「さてと、とりあえず落ち着こうか」
斑鳩は周囲をぐるりと見渡しそういった。
「まず、狙いは今の通り綾斗ってことだ、ユリス、お前がうろたえてどうする?」
「斑鳩…」
「こういう時こそ、しっかりとした状況把把握が重要だ」
その言葉にユリスは大きく深呼吸し自分の両頬をパンと叩いた。
「あぁ、そうだ、すまない」
その眼には強い怒り、しかし動転した様子はない。それを確認した斑鳩はクローディアに視線を向ける。
「よし、まずクローディア、犯人の要求に遭った緊急凍結処理について説明してくれ」
「はい、緊急凍結処理というのは、学有純星煌武装使用者がその純星煌武装に危険を感じた場合に申請するものです」
「つまり、危険性発覚の場合、使用者自らが強制封印の申請を行うってわけか」
瞬時に、それを理解する斑鳩。
「となると、犯人の要求は《
「おそらくは」
「ってことは、犯人側も結構な輩がいるな」
斑鳩は状況を総合してそうつぶやく。
「斑鳩、それはどういうことだ?」
「簡単さ、まず緊急凍結処理ってのは文字通り封印だ、ってことをしたら気難しい《
「斑鳩、それは深く考えすぎでは?」
リースフェルトが言ってくる。
「いんや、それだったら、普通に襲撃をかけているさ――もし天霧綾斗であればな」
「ということは、まさか《
「そういうことだ、犯人の目星はもうついている」
斑鳩はクローディアと綾斗に目を合わせる。二人とも直感で感じたらしい。
「だが、犯人は同時に大きなミスを犯した」
「大きなミス?ですか?」
おずおずという綺凛。
「あぁ、まずあいつはあの場にクローディアがいることを知らない」
そういうとクローディアに全員の視線がいく。
「斑鳩、クローディアがいるとなんか問題なのか?」
「違う、その逆だ、記憶が正しければ学有純星煌武装の使用に関しては会長の許可が必要、そして、その逆である封印関する処理も然り、となると緊急凍結処理に関しての承認はクローディアが持っているとなると、この場でクローディアがあえてこの話を聞かずに、姿を消してくれたら、その間に時間が稼げるだろ?」
「あぁ、そうだな、それが何になるんだ?特務機関や警備隊は使えないのだぞ?」
「問題ない、明日の決勝までの"こちら"で探し出す――もう猫のしっぽは捉えているからな」
そういうと凄みをつけていう斑鳩。
「対象は"再開発エリア"、仕掛人は《悪辣の王》ディルク・エーベルヴァイン、そいつだけだ」
「《
「もちろん彼が証拠を残すわけがないので、となるとあちらの諜報工作機関"黒猫機関"といったところだろうな」
そして、クローディアは斑鳩がそこまで言うと今までのを要点をまとめてみせる。
「つまり、相手の要求を呑んだ風によそいつつ、今から24時間以内に犯人を見つけ出しフローラを救出する、ってところですか?」
「その通りだ、綾斗はどう思う?」
「悪くない案だと思う、《
「…そうか、わかったその案でいこう」
ユリスは心を落ち着かせるように言う。そして、皆が頷くと同時に、斑鳩は一歩前に出てくる。
「ユリス、綾斗、ふたりは次の準決勝に備えたほうがいい」
「そうですね、あちらの要求に《星武祭》を棄権するなという条件が入っていた以上、まずそちらに集中した方がよろしいかと」
「あぁ、付け加えるとすれば、おそらく犯人は星武祭の中継を通してしか緊急凍結処理を確認することができないだろうな」
「集中しろと言われても、この状況でできると思うか?本来ならば《星武祭》など放りだして、今すぐにでもフローラを探しに行きたいところだ」
「・・・ユリス、それは自分の望みをあきらめることになるぞ?」
「構わん、大切なものを守るために、それを犠牲にするのでは意味がない」
きっぱりと言い直るとバツが悪そうに綾斗の方に向く。
「ああ、そのすまない、つい私の都合だけで言ってしまったが、我々はタッグパートナーだ、無論、お前の意思は尊重する」
「気にしないでいいよ、ユリス、俺も同じ考えだからね」
というが、
「ユリス、あまり失うことをおそれるな――それに、フローラを助けて決勝で俺らとぶつかったうえで優勝する、それくらいの気概を持ってくれ」
「――斑鳩」
その言葉に驚くと同時に頼もしさを感じるユリスであった。