「(速い――だが、追いつけない距離ではない!!)」
アルディとリムシィが合体してからは、正に戦というにふさわしい戦いだった。
もはや、剣戟とハンマーとの戦いだ。とはいえ、一般的にはアルディの出力は圧倒的だった。
彼のハンマーをかわしながら、剣を振るう斑鳩。その後ろから、紗夜が援護してくる。
「いくらなんでも強すぎ、どういうこと?」
「おそらく、マナダイトに秘密があるのだろうな」
苦笑しながら頷く斑鳩。全ての能力が向上しているアルディ。しかし、どうみてもリムシィとの釣り合いが合わない。
「さぁ、受けてみよ!これぞ吾輩のウォルニール・ハンマァァァァ!!」
どう考えての直撃コースだ。斑鳩は、両手の剣を×印のように交差させ相手の攻撃を受け止める。
そこから、隙の少ない3連撃のスキル、シャープネイルで、装甲を削る
「ほほう、あの直撃を受けて、尚且つ反撃するとわ……さすがであるな!」
「それはどうも!」
再びハンマーと剣がぶつかり合い。そして、紗夜の支援が入る。
「ふはははははあ!楽しいな!実に楽しい!だが、まだまだ!まだ、まだ吾輩の力はこんなものではないのである!」
アルディがハンマーを下ろしてくるなら、それを弾き、後ろから攻撃をしていく紗夜。
そして、両者撃ち合うごとにその威力が増していく。見れば、アルディの装甲にはよく見れば無数のひびが入っている。そこから蒼い光が漏れ出している。
「(あれは、ウルム=マナダイトの光・・・ってことは、あいつの全身が武器ってわけか)」
どうやら、本格的にネタが分かってきた。そんな中
「さぁ、名残り惜しいがそろそろ決着をつけようではないか!――参る!」
今度は防御障壁でハンマーを構築し、突進してくる。どうやらが学習能力は健在のようだ。
斑鳩は反射的にそれを撃ちあう。
「(さっきより重い…ってことは出力が上がっているわけか!?)」
紗夜の攻撃も徐々に押され始める。
「押すしかない!!紗夜!」
「グッドタイミング、斑鳩」
「なにッ!?」
そういうと、アルディの周囲に光球が現れ
「ふっとびな!!」
「――《フルバースト》」
轟音といくつもの光の奔流に包み込まれる。だが、それも防御障壁で阻まれる。
「では、吾輩もお返しというこうか!」
アルディが手の平をかざすと、今度は防御障壁が重なり合い、巨大な球状に展開する。
「(――ッ!?)」
そして、その巨大な球体は見る間に圧縮されて拳の中に納まる。
「まさか…!?」
斑鳩の直感が最大級の危機を告げる。そして、魔力の障壁を展開させた直後
「さぁ、爆ぜるのである!」
アルディがその拳を拓くと、圧縮されたエネルギーが一気に解放される。それはステージ全体を巻き込むほどの大爆発だ。無論、逃げ場などあろうはずもない。
そして、閃光が視界全て白く染まり、ユリスの悲鳴が轟音にかき消される。塵のように吹き飛ばされず済んだが、やはり、それでも完全相殺には至らなかった。斑鳩はとっさに紗夜をかばう。同時に、その衝撃で、一瞬意識を手放しかけたが、幸いにも体中を走る激痛が覚醒を強制した。
「ぐ、ぅ……」
「…い、斑鳩」
倒れかけた斑鳩は、何とか身体を起こし自分と相棒の状態を確認する。制服は多少ぼろついたものの、そこまでの状況じゃない。校章は無傷だ。
とはいえ、目の前のステージは完全に壊滅していた。ただ二点、爆心地の僅かな空間と沙々宮と斑鳩のいる地点だけだ。それ以外は、完全に瓦礫と化していた。
「ふははははは!さぁさぁ、続きといこうではないか!我輩まだ――」
とがくんとその膝が落ちるアルディ。
「ぬ……?」
ウルム=マナダイトの高出力による自壊の副作用がアルディを襲う。
「斑鳩、大丈夫?」
か細い声に振りむけば、斑鳩の背後で紗夜が身体を起こした。とはいえ、完全無傷とはいかなさそうだ。苦悶の表情を浮かべた、その場にへたり込んでいる。
「紗夜!」
「こっちは、大丈夫ともいえない――」
斑鳩はゆっくりと彼女を抱き起してやる。
「斑鳩、いける?」
「…さぁ、それはどうだろうか、だな、ほんの少しだけ厳しいところもある」
流石に先ほどの全力までとはいかないが、まだ勝機があるのは事実だ。
「方法は?」
「時間を待つか、ってところだ」
おそらく自滅するであろうアルディを待つこともできるが、しのぎ切るというのも些かである。
なにしろ、後ろの紗夜はどうみても満身創痍だ。斑鳩も完全状態とは言えない。
「斑鳩――いける?」
「当然だ」
そして、ここにきての全力をかけることを決定した。