオーフェリア。その方向を見ると、人ごみの中で思いっきり困っていそうな顔をしているポニーテールの少女がいた。いつもなら、自由奔放そうな顔をしているが、今はそんな気配はない。携帯端末を見ながら困っているのは間違いなかった。斑鳩は、面倒なことになる前にそそくさと立ち去ろうとした時だった。
ピカァーンッ!!
こちらに気づいたエルネスタの瞳が一瞬煌いたように見えた。
「にひひひ~みーつけちゃった」
まるで獲物を見つけたかのようだが、その顔にはどこか助かったような安堵の色もあった。
「いっかるがくーん!」
手を振りながらこっちに駆け寄ってくるエルネスタ。胸元はラフなので思いっきり揺れている。もう一度言おう。揺れているのだ。というか、そんなことをしてくれるので、思いっきり周囲の視線が5人に行く。
「おっひさしぶり~元気にしているかな~?」
と上目遣いでこちらを見てくる。
「お、おう、そんでエルネスタはどうしたんだい?」
「ん~迷っちゃったんだよね~」
「なら、アルディかリムシィでも――」
と言いかけた時だった。突如、彼女は斑鳩の手を取り、それを自分の胸元に持ってきて、触れさせた。
「なっ!?エルネ――」
「おっと、それ以上声を挙げていいのかな?」
大声を出さないように牽制するエルネスタ。やはり、彼女は策士のようだ。
「どういうつもりだ…」
「私の望むことはただ一つ――」
「のぞみ…だと?」
エルネスタと斑鳩の二人の間に緊張した空気が流れる。
「望みはなんだ?」
「私からの望みは一つ」
そういうと思いっきり胸を張るエルネスタ。
「ご飯に付き合ってくれない?」
すぐさま両手を合わせておねだりしてくるエルネスタであった。
『はっ?』
4人の声が合わさった。
それから5人で歩いていく。もはやちょっとした集団になっていた。
「にしても、なんでご飯?」
「実はね~ほら、今日学園祭でね、いつも言っている食堂が休みなんだよね~」
「そういえば、そうだったな」
「それで、しょうがないからこうして外に出てきたんだけど~私って、超がつくほどの方向音痴なんだよね~」
紗夜のこともあって脳裏にカミラの苦労が思いやられる。
「もしかして、いつもカミラがいるのって?」
「私が迷わないためだよ~」
「…え、えぇ~」
少し引き気味の斑鳩。
「ってことは、今日もカミラがいるんじゃないの?」
オーフェリアが聞く。
「それがねぇ~獅子派の研究発表があってそっちに行っているんだよ、それで私はお腹が減っちゃって」
「んで、迷ったところに俺らが通りかかったってことか」
「そういうこと~」
話ながらいると、一旦アルルカントのエリアから離れ、レヴォルフのエリアに来ていた。
「いんや~この時期のレヴォルフは、けばけばしく飾っているね~」
とおぉ~と言いながら迷子なのに楽しんでいるエルネスタ。
「まぁね~レヴォルフの学生は、こういったイベントに積極的じゃないから、ほとんど歓楽街に丸投げなのよ」
「へぇ~」
「だから、雰囲気が似ているんですね~」
流石、元レヴォルフにいただけあって、納得がすごく出来る。
「にしても、かなり強気な値段設定」
紗夜の言う通り確かに、値段設定は結構強気で、尚且つ店員も強面だが、壁にはカラフルなグラフティや卑猥ならくがきなどがある。
「相変わらずというより、レヴォルフは全体がカジノだな」
「まぁ、そんなものよ」
と歩いていくと、どこからともなく美味しそうな匂いが流れてきた。
見れば、中庭らしき一角に大きめの露点があり、簡素な椅子とテーブルがその店先に並べられていた。
「いらっしゃいませーパエリアはいかがですかー」
可愛らしいエプロン姿のプリシラが呼び込みをしていた。