綾斗は開始と同時に、力を解き放つ。同時に、斑鳩に向かってくる。しかも、ユリスと同時にだ。
「ほほう」
どうやらあちらもこちらの力は知っているらしい。単純に、こちらを先に倒してくるみたいだ。
「行くよ、ユリス!」
「あぁ!」
綾斗は即座に呼吸を整え、剣を構える。相手は出し惜しみをする気はない様だ。
「天霧辰明流剣術中伝――九牙太刀」
「刀藤流剣術――連鶴」
綾斗から五つの突きと四種の斬撃を組み合わせた九連撃が飛んでくるが、それを綺凛から習った連鶴で打ち消していく。
「――連鶴!?」
「ははっ、驚いたか綾斗、綺凛ちゃんから習った技さ」
「驚いた、まさかそこまでの技量に達していたとはな…一筋縄ではいかぬか」
リースフェルトは顔をしかめ釣らせる。当の斑鳩と綾斗はお互い距離を取る。
「んじゃあ、こっちから行かせてもらおうか」
斑鳩はまるで、そこから消えるように身体を揺らし、一気に地面をすべるようにかけていく。
「バーチカル・スクエア!!」
「――ッ!?」
突如現れた斑鳩の人影。青白い残光と共にエリュシデータを4連続で振るう。綾斗はそれを防ごうと剣を振るってくる。斑鳩の怒涛の攻撃だが、それで終わるわけではない。
「(――さぁ、暴れようぜ!!)」
斑鳩のエリュシデータに黒い紋様が浮かび上がる。
綾斗の《
そして、斑鳩のエリュシデータと綾斗の《
だが、エリュシデータは無傷だ。
「――ッ!?」
《
「咲き誇れ――
綾斗の背後で猛烈な熱気が上がる。そして、斑鳩に向けて上下左右の炎の花が襲い掛かる。
「天霧辰明流剣術初伝――貳蛟龍」
綾斗とユリスは、斑鳩が避けるとと知っての攻撃を繰り出してくる。しかも、狙いは胸の校章。
二人の息の合った攻撃だ。確かに、これが斑鳩本人であればいいが、生憎一人ではない。
「四十一式煌型粒子双砲ヴァルデンホルト――《バースト》」
斑鳩にユリスの攻撃が当たる寸前、真横からねりを上げた奔流が綾斗たちを襲う。
だが、直撃する寸前、ユリスの手を引いてぎりぎりのところでそれをかわす。
斑鳩は一旦距離を取るため、バックステップで一気に飛び上り紗夜の隣に着地する。
「ナイスフォローだ、紗夜」
「斑鳩も、グッジョブ」
とはいえ、今のでいくつか分かったことがある。綾斗は、こちらの動きや場などを俯瞰的に把握しているということだ。お互いの距離が離れる。
今度はこちらから、一気に走りこんでいく。
「綾斗!」
「わかっている!」
一気にユリスに行くと見せかけて綾斗にとびかかる。斑鳩は、ソニックリープを繰り出し、そこから、
スネークバイトにつなげ、ダブルサーキュラーの攻撃の線が読めない攻撃を繰り出す。
二つの剣がぶつかり合うたびに、その余波が障壁を揺らす。
「咲き誇れ――
地面から無数の焔が吹きあがり、渦を巻くようにして炎の戦輪が現出する。数がいつもより多い。その分、若干小粒だ。斑鳩は、エリュシデータを煌かせ。
「ライトニング・アロー!」
無数の光の矢を飛ばしてユリスの攻撃を相殺する。
「天霧辰明流剣術中伝――十昆薊」
体をひねりながら剣を払ってから、 もう片方の手に剣を持ち替えてさらに体をひねって剣を払ってくる。
斑鳩は、そこをダブルサーキュラーで相殺する。斑鳩は、ライトニングアローで強引に綾斗をひきはがす。牽制のためにばらまかれた弾幕をかわし、下段から一閃。
「ヴォーパルストライク」
赤い光芒の演出と共に剣による強力な突きを繰り出し、それをはじき返す。
そんな中
「ふふん、この時を待っていたぞ……!」
かなり不穏な空気。
「綻べ――
ユリスがアスペラ・スピーナを振り下ろすと同時に、地面に魔法陣が浮かび上がる。同時に、巨大な炎の爪が噴き上がり、そのまま斑鳩を握りつぶす。だが、物凄い轟音と共に、その爪が横に一閃される。同時に、その爪がはじけ飛んだ。見れば、斑鳩の手にはスカーレットファーブニルが煌いている。
「――甘いな」
「何ということだ…」
「忘れては困る」
ユリスは悔しそうに舌打ちしてから、再び綾斗と合流しようとするが
そこに光の奔流が二つ襲い掛かる。ユリスの危機をとっさに感じた綾斗は彼女の手を引いて避ける。視線の先には、四十一式煌型粒子双砲ヴァルデンホルトではなく軽装をした紗夜がいた。