ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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ストレル王宮

想像以上に長く続いたパレードを終え、斑鳩達一行は、ストレルの王宮にやってきていた。

ちなみに、到着するなにユリスは怒りに顔を染めてつかつかとその廊下を早足に進んでいく。

そして、王宮の二階にある部屋の扉を、ノックもせずに思い切り押し開けた。

 

「兄上!一体、これはどういうことだ!」

怒気を孕んだ声を上げる。後ろからそっと部屋を覗いてみると、豪華ではあるものの華美すぎる印象の部屋だった。

 

「ああ、戻って来たんだね、ユリス、おかえり」

部屋にいたのは、歳は二十代の半ばくらいの、濃い赤毛はやや長く、全体的に線が細い、ラフな格好の男性がいた。

 

「あらぁ、ユリスちゃんお久しぶりねぇ、それにクローディアちゃんも」

膝枕をしていた女性もいた。

 

「義姉上、お寛ぎのところ失礼します、少々兄上とお話をさせていただきたいのですが」

「はぁい」

女性は無邪気にそういうと、男性と共に立ち上がって優雅に一礼した。

 

「どうも初めましてぇ」

「星導舘の皆さんだねぇ?今回は不躾な招待を受けてくれて嬉しいよ、僕はユリスの兄でヨルベルト、一応、この国の国王をやっている、で、妻のマリア、ああ、ここは僕の私室なので君たちも寛いでくれて構わないよ」

その言葉に斑鳩とクローディア、それにユリスを覗いた面々が目をパチリとさせる。

 

「……え?」

「国王陛下?」

訝しげなジト目で紗夜がヨルベルトを見る。

 

「……本当の本当に?」

「あはは、困ったな、王冠でも被って、マントでもひらめかせていれば良かったかい?」

と彼は屈託なく笑うが、実際の綾斗も意外だった。とはいえ、斑鳩も当初は驚いていたが、此処に来るまでに様々な王の姿を見てきたので、あまり以外でもなかった。

 

「一応公務のときはちゃんとスーツを着るよ、今日はオフだからね、もっとも普段から僕の仕事なんてあってないようなものだけど」

「そんなことより、兄上!私は凱旋パレードなど聞いていなかったぞ!あれほど大事にしないでくれと言っておいただろうに!」

「だって言ったら絶対に嫌がるじゃないか」

「当然だ!しかも私だけならともかく、綾斗や斑鳩、それに沙々宮まで巻き込むとはどういう了見だ!」

「うん、まあ、そこはせっかくだからさ」

「常識で考えて、まずは話を通すのが普通だろう!」

「わかったわかった、僕が悪かったよ、すまなかったね、皆さん」

苦笑いするヨルベルト

 

「でもね、ユリス、国民は皆、ユリスだけでなく、そのタッグパートナーの天霧君にも興味があるんだよ、なにしろ、王女である君が選んだパートナーだからね」

「う……」

「(なるほど上手いな…)」

流石兄弟というべきだろう。

 

「とはいえ、興味があるのは国民だけではないんですよね――国王陛下」

「おやおや、流石ユリスが言っていただけあるな…棗君は」

「……どういう意味と聞くまでもないか」

とユリスがいう。

 

「そうそう、それと君たちにはうちの侍女を助けてもらったお礼もしなければならなかったね」

そういうと、ゆっきりとこちらを全員見る。

 

「というわけで、今夜は君たちを歓迎する夜会を催すことにしたから、ぜひ参加してほしい、あ、服はこちらで用意したから適当なのを選んでくれて構わないよ、サイズ調整も今からなら間に合うだろうし」

「だから、それも聞いていないぞ兄上!」

「あははは、まあいいじゃないか」

声を荒げるユリス。やはり、ヨルベルトは涼しげな顔だ。

 

「……なんだか、個性的な人ですね」

「まぁ、そうだな」

「あはは……」

綺凛がどうしたらいいのかわからないと言った顔でこちらを見てくる。

それから離宮に案内されていた。離宮までの専用の回廊には、見事なバロック風の庭園が広がっていた。

生憎今は雪に覆われているが、その純白の雪化粧もまた見事なものだった。

 

「うわぁ、綺麗ですね…」

「あい!春になったらお花でいっぱいになって、もっともーっと綺麗ですよ!ここは姫様もお気に入りの場所で、お花の手入れも姫様がご自分でやったりしてたんです!」

感嘆の声を漏らす綺凛に、フローラが胸を張る。それにしても、この静謐さはまた違った美しさがある。

 

「フローラ、余計な説明はいい、さっさといくぞ」

それから、一行は離宮に向かった。そして、個々の部屋に案内された。

 

 

「棗様、夜会用の礼服をお持ちしました、サイズを見ますので、ちょっと袖を通していただけますか?」

フローラではない人が礼服を持ってきた。

 

「えぇ、わかりました、それにしても一つ聞いていいですか?」

「はい?」

「夜会ってどんな感じなんですか?そういう場所ははじめてなんですけど」

「今回の夜会は急に決まったものですし、そんな大きなものじゃないと思います」

「そうですか・・・」

それから、慣れた手つきでサイズを測っていく。そして、ちょうどいいタキシードが届き、それに身を包み夜会に向かった。


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