ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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弾道予測を予測する

綾斗は、シルヴィアと他愛のない会話をしながら、星導館を案内しつつ、イベントなどはちらりと除くくらいでぶらぶらしつつ、屋内プールで行われているイベントに出向ていた。

 

「ねえ、あれって確か綾斗君の知り合いでしょ?」

屋内プールの二階席からシルヴィアの指さす先を見ると

 

「紗夜…?それに斑鳩も?」

「あ、本当だね」

そこには両手に大型の水鉄砲を構えたスクール水着の幼馴染と水鉄砲に木の棒を構えた海水パンツの友人の二人が大立ち回りを演じていた。

どういうルールなのかわからないが、紗夜も斑鳩も対戦相手のほとんどを敵に回しているようだった。

その数は、40人ほどだ。そして、プールには無数の浮島がいくつも点在しているが、ふたりは?それを八艘飛びよろしく飛び回りながら正確無比の射撃で対戦相手を次々とプールに叩き落して言っていた。

 

「うーん、ふたりともバランス感覚もすごいけど、動体視力もすごいよね、攻撃をかわしながら、空中であの射撃制度っていうのは、ちょっとまねできないな~」

ととなりで感心しているシルヴィア。そして、お互いがお互い以外の全員をプールに沈め終わる。そして、二人がプールサイドの両端に飛び移り、お互いを見据え始めてた。

 

 

 

 

「――静かになったな紗夜」

「…」

紗夜は何も言わない。というより、先ほど何かを見てから妙にむしゃくしゃしているみたいだ。

 

「(大方、綾斗でもいたのか――)」

と軽く会場を見渡してみると、そこにはここからそそくさと立ち去っていく綾斗の姿。もちろん、女の子を連れていた。

 

「(ユリスの髪色でもクローディアでもないってことは…また、新しい女子を作ったか、あいつは…)」

心の中で友人に対して少し呆れつつも、目の前の対戦相手に視線をやる。

 

「斑鳩、私は今、すっごくむしゃくしゃしている」

「まぁ、わからんでもないがな」

そういうと、紗夜が身構えるので、こちらも身構える。そして、紗夜がトリガーに指をかける瞬間、斑鳩はプールサイドを蹴って、浮島へ飛び出していく。そして、数歩も進まないうちに、紗夜の右腕が動き、こちらへ銃口が向く

――と、感じた瞬間に、斑鳩は思いっきり右前方に飛ぶ。直後、すぐさま紗夜の水弾が斑鳩のすぐ横をかすめて、通過していく。右足にあって浮島を蹴り、中央に戻る斑鳩。

斑鳩は、紗夜の弾道を予測しつつ動いているが、銃口には視線は行っていない。行っているのは、ひたすら紗夜の眼だけだ。とはいえ、さすが長年銃器を取り扱っていただけか、隠しているものの、斑鳩は瞳から弾丸が飛来する軌道の気配を感じ取って動いていく。紗夜の瞳の動きから導き出された予測線自体を回避していく。実際に弾が通過したときには、もうすでにダッシュの態勢に入っている斑鳩。

紗夜の三連発の銃撃を二セット回避する斑鳩。残りはあと少しだが。

 

「(紗夜の弾倉もあとは少ないはず――)」

と勘ぐる斑鳩。紗夜が撃ち終わった|弾倉≪水のボトル≫をリリースし、後方に飛ばすと同時に左手で先ほどほかの選手から奪ったと思われるフル装填されたボトルに換装していく。この一連の作業はまさに、0,5秒だ。

 

「(なんつぅインチキ技!)」

そして、紗夜の変則的なリズムを刻んだ弾を撃ち込んでくる。が、それを交わし迫り込んでいく。そして、残り5メートルといったところで、紗夜の顔がはっきり見える。そして、紗夜の瞳が小刻みに微動し、こちらの胸の高さを薙ぐ。

 

「(ってことは――)」

予測して体を倒して浮島の上をスライディング。マシンガンかと疑いたくなるような連射で放たれた水弾を潜り抜けて、紗夜に近づいていく。そして、紗夜が何やらニヤリと笑う。

斑鳩は、反射的にダッシュするのを変更し、上に思いっきり跳躍する。

案の定、斑鳩が立っていた場所を、ノーリロードで放たれた水弾が駆け抜けていく。

 

「(おいおい、隠し球かよ!?)」

と心の中で叫びつつ、空中でくるりと一回転し、紗夜のすぐ前に着地する。

ここで決め台詞の一つも吐きたいが、紗夜がどんなことをしでかしてくるかわからないので、彼女の肩を素早く叩いた。

 

「――さすが、斑鳩」

とただ一言、その直後、割れんばかりの大歓声が巻き上がった。

 

斑鳩と紗夜は普通の学生服に戻り、オーフェリアと綺凛と合流していた。

 

「紗夜、むしゃくしゃしていたのはおさまったか?」

「もっち、いい発散になった」

親指をサムズアップさせて言う紗夜。

 

「発散って…沙々宮先輩」

苦笑いしている綺凛。

 

「それで、これからどうするの?」

「学園祭期間中は、いろいろと安くなるんだろ?」

「えぇ、特別価格ってやつになっているわよ」

「割と良心的だな、折角だし、どこか屋台で腹にたまるもの食べて今日はあがるか?」

「私はそれでいいわ、紗夜と綺凛ちゃんは?」

オーフェリアは斑鳩の提案に同調してくる。

 

「私もそれでいい」

「はい、大丈夫です」

そういうので、商業地区の方の屋台に斑鳩達四人は向かっていった。

 

 


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