黙々とパフェを貪る斑鳩、この心地よい甘さが食欲をそそる。そんな中
「姫様姫さまっ」
「どうした?」
「あーんしてください、姫さま」
フローラがそういってスプーンを差し出してくるので、ユリスは苦笑いして口を開ける。
「えへへ」
フローラは満足そうに笑いながら、そこへスプーンを運ぶ
「……ふむ、なるほど、うん、これは美味いな」
「だろ?」
ごく自然な動作で取り入れる斑鳩。
「ごく自然に入ってくるな、いや、悪いわけではないが」
純粋に絵面が面白いと言った表情のユリス。そんな中
「あ、そうだ!せっかくなので天霧様もどうぞ!」
「んなっ!?」
「え?俺ももらっていいのかい?」
「もちろんです!姫様もシスターも美味しいものはみんなで分け合ったほうがより美味しいって、いつも言ってますから!ね、姫さま?」
無邪気そうに言うフローラだがユリスの顔は紅い。
「(まぁ、そうなるな)」
関節キスを意識しているのだろうと思いながら、黙々とパフェを食していく斑鳩。
「じゃあ、はい!天霧様も、あーん」
「……あーん」
苦笑いしながらパフェを食べる。
「ん、本当だ、これ、すごく美味しいね」
「あい!」
「ありがとう、フローラちゃん」
「えへへ~」
その笑顔でご飯何杯行けるのか、軽く計算しつつパフェを食べる斑鳩。一方、ユリスの顔はどこか紅いものの、何とも言えない複雑な表情だ。斑鳩は軽く本題を切り出す。
「それで、フローラちゃん、本題は?」
「あーい」
そういうと手帳をめくり出す
「んーと、まずはどれだったかな……あ、これですこれ!」
フローラは綾斗へ向き直ると、たどたどしく手帳を読み上げた。
「それでは一つ目の質問です、えと『天霧さまと姫様の関係はどの程度まで進展されてるのですか?』」
「ぶふっ!?」
ユリスが飲んでいたコーヒーで思いっきりむせる。
「落ち着けユリス」
「あ、あぁ、悪い」
ティッシュを差し出す斑鳩。
「――どう考えてもそれ、フローラちゃんの質問じゃないね?」
「うん、そうだね」
「あぁ、陛下が『将来弟になるかもしれない少年について、これらのことを調べてきて欲しい』って」
「はい、ビンゴー」
棒読みと言わんばかりに言う斑鳩。
「お、おのれ兄上め――」
夜吹の時とまるっきり一緒のトーンに少し苦笑いする斑鳩。
「フローラ、ちょっとそれを貸してみろ、他にはどんな質問が書いてあるのだ」
「あ、ダメです!バレルと怒られるから姫様には内緒にしておくようにって陛下が――」
「もうバレてるよね、それ」
「ああっ!そ、そうでした!」
今更気づいたが、だが遅い。
「ダ、ダメです!フローラが仰せつかったお仕事ですから、ちゃんと最後までやらせてください!」
「却下!」
「続行!」
ユリスの意見に面白半分で真反対のことを言って乗る斑鳩。その隣で苦笑いする綾斗。頗る面白い。ここまで来たら頗るふざけてやろうと思い。
「よしフローラちゃん、陛下にはこう伝えるんだ――『ユリスとの仲は~「余計なことを言わんで宜しい!」おふっ!」
軽くげんこつで小突かれる斑鳩。
「ははは、少しふざけすぎたみたいだが――お客さんみたいだな」
やいのやいのしている中、斑鳩は彼女に気付いた。
「あ、あの…お取込み中、すいません、ちょっといいでしょうか……?」
現れたのは、レヴォルフの制服に身を包んだ一人の女の子。斑鳩は彼女を知っていた。
「さて、レヴォルフの会長秘書さんが何の用かな?まぁそうだな、用件は俺の隣にいる《叢雲》の天霧綾斗に用かな?」
唐突なことで綾斗が困惑している。ユリスとフローラも手を止める
「そ、そうです、も、申し遅れましたが、私は生徒会長秘書を務めている樫丸ころなと申します、天霧綾斗様申し訳ありませんが、少しお付き合いいただけますか?」
あたふたと頭を下げてくる少女。
「それで、その――会長がお待ちです」
「綾斗、だとよ」
斑鳩は顔を引き締めながら綾斗を一瞥し言った。